岸口 実議員が質問(決算審査・産業労働部)を実施

決算特別委員会  [ 10月10日(金)産業労働部・岸口副委員長 ]

 

1 障害者雇用の状況について

(1)事業主に対する意識の啓発・醸成と就労継続支援について

平成25年4月より法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられた中、先日、障害者雇用が全国で40万人との報道があった。また兵庫労働局が平成25年11月に発表した平成25年「障害者雇用状況」の集計結果によると、民間企業に雇用されている障害者が前年に比べ5.9%・675人増加し12072人となり、実雇用率が0.05ポイント上昇し1.84%となったとのこと。

その一方でいくつかの課題も見られた。今年から報告対象となった50~56人未満規模企業でみると法定雇用率を下回る1.75%、法定雇用率達成企業の割合が35.4%と低調である。あわせて、中小規模の企業に比べて人材や職種が豊富な大規模企業のほうが障害者を受け入れやすい環境にあると思われるが、500~1000人未満規模での達成企業の割合は40.8%、1000人以上規模では同44.2%と規模が大きな企業でも半数を超えていない。

あわせて200人を超える規模企業(平成27年度からは100人超)で法定雇用率未達成の企業に対し、不足人数に応じ納付金を課す障害者雇用納付金制度により、平成25年度は、納付件数311件・納付額は約3億5800万円が納付されている。また今年度は、平成25年度に法定雇用率が引き上げられたこともあり納付件数・納付額はさらに増えることになると思われる。

この納付金は、障害者をより雇用しようとする企業を支える貴重な財源となっている一方で、悪い意味で納付金さえ払えば、障害者を雇用しなくてよいと、障害者の雇用を抑制する可能性は否定できない一面もある。雇用義務を誠実に守っている企業とそうでない企業との社会的責任や経済的負担のアンバランスも生じている。

加えて、障害者の就労に対する意識や心構えの欠如や職場環境になじめないなど、障害者雇用は出入りが激しい側面がある一方、障害者雇用を助成に頼る企業において助成期間の満了によって解雇するケースなどの指摘があるように、就労の促進支援は行われるが、実態として解雇の規制が十分でないところがある。

そこで、大規模企業の事業主の障害者雇用に対する意識がまだまだ低いと言わざるをえず、今一度事業主に対する意識の向上を図らなければならないと考えるが、大規模企業の障害者雇用への意識の啓発・醸成と障害者の就職の支援、離職しない仕組み、解雇されないような仕組みづくりにどのように取り組んでいるのか問う。

 

 

(2)精神障害者の雇用状況について

国内の障害者数は741万人でその内訳は、身体障害者が366.3万人、精神障害者は320.1万人となっている。一方の障害者雇用は、身体障害者が約76%を占め、精神障害者の約4%に比べその差は歴然である。

県下の精神障害者の雇用は、精神障害者保健福祉手帳の所持者を雇用率の算定に加えることができるようになった平成18年の50.5人から年々増え続け、平成25年は前年から32.7%増の428.5人となった。

平成23年2月議会において「農業分野等への障害者の雇用促進について」の質問をしたが、当時、農林漁業分野で働く障害者は8人にすぎなかったものが、県の「新たな就業モデル検証事業」などにより、25年度には18人に増えており、一定の政策効果が表れてきている。但し、精神障害者に限ってみると雇用者数は1人のままで状況は変わらず、まだまだ十分とは言えない。

このような中、国では精神障害者等雇用トータルサポーターの配置をはじめ新規雇用・職場復帰、雇用継続などそれぞれのニーズに応じた支援を行っていることや、平成30年4月からは障害者手帳を持つ精神障害者を法定雇用率の算定基礎に追加するなど支援を強化した。

しかし、精神障害者の雇用は容易ではないという現実もある。一見、障害がわかりづらいことをはじめ、身体障害者に比べ事業主、障害者ともに業務適性が判別しづらく、適性に合わない業務では、就労意欲を高く保つことができないこと、義務化により雇用者数を多くすることはミスマッチ拡大に直結し、採用拡大の裏で多くの早期退職者も出ることが予想されるなど課題は多い。

また、25年6月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した報告によると、過去3 年間の病気休職制度利用者の退職率の平均値は37.8%で、疾病別退職率を見ると、「メンタルヘルス」(42.3%)は「がん」(42.7%)に次いで高いことが報告されていることや、私も就職後、精神疾患を発症し職場復帰したものの職場改善を拒否され退職するケースがあったと聞くなど、離職者対策も必要である。

そこで、平成30年の算定基礎追加を見据え、精神障害者雇用の成果・課題を評価検証し、事業者へ情報提供を図り今から備えていく必要があると考えるが所見を問う。

 

2 中小企業の子育て・介護者への支援制度の運用状況について

包括外部監査人からの指摘があった2件について質問。

1つ目は育児・介護等離職者再雇用助成金。育児や介護等の理由によって離職した従業員が、再び元の職場で継続的にキャリアアップできる環境整備を目的とした制度で、当初年間40件の利用を目論んでいたが、平成22年度から24年度の3年間で6件、24年度から要件緩和したものの2件に止まっている。25年度は6件、今年度9月末現在で4件と若干伸びているものの目標には程遠い。

2つ目は中小企業育児休業・介護休業代替要員確保支援助成金。中小企業が育児・介護休業取得者の代替要員を確保した場合に、その要員の賃金の一部を助成し取得促進と、休業者が職場復帰しやすい環境整備のための制度で、平成22年度から23年度は支給計画年間100件、当初予算1億円、24年から25年は同200件、同2億円とした。年とともに利用件数が伸びているもの非常に低調な状況にある。

これらの助成金の目的はいずれも時代にマッチした政策優先度の高い事業であるが、その効果が充分に表れているとは言えず大変残念な結果である。

十分活用されない原因がどこにあるのか、より有効な制度とするため何が足りないのか、来年度以降も継続すると思うが抜本的な見直しが必要と考えるがどのように認識しているのか問う。

 

 

3 緊急雇用対策事業の運用状況について

離職を余儀なくされた非正規労働者・中高年齢者等の失業者に対し、次の雇用まで短期の雇用・就業機会を創出・提供することを目的とした事業。県に設置する基金を財源として、市町に補助金を交付しており、平成22年度約39億円、23年度約47億円、24年度、25年度とも約25億円の予算が組まれていた。

包括外部監査人からは大きく2点の意見があり、1つに人件費の割合が2分の1を下回る事業について割合を高める取り組みとすること、また2つに一時的な雇用の創出のみならず、その後の就業機会の確保につながるような事業とすることである。

平成24年度に実施した市町事業において、361事業中、就職率が81%を超えた事業は133事業あり568人を雇用し、事業終了後555名が次の就業に結びついた一方、就職率30%以下の事業は132事業あり731人雇用したが、684人は事業終了後就職をしていない。うち就職率0%の事業は110、298人いた。無計画とは言わないが計画のずさんさは残る。今後の改善点等を含め活用状況を問う。

 

 

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