盛 耕三 議員が一般質問を実施

平成25年12月 第320回定例県議会 一般質問要旨案

 

質 問 日:2013年12月9日(月)

質 問 者 : 盛 耕三 議員

質問形式 : 分割質問・分割答弁方式

 

社会保障・人口問題研究所の日本の将来人口推計(中位推計)によると、平成22年に1億2,800万人の日本人口は、50年後には8,674万人へと32,3%減少。経済を支える15~64歳の生産年齢人口に至っては46%も少なくなり、65歳以上の高齢者の比率は40%近くになります。OECD(経済協力開発機構)諸国で、平成11年以降、生産年齢人口と労働人口が減少してきたのは、日本だけです。内閣府が29~49歳男女を対象に平成22年に行った国際意識調査では、北欧・米仏では子どもを増やしたい者が80%近くかそれ以上だったのに対し、日本では50%以下でありました。
先進工業国で出生率を引き下げる大きな要因は、経済発展に伴う女性就業の一般化に、子育てと就業を両立させるに必要な制度・慣行・政策が付いていけないことにあります。昭和45年頃から日本でも女性の就業が普及し始め、女性就業率の上昇、女性の初婚年齢の上昇、出生率低下という悪循環に陥りましたが、両立支援体制が整い、明日は今日よりも良くなると期待できれば、子どもを持ちたい者も増えると考えられます。出生率が2.0近くになった大方の国では、家事と育児の両立を支援する家族政策にGDP(国内総生産)の3%前後を投じています。現在の日本に北欧・英仏並みの予算を望んでも非現実的ではありますが、少子化を食い止めたフランスの場合は、出産・幼児教育に重点的に財源を振り向けている事実があります。
保育と就業の両立支援が必要なのは、それが未来への投資であり、先進工業国では人口と就業人口の増減が長期的には国の活力を左右するからであります。労働に従事し、税金を納め、消費を促進していくことが出来る割合を増やすことが肝要であります。ただでさえ数が少なくなっていく子どもたちがそれぞれの潜在能力を存分に発揮し、社会に貢献する機会が与えられなければ、日本の活力はますます衰退して行くでしょう。それは兵庫県としても同様であります。
少子化問題への対応として現在いろいろと進められているのは、出生率を上げることへの直接・間接的な施策であります。しかし、すでに生まれてきている子どもたちが健やかに育ち、それぞれの能力に応じて社会に貢献できるようになってもらうための施策も重要ではないかと考えます。
そのような観点から以下の質問を分割にて行います。

1 子どもの貧困について

(1)県内の現況について

まず、第一の質問は、「子どもの貧困について」であります。
子どもの貧困は、その子にとっても不幸ですが、社会にとっても大損失であります。ところが、18歳未満の子どもの貧困率は、年々増えているという現状があります。厚生労働省の調査では、相対的貧困率が昭和60年の10.9%に対し、平成12年は14.5%、平成21年は15.7%に増えたとのことです。また、大人が2人以上いる世帯の場合は、12.7%に止まっているのに対し、一人親世帯では50.8%と2世帯に1世帯を占めています。これは、OECD(経済協力開発機構)加盟の34ヵ国中、日本の子どもの貧困率は11番目に高く、一人親家庭ではデーターのある32ヵ国中2番目に高い。生活がやっとの家庭では、子どもの教育に十分お金をかけることが出来ず、それが子どもの学習や進学に影響し、そのため社会に出ても有利な職に就くことが出来ずに貧困状態に陥るという貧困の連鎖になりがちです。
そのような中、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が本年6月19日に成立しました。第8条で「政府は、子どもの貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければならない。」とし、第9条で「都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子どもの貧困対策についての計画を定めるよう努めるものとする。」、第10条では「教育の支援」、第11条では「生活の支援」、第12条では「保護者に対する就労の支援」、第13条では「経済的支援」、第14条では「調査研究」、それぞれについて必要な施策を講ずるものとする、と定めています。しかし、貧困率を改善するために有効な数値目標が法律には盛り込まれず、対策の具体的な計画については、都道府県の努力規定に止まってしまいました。
そこでお尋ねします。1点目、県内の現況についてどのような認識を持っておられますか。また、県として子どもの貧困対策についての計画を策定する予定はあるのか、併せてお伺いします。

