山本 千恵議員が一般質問を実施

質問者 山本 千恵 議員(民主党・県民連合)

質問日:2月23日(月)

【分割質問・分割答弁方式】

(1(1)~(2):一括、2~3:一括、4)

 

今任期の最後の一般質問は、人口減少がますます進む将来の兵庫県の姿を念頭に置いて行います。

21世紀兵庫長期ビジョンでも一つの目標年度として示されている2040年の姿について、冒頭で再確認しておきたいと思います。

今から25年後の2040年、私は60代後半を迎えています。兵庫県の人口は、約467万人と予測され、1970年頃と人数的には同水準です。しかし、65歳以上の人口割合は、1970年に6.9%だったのが、2040年には36.4%。人口総数が同水準とはいえ、その内訳は全く異なります。

一方、1968年(昭和43年)度の県の予算は、県税収入が609億円、一般行政経費は700億円、一般行政経費の伸び率は16.1%、公債費比率は3.5%。明石海峡大橋の建設が確定的になり、開発や水道事業をはじめとするハード整備が重要施策でした。ちなみに、昨年度決算の県財政に公債費が占める割合は14.5%でした。

マンパワーも充実し、生産力や財政的な弾力性もあった時代から、生産年齢人口に効率性と高負担が求められる時代になります。

社会が変化に対応できる、しなやかで強い地域づくりに向けて、以下4項目5問の質問を行います。

 

1 成熟した多文化共生社会の構築に向けた取り組みについて

(1)多文化共生推進プランの策定について

この質問を取り上げるのは、最初の一般質問に次いで2回目となります。地域の国際化や多文化共生について現在根拠となっているのは、平成6年に策定された「地域国際化推進基本指針」と、平成16年に取りまとめられた「兵庫国際化新戦略懇話会報告」です。最初の質問時でも、後者の報告を元に、外国人県民共生会議など、多文化共生に関する施策を進めているとの答弁がありました。

国の動きは、昭和62年の旧自治省「地方公共団体における国際交流のあり方に関する指針」、昭和63年「国際交流のまちづくりのための指針」、平成元年の「地域国際交流推進大綱の策定に関する指針」、平成18年の総務省の「地域における多文化共生推進プラン」と変化し、生活者としての外国人が増えてきた社会変化に鑑み、第三の柱として「地域における多文化共生」を位置づけることを求めています。

兵庫県では、外国人県民共生会議において、外国人県民の状況や課題の吸い上げを行い、施策に反映させながら取り組みを進めており、今困っていることについては、一定の施策展開を進めようとされていると思います。

一方で、全体の進め方として、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくような、地域における多文化共生の推進を、計画的かつ総合的に実施するためには、10年前の報告を根拠にするにとどまらず、プラン策定を具体的に検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

(2)日本語指導が必要な外国人児童生徒の高校進学について

平成26年度の「日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査」によると、兵庫県内で日本語指導が必要な外国人児童生徒は802名で、母語別では、中国語、ベトナム語、フィリピノ語の順です。

平成26年3月卒業の日本語指導が必要な外国人児童生徒の進路状況を見ると、卒業生30名のうち、公立全日制5名、定時制12名、私立全日制8名、就職1名、無職・その他4名となっています。

中学校卒業生の高校等への進学率が98.3%、日本語指導が必要な外国人児童生徒の進学率が83.3%であることからわかるように、学習機会の公平性が十分でないといえるでしょう。

平成23年3月に文科省が出している「外国人児童生徒受入れの手引き」では、新たな課題として、母語・母文化の習得援助に次いで、義務教育終了後に、将来に希望を持てる適切な進路指導の必要性が示されています。なお、同手引きには、当時の県教育委員会事務局人権教育課長が作成協力者として加わり、県の「子ども多文化共生センター」の取り組みが、好事例として紹介されています。

さて、この問題については、先の決算特別委員会において、わが会派の藤井訓博議員が質問を行い、外国人入試特別枠に関する研究を進めている旨の答弁がなされたことから、進学後のフォロー体制の充実もあわせて求めたところです。

外国人入試特別枠の設置に関しては、入試制度の変更を伴うことでもあり、引き続き十分に調査を進めていただきたいと思いますが、まずは、当該児童生徒について、十分に状況を把握していくことが非常に重要だと考えます。

