前田ともき議員が一般質問を実施

第312回定例会(2月)一般質問
2012年2月24日(金)

1 本県経済における観光産業の位置づけと推進方策について

質問の第1は、「本県経済における観光産業の位置づけと推進方策について」であります。
観光産業は地域経済の活性化や雇用の受け皿として大きく貢献し、旅行業、宿泊業、運輸業はもちろんのこと、飲食業、農林水産業など、裾野の広い産業であるにもかかわらず、近年に至るまで、行政において産業として位置付けし、強化を積極的に推進していくことはなかったのではないでしょうか。
2011年の観光白書によると、我が国における観光産業の生産波及効果はGDPの4.9%に相当する48兆円、雇用誘発効果は全就業者数の6.3%に相当する406万人、税収効果は国税と地方税を合わせた76.4兆円の実に5.2%に相当する4兆円となっていることから一大産業であることが窺えます。また、雇用誘発効果の波及先ランキングでは上位から飲食店業、小売業、農林水産業となっており、幅広い業種に影響が及んでいます。
世界観光機関は観光産業を世界最大の成長産業とし、外国旅行者数は全世界で2010年度の10.1億人から、2020年度15.6億人まで増加すると予想しています。そのような中で、世界トップクラスの経済大国であり、独自の文化や風土を有し、成長するアジア諸国に近接するわが国の観光客数ランキングは2010年で30位と低迷しており、日本の観光産業は今後更なる発展が期待できます。
また、知事の過去の答弁にもありますように、人口減少社会を迎える本県にあっては、定住人口重視から交流人口重視に視点を変え、地域の活性化を図っていかなければなりません。
そうした中で、国においては2006年の観光立国推進基本法の成立後、翌2007年には観光立国推進基本計画を閣議決定し、さらに2008年には国土交通省の外局として観光庁を発足させ、ビジットジャパンキャンペーンに取り組むなど、観光立国の実現をめざした取組が急速に進展しています。
兵庫県においても、2002年度にはひょうごツーリズムビジョンを、2010年度にはひょうごツーリズム戦略をそれぞれ策定し、ツーリズム振興に取り組んでいます。しかしながら、兵庫県のツーリズム人口は2000年の1億24百万人に対して、2009年では1億36百万人となっており、年平均成長率では約0.9%しか増加しておらず、これまでの延長線上の対策では有意な効果が出ないと言わざるを得ません。
すなわち、日本の中での兵庫、世界の中での兵庫を観光地として見た場合、これがあるから兵庫に行きたいという、強烈なキラーコンテンツとなる観光スポットに乏しいのが現状ではないでしょうか。
英語ガイドブックでは世界1位のロンリープラネット日本版を見てみると、日本の地域紹介622ページ中、大阪府の18ページに対し、兵庫県は半分の9ページしか掲載されておらず、掲載スポットは姫路を除いては北野、布引ハーブ公園、神戸市立博物館、南京町、ハーバーランドに白鶴記念酒造資料館といったところです。「兵庫県には知られていない魅力的な観光スポットがたくさんある」と、おっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、ガイドブックに載っていないということは、ほとんど知られていない、すなわち存在しないと同じ意味であるといっても過言ではありません。また世界の都市と比較した場合に、本当に競争力があるスポットがどれだけあるのか?それは、兵庫県のこれまでの観光課題の一つとされていた、宿泊者数の低さにも現れているのではないでしょうか。競合する世界の都市に打ち勝ち、地域経済の活性化・税収確保・雇用の充実強化を図っていくためには、観光産業の果たす役割が大きいと考えます。
そこで、本県における観光産業をどのように位置づけ、観光施策を推進するための予算の増額と組織体制の充実・強化に向け、県として今後どのように取り組んでいこうとされるのか、知事のご所見をお伺いします。

