盛耕三議員が質問(予算審査・総括)

予算特別委員会質問(総括)

平成26年3月14日(金)

1 平成26年度県政の推進について

平成26年度一般会計の当初予算は、厳しい財政環境の中で、第3次行革プランを基本方針として、ゼロベースによる事務事業の見直しや選択と集中を進めることなどにより、前年度とほぼ同程度の予算規模を確保していますが、複雑・多様化する県民ニーズに的確に応えていくためには、減り張りのある施策を推進していく必要があります。

本定例会に上程された第3次行革プランでは、平成30年度に収支不足を解消するとしていますが、依然として、来年度予算において572億円の一般財源の収支不足が生じており、本県は財政の健全化が急務の課題となっています。

県行政は、「民間及び市町の補完である。」というのが基本的な考え方です。県は、施策の狭間に落ち込んでいる県民への支援を含めて、民間や市町による住民サービスが行き届ききれないところを補完し、より広域的に施策を展開しなければならない分野について重点的に推進していくべきであると考えます。

例えば、年齢、性別、障害などの違いに関係なく、誰もが地域社会の一員として、安心して暮らし、元気に活動できる社会を目指すユニバーサル社会づくりは、県内市町の取組において、その達成について共通する課題となっていることから、県が率先して取り組むべき施策だと考えます。

このたびの部局別審査においても、我が会派から、市町が主体的に取り組んでいる地域に根づいた事業に対しては、二重行政とならないよう県の役割を十分に認識すべきであると申し上げたところです。その一方で、より広域的な観点から県全体として調和のとれた取組を推進していくためには、市町が実施主体であっても県が積極的に関与していくべきであると提言いたしました。

知事の提案説明にもありましたが“安全で元気なふるさと兵庫の実現”を目指していくためには、まず何よりも地域が元気でなければなりません。これまでも、県下では、NPOや地元自治体などによる地域の元気づくりに向けた様々な取組みが行われていますが、県としては、これらの取組みを補完し下支えするとともに、防災・減災対策や社会保障関係など、より広域的な観点から県下で共通する課題の解決に向けた取り組みを進めていただきたいと考えます。

そこで、来年度県政を推進していくにあたり、以上の基本的な考え方がどのような形で反映されたのか、知事のご所見をお伺いします。

 

2 県有環境林の取得について

県では、第3次行革プランにおいて、先行取得用地など公共目的のために、これまでに取得した長期保有土地の処理に係る基本方針を定め、今後、この基本方針に基づいて、長期保有土地については、庁内での利活用のほか、地元市町への売却・譲渡や民間売却、さらには、直ちに利活用が見込めない山林は、県有環境林として管理するなどの処理を進めていくこととしています。

今年度末における県全体の利活用や処分の検討を要する長期保有土地は、面積約2,962ha、金額にして約2,094億円に上ると見込まれており、今後の財政運営に大きな影響を与えかねません。

このような状況のなかで、平成25年度2月補正予算において、過去に公共用地先行取得等事業債を発行して取得した用地のうち、今年度末に事業債の償還期限が到来するものについて、県有環境林として所管替するための経費に約413億円が計上されています。

乱開発の抑制等のために取得した先行取得用地について、その後の社会情勢の変化による影響があったとはいえ、先行取得に要した事業債の償還期限が到来する理由で県有環境林として取得し直すために先行取得用地から環境林へと管理区分を変えただけの処理であるため、県民にとって非常に分かりにくいのではないかと思います。

また、これらの用地は、これまで具体的な活用がなかったことから、今後、環境林として管理されたとしても、実質的には、そのままの状態で維持管理が継続されることに変わりはないのでしょうが、交付税措置のある地域活性化事業債を発行して取得するものの、償還終了までの金利負担は、今後考慮する必要があります。

県有環境林等特別会計は、県土や自然環境の保全等の公益的機能を有する森林を保全するために設けられていますが、これら先行用地がこの特別会計で管理されることになるのです。

県では、第3次行革プランに基づいて、平成30年度までに先行取得等事業債の償還期限が順次到来する用地について、このたびの処理と同じく、事業債を償還するために県有環境林として取得することとしています。

そこで、これら県有環境林として取得する用地について、その取得目的を含め、環境林として取得するに至った経緯や、今後、どのような利活用を検討しているのかなど、県民へ分かりやすく説明していく必要があると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

 

3 安全の兵庫づくりに向けた防災・減災対策について

来年1月17日には、阪神・淡路大震災から20年を迎えます。あの震災の記憶を風化させることなく、しっかりと後生に伝え、そして教訓として来るべき南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害に備えなければなりません。

