岸口実議員が質問(予算審査・産業労働部)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(産業労働部)
2012年3月7日(水)

1 中小企業の国際展開に向けた支援について

(1) 中小企業の国際化に対する支援の充実・強化について

2010年版の中小企業白書の中で、中小企業の国際化と労働生産性及び従業者数について「国際化を開始する企業は、国際化前の労働生産性が国際化していない企業と比較して高く、国際化開始後に労働生産性がさらに向上する可能性があるといえる」ことや、「直接投資を開始した企業の国内の従業者数は、直接投資を開始していない企業と比較して、直接投資を開始して3年後には1割程度減少するが、6~7年後には直接投資を開始していない企業を上回る」ことが報告されています。
つまりは、輸出を開始した企業は、輸出による市場拡大への対応により、また投資を開始した企業は、現地でのネットワークを通じた取引先の開拓などによる事業拡大や現地法人管理のための国内従業員の増加などにより、それぞれ国内での企業活動が活発になるとのことであります。本県から見て、県内中小企業の国際化に対しては、しばしば空洞化が懸念されているところですが、実はその一方で県内の企業活動が活発になり、ひいては地域経済の活性化に資する側面もあることが改めて理解できました。
また国際化を行う中小企業の特徴として、「自社製品に自信があり、海外市場で販売しようと考えた」と答えた企業の割合が高く、国外需要に大きな期待を寄せる一方で、「良質で安価な労働力が確保できる」と回答する割合が年々減少しており、海外進出の決定要因が経費削減から市場拡大に移ってきていることを窺うことができます。
一方国際化への課題として、品質管理やコスト管理、マーケティング強化、現地販売チャンネルの開拓などがあげられ、直接投資を行っている企業では、人材確保、労務管理、投資資金調達・資金繰りと答えた企業が多く、中小企業では大企業に比べ輸出や直接投資から撤退するケースが多いことも示されています。
さらに翌2011年版の中小企業白書では、中小企業の強みを伸ばす取り組みとして、事前に市場動向の把握、つまり現地の嗜好を見極めることが重要で、嗜好にあわせ財・サービスを提供することがますます重要であると結論づけられており、これらのトレンドを理解した上での支援を行っていく必要があります。
そこで、来年度の予算では、ひょうご海外事業展開支援プロジェクトの推進として約4千8百万円を計上し、香港経済交流事務所の設置などに取り組むこととなりますが、先の課題を踏まえ輸出・直接投資を開始しようとする中小企業に対して、準備・検討段階における支援についてどのように取り組んでいくのか、ご所見をお伺いします。

(2) 「ひょうご国際ビジネスサポートデスク」の果たす役割について

県では、県内企業の国際化支援のため、中国、ベトナムに「ひょうご国際ビジネスサポートデスク」を設置していますが、いずれのデスクも兵庫県ゆかりの企業や兵庫県人会の協力の下に運営されています。いずれのデスクもコンサルタント業などの本業を持った方々にアドバイザーをお願いしており、経済の第一線で活躍をするまさに商売人の視点で、民間ならではの知恵と工夫によって中小企業の国際化支援ができるものと理解しています。
先日、会派で広東省を訪問した際、県人会の方々とも意見交換の機会を持ち、県人会の幹事で広州サポートデスクのチーフアドバイザーを努めておられる谷口さんからも様々なお話を伺うことができました。
谷口さんからは、中国での県事務所の設置について、「上海にはいろんな県の事務所があるが、日本からの顧客のアテンドをするのが仕事のようで、経費の無駄遣いだと思う。兵庫県が少なからず郷土愛を持つ県人会などを活用していく方法の方が良いのではないか。」との意見や「民間人では中国側の政府はなかなかを動かすことができず、兵庫県の方が依頼すると、広東省政府は容易く動くので、これは本当に助かる。広州総領事館への県からの派遣が数年前からなくなり、広東省政府との人間関係が弱くなってきているのは事実」とのご意見を頂きました。
また、私の友人であり中国へ直接投資を行っている企業経営者からは、「ビジネスサポートデスクとはいえ、民間のコンサルタントであり、相談内容には自社の戦略的な部分も少なからず含まれるので、話しにくく、県のように公平な立場での支援を期待したい」との声もあり、県が民間に委託するだけでなく、直接支援していく役割も一定担っているものであります。
そこで、県としての役割や期待のある中で、「ひょうご国際ビジネスサポートデスク」における支援体制の強化をどのように展開していくのか、ご所見をお伺いします。