大阪市の場合、市立学校にセンター校を設置し担当教員が付くことで、生徒の状況を把握し、学習理解のレベル測定を行っています。このことにより、必要な具体的な支援が明確になり、的確な進路指導を行うことができます。兵庫県においても大阪市と同様の取り組みを市町教育委員会に促すとともに、外国人児童生徒が、なぜ進学できなかったのか、どの様な理解レベルだったのか等の情報を県で集約する必要があるのではないでしょうか。

文科省が平成26年1月に発行した「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント」(DLA)を活用できる人材を育成し、当該生徒の日本語能力の測定・評価を徹底することにより、中学を卒業するまでに必要な支援、検討すべき入試制度の形や入学後のフォロー体制の検討ができるのではないでしょうか。

子どもを取り巻く課題を解決するに当たり、まずは、状況をしっかり把握することが重要だと考えますが、現状と今後の方針について、ご所見をお伺いします。

 

2 女性の就労環境の整備支援について

国において「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(仮称)」が検討されたことに見られるように、持続可能な地域づくりや地域経済の維持、少子高齢化、人口減少の突破口の一つとして、女性の活躍推進に大きな期待がかけられています。

兵庫県では、就業促進やワーク・ライフ・バランス推進などは産業労働部が、子育て支援や男女共同参画推進などは健康福祉部が所管しています。目指すべき具体的な将来像が各部局間でずれていたり、各部局間文化の違いを乗り越えなければ、高い事業効果は望むことはできませんので、ここは力を合わせ、組織横断的に頑張ってもらいたいと思います。

さて、①働く女性の割合が高い国ほど、出生率が高くなる傾向がある。②夫が育児を手伝わない国では、出生率が低くなる傾向がある。③子どもが多い国は、アメリカのような自由主義風の「フレキシブル社会」か、スカンジナビア諸国に見られるような福祉国家風の「優しい社会の」いずれかで、中途半端な社会では出生率が低い。

これは、2008年9月30日の東洋経済オンラインで佐々木紀彦氏が、「ニューヨークタイムズマガジン」の「No Babies?」という記事の要点を紹介したものです。

女性の社会参画や就業率が高いことと出生率に相関関係があるということは、労働力人口の低下を食い止めるという意味合いだけではなく、地域維持の要ということでもあります。

県の取り組みを、対象別に捉えてみると、出会いの創出・子育て支援・再就職支援などの当事者支援と、育休・介護休暇取得代替要員や再雇用助成金や協定制度や表彰などの間接支援(企業支援)とみることができます。

女性の年代別の就業状況を確認してみると、結婚や第1子出産時に退職して、再就業の時にはパート・アルバイトになる人が多く、逆に第1子出産時に仕事を辞めなかった人は、第2子、第3子出産時にも仕事を辞めない人が多いことが分かります。

裏を返せば、結婚や第1子出産時に、就業継続を選択できる環境や条件を整える、そのための就業環境を変えていくことに挑戦する必要があるということではないでしょうか。県が来年度から取り組む在宅勤務への挑戦のように、子育てや介護をしている従業員の働きやすい仕組みの開発などに取り組む場合の支援があってもいいのではないかと考えます。

厚生労働省が「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」を平成26年度に新設しました。現時点まで兵庫県下の利用実績はありません。これは、新制度であることに加え、道案内人がいないことが原因だと思います。

ひょうご仕事と生活センターで展開されている、育児・介護休業の代替要員確保や再雇用の助成制度に加えて、企業の仕組みづくりや新しい挑戦を支援するような、(出生率の向上や女性就業率の向上から見れば)間接支援の充実が必要だと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

3 地域包括ケアシステムの構築に向けた定期巡回・随時対応サービスの充実について

団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を目前に、2017年より本格的に構築に向けた取り組みをスタートさせなければならないのが地域包括ケアシステムです。そもそも2000年にスタートした介護保険制度は、介護福祉の社会化を目指した制度でしたが、急速な高齢化に制度疲弊を起こしていると言わざるを得ません。この現状を鑑み、「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように」という表現で、今一度、介護を地域や家庭に戻していくのが、この地域包括ケアシステムなのです。