来年度の当初予算では、「伝える」、「備える」、「活かす」を基本コンセプトとして、県民参加による多彩な事業が予定されており、県民の防災・減災意識の向上に向けた取り組みに大いに期待したいところです。

一方で、県民意識の醸成とともに、いかにして災害を未然に防いで、災害を減らすかという取り組みも欠かせません。特に、今後30年以内に70%程度、50年以内では90%と高い確率で将来発生が予測されている南海トラフ地震に対する対応が急がれます。

このため来年度では、津波防災インフラ整備5箇年計画に基づいて、南海トラフ巨大地震による津波に備えるための防潮堤や防潮水門の整備等を重点的に進めることとしており、今後10年間で完了することとしています。

本年2月に、県は、国の南海トラフ巨大地震による津波被害想定を踏まえた、独自の津波浸水想定図を発表しました。これによると、神戸・阪神地域を始め、播磨、淡路地域を含めた県全体の浸水面積は、国の想定の3.2倍の面積に広がることが分かりました。このことは新聞等でも大きく報道され、自分達の住んでいる地域がどうなるのか、多くの県民の方が関心を持ったと思っています。

県では、昨年2月に策定された津波防災インフラ5箇年計画において、甚大な浸水被害が想定される地区を重点整備地区として指定していますが、このたびの津波浸水想定図を踏まえ、重点整備地区を追加するなど、この計画を見直すこととしています。ぜひとも、県民の安全・安心を守るためにも、優先順位を上げて取り組んでいただきたいと思います。

そこで、この津波浸水想定図に基づいて、間もなく策定される被害想定では、被害額、被害量ともに甚大になることも考えられることから、住民の避難対策や避難ビルの耐震化対策など、更なる防災・減災対策全般の向上が必要であると考えますが、この点について、当局のご所見をお伺いします。

 

4 安心の兵庫づくりに向けた医療体制の構築について

(1)診療科目の医師の偏在について

知事は提案説明の中で、地域や診療科目毎の医師の偏在は依然として大きな課題であると述べておられます。

県では、一定の条件のもと試算すれば、平成38年頃には医師数は充足すると予測されていますが、それは全体数であります。故に、地域や診療科の偏在が改まるかというとそうではなく、人気がある都市部のような地域や総合病院あるいは診療科へ集まってしまうのは、自然の成り行きであると考えます。

医師確保について、大変な思いでご尽力いただいているのは承知をしておりますが、地域偏在や診療科偏在のいずれも、希望者が少ないというところに尽きると考えております。診療科目で言えば、産科、小児科、麻酔科等の医師不足は特に深刻ですが、これらの希望者が少ないと言うことは、魅力が感じられなくなったと言うことではないでしょうか。

つまり、診療科目の偏在については、医療訴訟に対する不安や、職務内容に応じた報酬が得られないことなど、また、地域の偏在については、都会志向や、地域になじみがない等々であると推測されますが、その他にも、人の命を守るという使命感などが医師を目指す昨今の若者達にとって希薄になってきているのではないかと推測します。

そこで、まず、診療科目の医師の偏在という課題について、要因や解決に向けた取組の考え方をお伺いします。

 

(2)医師を目指すためのキャリア形成支援について

医師という職業がいかにすばらしいかについて、次代を担う子供たちの心の中に、訴える教育を進めることも必要であると考えます。

「命の大切さ」であるとか、自分たちは「生きている」のではなく、「生かされている」のだから、その命を救うことや守るという行為は崇高なことである、というような倫理観を育むことが必要であります。しかし、それは道徳の時間などの座学で育成するだけでは足りないと考えます。

山本周五郎原作、黒澤明監督の映画「赤ひげ」や、山田貴敏原作、吉田紀子脚本のテレビドラマ「Dr.コトー診療所」などが、見た者の心を捉えたというのは、なぜでしょうか。

そこで、例えば、教育委員会では社会的自立に向けたキャリア形成の支援に取り組むとしていますが、子どもが将来に具体的な目標が持てるように、例えば、医師や看護師による“生の声”を聞く時間を設けることも、長い目で見た一つの方策だと考えますが、ご所見をお伺いします。

 

5 人が活きる産業の確立について

これからの兵庫県を支えていくためには、若者の力が必要です。しかしながら、兵庫県の人口は既に減少傾向にあり、2040年には469万人とピーク時から約90万人減少することが予測されています。特に、将来を担う20代~30代の若い世代の割合がピーク時の24.5%から19.2%と減少が著しく、反対に高齢者が急増する社会へ一変します。将来の兵庫県を支えていく上で、若者の存在が貴重であり重要になってくるのです。

