小池ひろのり議員が質問(決算審査・健康福祉部)を実施

第306回9月定例会 決算特別委員会質問 (健康福祉部)
2010年10月12日(火)

1 がん対策について

(1) がん対策の取り組みについて

 今や、2人に1人が“がん”にかかり、3人に1人の死亡原因ががんであるという時代になりました。県政にとって最も重要な県民の生命を守ると観点から、他の事業は多少差し置いても、がん対策を積極的に取り組まなければならないと考えます。
 本県においても、昭和62年度に「ひょうご対がん戦略」を策定するなど、中長期的な視野に立ってがん対策を総合的に推進してきています。平成21年度におけるがん対策の中高年層保健対策の決算額は前年度に比べ30%増の約6億8千万円であり、厳しい財政状況の中で、一定の対策強化が図られていることについては評価出来ます。それでも、なお死亡原因第1位であるがんについては、今後とも一層の対策強化を図っていかねばならないと考えます。
 民主党の故・山本参議院議員が、自らがん患者ということを国会で告白し、がん対策推進を訴え、超党派で平成18年6月に「がん対策基本法」を制定し、翌年4月に施行されました。
 そこで、県では「がん対策基本法」の立法の精神を踏まえ、がん対策について、これまでどのように取り組まれてきたのかお伺いします。

(2) がん検診率向上への取り組みについて

 がん対策については、がん対策基本法で、国や地方公共団体の責務と定められています。そして、国のがん対策推進基本計画では、死亡率を10年で2割減、受診率を5年で50%超を掲げています。
 検診によるがんの早期発見の重要性は、身体的に負担が少なく、また、短期間の治療に繋がるので、発見が遅れ、辛い治療を受けた上に、高額の医療費を払っても治らない場合とでは比較になりません。マンモグラフィなど、検診機器の精度の向上が著しい中、受診率と検診の質の向上が重要なことだと考えます。
 内閣府が発表している平成21年9月の「がん対策に関する世論調査」によると、がん検診を97%の人が重要と考えているにもかかわらず、日本で死亡者の多い肺がん、胃がん、大腸がんの「3大がん」の検診を一度も受けたことがない人が、いずれも半数近くとなっています。
 また、平成19年度国民生活基礎調査によると、県におけるがん検診受診率は、胃がん24.7%、肺がん19.4%など、大腸がん、子宮がん、乳がんも含めて、全国との比較で約3~6%程度低い現状があります。
 このような状況を踏まえ、県としては、まず、検診率の向上のための諸施策を推進するべきと考えますが、所見をお伺いします。

(3) 受動喫煙防止等による肺がん対策の推進について

 平成20年度人口動態調査によると、肝がんの死亡率は、全国平均が26.7%であるのに対し、兵庫県は31.4%、肺がんの全国平均が53.1%であるのに対し55.6%と、全国的にも高い死亡率となっています。地域ならではのがんの罹患特性に対して、やはり県としての取り組みが必要だと考えます。 
 ここで、具体的ながん対策として、肺がんの最大の原因である喫煙問題を取り上げたいと思います。最近、遅ればせながら未成年者の購買にチェックが入るようになったとはいえ、タバコを誰でも自由に買える自動販売機で積極的に売っているような国はありません。また、アメリカのタバコには「喫煙は肺がんの基になる」と明記され、豪州では「KILLS YOU!」と表示されています。皆さんはこれを何と訳しますか? 何もそこまでしてタバコの販売をしなくても良いのではと思いますが・・・。これらは、いずれも喫煙が身体に害であると医学的にもはっきりしている現状で、明記せずして販売すれば、多額の損害賠償請求がされるという過去の判例に基づいていると思われます。
 最近、日本のタバコが100~140円値上げされました。それでも、1箱400円位ですが、欧米では1000~1400円位であるのを考慮すれば、タバコに対して日本ではいかに寛大であるかと言わざるを得ません。
 肺がんの発生には、喫煙が強く関与していると言われ、喫煙者の肺がんの発生は、非喫煙者に比較して約4倍、20歳以下の若者で喫煙した場合、肺がんのリスクは非喫煙者に比べて約6倍、また夫が喫煙者、妻が非喫煙者の場合、妻が肺がんで死亡する危険率は、夫が非喫煙者の家庭に比べ、約1.5~2倍高いと言われています。従って、小学生など早い時期から、喫煙がもたらす健康被害についての徹底した啓発活動の実施や、アメリカなどのように、人が集まる所では今や禁煙が常識というような社会的な環境整備が必要だと考えます。
 また、タバコを吸わない人を受動喫煙の害から守るという国際的な流れとして、イギリスやアイルランドのパブやアメリカの多くの州のレストラン等では全面禁煙が実施されています。一方、日本では、平成15年にようやく健康増進法で受動喫煙防止の努力義務が取り入れられ、平成16年にWHOのタバコ規制枠組条約を批准しました。同条約の締結国は、罰則を盛り込んだ立法措置等が求められておりますが、我が国では依然として、健康増進法の努力義務以上の対策強化に踏み込めていないのが現状です。
 このような中で本県においては、平成16年3月に兵庫県受動喫煙防止対策指針を策定し、今年度を最終年度として、敷地内禁煙や建物内禁煙、または完全分煙等に向けた取り組みを推進していますが、指針の目標達成は困難な状況にあると聞きます。
 肺がんに対する喫煙や受動喫煙のように、がんの発生に影響を与える要因に関する研究等をさらに進めて行くと同時に、今後とも喫煙など健康増進の啓発や県民運動などの対策を推進していかねばなりません。さらに、具体的な目標値を定めて、県民に対策の成果がよりはっきりと見える形で取り組むことが重要であると考えます。厳しい財政状況の中で、県行政と県民が一体となり、やれるところから取り組む、同時に肺がん対策として、県民の生命を守る取り組みとして、目標と成果を県民にしっかりと示すことで、県政への一層の理解を得ることにつながると考えます。
 東京都千代田区が生活環境条例で、路上喫煙、吸い殻のポイ捨て禁止をしてから、全国に広がりを見せています。兵庫県でも、議会棟を含めた本庁舎や総合庁舎等での喫煙を禁止したのは大いに評価できます。
 さらに、公共の場での禁煙を拡大し、県条例により、レストランなどで土日は禁煙にするなど、肺がんを減らすために、地域限定・日時限定で禁煙運動を展開するのは有効な手段だと思います。
 そこで、本県においても、より積極的に受動喫煙を防止する条例を制定するなど、肺がんの予防対策として、喫煙、受動喫煙の機会を減らす県独自の取り組みを強化することが必要と考えますが、目標値設定への見解も含め、当局はどのようにお考えか伺います。

(4) がん対策の今後の展開について

 知事も、県庁玄関のテレビモニターで県民の健康マイプランを掲げ、健康増進を語りかけています。是非、健康増進という観点からも、がん死亡原因第1位の肺がん対策の一環で、喫煙対策の推進をお願いするものです。
 さらに胃がん、大腸がん等が、県民にとっても大変身近な問題として、取り組まなくてはならない課題となってきました。がんが死亡原因第1位であるのを裏付けるように、今や、皆さんの周りにも、がんで亡くなられた方も少なくないと思います。決して他人事ではないがんに対して、県が積極的に対策を取り組むべき喫緊の課題であると考えます。
 がんと宣告されても、がんと安心して共生できる世の中、さらに生存率を只上げるだけでなく、生きる希望が与えられるような世の中になるのを期待しながら、最後に、がん対策の今後の展開について、県当局の決意をお伺いします。

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