迎山志保議員が質問(予算審査・健康福祉部)を実施

第308回2月定例会 予算特別委員会質問(健康福祉部)
2012年3月6日(火)

1 実親が育てられない子どもへの支援体制について

昨年の東日本大震災で親を亡くした子どもは2000人以上、そのうち両親ともに亡くした子どもは、判明しているだけで281人いるという。震災孤児を救いたいという声が全国からあがり、『社会的養護』ということがクローズアップされた。
ただ、現在における社会的養護は、震災で身寄りを失った子どもたちと同様、かつての戦災孤児など親がない子どもへの施策の範疇を超え、親はあっても経済的困難や精神不安、家庭環境の悪化から、虐待や障がいなどさまざまな理由で実親に育てられない子どもたちへの施策へと役割が転換している。
県では、平成24年度の重要施策の一つとして安心こども基金を活用した児童虐待やDV防止対策、また発達障がい児の支援策、うつ対策などを新たに打ち出されており、‘社会的養護を必要とする前に食い止める’ことへのアプローチとして評価できる。
しかしこのように一定の理解と対策が講じられるようになってもなお、全国的に社会的養護を必要とする子どもたちは増え続け、現在4万人にものぼる。少子化が進む中でのこの傾向は看過できない。
そこで、『社会的養護』の役割・機能が大きく変化している状況を踏まえ、「実親が育てられない子どもへの支援体制」に焦点を絞って、以下、5問質問する。

(1) 社会的養護をとりまく本県の現状について

まず、「社会的養護をとりまく本県の現状」についてである。
本県のこども家庭センターにおいて、昨年度及び今年度に受理された社会的養護を必要とする子どもに関する相談件数と措置件数、またこれらの近年の推移を伺う。

(2) 社会的養護の小規模化に向けた取り組みについて

2点目は、「社会的養護の小規模化に向けた取り組み」についてである。
社会的養護を必要とする子どもは、児童養護施設等の『施設養護』か、里親制度のもとでの『家庭的養護』かのどちらかでケアされる。欧米諸国では7割近くが里親家庭でケアされるのに対して、日本における里親等への委託率は、この40年間、ほぼ横ばいでその割合は1割にとどまっている。
大半の子どもたちが過ごす施設は規模の大きなものが多く、きめ細かいサポートが困難な傾向にあると思われる。個々の子どもの傷ついた心を癒し、人格形成において重要な時期を継続的な人間関係、愛着関係のもとで過ごす重要性からいえば、今後の社会的養護の方向性は、家庭的養護、つまり里親や小規模なファミリーホームが優先されるべきであり、施設養護についてもできるだけ家庭的な養育環境にシフトしていくことが求められている。政府も平成20年の児童福祉法改正において、里親委託優先の方向へシフトさせ、その割合を『平成26年度には16%』と目標を定めその後30%程度まで目指すということを方針として打ち出している。
現在、こうした里親等委託率は最も低い愛媛県の4.6%から最も高い新潟県の32.5%と自治体間の格差が大きく、兵庫県は6%と伸び悩んでいる。
そこでまず、本県において、家庭という環境を奪われた子どもに、親子関係を実感でき、自分が将来家族を持つ時のモデルとなりうる里親やファミリーホームへの委託率が伸び悩んでいる理由と、今後の取り組みの方針について伺う。

(3) 施設職員、里親の専門性向上をめざした取り組みについて

3点目は、「施設職員、里親の専門性向上をめざした取り組み」についてである。
現在、児童養護施設には虐待を受けた子どもが54%、何らかの障がいを持つ子どもが23%の割合でおり、情緒、精神面等に課題を抱えている子どもたちに適切な援助を行う専門的ケアが必要である。個別的な支援を必要とする子どもが増加していることで専門里親や、資格を有した職員によるケアが今後さらに求められる。また、専門性以前の問題として、昨年の児童養護施設、里親等の虐待事例が判明しただけで103人に上る。こうした事例は、日々誠心誠意子どもに向き合っている大半の施設職員や里親の立場をおとしめる意味でもあってはならないことである。
また、現在は14%の実施率にとどまる児童養護施設に対する第三者評価を義務づける指針を厚生労働省が打ち出しているが、施設職員や里親の専門性を含めた資質向上について本県の取り組み状況を伺う。

(4) 養護の質向上に向けた市町への支援、連携の強化について

4点目は、「養護の質向上に向けた市町への支援、連携の強化」についてである。
子どもにとって養護の場は選ぶことのできない措置施設であり、措置の場によって質に大きな差、ばらつきがあってはならない。小規模化、地域分散化が求められる中で、施設や地域によって運営の質をどのように是正していくのか。
県が所管するこども家庭センターは専門性を持った分野に特化し、機動的な対応は多くの部分が今後、市町に委ねられる方向にあると考える。マンパワー、財政面などで市町への支援、連携の強化が必要と考えるが、これについて県として具体的にどのように取り組んで行くのか伺う。

(5) 家族再生に向けての取り組みについて

最後は、「家族再生に向けての取り組み」についてである。
虐待等を理由に家族から分離した場合においても、親の課題を取り除いて家族再生に向けた支援を行うことは必要不可欠であると考える。
現在、国では子どもを救うための最終手段として、親権をめぐる法律を見直そうという議論が進められており、専門家会議の議論の中で、親権を失わせる制度を利用しやすくするという方向性で固まりつつある。この親権喪失は、単に親子の関係を引き裂く手段として使われるべきではなく、親権を失った親が真摯に反省し、わが子に寄り添う心を取り戻して親子関係を再構築するきっかけへとつなげることが最大の目的とされるべきである。
それだけに、今回の見直しにおいては、わが子を社会的養護が必要となる状況に追いやった親をどうフォローするかということも重要な視点になってくる。
県では虐待をした親への家族再生指導事業を継続して行われており、アセスメントについては来年度予算で強化もはかられている。
そこで、事例などをあげてその効果の検証状況についてご説明頂くとともに、今後の具体的な取り組みについて伺う。

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