上野英一議員が質問(決算審査・農政環境部)を実施

第306回9月定例会 決算特別委員会質問 (農政環境部)
2010年10月14日(木)

1 今後の農政の方向について

 新たな食料・農業・農村基本計画が平成22年3月30日に閣議決定され、当時の赤松農林水産大臣は「農業・農村の繁栄無くして国家の繁栄はありません。しかし、我が国の農業・農村は、農地の減少、農業者の高齢化、農村の疲弊など、ここ十数年で危機的な状況が一層深刻になっています。この厳しい状況を打開し、「食」と「地域」の再生を図るための大きな道標として、この新たな基本計画を策定いたしました。具体的には、①基本計画に新たに掲げた「戸別所得補償制度」、「農業・農村の6次産業化」等を推進します。②農業を成長産業としつつ、農村においては、バイオマス等地域資源を活用した新産業等を創出し、所得と雇用を生み出します。③国家の安全保障の要である食料自給率については、50%への引上げという意欲的な目標を初めて掲げました。」との談話を出されています。
 要するに、新たな食料・農業・農村基本計画がめざすところは、「農業生産性を高め、食える農業にする。さらに、食料自給率を高める」ということであり、農政がめざす方向の基本的な考え方としては、前政権時代と同じということだと思います。
 一方、特徴的な方針提起としては、水稲を中心とした農業経営において、米以外の転作作物による需給調整から、米粉用や飼料用等の新規需要米、すなわち米を作りながら需給調整することも可能としており、その販売を農協に頼るのではなく自らが販売していこうとすることを推進するものだと思います。そのような視点から、以下の点について質問いたします。

(1) 大規模稲作農家における米販売の取り組み等について

 昨年夏の政権交代以降、国では農業政策の大きな転換が行われておりますが、集落営農の組織化推進、農業経営の大規模化の推進等の農業構造の転換を図る施策は、農業の持続的発展を図るための施策として前政権時代から継続的に進められております。
 一方、本県では、今定例会の永富議員による代表質問でもふれましたが、兼業農家が全体の約80%、約4万5千戸と全国で4番目に多い状況にあり、その多くが米のみを販売する零細農家で、このような農業構造の転換を図るため、本県では、認定農業者や集落営農組織の育成、農業経営の大規模化に力を入れておられます。
 ここで、特に、米の出荷について着目すれば、兼業農家の多くはまずほとんどが農協への出荷、あるいは縁故米での流通ではないかと考えますし、一方、大規模稲作農家は、兼業農家とは異なり、農協への出荷に頼らない取組を行っていると聞きます。
 そこで、まず、県が進めている認定農業者や集落営農組織の育成について、5年前と比較して、平成21年度末はどのようになっているのか。あわせて、県下の大規模稲作農家における米販売の最近の特徴的な動きについてお伺いします。

(2) 新規需要米の取組状況について

 答弁にありましたように、農業構造の転換を図る取組が進んでいるとともに、当然のことかと思いますが、大規模経営の農家や法人ほど、農協に頼らない独自の販売ルートで米等の農産物を販売していることがわかります。
 冒頭にも述べましたが、「新たな食料・農業・農村基本計画」では、米粉用や飼料用等の米を作りながら需給調整することも可能としています。さらに米粉用・飼料用等の新規需要米の生産には、実需者との出荷・販売契約等を条件に、10アール当たり8万円の交付金が支給されることとなっており、独自の販売ルートを開拓する意欲ある農家を支援する仕組みとなっています。
 このような新規需要米は先ほども述べたとおり、主食用米ではないけれど、米を作りながら需給調整できることで、非常に光明が差すものと考えています。
 そこで、本県における平成22年度の新規需要米の取組状況についてお伺いいたします。

