上野英一議員が質問(決算審査・病院局)を実施

第306回9月定例会 決算特別委員会質問 (病院局)
2010年10月19日(火)

1 県立病院の経営状況について

 本県は人口当たりの大学病院や国立病院が全国的に見て少ないこともあり、公立病院、中でも県立病院の病床数、勤務医師数が比較的多く、高度専門医療を中心に県民の医療確保に重要な役割を果たしてまいりました。
 しかしながら、近年、多くの公立病院が診療体制の縮小を余儀なくされるなど、経営状況が悪化している中、本県病院局では、平成21年1月に「病院構造改革推進方策(改訂版)」を策定し、病院事業全般にかかる構造改革の取り組みを推進しながら、各県立病院の役割を踏まえた診療機能の充実や経営改善を進めるための「県立病院改革プラン」をまとめ、この計画に基づいて県立病院の改革を推進しておられます。
 そこでまず初めに、県立病院の収支状況についてお伺いします。

(1) 人件費削減による効果について

 本年3月の予算委員会においても取り上げましたが、県立病院改革プランでは、高度専門・特殊医療の充実、地域医療連携の推進等による患者確保、建替整備等にあわせた診療機能の充実を通じた診療単価の向上等により、一層の収入の確保を図るとともに、費用についても、給与費比率、材料費比率等の改善への取り組みを推進し、平成28 年度に病院事業全体での当期純損益の黒字化を達成するとしています。
 そうした目標のもと、平成21年度実績では、前年度と比べて当期純損益が30億円改善するという成果をあげることがきました。この要因としては、治療患者数の増加や、減価償却費の減を中心とした医業費用の減少等によることもあるとともに、大幅な人件費の削減も大きな要因ではなかったと考えています。
 そこで、職員の人件費削減が収支改善に及ぼした影響額について、伺います。

(2) 診療報酬の改定に伴う効果について

 全国の公立病院が加盟する全国自治体病院協議会が発表したところによると、前年同期に比べて、4~6月期の入院単価は4.3%増、外来単価は5.2%増となっており、1病院当たりの収入は、4.1%増加という2002年の調査開始以来最高の伸びを示したとのことでした。
 この主な要因は、民主党政権が平成22年度からの診療報酬を大幅増額した結果にあると考えられますが、本県についても、平成22年2月定例会の予算委員会において診療報酬の改定を受けた収支改善見込額を質問した際に、平成22年度で約9億円程度が見込まれるとの回答でした。
 そこで、県立病院事業における診療報酬改定に対する評価と今年度の実績をお示し頂き、それが改革プランに掲げる28年度までの収支フレームへ与える影響について伺います。

(3) 許可病床数と稼働病床数の差異について

 ご承知のとおり、日本における医療供給体制は病床数によって決められているため、都道府県が医療計画を策定する上でも、病床数は重要な意味を持っています。
 すなわち医療法で定める医療圏ごとに、その地域の病床数を策定した「基準病床数」が定められ、その範囲内で県立12病院の許可病床数が国への申請に基づき決められるわけです。
 現在、県立12病院における許可病床数は計4,023床あります。しかしながら、決算資料を見ましたところ、稼働病床数は3,434床に留まっています。様々な理由があるのでしょうが、とりわけ、県立柏原病院は許可病床数303に対して稼働数146、県立塚口病院は許可病床数400に対して稼働数300と大きな差が目立ちます。
 そこで、特にこの2病院の、差異の大きさは具体的にどのような理由から生じているのか、その影響は病院経営にどのような形で表れ、どういった対応を講じていこうとされているのか、について伺います。

2 県民本意の病院運営について

 本県では、先に申し上げました「病院構造改革推進方策(改訂版)」において、「県民から信頼され、安心できる県立病院の実現」などとされていますが、県民が安心してかかれる病院であるためにも、私は以下の点を特に重視すべきと考えています。すなわちインフォームド・コンセントと、患者や家族の疑問や苦情に対する適切な対応の徹底についてであります。