2 カジノを含む総合型観光施設の誘致に向けた検討について

兵庫県の観光産業を強化するため、本問を含め以下3問にわたって、知事・当局にお伺いいたします。
1問目はカジノを含む総合型観光施設、いわゆるIRの誘致の検討についてであります。
IRはカジノ、ビジネスミーティングやコンベンションなどのMICE、劇団四季やシルクドソレイユのようなショー、ナイトクラブ、数千室規模の高級ホテル、ショッピングセンターなどで構成された総合型観光施設であり、カジノの面積は全体の5%以下とされています。シンガポールでは、2010年に2つのIRを民間資金のみで開業し、投資額は8000億円から1兆円ともいわれており、直接雇用は2万人を超えています。
また、開業2年目でカジノ売上が世界2位となる見通しで、その効果もあり、2011年の外国人入国者数は1320万人と昨年対比13%増、観光収入は約1.3兆円と昨年対比17%増と大幅に増加しています。
日本において、カジノは現行法で違法となりますが、全世界では既に100数十カ国がカジノを設置しており、先進国でカジノを認めてないのは日本だけといってもおかしくない状況です。当然、カジノ導入に際しての悪影響についても、先行実施国では議論・対策が行われており、反社会勢力の介入や青少年への影響、治安悪化及びギャンブル依存症に関しても、適切な規制・対処が実施されています。
国内でも合法化に向けた議論は以前から行われており、2010年4月には100名以上の超党派の国会議員による議員連盟が設置され、今通常国会において議員提案でカジノ合法化法案の提出を検討しているとの報道もあります。
同議連案では、合法化後は地方公共団体から国に区画の計画申請を行い、国内では最大10か所、当初は2ないし3か所の同時実施で検討されています。
現在、各地方自治体でも誘致検討が進んでおり、沖縄県は検討委員会を県、経済界、観光団体、医師会などで設置しています。沖縄県に誘致した場合には、総事業費3200億円に対して、経済波及効果は8974億円、税収764億円、直接雇用1.3万人、年間460万人を集客効果が見込まれています。
他にも、東京都、大阪府、長崎県佐世保市など多くの自治体で誘致に向けた検討が進められています。
では、カジノ誘致に関して、民意はどうなのか?
新聞各紙や博報堂、静岡県や神奈川県が実施したカジノ合法化に関するアンケートでは条件付き賛成も含めると、賛成派が反対派を上回っています。
また、2011年1月に日経新聞に掲載されたアンケート結果によると、賛成が62%と過半数を占める一方で、絶対反対はわずか7%にとどまり、賛成の理由として、「経済活性化が期待できる」との意見が60%を占めています。
関西圏の中でも、特に観光キラーコンテンツが不足する兵庫において、お隣の大阪にカジノを奪われるとあっては、観光産業として、取り返しのつかないほどの後塵を拝すことになるのではないでしょうか。
井戸知事がカジノに対して反対派ということは十分に認識しています。
シンガポールでは、①観光産業の低迷、②都市再生の必要性、③複合型リゾートという新たな概念の登場という3点を理由として、これまでの方針を転換し、「ギャンブルという要素だけを理由に複合型リゾート案を却下することはできない」と判断し、同国のカジノ合法化が決定されました。これは、世界におけるシンガポールの競争力強化のため、国の繁栄を思い、私心を廃し、合法化へと舵を切った結果、今の成功に至っているのであります。
そこで、数十年先を見据えた、本県の観光産業の強化はもとより、雇用や税収の創出、地域経済の活性化のため、カジノを含むIR計画を兵庫県に誘致することについて、今一度知事のご所見をお伺いします。

