岸口 実議員が一般質問を実施

第326回 2月定例県議会 一般質問

 

質問日 : 平成27年2月25日(水)

質問者 : 岸口 実 議員

質問方式 :分割

 

1 高齢者介護支援体制の充実

質問の第1は、高齢者介護支援体制の充実についてです。

2015年を迎えました。団塊の世代の方々が65歳を迎え、10年後には後期高齢者となる2025年問題が目前です。介護に関連する項目を纏めて質問します。

介護保険制度がスタートし15年が経過しました。全国の75歳以上の後期高齢者は900万人から1,560万人へ増加、2025年には、2,200万人を超えるとの推計があります。県下では現在の約67万人から約100万人となるとのことです。

このような高齢者人口の激増に伴い制度の必要性はますます高まりますし、要介護状態となった方々が尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう安定した制度の運営を図らなければなりません。

一方、今年度の介護報酬総額は、制度スタートの2000年度の3兆6,000億円から約3倍となる10兆円に、また、2025年にはその2倍となる20兆円近くなると見込まれることなど、制度の維持・安定は非常に厳しい状況にあります。

このような中、国では3年に1度の介護報酬の見直しを行い、2.27%の引き下げを決定しました。

今回の見直しにより、税金、保険料、利用者の総額2,000億円を超える負担軽減がなされることや、介護サービスの充実については報酬の引き上げが行われますが、施設介護現場では介護サービスの質・量の低下についての懸念や問題提起がされています。

 

(1)弱小の社会福祉法人への対応について

まず1点目として、弱小の社会福祉法人への対応について伺います。

財務省が全国の特別養護老人ホーム6,126施設中1,087施設を対象に行った財務調査では、全国の特別養護老人ホームの内部留保が合計1.8兆円、平均3億円あることや、収支差率が8.7%と中小企業の2%台を大きく上回っていることなど、いわゆる「儲けをため込む特別養護老人ホーム」との指摘がされ、その結果、介護施設事業者に対する報酬の5%削減が決まりました。

これに対し、全国老人福祉施設協議会からは、同協議会、また東京都が行った同様の調査では収支差率はいずれも4.3%と指摘の半分であることをはじめ、特別養護老人ホームの内部留保は一切の法人外資金流出を禁止されており法人内に蓄積せざるを得ない資金であることや、介護保険事業・社会福祉事業に供する資金であること、法人設立にあたり施設の土地・建物は寄付金はじめ補助金・制度融資を活用したものでそもそも自己資本比率が高いこと、また、事業用資産として投入され現預金として積み立てていないことなど多くの誤解があると反論しています。

また、地元明石市内の特別養護老人ホームでお話しをお伺いすると、これらに加え、今回調査の内部留保は純資産の部の「その他の積立金」と「次期繰越活動収支差額」の合計であり、「国庫補助金等特別積立金」を減価償却したものが収益として「次期繰越活動収支差額」に加算され、結果として収支差率を押し上げることとなったもので、社会福祉法人の会計処理方法自体に問題があること、また2ヶ月遅れとなっている介護報酬を補うための運転資金や施設・設備の修繕費等を含んだものであること、施設ごとに内部留保、収支差額に大きくばらつきがあることなど現場の実態をお聞かせ頂きました。

確かに今回の調査での内部留保は1施設あたり平均3億円となっていますが、内部留保の多い上位5%、54施設での平均は13.5億円、下位30%、326施設では平均0.25億円と非常に大きな差が見られました。中でも8.5%・92施設は0またはマイナスとなっています。入居者定員数の大きな施設ほど多くの内部留保を保有し、定員100人以上の施設と29人以下の施設では入居者1人当たりの平均が1.3倍の開きがみられました。

そこで、今回の引き下げが県下の特別養護老人ホームなどの施設にどのような影響を与えるのか、また特に弱小の法人・施設への影響が大変懸念されますが、県としてどのように把握し、支援体制を築くのかをお尋ねします。

 

(2)離職防止対策について

2点目は、介護人材の離職防止についてです。

1月5日の朝日新聞に「介護職員の相次ぐ退職と採用難のダブルパンチにより新たな入居の受け入れを休止」との報道がありました。明石市内でも人手不足によりショートステイの受け入れを見合わせるなど、一部の影響が出始めました。2025年には介護職員が250万人必要とされ、このままでは30万人が不足すると予測され、人材の確保は待ったなしの課題です。

「介護労働安定センター」の2013年度の介護労働実態調査によると、介護従事者の離職率は前年度比0.4ポイント減の16.6%と2年ぶりに改善したものの、全産業平均の15.6%よりも高いことが発表されました。

離職理由については「結婚・出産」をはじめ、「事業所の理念や運営に不満」や「職場の人間関係」、「収入が少ない」など、職場環境・待遇によるものが大半を占めています。

これらの職場環境の向上について、一昨年の9月定例会で「介護現場の職場環境の改善に向けた介護保険制度の周知・啓蒙について」を質問しましたが、引き続き事業者・利用者とものマナーやモラルを向上させ、介護現場でのトラブルの発生抑制と介護職員のモチベーションの低下を招かないようにしなければなりません。

