上野 英一議員が一般質問を実施

第326回 2015年2月定例会 一般質問

 

質 問 日:2015年 2月24日(火)

質 問 者:上野 英一 議員

質問方式:分割方式

 

 

私は、今、日本は人口減少社会という国難にあると考えています。地方経済を元気づける当面の対応も必要ですが、一時的な景気対策でなく、真に地方を含めて日本を一から作り直す国家ビジョンが必要ではないかと考えます。評論家の中には、地方創生には「平成の合併」を元に戻すしかないと言われる方もいますが、その是非はともかくとして、国家100年の計を打ち立てなければなりません。人口減少対策に特効薬はありません。今、「3だけ」人間(「今だけ」「自分だけ」「金だけ」)と言われていますが、自分の出世と金儲けだけを考えるのではなく、自分の生まれた町や日本の将来を根本において人生を考える、そのような教育しかないのではないでしょうか。いつの世も国難を切り拓いてきたのは「教育の力」だと思います。「国家100年の計は教育にあり」です。

と申し上げ、以下3項目5点について分割方式で質問致します。

 

 

1 人口減少対策について

(1)人口減少社会を生み出した要因について

日本創成会議・人口減少問題検討分科会(座長:元岩手県知事 増田寛也氏)が発表した将来推計人口調査は、社会全体に大きな波紋を拡げ、人口減少対策はその後の国・自治体にとって最重要課題となっています。推計によると2040年には全国896の市町村、実に全国の自治体の約半数が「消滅可能性都市」として、今後、持続的な行財政運営が困難になってくるとされています。県内でも21市町がこの消滅可能性都市に該当しており、神崎郡の3町も含まれています。さらには、896自治体のうち、523の市町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性が極めて高いと報告しています。人口減少の要因は、20~39歳の若年女性の減少と地方から大都市圏(特に東京)への若者の流出の2点であり、少子化対策と東京一極集中の是正を行う必要があると述べられています。

ちなみに、神崎郡における新成人人口と出生数の状況を見てみますと、福崎町の平成27年1月の人口は19,736人で、そのうち新成人数は234人、また23年から25年までの1年間の平均出生数は160人、市川町の27年1月の人口は12,522人で、そのうち新成人数は143人、1年間の平均出生数は73人、神河町の27年1月の人口は11,510人で、そのうち新成人数は149人、1年間の平均出生数は59人、と3町ともに新成人数と比べて出生数が大幅に減少しており、確実に少子化が進んでいます。また、平成26年2月時点における県内の市町別の高齢化率の状況を見てみますと、神崎郡では神河町が32.7%と県内で6番目に高く、次いで市川町が31.9%と県全体の高齢化率25.3%を上回り、福崎町が25.1%とわずかに下回る状況であり、人口減少とともに急速に高齢化も進んでいることが分かります。

なお、神崎郡3町における20年後の人口を新成人数に対する出生数の割合をもとに単純化して試算してみますと、福崎町で現在の19,736人から約68%程度の13,420人にまで減少し、同じく市川町で51%程度の6,386人、神河町で40%程度の4,604人まで減少することなります。もちろん、人口の増減は様々な要因があることは承知していますし、市川町や神河町はここまで人口が減少しないかもしれませんが、ただ、現状もそうであるように神河・市川町の多くの若者が結婚をして福崎町に住んでいるという状況が見られ、自分が生まれ育った地域になかなか人口が定着しないという傾向が今後ますます拡大するのではないかという不安を抱いております。

県においても過去に国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口結果に基づいて、独自に2040年の将来推計人口予測をしており、そのなかで、本県の総人口は2010年をピークとして2040年には現在の553万人から467万人まで86万人も減少することになっています。

確かに、数字的な現象は、増田氏の述べられているとおりだと思いますし、地方においては若年世代の東京や大都市への人口流出が人口減少の大きな要因であると思いますが、やはり根底には効率を優先したまちづくり・国づくり、大企業を中心とした効率を優先した産業・経済構造にあると私は考えています。また、若者を地域に引き留めるには雇用の場の確保が必要だと言われますが、神崎郡で言えば中播磨や東播磨、北播磨、西播磨を通勤圏内と見れば雇用の場は決して少なくありません。十分にあります。しかしながら、地域の優秀な企業が求人を出しても、応募がないということがよく言われます。

こうした現状や先の日本創成会議の予測において、都市部への人口流出が続くことを前提により厳しく試算していることを考えると、県の将来推計人口予測については、少し楽観的な印象を受けるのですが、ここで改めて危機感を持って将来予測を見直すことも必要だと思います。

