池畑浩太朗議員が質問(決算審査・公安委員会)を実施

第306回9月定例会 決算特別委員会質問 (公安委員会)
2010年10月13日(水)

1 検視官の臨場率向上への取組みについて

 警察庁のまとめによると、昨年に、全国の警察が取り扱った死体の総数は前年より980体減の16万858体とのことで、そのうち死体の犯罪性の有無を検視官が現場で確認する、いわゆる「臨場」は3万2,676体で全体の20.3%を占め、前年度より6.2%上昇したとされています。
 検視官の臨場率が高まったことについて警察庁では、「全国的に刑事調査官を増員し、積極的に臨場するよう指導していることと、犯罪死を見逃さないという心構えが徹底してきたのではないか」と説明されていますが、その動向を継続させるための取り組みが本県でも必要ではないかと考えています。
 ご承知のように、警察の死体取り扱いをめぐっては平成19年、相撲部屋の力士がけいこ中に暴行を受け死亡した事件で、検視官が現場に出ず、死因を急性心不全と誤認して問題になったほか、埼玉県や鳥取県で昨年、相次いで発覚した連続不審死が発生するなどについて、犯罪死が初動捜査の段で見逃された可能性があるとされるケースが目立つ傾向にありました。
 犯罪死の見逃しを防ぐ対策として、警察庁は都道府県警の検視官を大幅増員させたとのことで、平成20年度に全国で160人だった検視官は21年度には196人に増え、22年度には220人に増員されたと聞きます。
 さらに、庁内に「死因究明の制度を検討する研究会」を設置するなど、積極的な対策を進めておられます。
 兵庫県警察でも、監察医の不足などにより、解剖率の早期向上は困難な現状と聞きますが、犯罪死の見逃しを防止するには、死因究明の専門化である検視官の体制を強化する必要があると考えます。
 そこで、現在の県警の現状と検視官の臨場率向上に向けた取組みについてお伺いします。

2 被害相談に対する適切な対応について

(1) 知能犯の被害相談への対応について

 情報化社会の進展により国民生活における利便性が飛躍的に向上する一方で、新たな情報通信技術を利用した知能犯罪が増加しています。
 知能犯と呼ばれる犯罪には、詐欺罪、横領罪、背任罪、文書偽造罪等の各種偽造罪などがありますが、特にご存じのように、身内を装い電話で高齢者や女性などから金品をだまし取る「オレオレ詐欺」、「架空請求詐欺」、「融資保証金詐欺」、「還付金等詐欺」という4つの詐欺を総称する「振り込め詐欺」が近年多発しており、本年でも8月末時点で4,342件発生し、被害総額も48億円にのぼっています。
 振り込め詐欺では、不正売買された預金口座や、利用者の特定できないプリペイド式携帯電話が悪用されることも多く、また偽造キャッシュカードについては、カード情報を簡単に読み取る装置が販売されているにもかかわらず銀行の防止対策がおくれ、しかも被害を受けた預金者への救済がされない場合もあります。
 これらの手口は、平穏な生活を送る善良な国民の心情に突然つけ込み、また、銀行に対する信頼を逆手にとった悪質かつ巧妙な犯罪であり、しかも、暴力団や来日外国人犯罪者による組織的な犯罪として、その資金源になっている場合もあるとも聞いておりますことから、本県でもより早急な対策が望まれると考えます。
 しかしながら、私が地元などで相談を受けている話の中では、相手の見えにくい振り込み詐欺」等ではなく、先にも取り上げました「融資保証詐欺」などと言われる部類の詐欺ですが、人物の特定はできているものの、実証するには証拠などが十分ではない詐欺行為においての、詐欺被害の相談を警察署の担当刑事さんに「事件にならない」と直ぐに言われてしまうとよく聞きますし、対応の仕方も担当する刑事さんによって異なるということも耳にします。
 このように、詐欺等の知能犯に関する被害相談を警察にした場合、被害届や告訴の受理基準が明確に規定されていない中で、警察官個々人の判断にまかせられてしまっているとすれば、ケースに応じて被害者が警察対応に不信感を持ちかねない状況に陥ってしまうことはやはり問題ではないでしょうか。
 そこで、兵庫県警におかれては、知能犯の被害相談に関して、受理すべき案件と受理することが困難な案件について、相談者が納得できる基準やルールを作成し、被害届・告訴の適正な受理・相談体制を実現することはできないかについて所見を伺います。