このような中、県では福祉人材のキャリアアップを支援するため、実務経験年数に応じた基礎研修や専門研修を実施するとともに、在宅での終末期ケアのニーズに応えるため、介護支援専門員協会が実施する介護支援専門員チームケア推進リーダー養成研修などの支援を行っていますが、これらに加え介護職全体の社会的な評価の向上が必要です。

また、待遇面ではこれまで「介護職員処遇改善交付金」や「介護職員処遇改善加算」により待遇の改善を図ってきましたが、福祉施設介護員の平均年収は307.2万円、ホームヘルパーは289.1万円と企業規模10人以上の産業平均年収463.6万円に比べ賃金水準はまだまだ低い状況にあります。

今回の「介護職員処遇改善加算」の拡充により、介護職員の待遇が月額12,000円のアップが可能となりましたが、介護報酬全体が引き下げられたことから、介護職以外の職員とのバランスを考えると介護職員の待遇が本当に改善されるのかとの懐疑的な見方もあります。

そこで、県として介護職全体の社会的評価の向上や処遇改善などの職場改善がすべての事業所において徹底して取り組みがなされることが必要ですが、これらを踏まえ、離職防止対策にどのように取り組まれるのか所見をお尋ねします。

 

(3) 介護人材の新規リクルートの開拓について

3点目は介護人材の新規リクルートの開拓についてです。

週末の新聞折り込みの求人チラシには、本当に多くの介護人材の募集広告が掲載されています。昨年10月現在の介護関係職種の有効求人倍率は、全国で2.42倍、兵庫県では2.53倍と高い水準で、全国的に都市部ほど求人倍率が高くなる傾向がみられるなど、県下でも阪神間など都市部での採用難の厳しさが伺えます。

先もお話しした地元明石市内の特別養護老人ホームによると、これまでの退職者の補充などの求人は、給与など待遇を引き上げることにより何とか人材を確保することが出来ていたようですが、最近では、待遇を引き上げるだけでは人材の確保が出来ず、また確保ができたとしても市内近隣の施設からの再就職者であるなど複雑な思いがあること、またあわせて介護職員の高齢化も心配とのことでした。

介護業界全体で見ると、これまでは離職者がある一方でそれに見合う参入者があり、何とか成り立っていたものの、最近では介護業界からの離職がとまらず、新規参入者が縮小し続けているのではないかと大きな危機感を抱きます。

このような中、国では厚生労働省の検討会での外国人介護人材の受け入れを容認する中間報告を受け、法改正が行われようとしています。コミュニケーション力確保などまだまだ容易ではありませんが人材確保の有効な手立ての1つとして期待したいところです。また他の都道府県では社会福祉法人が独自に奨学金制度を作り高校と連携を始めたとの報道があります。

県でも、龍野北高校、日高高校への福祉科の設置、県福祉人材センターでのマッチング、介護福祉士等修学資金制度の活用などの人材確保対策が進められ、来年度は医療介護推進基金を活用して介護人材確保が困難な但馬・丹波・淡路地域の事業者を対象とした就職フェアなどに新たに取り組むと提案されていますが、介護分野は慢性的な人材不足の状況にある中、根本的に介護を志す人材を創出することにも、もっと目を向けるべきではないかと考えます。

そこで、介護人材確保に当たっては、中高生への介護職場の魅力発信などのソフト面での充実や、高校の学区ごとへの福祉科設置等の福祉を志す若者を後押しする就学支援などにより、新規リクルートにつながるパイプを太くしていく取り組みが必要と考えますが、所見をお尋ねします。

 

(再質問・・1(5)まで質問、答弁終了後)

トライやるウィークも、保育の施設には希望が多いですが、介護施設には積極的に来てくれません。そうした意識の改革も必要だと思いますが、当局の所見を伺います。

 

 

(4)介護離職防止のための仕事と介護の両立について

4点目は、介護離職防止のための仕事と介護の両立についてであります。

2025年に団塊世代が後期高齢者に、そしてその子どもである団塊ジュニア世代の方々は50歳を過ぎた頃となります。子育てはおよそ一段落し、まさに働き盛りで、社会の第一線での活躍が期待される頃となります。また同時に両親の介護にも直面することになります。介護は高齢者だけの問題ではなく我々自身の問題でもあります。

明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団が「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査を行いました。親の介護を経験「した」、または「している」40歳以上の男女のうち介護開始時の働き方が正社員の人を対象に2,268人から回答を得たものです。