3 コンテンツ・ツーリズムの促進について

質問の第3は、「コンテンツ・ツーリズムの推進について」であります。
従来の観光強化は既存の観光資源のブラッシュアップや、地域の暮らし・文化を見つめ直し、隠れた観光資源の発掘を中心に取り組まれてきました。しかし、近年では、TV・映画・ドラマ・アニメといったメディアコンテンツを活用して新しく観光資源を創出、または周知させる取り組みが進められています。
コンテンツ・ツーリズムとは、メディアコンテンツの舞台となった現場を旅行するものです。従来は観光資源ではなかった、場所・建物・風景がメディアコンテンツを通じて大きく紹介され、「コンテンツのシーンに登場した」などのストーリー性が付加されることで新しく観光資源となり、観光客の来訪促進につながるものです。
メディアコンテンツの誘致を強化するためには、ロケ地情報の提供や撮影許可申請の代行、エキストラの募集・手配などをワンストップで支援する非営利組織のフィルムコミッションの存在がとりわけ重要となってきます。
2003年7月に策定された「観光立国行動計画」においては、フィルムコミッションの活動支援、ロケ誘致について記載されており、また、世界各国からもコンテンツ・ツーリズムによる成功事例が報告されています。
たとえば、韓国では、ソウルから片道70分の春川市(チュンチョン市)が、ドラマ「冬のソナタ」のロケ地となり、観光客が激増した結果、10年間で国内観光客は3倍、外国人観光客は23倍の約40万人を達成しました。兵庫県の2009年の外国人観光客が65万人であることを考えると非常に大きなインパクトがあったといえます。
また、日本国内のロケ地では、映画「ラブ・レター」によって韓国・台湾からも、小樽への観光客が増加し、小樽市の観光客数は1998年の670万人から1999年には970万人と300万人増加するなど、新しい観光マーケティング・観光資源の創出方法として成果を挙げています。
こうしたコンテンツとツーリズムを融合させた観光振興のあり方を模索する中で、NHK大河ドラマ「平清盛」の放送を契機として本県で取り組まれている各種キャンペーンやKOBE鉄人PROJECTなどの取り組みも行われているところです。
私は、本県における観光ツーリズム戦略の推進にあっては、これまで進めてきた既存資源の有効活用に加えて、「フィルムコミッション」の強化を通じて、観光資源を新たに作り出したり、地域資源を積極発信していく手法も検討してはどうかと考えております。
特に、神戸は映画発祥の地であるとともに、公道爆破ロケや地下鉄構内の撮影など国内初の事例を多数有するなど、ロケ誘致では既に国内トップクラスの実績を誇っております。
しかし、天空の城「竹田城」や柳並木とライトアップが美しい城崎温泉をはじめ、多彩な観光資源を有する兵庫県としては、神戸市以外にもより広域に、フィルムコミッションを一層推進する必要があると思うわけです。そして、平清盛で終わりではなく、仕組みとして継続的にメディアコンテンツを呼び込むフィルムコミッションを強化していく必要性があると考えております。
そこで、県に対して、フィルムコミッションを一層推進する必要性を強く認識していただくとともに、より継続的かつ広範囲にわたってメディアコンテンツを呼び込むフィルムコミッションに対する予算・組織などの充実方策を進めていくべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

4 県立粒子線医療センターの強化とメディカルツーリズムの推進について

質問の第4は、「県立粒子線医療センターの強化とメディカルツーリズムの推進について」であります。
本県の粒子線医療センターは、陽子線と重粒子線の2種類の粒子線を使用する世界唯一の施設として、事業費280億円を投入して建設された医療施設であり、2003年度の一般診療の開始以来、これまで4000人以上の治療を行うなど、世界でも高度で専門的ながん治療に取り組んでいます。
また、開設当初には年間250人であった治療患者数も、2010年度には685人となり、開設以来初の単年度の黒字決算が達成されました。
しかし、私は「黒字化達成でよかったね。」ではなく、更なる改善への一歩を踏み出すことを要望致します。更なる改善とは、運営時間の延長や休日診療の開始による受入人数の拡大とメディカルツーリズムへの活用です。
特に建物や医療機器の減価償却費やメンテナンスなどのコストが大きい粒子線医療センターは、更なる収益改善のためには機器の利用率の向上、すなわち利用者数の増大が特に必要であります。
しかしながら、現在の利用状況が上限近いことを踏まえると、利用率の向上のためには診療時間を延長し、患者の医療ニーズに応えていくことが必要です。更に、県内及び国内の患者を優先して受け入れるのが前提ですが、空き時間には外国からのメディカルツーリズムを受け入れることが収益改善のためにも重要だと考えます。
さて、メディカルツーリズムは、世界約50ヵ国で受入が実施されており、2008年の医療ツーリスト数は年間600万人程度と推計され、市場規模は2012年に1千億ドルまで拡大すると見込まれています。その目的には「最先端の医療技術」や「より良い品質の医療」を求める方がおよそ7割を占めており、本県の粒子線医療センターは患者の希望に十分対応できるキラーコンテンツとして発揮できるものだと考えます。
では、診療時間の延長には何が必要か?それは、専門人材の採用と早期の育成、マーケティング活動及びJCIの認証取得であります。
特に放射線科の医師を中心とした専門人材の採用と育成は一番のボトルネックだと伺っています。日本は人口あたりの放射線科の医師数はOECD内26カ国中で最下位であり、平均のおよそ約1/3と極めて少ない状況であり、今後も国内外で粒子線施設の新設が予定されている状況の中、県立粒子線医療センターにおける、受入人数の拡大には専門人材の強化が何よりも必要であると認識しています。
また、受入人数枠の拡大とともに、集客のためのマーケティング活動が重要であり、従来の国内病院向けのマーケティング強化に加えて、医療機関評価を行うJCIの認証取得による海外マーケティングの強化が必要となります。JCIは、医療施設がグローバルスタンダードである証明となると同時に、欧米ではJCI認証が医療保険の支払い対象の適否を左右するなど重要度が増しており、今後メディカルツーリズムを進めていく上では必須といっても過言ではありません。
また、2011年3月に県が策定した「ひょうごツーリズム戦略」の中では、『新たなツーリズムとして、医療サービスと観光をセットにした医療ツーリズムが先進国の患者や発展途上国の富裕層患者等から注目されている』と記されています。
メディカルツーリズムの市場拡大や国内病院による海外病院との連携など、医療の国際化が世界的に進展するなか、本県が世界に誇る粒子線医療センターをコアとしたメディカルツーリズムの推進は、神戸国際フロンティアメディカルセンターと並んで、兵庫県として強みを強化すると共に、同センターの収支改善も期待されるところであります。
そこで、更なる収益の改善をめざし、人材の早期育成を含め粒子線医療センターの受入人数の拡大に向けてどのように取り組んでいくのか、粒子医療センターをはじめとしたメディカルツーリズムのへの取り組みと併せて当局のご所見をお伺いします。