(3) 本県中小企業のマーケティング活動の支援について

先ほどの県人会の谷口さんから提案がありましたので質問に加えたいと思います。「県事務所を創設するよりも例えば、各企業が製造した商品等を常時展示・販売できるスペースを借りて、それを県下の中小企業に貸し出すなどマーケティング活動の支援を行い、県下の中小企業の進出を促していくのはどうか。」との意見がありました。併せて、「県は、県下中小企業への告知と中国地元政府への働きかけを行い、地元政府の協力のもと民間で運営していく。更に中国産の商品に対して本県で同様に取り扱うなど、相互に行えば、日系企業が進出してくる。」とのことです。
そこで、中国における本県企業の商品のより直接的なマーケティング活動を支援することにより中小企業の海外進出・海外展開を促していくべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

2 経営革新計画について

(1) 計画承認後のフォローアップ調査について

「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」においては、中小企業に対して、「創業」、「経営革新」、「新連携」の取り組みを支援のほか、新たな事業活動の促進に資する事業環境基盤の充実を図るための様々な支援が規定されています。また県でも、この法律に基づき、経営革新計画の策定の相談、承認を行っているところであります。
法律が施行された平成11年以降本年1月末までに経営革新計画は全国で約47,600件承認されています。年度別に見ると、平成14年度(3341件)あたりから増加しはじめ、18年度の5260件をピークに、21年度は4395件、22年度は4437件と減少傾向にあります。県下での承認実績も概ね全国と同様の傾向を示しています。本年1月末までの総計は1976件にのぼり、年度別では平成14年度(137件)あたりから増加しはじめ、17年度が263件、18年はピークで300件となっています。その後の21年度は110件、22年度は131件と減少傾向が続き、今年度は1月末現在で85件に止まっています。本県ではピーク時からの承認件数の落ち込む割合が全国の状況に比べて高くなっています。
そこで、県は承認企業に対して経営革新計画の開始時から承認後1年以上2年未満に達する企業に、進捗状況のフォローアップ調査を行うとともに、必要な指導・助言を行うとされていますが、フォローアップ調査の状況についてお伺いするとともに、調査を通じて、中小企業の企業活動にどのような変化が生じてきていると認識しているのかご所見をお伺いします。

(2) 制度融資に繋がる計画の承認について

経営革新計画の承認を受けた中小企業には、低利融資制度、税制措置、信用保証の特例、ベンチャーファンドからの投資、販路開拓コーディネート事業など多くの支援メニューが用意されており、なかでも融資に関するものが大半を占めています。
県のホームページには「経営革新計画の承認は、計画の実現を対外的に保証するものではありません。やる気のある中小企業が公的支援を受けるための手続の第一段階となります。」「なお、計画の承認は支援措置を保証するものでなく、計画の承認を受けた後、それぞれの支援機関等における審査が必要となります。」とされており、計画の承認と制度融資をはじめとする支援は別ということになっています。私の聞くところでは、計画の承認を受けた中小企業にとっては、低利融資制度や信用保証の特例などの支援策が大変大きなインセンティブとなっているところです。
しかしながら、承認実績1976件に対する県制度融資(経営革新貸付)の実績は、959件となっており、承認を受けた企業の約半数に止まっており、承認を受けた計画を実行に移すのに制度融資を活用できなければ成果に影響を及ぼすものであります。
そこで、制度融資に耐え得る内容でなければ経営革新計画の承認をすべきでないと考えますが、制度融資に繋がる経営革新計画の承認について、今後の経営革新企業に対する支援方策とともにご所見をお伺いします。

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