(1) インフォームド・コンセント等の推進について

 インフォームド・コンセントの定義は、手術や投薬、検査といった医療行為の対象者が、治療や臨床試験・治験の内容についてよく説明を受け理解した上で、その方針に合意することでありますが、患者が自分の病気と医療行為について、知りたいことを知ることができ、治療方法を自分で決める権利を持つことを指すと私は理解しています。
 去る2002年に東京慈恵会医科大学青戸病院の経験の浅い医師が、前立腺がんの最先端の手術を行おうとした結果、男性を殺してしまったとして、逮捕された事件がありましたが、こうした事案もインフォームド・コンセントの問題を含んでいたとされており、医療従事者が、如何に誠実な態度で率直にインフォームド・コンセントを行う医療を提供すべきかを示唆しているように思えました。
 県立病院においても、患者の自己決定権を尊重した医療の推進が不可欠であることから、インフォームド・コンセントの推進に取り組んでこられたことと思いますが、現在もその充実を図ることはもとより、患者へのカルテ開示、セカンドオピニオンの推進等にも積極的に取り組んでいる旨を聞いています。
 そこで、県立病院におけるインフォームド・コンセントの実施状況、カルテの開示実績及びセカンドオピニオンの実施状況についてお伺いします。

(2) 患者や家族の疑問や苦情対応について

 病院としては、患者や家族に対して常に真摯に対応されていると思いますが、私たちには様々な声、疑問や苦情の訴えがあります。もちろん一方的にお聞きをするわけですのですべてを鵜呑みにするわけではありませんが、具体的な事例を2件挙げさせていただきます。
 1件は、姫路循環器病センターでの話です。以前からたびたび小さな脳梗塞を起こし循環器病センターでの治療や検査をされている方の家族の話です。ある日意識を失い反応がなくなってしまったので、救急車を呼び循環器病センターへ夜8時頃搬送されました。以前にも同じようなことがあったようです。そのときは入院をし、検査を受け数日後に退院されたそうです。特段の症状もなかったようです。しかし、今回当直医の対応は、「どうもないから連れて帰ってくれ。ここまでこなくても近くに病院があるだろう。」との対応だったそうです。おそらく当直医は、コンビニ受診はやめてくれとさえ思われたのだと思います。医者の多忙さ故だとは思いますが、考えさせられる事案です。
 もう1件は、2009年6月に自転車で水路に転落、けいつい損傷で姫路の病院に入院治療。3ヶ月後の9月にリハビリテーション中央病院に通院。担当医師にリハビリをすれば歩行可能との診断を受け、1ヶ月後に入院。しかし、入院後適切な治療がなされず身体が衰えリハビリ不可能となり、8ヶ月後に退院、自宅生活 介護度5の状態で現在に至る。その間、適切な治療がなされないので退院を希望するが許可が出なかった。また、損害保険請求書のための証明書の依頼をしてもずいぶんと遅れた等々のことをおっしゃっておられました。このリハビリテーション病院は、病院局の所管でないことは十分理解しており、本件については、また別の機会に所管部局に確認しますが、この方のケースなども、まさしくインフォームド・コンセントにおいて、相互の理解が不十分であったことが、事務処理等々に至るまでの不満につながったのでないかと思います。
 県立病院事業として、このような患者や家族の疑問や苦情に対して、どのように対応されているのかお伺いいたします。

3 災害医療センター事業の実態について

 兵庫県災害医療センターは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害時における医療の提供及び平常時における救急医療の提供を行うために設置され、平成15年度より診療を開始しています。このセンターの管理については、神戸赤十字病院を設置する日本赤十字社兵庫県支部を指定管理者として県から運営を委託しているところですが、決算資料を見ましたところ、入院患者数は平成19年度の10,130人をピークに平成21年度は9,614人に減少、外来患者数も平成16年度の391人をピークに減少を続け、平成21年度は135人となっています。
 一方、総収益から総費用を差し引いたセンターの純利益に関しても、平成19年度では約1億12百万円であったものが、平成20年度に31百万円、平成21年度には約24百万円へと減少しております。
 もとより当センターは、病院機能と情報指令センター機能があり、高度救命救急センター及び基幹災害拠点病院として救急医療及び災害医療を担うという重要な役割を担っており、これまでも台風災害に対応した救護班の派遣及びヘリコプターでの被災患者受け入れ、新潟県中越沖地震にあっては医療救護活動と現地調査のために医療チームを現地に派遣、インドネシアで起きたジャワ島中部地震の際にもNGO災害人道支援協会に協力し、現地に医師等を派遣されるなど数々の貢献を行ってこられました。
 こうした活動は大いに評価しておりますが、一方で、健全な病院経営の視点も忘れてはなりません。病院経営という視点から、患者数や収益の減という実態に対する評価・分析をお聞かせ頂くとともに、改善に向けた取り組みについて伺いたいと思います。

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