岸口 実議員が一般質問を実施

平成25年9月 第319回定例県議会 一般質問要旨案

 

質 問 日:2013年10月2日(水)

質 問 者 : 岸口  実 議員

質問形式 : 一問一答方式

 

1 スポーツ・ツーリズムの振興を目指した戦略的な大会誘致について

(産業労働・教委)

 質問の第1は、「スポーツ・ツーリズムの振興を目指した戦略的な大会誘致について」です。

スポーツ・ツーリズムとは、スポーツを「みる」、スポーツを「する」ための移動だけではなく、周辺の観光要素やスポーツを支える人々との交流・地域連携も付加した旅行スタイルとして近年注目されています。

振り返れば2002年に開催されました日韓ワールドカップサッカーでは、神戸ウィングスタジアムで予選2試合、決勝リーグ1試合が開催され、あわせて当時日本中を沸かせていたベッカム率いるイングランドの代表チームが淡路でキャンプを行ったことにより、多くの方が兵庫・神戸を訪れ、兵庫・淡路の魅力が全国へ発信されましたことは、昨日の事のように思い出されます。

このように大会やキャンプの誘致は、施設整備を促進し、大会後もその施設を活用したスポーツイベントが継続的に開催されるなど、地域スポーツの振興に多大な効果をもたらします。

今後の10年を展望してみますと、先日開催が決定されました2020年の東京オリンピック・パラリンピックの他にも、2019年のラグビーワールドカップ、2014年の世界アマチュアゴルフチーム選手権の日本での開催が既に決定し、世界身体障害者野球大会が来年11月に但馬ドームで開催されることが先日決まりました。

また、関西広域連合を中心に招致を進めています2021年のワールドマスターズゲームズも含めますと世界的なスポーツイベントが国内、関西での開催が目白押しとなっています。

これらの大会を見据え、既に複数の県・市が名乗りをあげるなど、キャンプ誘致合戦が始まっています。

幸い本県には、ビーンズドーム、三木ホースランドパークなど国内屈指の施設をはじめ、但馬ドーム、県立武道館、全国一位、二位を争うゴルフ場など国際レベルの競技にも十分対応可能な施設に加え、多様な観光資源にも恵まれています。これらのスポーツ施設や宿舎、観光情報などをとりまとめ、スポーツ・ツーリズムの資源としてPRしていくことにより、キャンプの県内誘致など、本県への誘客促進を積極的に図っていく必要があります。

昨年度のわが会会派の前田議員の質問に対して、井戸知事からは、スポーツは非常に幅が広く、一つの部局だけで対応するというのは事実上不可能との趣旨のご答弁でありました。現在、国では、スポーツ・ツーリズムについて、観光庁で取組まれていますが、東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、「スポーツ庁」の設置に向けた動きが現実化しており、本県においても、全庁横断的に取組んでいく必要があります。

そこで、都道府県間競争に対応していくには、「スポーツ・ツーリズム先進県」を目指して、スポーツ大会やキャンプの誘致に戦略的かつ積極的に取り組んでいくことが必要であると考えていますが、本県の取り組みについてご所見をお伺いします。

 

 

2 ひきこもり対策の充実・強化について

(政策・健康福祉)

 質問の第2は「ひきこもり対策の充実・強化について」です。

ひきこもりの問題は、平成10年に精神科医・斎藤環先生によって出版されました「社会的ひきこもり-終わらない思春期」により一般に知られるようになりました。著書の中で、ひきこもりは、「20代後半までに問題化し6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの」と定義され、最初のきっかけは不登校が多く、15歳ころから問題が起こり始めるとされています。しかしながら、今では社会人として自立した後にひきこもりとなるケースも多く、そのきっかけ、年齢ともに多様化しています。