(2)子どもの学習支援について

次に2点目、兵庫県は現在、学習支援事業に取り組んでおられます。子どもが貧困であることによる多岐に亘る悪影響を断つためには、医療・住居・生活安定など多くの施策が必要でありますが、根本的に貧困から抜け出す力をそのような状況にある子どもが持つためには、教育の機会均等、特に義務教育が保障すべき「最低限の教育」を身に付けることができる環境を整えることが必要であります。その目標は、格差の解消ではなく、全ての子どもが社会に出て「自立して生きていく」ための基礎としての教育を身に付けることと考えます。
このため、学校では、すべての子どもたちに一定の学力が身につくよう、理解が不十分な子どもへの個別指導や補充学習などをはじめ様々な支援が行われています。
しかしながら、生活保護世帯の子どもは、一般世帯より進学率が低く、学校での取組だけではなく、学校外での学習支援も必要ではないかと考えます。
経済的な理由で塾等に通えない子どもたちへの支援として、生活保護世帯の子どもたちを対象に、教員OBや大学生などを活用した学校外での学習支援の取り組みが全国的に進められており、本県においても、こうした取組を支援し、拡げていく必要があります。
そこで、貧困家庭の子どもたちの学校外での学習活動への支援にかかる考え方や方向性について、当局のご所見をお伺いします。

(3)家庭への支援について

次に3点目、学習支援をしているからと言って「貧困対策をしている」とはならないのはご承知の通りです。特に親の就労と切り離しては、子どもの貧困は解決できません。子どもを入り口として家庭を支援していくことが求められるわけです。つまり、奨学金・学習支援・親の就労支援などに優先順位をつけて財源を充てる必要があります。
そこで、子どもへの貧困対策を行っていく上で、家庭への支援の必要性についてどのように認識しているのか、当局のご所見をお伺いします。

 

2 1~4歳児の死亡率低減について

(1)小児の重篤患者に対する適切な医療の提供について

第二の質問は、「1~4歳児の死亡率低減について」であります。
日本は、平成22年の1~4歳児の死亡率が、人口10万人当たり22.3人となっています。これは先進国19か国の中で、ワースト3位と高い値であります。因みに最下位はアメリカです。また、WHOのデーターでは、先進国の平均を大幅に上回る状態が、過去20年間続いています。新生児と乳児の死亡率の低さは、世界でそれぞれ1位と3位であるにもかかわらずです。
このちぐはぐさの背景には、従来の小児科医療が、小規模な病院に支えられてきたことにあると言われています。厚生労働省の調査では、亡くなった1~4歳の幼児の多くは、重症例を扱うことが少ない病院で亡くなっているとのことです。平成24年の1~4歳児の死因の1位は先天性によるものですが、2位は交通事故や誤って風呂で溺れたりするなどの「不慮の事故」です。
心肺停止に陥った子どもには、速やかな蘇生処置を講じる必要がありますが、小規模な病院の小児科では、重篤患者への対応が不可能である場合が多いとのことであります。重篤の子どもを救うためには、小児科医と小児専門の看護師、小児集中治療室(PICU)を備えて、24時間365日対応できる体制が必要です。一般的に救命救急センターは、成人中心に考えられており、勤務する医師も成人中心の先生が多く、子どもの診断治療は苦手で対応できないのが現実とも言われています。
そこで重要なのは、医師同士の連携とドクターヘリなどの搬送体制の整備であり、それにより地域格差を解消することも可能になります。平成23年度に千葉県は、小児重篤患者に対する適切な医療の提供を目的に、「小児救命集中治療ネットワーク」を、「ちば救急医療ネット」を充実する形で構築しました。
一次救急から三次救急へはそれなりに流れていますが、三次救急から一次救急へはなかなか流れていかない現状があります。成人でも起こっていることですが、入院患者が上位の病院に滞留し、医療機関が目詰まりする現象を起こしています。小児は成人よりもさらに酷く、医療体制や設備を少々強化してもたちまち目詰まりする性質を持っています。(超急性期→急性期→慢性期)というように患者がスムーズに流れていけば、上位の医療機関の機能が常に高いレベルで維持できますが、成人でも大きな課題で、小児の方が下流医療機関の体制は貧弱で、物理的に全く足りない状況です。つまり、上流医療機関の整備充実よりも下流医療機関の整備拡大が急務と考えられます。下流医療機関は、救急医療の足腰に例えることができ、下流医療機関の整備により、上流医療機関の機能回復を図るのが、遠回りのようですが、長期的には有効と考えられます。
そこで1点目、県の1次、2次小児救急医療体制に対する支援状況、また、現在、県内に整備されているPICUの活用状況やドクターヘリの運用状況などから、小児の重篤患者に対する適切な医療の提供について、今後どのように進めていこうとしているのか、ご所見をお伺いします。