(2) 被害者への捜査状況等の通知制度について

 我が国では、犯罪被害者が事件の当事者でありながら、刑事司法から除外されているなど、長い間、犯罪被害者とその家族は社会的に放置されて孤立し、十分な支援制度もなく、極めて深刻な状況に置かれてきたという歴史があります。
 治安の悪化により、多くの国民が犯罪被害に対する不安を抱くような現状にあって、犯罪被害者が被害回復と支援を求めることを正当な権利と位置づけ、国と社会の責務として、総合的に被害者を支援する制度を確立することが急務になっていると思われます。
 国における犯罪被害者等のための施策は、昭和20年代後半から30年代にかけて、「自動車損害賠償保障法」の制定や、刑法等に証人保護のための規定が設けられたりしたことなどによって始まったといわれます。
 また、昭和49年の三菱重工ビル爆破事件を契機として、昭和55年には「犯罪被害者等給付金支給法」が公布され、故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた人の遺族や身体に後遺障害が残った人に対し、国が給付金を支給する「犯罪被害給付制度」が発足して被害者等への経済的支援が始まるなど、施策が本格的に展開されるようになりました。
 その後、警察庁は、平成8年2月に「被害者対策要綱」を策定し、全国の警察において、「被害者支援制度」や「性犯罪捜査員の運用」など、被害者等の心情に配慮した各種被害者対策を推進してきました。
 こういった被害者をケアしていこうという取り組みの中で、今回私は「被害者通知制度」について取り上げたいと思います。
 私事で恐縮ですが、私は以前泥棒に入られたことがあります。所轄署の刑事や鑑識の方が来て、詳しい事情聴取を受けるなどしましたが、その後の捜査状況について何の連絡もありません。
 「被害者通知制度」は、被害者や家族の希望により、被害者等への通知担当に指定された警察官が、犯人を逮捕したことや、犯人は誰なのか、犯人の起訴・不起訴などの処分はどうなっているのか、といったことを捜査に支障のない範囲で被害者等にお知らせする制度をいいます。
 警察は確かに一生懸命捜査しているにもかかわらず、捜査経過の連絡が無いことから、被害者は不安に陥り、ひいては警察に対する失望や不信感にも繋がってしまうのではないかと自身の体験上から感じました。
 警察が捜査に着手してから、1週間後・1ヶ月後・半年後・1年目と節目節目に捜査状況を連絡して頂くことができれば、被害者の安心につながることは勿論、警察に対する信頼にもつながるものと思われます。
 勿論、そのためには捜査員の業務負担上の負担の増加が避けられないので、そうした連絡体制の実現には、警察官個人の裁量にまかせるだけで無く、組織・連絡体制の強化や業務システムを検討しなければならないのでしょうが、県民の立場からは是非とも検討して頂きたい取り組みと考えています。
 そこで、県警察における侵入窃盗の被害者等に対する通知制度の実態と取り組み状況について所見を伺います。

3 取り調べの可視化について

 この件は警察常任委員会においても、請願審査の過程で度々取り上げられてきたテーマでありますが、政権交代後、警察庁や法務省において検討されている実情も踏まえ、再度県警としての認識をお伺いします。
 改めて申し上げるまでもなく、日本の刑事司法制度においては、捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断された状態で行われており、これが自白の強要等による冤罪を生む温床とも指摘されております。
 特に、わが国の刑事裁判では自白の任意性、調書の信頼性等が大きな争点となり、裁判長期化の原因ともなってきましたが、昨年5月から実施されている裁判員裁判では、裁判員となった多くの市民にとっても、取調べの全過程の録画が認められれば、取調べの様子を事後に検証することが容易になり、裁判員も判断しやすくなるともいわれます。
 警察庁は2008年9月から警視庁、大阪府警、神奈川県警、埼玉県警、千葉県警において、取調べの一部を録画・録音する試行を始めました。また、現在警察庁は、裁判員裁判対象事件であり、かつ自白の任意性の効果的、効率的な立証方策を検討するため、全国の警察において取調べの一部録画・録音を試行しているとのことです。
 現・国家公安委員長は、取り調べの可視化について、研究会の議論を踏まえて方向性を見いだしていきたいとの考えを示されました。
 その主な発言に「冤罪があってはならないということが可視化が求められる理由である。実現のために治安の水準が落ちるようなことがあってはならないので、研究会を立ち上げ、諸外国が持つ捜査手法の導入などについて検討している。まずはこれまでの議論の内容を把握した上で、可視化の方向性の可能性を見いだしていきたい」とのことです。
 こうした現在の動向も踏まえたうえで、兵庫県警における可視化に向けた所見をお伺いします。

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