東京都立小児総合医療センターの近藤直司先生はひきこもりを、1つに統合失調症、気分障害、不安障害を主診断とし、薬物療法的アプローチが中心となる場合、2つに広汎性発達障害や精神遅滞を主診断とし、生活・就労支援が中心となる場合、3つにパーソナリティ障害や適応障害などを主診断とし、心理療法的アプローチが中心となる場合の3つに分類し、その対策として、本人・家族・社会的アプローチのいずれも必要で、家族相談、自宅訪問から社会参加までにわたる継続的・包括的な支援体制の構築が行政に求められる課題であると指摘されていました。

本県におきましては、平成9年より「ひょうごユースケアネット」を立ち上げ、青少年の自立を支援しており、平成22年には県内初となるひきこもりの現況調査を行うなど、官・民が一体となって相談、就労、居場所作りとさまざまな支援が続けられており、家族会はじめ関係者の方々からも、「以前は、18~20歳を超えると公的支援がなくなっていたが、ここ数年の間に支援体制は整備されつつある。」と評価されていました。

しかしながら、ひきこもりの問題は長期化・高年齢化してきており、親亡き後も見据えた恒常的な相談・支援機関の構築や家庭訪問を中心としたアウトリーチ型の支援体制の充実、ひきこもり問題の更なる啓蒙・啓発のほか関係機関や事業所などに対する情報発信など、取組むべき課題が多くあります。このような課題に取り組んでいくためには、支援の対象が青少年であるユースケアネットでは自ずと限界があり、幅広い世代を対象とした新たな支援の仕組みが必要であると考えます。

こうしたなか、国では、ひきこもりへの対策として、21年度から「ひきこもり対策推進事業」を創設し、都道府県や指定都市に対し、ひきこもりに特化した第1次相談窓口となる「ひきこもり地域支援センター」の整備を求め、23年度からは家庭訪問を中心としたアウトリーチ型の支援、さらに今年度からは、ひきこもりサポーター養成研修・派遣事業を行っています。

そこで、県下のひきこもりは3万人とも言われていますが、ひきこもり対策を今後充実・強化していくにあたり、まずは、ひきこもりが長期化・高年齢化している現状について把握する必要があると考えていますが、今後、県としてひきこもり対策について、どのように取り組んでいくのかご所見をお伺いします。

また、兵庫県でも、ひきこもりに特化した相談窓口の「ひきこもり地域支援センター」の設置が必要と考えますが、この点についても併せてご所見をお伺いします。

 

 

3 介護現場の職場環境の改善に向けた介護保険制度の周知・啓蒙について

(健康福祉)

質問の第3は、「介護現場の職場環境の改善に向けた介護保険制度の周知・啓蒙について」です。

本年8月、厚生労働省所管の公益財団法人である介護労働安定センターから「平成24年度介護労働実態調査結果について」と題して、平成24年度の介護労働者の就業実態が発表され、離職率の増加や恒常的な人手不足が続いている実態が浮き彫りとなりました。

調査結果からは、介護職員の離職者の74%が勤続年数3年未満で離職しており、中でも非正規職員の離職率が高いことや就業形態として施設系では65%が正規職員であるのに対して、訪問系では、65%が非正規職員であること、また介護職員全体の80%が女性であることが報告されています。

そもそもの就職の動機について、「働きがいのある仕事」が半数を超え、他にも3人に1人が「人や社会の役に立ちたい」と回答しており、離職の理由については、「職場の人間関係」や「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方」など、職場環境のなかでも人間関係をめぐる回答が最も多くなっています。

これらについて、先日介護現場で働く方々から、現場での苦労や現状をお聞きする機会がありました。ケアプランに記載されていないサービスを利用者及び家族から強いられることがあり、事業者としてその都度ケアプラン以外の事は出来ないことについて説明し理解を求めていること、また中には、止むにやまれずケアプラン以外のサービスを実施してしまう事業者もあることなど、利用者及び家族の勘違い、誤解からのトラブルが多いとの指摘がありました。あわせて介護者の悩みの一つに、利用者及び家族からのセクハラ・DVなどの問題があるとのことでした。