(2)幼児における不慮の事故の防止について

2点目は、幼児における不慮の事故の防止についてであります。
死亡率低減のための対策には、不慮の事故や虐待、病気など背景の把握が必要であります。今年6月の産経新聞の記事によると、日本小児科学会と国立成育医療研究センターは、子どもの死に関する詳細な情報を収集し、不慮の事故など背景の把握を通じて再発防止につなげる「子どもの死亡登録・検証制度」導入に向け、試験調査を開始しました。 東京都、群馬県、京都市、北九州市の2都県2市の医療機関を対象に、過去1年間に経験した5歳未満の死亡事例を分析し、年内に結果を取りまとめるとしています。目的は、死亡診断書では掴めない死亡の背景を明らかにすることです。例えば、溺死の場合は海や川、浴槽などどのような場所で発生したか、直前に子どもや保護者が何をしていたかなどを調べる。また、あざなど虐待が疑われる形跡の有無を医師が確認したか、児童相談所への通報など適切な対応が取られていたか確認する。そして、救急搬送受け入れを断った病院の有無、受け入れ先決定までに要した時間も把握する。小児救急の整備状況が子どもの死にどう影響するかを検証し、将来的には、全国で検証制度を整備し、子どもの死亡率低減に役立てたいとのことであります。
一方で、家庭における事故防止とともに、転倒や転落、タバコの誤飲、熱湯による火傷などの事故が起きた場合に、救急隊が現場に着く前に実施される家族による応急措置も死亡の防止に重要です。先天性によるものを除くと不慮の事故が死因の一位なら、まずなすべきことは、親に対する家庭における事故防止の啓発と起きた場合の応急措置の周知です。
事故防止の啓発と起きた場合の応急措置の周知についての当局のご所見をお伺いします。

 

3 家庭的保育の推進について

第3の質問は、「家庭的保育の推進について」であります。
保育者の自宅等で主に3歳未満の子どもを預かる保育形態である「家庭的保育」は、地方自治体が独自に制度を作り実施してきました。国は平成12年度に国庫補助事業として家庭的保育事業を開始し、平成22年度から児童福祉法上の事業として位置づけ、現状は、国庫補助事業と県単独事業が並存しています。
平成21年度、家庭的保育全体に占める国庫補助事業分は、保育者全体の約2割、利用児童全体の約3割となっております。これまでわが国では保育所を整備することで保育需要に対応してきたため、家庭的保育を利用する児童は少ないのが現状です。例えば、認可保育所を見ると、平成22年度時点で全国に約2万3千ヵ所あり、利用児童数も約208万人と多いのに対し、家庭的保育は、国・地方単独を合わせても、平成21年度時点で、保育者が約1,200人、利用児童数は約2,700人(3歳未満児の約0.08%)に過ぎません。また、諸外国と比較しても、家庭的保育を利用している割合は、フランスで29%、スウエーデンで4%、ドイツで2%と、いずれも日本より高い割合を示しています。
「子ども・子育てビジョン」によると、国は、家庭的保育事業の利用児童数を、平成26年度に1万9千人まで増やす目標を掲げています。待機児童対策として期待されるのは、待機児童が多い3歳未満児を預かる保育サービスであることに加えて、居宅等で行うために保育所よりも設置・運営コストが低いからです。子ども1人当たりの月額運営費は、認可保育所の場合0歳児で約28万円、1・2歳児で約17万円に対し、家庭的保育の場合約12万円と言われています。
しかし、家庭的保育の存在意義は本来、待機児童対策ではなく、家庭的という保育所とは異なる保育を提供することにあります。乳幼児の中には、集団生活よりも家庭的な環境が適する子どもがいます。また、東京都「インターネット福祉保健改革モニターアンケート2008年」によると、保育を利用する場合、0~1歳までは家庭的保育が最も良いと考える者は5割強に上るということです。集団保育と異なるニーズの受け皿として、家庭的保育の普及が求められています。そのためには、次の3点がポイントとなります。
①子どもの預け先を探す段階から、保護者が保育所と家庭的保育を比較検討できるように、自治体の窓口で紹介を行うこと。
②子どもたちの交流範囲を拡げたり、事故等のリスク対策のために、家庭的保育と保育所との連携を一層推進することが必要。
③家庭的保育の可能性を拡げるために、新しいタイプの保育サービスを提供していくこと。
例えば、賃貸物件において3人の保育者が9人まで、保育者にそれぞれ補助者がいる場合には15人までの子どもを預かる家庭的保育の事例です。これは複数の保育者が相互に協力しながら保育にあたることが出来る形式です。
ところで、家庭的保育は「人で質を担保」するのに対し、保育所は「システムで質を担保」しています。現在保育士不足が深刻であるため、力量・経験がある家庭的保育のなり手を発掘することは容易ではありません。県では、家庭的保育事業を実施するために必要な改修、研修等費用の一部を補助しており、加えて、潜在保育士の就職や活用支援を行っています。
県の目標に対する現況を鑑みて、家庭的保育が持つメリットを思う時、より積極的に普及を進める施策が必要と考えますが、ご所見を伺います。

 

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