かつて日本の高度経済成長期を支えた原動力となったのが、「団塊の世代」と呼ばれた若者たちでした。圧倒的な労働力を誇る日本のモノづくり産業は、瞬く間に海外市場を席捲し、家電産業や自動車産業などにおいて確固たる地位を築き上げました。もちろん、そこには豊富な労働力だけでなく、熾烈な競争社会の中で鍛え上げられた若者達の勤勉さ・探求心が生み出した高い技術力があってこそだと考えるのです。

団塊の世代と比べるとこれからの若者たちは、労働力人口ではかないませんが、それを補って余りある創造力やグローバルな視点を持った人材が一人でも多く兵庫県から育つことを願うものです。

そのためには、これからの日本の産業を支えるリーダーの育成が重要になってきます。これについては、民間や市町だけに任せるのではなく、県が率先してより広域的・多角的な視点から人材を育成しなくてはならないと思います。

この質問では「人が活きる産業の確立について」として、農林水産業も含めた産業全般に通じる課題を取り上げ、本県として“世界で戦える人材”の育成について、今後どのようなビジョンを持って推進しようとするのか、以下、2点お伺いします。

 

(1)新たな産業を創造する起業家の育成について

このたび策定された「ひょうご経済・雇用活性化プラン」では、平成26年度から30年度までの5年間を計画期間として、中長期的な視点から兵庫経済の持続的成長につながる、活力あるしなやかな産業構造を構築していくとしており、今後5年間で先端医療、次世代エネルギー・環境、高度技術関連をはじめ成長が見込まれる先端分野などに力を入れていくとしています。

このプランでは、課題認識として、少子高齢化による社会構造の変化や経済のグローバル化などにより、本県の産業構造も変革しなくてはいけないとしています。つまり、労働力人口が減少していく中で、今後とも兵庫県の産業が海外市場で優位性を保つためには、労働集約型産業から脱皮をして知識集約型産業にシフトしなくてはなりません。その意味では、本県は早くから、播磨科学公園都市のスプリング8をはじめとする科学技術分野や、ポートアイランドの医療産業の集積など全国をリードする産業が育っています。今後は、このプランに基づいて、更なる成長に向けて取り組みを進めていただきたいと思います。

その一方で、いささか気になる点としては、経済の活性化にとって起業はますます重要になってくるとしながらも、全国同様に本県においても起業家はなかなか思うように育っておらず、廃業率が開業率を上回る状況にあるということです。特に、29歳以下の若い世代の起業が減少しており、若者の能力を発揮する場の創出が課題となっています。

若者のチャレンジ精神をくみ取り、やりたいことが仕事にできる可能性を広げていくことも兵庫の成長につながっていくと考えます。

今回のプランでは、新たな産業を創造する高度人材の育成について、県、神戸大学、計算科学振興財団が取り組んでいる企業におけるシミュレーション技術者の養成や、兵庫県立大学の生命理学研究の分野での「博士課程教育リーディングプログラム」の採択、地域資源マネジメント研究科の開設などを紹介していますが、県としても世界で活躍する人材を育てるために、ここで学んだ学生が次なる人材育成の先導者として活躍できるよう卒業後の支援などの取り組みが必要であると考えます。

第二の“ビル・ゲイツ”や“スティーブ・ジョブズ”を兵庫県から輩出するという意気込みを持って、創造力と経営的センスに優れたリーダーの育成を推進していただきたいと思います。

そこで、県として、将来を担う人材、特に新たな産業を創造する起業家の育成について、どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

 

(2)世界と戦える農業の確立について

農林水産業についても、「ひょうご経済・雇用活性化プラン」に位置づけられているとおり、本県の経済を支える重要な産業として、世界と戦える成長産業に向けた支援を積極的に講じるべきではないかと考えています。

「ひょうご農林水産ビジョン2020」においても指摘されているように、本県の農林水産業は、担い手の減少と高齢化が進んでいます。特に、本県の農業構造を見ると、販売農家の農業就業人口の7割が65歳以上で平均年齢は67歳を超えており、また、販売農家1戸当たりの経営耕地面積も0.86haと、高齢者による小規模経営が主体となっています。

しかしながら、海外ではTPP交渉の動向、国内では減反制度が廃止される方向など、今や農業を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。今のままの構造体系では、日本の農業は立ち行かなくなるのは時間の問題です。魅力ある産業へと変貌を遂げるためには、まず何より意欲ある若い担い手を確保しなければなりません。機械化・大規模化により効率化が図られる部分はあるでしょうが、やはり、生産者の手作業が必要になるといった点においては、人が資本であり担い手の確保は欠かすことができません。