職場環境改善のための事業所への教育も必要であると同時に、利用者側のマナーについて、ケアマネジャーや事業者任せにするのではなく、行政の立場で、利用者及び家族はじめすべての県民に対し、介護保険で出来ることと出来ないことを周知して頂きたいとのことでした。介護サービスの利用にあたってのマナーやモラルを向上させ、介護現場で働く職員のモチベーションの低下を招かないようにしなければならりません。

そこで、以上の点を踏まえ、恵まれない労働条件のなか、志高く介護の世界へ飛び込んだ方が、働きがいを感じ、働き続けられるよう、介護職場の環境改善に向け、介護保険制度の周知・啓蒙について県としてどのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。

 

 

4 市町の事務処理能力の向上に向けた支援について

(企画県民)

質問の第4は、「市町の事務処理能力の向上に向けた支援について」です。

平成5年宮沢内閣下での衆参両院の「地方分権の推進に関する決議」から今年でちょうど20年が経過しました。この間15の内閣が変わり、11年の地方分権一括法の成立、三位一体の改革、23年の第1次・2次一括法の成立を経て、本年は、3月に地方分権改革推進本部の設置、4月には地方分権改革有識者会議の発足、6月には第3次一括法の成立と徐々に進みつつありますがより加速をさせなければなりません。

この間県でも、地方に対する規制緩和により、新婚世帯や子育て世帯への県営住宅の入居基準の緩和や県道の1車線整備など、分権の一定の成果が見られますが、事務・権限の移譲はまだまだ道半ばです。

改めて、これまでの県から市町への事務・権限の移譲等の状況を振り返ってみますと、平成6年5月に「県から市町への事務移譲に係る行動計画」を策定し、事務移譲を進めてきた結果、平成12年4月から施行した事務処理特例条例では578事務を移譲しました。その後、平成13年には「県から市町への権限移譲等推進計画」を策定するとともに、昨年には「県から市町への権限移譲検討会議」を設置し、本年4月現在では県独自の権限移譲として794事務を移譲しています。

しかしながら、移譲が進む一方で課題も見られました。第2次一括法による社会福祉法の改正に伴い、本年4月から社会福祉法人に係る監督権限を一般市・県内25市に移譲することとなりましたが、移譲後に事務を執行することができたのは4市のみで、残る21市については、職員体制の確保が困難なことや、事務処理件数が少なく非効率なことから、逆に県が事務委託を受ける形となっています。平成の大合併により、市町組織の効率化は進みましたが、事務・権限の移譲が進んだ場合の受け皿として十分に機能できていない悩ましい現状がうかがえます。

行政の最前線で行政サービスを展開する市町のあり方によって住民の社会生活の満足度は大きく左右されます。受け皿となる市町が役割をしっかり担えるように事務処理能力を向上させなければ真の分権は進まないのではないでしょうか。

そこで、市町への事務・権限の移譲に備え、大きくばらつきのある市町それぞれが、その役割を担えるよう、組織と機能の乖離について修正していく必要があると考えますが、市町の事務処理能力の向上について、県として今後どのように取組んでいくのかご所見をお伺いします。

 

 

5 投票率向上に向けた取り組みについて

(選挙管理委員会)

質問の第5は、「投票率向上に向けた取り組みについて」です。

投票率の向上については、これまでから実施している選挙管理委員会による積極的な啓発活動に加え、最近ではスーパーや駅などで期日前投票所の開設、街頭や大学において学生による投票啓発活動に取り組んでいますが、中々効果が上がりません。

7月の知事選においても、参議院議員選挙との同日選による効果を期待したものの投票率は53.47%に留まりました。参議院選挙の投票率は過去5回55%前後で推移しており、知事選は他の選挙と重ならなければ30%台の低率に留まっています。つまり、知事選単独では有権者の3人のうち2人が、また同日選挙では約半数が棄権していることになり、大変残念でなりません。