(3) 新たな食料・農業・農村基本計画に対する県の認識について

 「水稲農家が減反をせずに米を作れる。その上に、8万円/反の交付金が頂ける。今までの制度は農家の意欲を削いできた。戸別所得補償制度、こんな素晴らしい政策はない。」2010年10月4日放送の報道ステーションでの、秋田県大潟村、あきたこまち生産者協会、涌井徹社長の話です。また、余談になりますが、10月18日深夜2時40分からの、朝日放送「テレメンタリー2010」でも放映されるそうです。
 例えば、大まかな計算ですが、大潟村のように15haの大規模農家では、半分の7.5haで需給調整を行うとすれば、10a分は控除されるので、主食米定額の補償は75反×1万5千円で111万円ですが、需給調整した半分の農地で米粉用の米を栽培し販売すれば、75反×8万円で600万円の交付金が支給され、合計711万円の交付を受けることとなります。しかし、平成22年度の大潟村・生産者協会120戸1,800?の経営面積の内で米粉用米作付面積は、せいぜい50?、2,000トンの収量と50%の900?には程遠いですが、一方、6反60a程度の小規模兼業農家では、半分が需給調整ならば、米粉や飼料用米の独自販売もまず困難であるので、10a分は控除され、20a分の主食米定額補償の3万円だけの交付になります。このことは、農業構造の転換促進に向けた大規模農家への手厚い支援と、零細農家へは営農継続への意識付け程度の支援となっているのではないかと思います。
 よって、戸別所得補償制度を「農家へのばらまき制度」と批判される方もおられますが、私は、販売ルートを独自開拓する等の意欲ある大規模農家にとって大きな支援となっていることから、大規模経営の促進、農家の自立につながり、かつ、現状として我が国の農村や農地の維持には不可欠な零細・兼業農家への最低限の支援を行う制度となっており、我が国の現状から未来を見据えた制度設計となっているのではないかと考えます。
 冒頭に申しましたように新たな「食料・農業・農村基本計画」においては、戸別所得補償制度に加えて、「農業・農村の6次産業化」や「食料自給率の目標を初めて50%に引き上げる」などの施策を推進することとしており、今後の食料、農業、農村の基本的な施策の方向を示すものだと考えております。
 そこで、新たな食料・農業・農村基本計画に対し、県としてのどのように認識するのかを伺います。

小麦の輸入量 H.19 480万トン 米の生産量 H.17 900万トン
国民1人・年当たり 米 61.4kg 麦 32.3kg 計 95kg
1ha当たり4,200kg(7俵/反)とすれば、
 480万トンに相当する作付面積は、114万ha
 900万トンに相当する作付面積は、214万ha

2 農林水産物の販売促進の取り組みについて

(1) ひょうご農水産物ブランド戦略の平成21年度における成果について

 本県農林水産業の生産額・生産量はともに年々減少していることから、産品ごとの有する「強み」を再検証し、販売先を見定めながら生産額、生産量の確保を図る必要があります。このため、本県産農水産物について、他府県産品との優位性(魅力)を明確にしつつ、その魅力を活かすための課題を解決し、消費者の産品に対する評価と利益率を高める生産・流通・販売面の戦略の展開として、①既存ブランドの強化、②新規産品のブランド育成、③ひょうご農水産物販売ディレクター育成などの人材の育成、等に取り組む、ひょうご農水産物ブランド戦略に取り組まれています。
 そこで、ひょうご農水産物ブランド戦略の平成21年度における具体的な成果、中でも「ひょうご農水産物販売ディレクターの育成事業」に関する成果についてお伺いいたします。

(2) 県の主体的な販売促進等の取り組みについて

 先日の企画県民部審査において、「地域再生大作戦」について質問した際にも申し上げましたが、市や町から見れば中2階の存在である県は、生産者や販売者にとってどんな存在・立場にあるのでしょうか! 県では、いろいろな事業を展開されていますが、どの事業においても、市町支援、生産者支援であります。もちろん基礎自治体に対しての県の大きな役割は、支援や指導であります。しかし、もう少し県が先導的に取り組んでも良いんではないかと思います。
 昨年3月に会派の調査で宮崎県の農林水産部を訪れた際、「新みやざきブランド推進対策」の事業説明を受けましたが、随分、兵庫県とは異なるなと感じました。例えば、県の支援を受けて県産品の販路及び需要拡大等を行う社団法人宮崎県物産貿易振興センターがあり、同センターにより、県庁横にはみやざき物産館、東京には新宿みやざき館KONNE(こんね)、みやざき物産館大阪支部、福岡支部、福岡天神みやざき館KONNE、みやざき産品オンラインショッピングを運営、実施しており、農林水産物の販売促進を県が主体的に取り組んでいると思います。
 また、これは東国原知事効果ですが、タレントの田中義剛の生キャラメルと完熟マンゴー「太陽のタマゴ」とのコラボや、ゆうパックとのコラボ等々、県が直接、農林水産物の販売促進に取り組んでいます。
 そこで、兵庫県は、県内に大消費地神戸市がありますし、隣にはもっと大きな消費地の大阪市があり、地理的にも取り組みやすいと考えますが、県が主体的に農林水産物の販売促進に取り組むことについてのご所見をお伺いいたします。

NEWS

一覧を見る