農業を守り育てていくには、単に担い手を確保するだけではなく、より発展的に捉えて世界のマーケットで勝つ成長産業を目指した優れた経営センスを持った人材の確保が必要です。

今、農業分野においては、農産品のブランド化により、日本の農産品がアジアをはじめ海外市場で高い評価を得るとともに、農産品をそのまま売るのではなく、加工するなどの付加価値を付けた6次産業化の取り組みも進み、成長産業へ向けた動きが加速しつつあります。これらの取り組みを実践して成功している担い手は、常に消費者の動向や世界に目を向け、生産者としてだけでなく経営者となって、ニーズをいち早くキャッチし、そのニーズに的確に対応しているからです。

確かに、ブランド化や6次産業化などは、農業を支える大きな流れであるといえますが、日本の農産品は既に十分に安全で、ブランド化や加工などしなくても世界に通用する高品質のものがたくさんあります。要するに、潜在的な需要を掘り起こし、新たな販路を開拓することのできる経営的なセンスを持った農業者が必要だと考えるのです。

せっかく良いものを作っても販路開拓ができない、ニーズ把握が十分にできていないようでは、国際化の進展により、生き残りをかけた競争がますます激しさを増すなか、作った農産品を地域の直売所などに卸しているだけでは、自立した農業者としてやっていくことに限界があります。

今こそ、世界に目を向けて世界をマーケットとして戦えるグローバルな視点を持った若い担い手を発掘し、経営者として育てていくことが重要であると考えます。

そこで、現在取り組んでおられる支援に加えて、世界と戦える経営力を持った人材の発掘と育成が重要であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

 

6 家庭及び地域の教育力の向上について

知事は提案説明の中で、次代を担う青少年の育成に当たっては、ふるさとを愛する心や豊かな人間性を培うことにより、自立できる人材を育てていくと述べておられます。

一方、「第2期ひょうご教育創造プラン」では、子どもたちの学びを支えるためには、「学校・家庭・地域は、それぞれが子供たちの成長に関わる当事者として、責任と役割を果たし、互いに連携・協力して、子供たちの教育に取り組む必要がある。」と述べています。

このように、子どもたちがふるさとを愛する心を培うためには、生まれ育った地域での体験や地域の人たちとの交流など、まさに地域から学ぶことが重要となってくるのです。また、家庭は全ての教育の出発点であり、豊かな人間性を育むうえで、最も重要な教育の場であると言えます。

しかしながら、「家庭の教育力」が落ちてきたと言われるようになってから久しく、既に、25年ほど前に、幼稚園の先生方から、「親の教育をして欲しい」という声が寄せられるようになってきました。その頃に幼稚園児だった子供たちが、今まさに親として子育てをする年代になっています。

この間、「親学」という言葉が使われるなど、親が親としてどうあれば良いのかが問われることもありましたが、家庭の教育力が改善するどころか、ますます学校への依存度が高くなっていることは、最近のいじめや不登校などの問題行動の増加などから見ても明らかです。

親を教育するという点について、議論は様々あるのでしょうが、例えば、ジャーナリストの細川珠生氏は、過去、新聞への寄稿の中で、子どもが小学校を卒業するまでは、月1回親に対する道徳教育を必須とする制度を国が作り、欠席などがあれば子どもの成績に加味すべきことを提案しています。正直、ここまでしなくてもと思うのですが、結局、親自身が変わらなければ、家庭での子どもの教育は成り立たないのではないかと考えるのです。

そこで、「第2期ひょうご教育創造プラン」では、『家庭は教育の原点である』として、親が親として成長するための学びの機会を提供するとありますが、家庭の教育力を向上するために、具体的にどのような取組が必要であると考えるのでしょうか。

また、近年、近所づきあいや地域住民とふれあう機会が減少して、地域との関わりが希薄化しており、地域の教育力が低下していることについても、非常に懸念しています。地域社会も人と人のつながり、つまり絆を築いていくことが重要であると考えますが、このプランでは、地域が家庭を支える体制をつくり、家庭教育を支援していくとあります。

このように、人と人のつながりの大切さを考えると、地域の教育力が向上するためには、知事が提案説明で述べられているように自分たちの地域への関心と思いを寄せる「ふるさと意識」を育まねばならないと考えます。

そこで、教育委員会において地域が家庭を支える体制づくりとは、具体にどのようなことを思い描いておられるのでしょうか、併せてご所見をお伺いします。

 

NEWS

一覧を見る