特に若年世代に多い棄権について、東北大学大学院の吉田浩教授は、選挙棄権により若年世代の投票率が1%低下すれば、若年世代1人当たり年間約13万5千円の損失になるという独創的な研究論文を発表し、若年世代に対して投票を呼びかけています。また海外では、棄権防止策として、罰金や選挙人名簿からの削除など様々な制度があります。

このように「投票できるのにしない人」が多くいる一方で、棄権をした人の中には投票したくてもできなかった方々がいます。7月の選挙では、公職選挙法の改正によるインターネット選挙の解禁が大きく報道されていましたが、そのほかにも、成年被後見人の選挙権の回復や自力で投票用紙に記入できない人向けの代理投票制度における補助者を投票に係る事務に従事する者に限定されるなどの規定が設けられるなどの改正もありました。

この点について、7月14日の神戸新聞には、先の法改正で選挙権が回復したものの、本人意思の確認など実際の投票には課題があること。身体、療育、精神の障害者手帳を持つ成人は約470万人で、投票が難しい人ばかりではないが、数だけ見れば有権者の約22人に1人に上ること。さらに、認知症の高齢者は2010年現在約280万人で、有権者の約37人に1人に上ることについて「投票弱者」と表現しながら報道されました。

数字のみで判断することは出来ませんが、本格的な超高齢化社会を迎え、「投票弱者」の増加は今後避けることのできない課題であり、少なくとも意思確認が可能な方への投票に対しては、何らかの手当てが必要であります。もちろん、選挙啓発のみで投票率が上がるわけでもなく、選挙を戦うわれわれ議員・候補者の努力が必要なのは言うまでもありません。

そこで、投票弱者への対策についてどのように取り組んでいくのか、効果が見えないと揶揄される啓発活動など、今後の投票率向上に向けた取り組みについてご所見をお伺いします。

 

 

6 豊かな海の創生に向けた関係機関と事業の連携について

(農政環境・県土整備)

質問の第6は、「豊かな海の創生に向けた関係機関と事業の連携について」です。

瀬戸内海では、これまでの排水規制等の取組みの結果水質改善は進んでいますが、その一方、全窒素の減少とともに漁業生産量も年々減少してきています。

私の地元明石市では、「豊かな海」を目指し、二見浄化センターでは、加古川下流浄化センターなどとともに、ノリの養殖期間に規制の範囲内で処理水中の窒素濃度を増加させ海域へ放流する栄養塩管理運転を試行しています。また、ため池の保全活動の一つであるかいぼりを農業者と漁業者が連携して実施し、栄養塩を含むため池の水を下流へ放水する取り組みを進めています。

最近では、河川改修で発生した川砂の利用について、県内ではいくつかの試験的な取り組みが見られます。昨年度からは、赤穂郡上郡町の千種川の河川改修事業により発生した土砂を増殖場の造成事業で活用しています。また今年度からは、加古川の浚渫土を明石市魚住町地先に投入し漁場造成を行っています。

先ほどの千種川の事例では、県土整備部が河川改修を行い、農政環境部が河川改修で発生した土砂を用いた漁場造成を行いました。また加古川の事例では国土交通省が浚渫土の運搬・投入などを分担し、県は地元漁協および海上保安部との調整を行ったと聞いています。このように国・県が連携し、役所や部局の垣根を超えた取り組みが進められています。しかしながら、明石市では市が河口部で発生した浚渫土砂を陸上処分するなどこれらの取組は始まったばかりで事業の広がりがまだまだ限定的です。

浚渫土砂の全てが、漁場の再生に利用できるとは思いませんが、豊かな海の創生に向けては、全ての川が海に通じていることに鑑みれば、より広範囲な河川で行っていければより高い効果が出るのではと考えています。

そこで、国・県・市・町の機関連携強化に加え、水産部局と河川部局などの部局を超えた連携を強化していく必要があると考えますが、関係機関の連携強化と事業の今後の展開について、当局のご所見をお伺いします。

 

 

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