そこで、本県においても本格的な人口減少社会を迎え、人口減少対策が急務の課題となる中で、今後、各自治体の創意工夫をこらした施策に期待をするところですが、まず、県としてこの人口減少社会を生み出した要因について、当局のご所見をお伺いします。

 

 

(2)地域創生に向けた農業への支援について

私が考える個別具体的な人口減少対策として、農業分野について質問いたします。この点については、本定例会で上程されました「兵庫県地域創生条例案」でも地域創生のための人口対策として、農林水産業部門における雇用の創出が掲げられているところです。

本県の農業は全国と比べると兼業農家の割合が高く、また、農業就業人口に占める高齢者の割合も全国平均を上回っている状況にあります。こうした状況を受け、県では新規就農者の育成や6次産業化の推進、さらにはブランド力の強化など農業振興に多面的に取り組まれているところです。

農業の振興という点については、これまでも多くの議員から質問が行われ、県下の事例が示されてきたところであります。私は地域に根付いてきた産業が衰退してしまっては、地域の活性化はないと思っています。神崎郡で言えば、やはり農林業の再興なくして地域再生はないのです。ただ、農業は決して規模の大きなものではなく大部分が米作を中心とした兼業農家と、牧畜・酪農・米作を営農する専業農家が自立した暮らしをされていました。農業が再び活気づくことにより、休耕田や耕作放棄地がなくなれば、自然環境や景観の保全にもつながり地域の魅力もアップし元気になります。

先日1月30日に、姫路農業改良普及センターの皆様と年1回の懇談会を行いました。そのなかで、様々の具体的な取り組みの報告・成果など職員の皆様の熱い思いを受け取りました。懇談会では中播磨野菜増産大作戦、中播磨地域の集落営農の状況、中播磨地域の認定農業者の状況及び中播磨6次産業化塾の取組について意見交換を行いました。私は、集落営農や認定農業者への支援など普及センターの基本的な業務はもちろんでありますが、特に中播磨野菜増産大作戦と中播磨6次産業化塾の取組に大変興味を持ち、今後の生産者組合への成長や起業家の掘起しや起業支援の在り方としてモデル的取組ではないかと感じました。

どちらにも共通していることは、農業生産者や農産物の加工に関わっている方々を集めて、視察・研修や情報・意見交換を行うほか、野菜増産大作戦では、栽培技術・知識、規模拡大とともに、営農意欲の向上に努めることで、野菜出荷組合の結成と域内流通業者との提携という実を結び、また、6次産業化塾では、農産物の加工基礎技術の習得、商品力アップ・経営の把握、販売力強化のネットワークづくり、さらにはイベントでの販売体験等々を通じて、農家レストランの開業(1件:古今)、1グループが商標登録の取得(黒かんべぇ:熟成ニンニク・卵黄ニンニク)、一人は国の6次産業化総合化事業計画の認定(1億円)を受け、パスタ工房(ラビオリほか)・農家レストランを建設するなど成果を生み出しています。また、新しい加工商品8品(シフォンケーキ、黒ニンニク、ふくちゃんいなり、さきちゃん巻ほか)を生み出しています。

このように地域農業の振興にとって農業改良普及センターが果たす役割は非常に大きく、技術支援にとどまらず地域に根ざした取組みを提案し支援していくことは地域農業の活性化には欠かせません。成功するかしないかは、生産者や起業をしようする人の意欲・意識・努力がすべてですが、農業の活性化にとって重要なことは、主要産業として規模を大きくすることではなく、農業の担い手が自立していくことだと考えています。そのためには6次産業化やブランド化といった持続可能な取組みにもチャレンジしていく必要があるわけです。それらを支援することこそが県の果たすべき役割であると考えますし、そのためにも農業改良普及センターの充実・強化が必要と考えますが当局のご所見をお伺いします。

 

 

2 道徳教育について

(1)人権教育と道徳教育について

小学校では2018年度、中学校では2019年度から特別の教科として位置づけられる「道徳の時間」について、質問をいたしたく思います。道徳の時間については、学習指導要領に示された内容について体系的な指導により学ぶという各教科と共通する側面がある一方で、学級担任が担当することが望ましいと考えられること、数値などによる評価はなじまないと考えられることなど、各教科にはない側面があることを踏まえ、「特別の教科」として位置づけられています。記述式とは言え評価をすることについては、相当に困難な作業になるだけでなく教員にとっても大きな負担となることと推察いたします。と言いますのも特別の教科である道徳を要として学校教育全体を通じて行うという要素があるからだと考えます。そこで理解を深めるために、事例として改めて人権教育と道徳教育の違いについて押さえておく必要があると考えます。