5 NPOと行政の役割を踏まえたパートナーシップの構築について

質問の第5は、「NPOと行政の役割を踏まえたパートナーシップの構築について」についてであります。
改正NPO法の施行を目前にして、本県において「新しい公共」を一層充実させていくことの重要性を考慮したNPOと行政の関係のあり方については、先の12月県議会で我が会派の迎山議員が質問し、昨年知事に対しても、我が会派が当初予算申し入れの中で要望させていただいたところです。改めて、主として財政基盤の充実の観点から質問します。
17年前に発生した阪神・淡路大震災や昨年の東日本大震災では、市民一人ひとりが、「公共サービスの担い手」であり、地域住民の行動力と影響力の大きさが改めて認識されました。
しかしながら、NPOが抱える最大の課題はこれまでも様々なところで指摘されているように、資金調達の問題です。すなわち、地域活動を主体とするNPOは、その設立の背景から、収益を伴わない活動や事業も多く、活動資金が賄えないことから、財政基盤が脆弱であり、安定した雇用ができないなど、多くの財政的課題を抱えています。
2011年3月に公表された内閣府が実施した調査結果によれば、認証NPO法人のうち、年間収入1,000万円未満の団体が約5割を占めるとともに、年会費や寄附金が50万円未満の法人も約9割に及んでいると聞きます。
こうした課題を解決する一つの方策が、改正NPO法によって実現される、税制上の優遇措置が受けられる「認定NPO法人」の対象拡大や、県民・市民の寄付を促進させるような税制上の優遇措置の拡大であります。
しかしながら、昨年12月の定例会では、県当局は既存のボランタリー基金の助成を重視し、県税収入の減少も見込まれることを理由に、消極的な答弁に終始されました。
既に47都道府県のうち、36もの都道府県が3号指定を行っている中で、
17年前の震災において、市民一人ひとりの力、NPO可能性を強く感じたこの兵庫県において、この状況は極めて残念というしかありません。
地方のことは中央ではなく地方自治体が決める、地域のことは地域住民が決めるという地域主権の流れにおいては地域住民がより直接的に関与し、評価し、支援できる仕組みが必要ではないでしょうか。また、NPOにとっても従来のイベントの共催や受託事業、資金助成から一歩進んで、ひも付き助成金ではなく、自由に資金を活用できる仕組みが必要ではないでしょうか。
寄付金控除は、NPOの資金調達支援だけではなく、地域住民にとっても、自らを社会の担い手として再認識し、住民の自主的・自発的な寄付以外の活動・支援の輪も広げる重要な制度です。
そこで、その仕掛けとして、県民・市民の社会への関与を促進する視点と、NPOの持つ柔軟性や専門性を充分に活かし、新しい公共が実現できるよう、NPOと行政そして、地域住民とのよりよいパートナーシップの構築が3号、4号条例も含め不可欠と考えますが、当局のご所見をお伺いします。

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