兵庫県の高齢化率は26%(H26.9末)、人数にして約144万人(H26.9末)です。特別養護老人ホームは、中重度要介護者に重点化する、基本的に要介護3以上の方しか利用できない方向性が打ち出されていますが、この要介護3以上にあたる方は、約8万8000人です。

ところが、施設の整備状況を見てみると、計画通り(前倒しによりそれ以上の)整備が進んでいるとはいえ、特別養護老人ホームのベッド数は、約2万3000床(地域密着型の特養を含む)。有料老人ホームなどもありますが、特別養護老人ホームを利用している人のうち約8割が低所得者であることを鑑みれば、特別養護老人ホームのベッド数の不足具合が感じ取れると思います。

入所を希望しても入所できないとなると、比較的重度であっても在宅介護にならざるをえません。地域包括ケアシステムでは、24時間定期巡回・随時対応サービスがカギになってきますが、兵庫県の利用実績は、平成25年度は、前年度に比べて飛躍的に増加したとはいえ、計画値4,168人に対して利用は1,115人です。また、サービスを提供する事業所数は、平成27年1月末で、神戸市の9事業所のほか、尼崎市、たつの市など、全部で17事業所にとどまっています。

地域包括ケアシステムのニーズを見据えたスタートを切るためには、定期巡回・随時対応サービスの普及・充実が欠かせませんが、潜在的なニーズに対し、事業所数に顕著な増加が見られない背景として、一般的には看護と介護の連携不足や訪問看護師不足などの問題が指摘されています。

そこで、現在の利用状況を踏まえ、県としての現状の課題に対する認識、今後の取り組みの方向性についてお伺いいたします。

 

 

4 大規模災害時における被災者支援拠点について

阪神・淡路大震災から20年の節目の年を迎え、来年度予算でも防災・減災関連の事業拡充に見られるように「伝える」「備える」「活かす」取り組みが強力に進められています。

阪神・淡路大震災では、県内6,402名の死者のうち、919名(14.35%)の震災関連死がありました。南海トラフ巨大地震・津波の被害想定では、建物や人、生活支障など、各被害想定がなされていますが、震災関連死については具体的な被害数値が記されていません。表現が難しいデータであることは理解していますが、東日本大震災においても、震災関連死が全体の16.27%であったことを考えると、一定程度、震災関連死が発生してしまうことが予想され、過去の被災経験から、高齢者や障害者などの要支援者にその危険性が高い傾向があります。

一度は助かった命を落とさないためには、発災後の被災者支援のあり方についても、備えを進めていく必要があります。

兵庫県は、災害時要援護者支援指針や避難所管理運営指針などを策定し、その具体的な実施については、自助・共助を基本としつつ、市町が中心となって準備を進めています。しかしながら、南海トラフ巨大地震など、超大規模災害の場合、災害時に地域のリーダーになってくれそうな人も、同時に被災者であり、市外・県外からリーダーを派遣してもらう必要性があると思われます。例えば新温泉町から伊丹市に派遣をしてもらった場合でも、すぐに即戦力として活動してもらえることが望ましいと思われます。

阪神・淡路大震災、中越沖地震、東日本大震災の支援活動に入ったメンバーで構成される「次の災害に備える企画実行委員会」では、多様な被災者ニーズに応え、備えるために、「被災者支援拠点」という考え方を提唱しています。これは、避難所や被災者への調査・評価(アセスメント)を徹底し、標準化することがベースになります。例えば避難者台帳の様式を充実させ、アレルギー配慮などの特別食の必要数やトイレ介助等移動支援が必要な人数などが一目で分かるようにすることで、避難所の運営にあたる人員の所属に関わらず、円滑で効率的な避難所運営ができるようにすること、また標準化することにより避難所に来たくても来ることができない地域の要支援者への働きかけ(アウトリーチ)も可能にするという考え方です。

現在の県の取り組みを見ていますと、「防災」「減災」への取り組みは積極的に自ら進めているけれども、「発災後」、特に発生直後から中期の取り組みとなると、どうしても市町や各業界での専門的な対応にゆだねる部分が多くなっています。しかし、現在の市町においては、避難行動要支援者名簿の作成も未だ十分ではない状況にあります。被災者支援拠点という視点から見た場合、つまり命を落とさないために必要な情報の把握と整理による標準化については、県がイニシアティブを取る必要があると思いますが、ご所見をお伺いいたします。

 

 

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