兵庫教育大学准教授 淀澤勝治先生のレジュメを引用しますが、私は道徳教育とは、いじめや差別に関わって、いじめてしまったり、傍観者になってしまったりするといった「弱さ」「醜さ」が自分にもあることを、気付き・自覚し、葛藤もしながら自分の生き方を見直し、価値の内面的自覚を図り、心を耕し成長することだと考えています。

一方、人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とした教育です。昨今、大きな問題となっているいじめについて、なぜいじめ・差別は起こるのか。どうすればいじめ・差別はなくなるのか。じっくりと考えさせる。いじめを受けた者のつらさ苦しさを理解させる。いじめ・差別の構造を理解させる。「いじめは許されない行為で絶対あってはならない」ということを理解させることだと考えています。言い方を変えれば、人権教育は人権尊重の精神を理解し、それが態度や行動となって現れるよう指導する教育であり、道徳教育は心の内面の変化・成長を見守る教育ではないかと考えます。

そこで、人権教育と道徳教育の違いも踏まえた上で、道徳教育のあり方について、当局の考え方をお伺いいたします。

 

 

(2)道徳の教科化に向けた県教育委員会の認識について

道徳教育は、先の質問でも確認したように、心の内面が人間的に変化・成長するものであり、同時にまた、多様な価値観が認められるものでなくてはなりません。

教育評論家の尾木直樹法政大教授は、『教科化は一つの価値観を押し付ける。評価が導入されれば、子どもは本心を隠して迎合した発言しかしなくなる。教員はそれが分かっていても、発言を額面通りに受け取って評価せざるを得ない。子供は「先生は何もわかっていない」と不信感を持ち、関係性が崩れるだろう。道徳で大切なのは、多様な価値観の中で子供たちが自ら考え、自由な意見を言えることだ。』と述べられています。また、政治評論家の屋山太郎氏は、『道徳の教科化に賛成だ。「おはようございます」というあいさつや電車でお年寄りに席を譲るといった普通のしつけ、心の優しさを教えるのが道徳教育。子供たちの生活習慣も変わり、親も道徳を知らず、教える場がなくなっている。反対する人たちは、教科にすると右翼が育つと思っているが、道徳はイデオロギーではない。小さいころに教えれば、やさしい社会になる。他人に親切な日本社会を持続させるために必要だ。』と述べられています。

特定の価値観の押し付けでなく、規範意識や思いやりの心豊かな人間性を育む道徳教育を目指すために何が必要なのか、学習指導要領改訂案が示されました。また、夏ごろには検定教科書作成や指導の目安になる要領解説をまとめるとされていますが、現時点における学習指導要領改訂案への対応、並びに県版副読本をどのように活用していくのか、当局のご所見をお伺いします。

 

3 人口減少社会におけるふるさと意識を持った人材の育成について

冒頭の質問で人口減少社会を生み出した要因について質問をいたしました。また、知事は今定例会の提案説明の中で、「人口の絶対数を増やすのは、相当長期的な課題として、人口の「自然増」と「社会増」の両面からアプローチしていかなければならないという認識のもと、人口の自然増対策については、出会いや結婚支援の充実を図り、だれもが子どもを産み育てられるよう、子育て支援や就業支援などを充実し、人口の社会増対策については若い世代の地域への定着を進めることが必要であるとして、やる気のある働き手が地域に根ざした仕事に就ける環境をつくり、「住みたい」と思える魅力と個性にあふれる地域を兵庫に増やしていかなければならない。」と述べられました。私は、結婚・子育て・就業環境の整備と若い世代の地域への定着「地域に愛着を感じる」意識の問題を述べられていると考えます。

つまり、私は言い方を変えれば、人口減少社会を救うのは家庭、学校、地域における「人を育てる力」ではないかと考えています。知事の仰っている「ふるさと意識の醸成」もそうではないかと、知事がそのことを打ち出された時から色々なところで、そのことを話させていただきました。

これまでは「世界的に活躍できる人づくり」あるいは、「大企業の一線で活躍できる人材の育成」等に偏重しすぎたのではないかと思います。もちろん世界の、大企業の一線で活躍する人材を育てることはそのとおりですが、晩年にはその経験を「郷土の発展に貢献したい・恩返しをしたい」と考えるような人材の育成、あるいは、家族や地域、郷土にこだわり、地域の発展や地域で活躍しようとする人材の育成など、多様な価値観が求められるのではないでしょうか。団塊世代が成人を迎えた昭和45年ごろまでは、いいか悪いかは別として長男あるいは誰かが家を継ぐとの考えがあり、そのために家から通える範囲で仕事を見つけてきたと思います。それでも、幸せな家庭を築き豊かな人生を送ってこられたのではないかと思います。

人口減少社会を救う、国難を切り拓くには、家庭、学校、地域におけるふるさと意識を持った人を育てる力が必要ではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

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