この調査結果によると、介護を理由とした転職者や介護専念者の5割強の人が介護開始から1年以内に離職しています。離職のきっかけは「自分以外に親を介護する人がいない」との回答が男・女、転職者・介護専念者を問わず20%を超え最も多い一方で、介護専念者の女性の5人に1人が「自分で親の介護をしたかった」と自ら進んで決断しているのが特徴的でした。また女性の転職者は「仕事と介護の両立に精神的限界を感じた」や「これ以上会社にいると迷惑がかかると思った」、「職場での理解が得られなかった」など職場環境に要因のある回答が多くあります。介護をするためにある程度の覚悟を持って転職、離職を決断した人が、正社員に転職できたのは男性3人に1人、女性5人に1人で、平均年収も男性では556万円から341万円に、女性では350万円から175万円へと大幅にダウンするなど、自分の選択を否定する者が多くあり、転職を後悔している人も少なくないと分析しています。

あわせて男性の場合、配偶者ありや年収が多い場合、また男女とも子育ての所得確保が必要なケースでは離職は抑制される一方で、男女とも資産が多い場合は離職のハードルが下がっています。また、介護専念者の7割が自分の選択に肯定的であることも分かりました。

さて本題です。離職することなく同じ職場で働き続けている方々も多くあります。これらの方々は一般的な休暇に加えて、「介護休暇制度」や「労働時間や日数の短縮制度」などさまざまな社内の制度を利用し、「職場の介護に対する理解・支援」が得られたとしています。職場環境が支えとなり、本人の仕事を続けたいとする意思が介護離職を防いでいることが分かりました。

このような中、県では、平成21年度にひょうご仕事と生活センターを開設し、中小企業を中心に、介護等の理由で離職した者の再就職支援や介護休業代替要員採用に当たっての助成等を通じ、ワークライフバランスの確保に努めていますが、先のアンケートにあるように大変厳しい現実があります。

冒頭申し上げましたとおり、2025年には県民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となります。企業等の経営者や介護する人と同じ職場で働く人はもちろんのこと、全ての人が介護を自らの問題と考え、理解を深めていくことがまず必要です。その上で、少し長い取組みになるかもしれませんが、社会全体として働き方を変え、介護しながら働くことが当たり前の世の中にしていかなければ、急激な人口減少と高齢化が同時進行する状況の中では、社会全体が深刻な雇用の不安定な状況となることも危惧されます。

そこで、県として介護離職の現状や再就職が困難な状況を踏まえ、休暇がとりやすい職場の環境整備など仕事と介護のバランスの確立にどのように取り組んでいくのかお尋ねします。

 

(5)介護保険制度利用による福祉用具購入等の支払い方法について

高齢者介護の項の最後の質問は、介護保険制度利用による福祉用具の購入および住宅改修費の利用者の支払い方法についてです。

介護保険制度利用による、福祉用具の購入および住宅改修費を利用者に支払う際、利用者がその経費を全額事業者に支払った上で保険者に対し介護保険の申請を行う「償還払い」が基本となっていますが、市町によっては利用者が保険適用分の経費の1割を事業者に支払い、残る9割を利用者の委任に基づき市町から直接受領委任払い登録事業者に支払う「受領委任払い」を可能とするところもあります。

県下の市町の状況を見ると、住宅改修費については高砂市等を除き「受領委任払い」が可能となっていますが、福祉用具購入費については神戸市はじめ、尼崎市、西宮市などまだまだ「償還払い」の自治体が多くあります。

福祉用具の中にも高額なものもあるようで、今すぐ必要とする利用者の一時的な経済的負担の軽減も必要です。

そこで、県下の全市町で「受領委任払い」を可能とすべきと考えますが、県として、この件をどう認識し、課題解決に向けいかに取り組んでいこうと考えているのか伺います。

 

 

2 農水産物の輸出促進におけるオール兵庫での連携について

質問の第2は、農水産物の輸出促進におけるオール兵庫での連携についてです。

TPP交渉が大詰めを迎えており、今後の交渉次第では県内の農水産業に大きな影響を及ぼします。先の緊急経済対策の補正予算にも農産物直売所での購入促進キャンペーン事業が盛り込まれていますが、これまで県では農・漁業者の経営安定のため、農水産物の出口対策として消費拡大・販路拡大を目指し6次産業化の推進や直売所の整備などを進めてきました。また、平成22年に「ひょうごの美味し風土拡大協議会」を設立し輸出促進に取り組んでいますが、安全性・品質などの優位性を発揮した海外での兵庫県産ブランドのより一層の確立を進め、さらなる輸出を拡大しなければなりません。

しかしながら、輸出は容易なものでなく、現地の食文化や販路開拓、輸送方法・コストなど解決すべきいくつもの難題があり、これらを克服するのに多くの時間とコストを費やすことになります。

これまでの県産農水産物の主な海外展開を見ると、平成24年2月に神戸ビーフをマカオへ初輸出したのを皮切りに、香港、米国、タイ、シンガポール、EU等へと順次販路を拡大させるとともに、兵庫県産米についても平成24年11月の香港への輸出を皮切りに、オーストラリア、ドイツ、台湾、アメリカなどへの輸出が始まっています。また、輸出促進に向けては、会派でも平成25年11月に現地調査を行いましたが、県が香港の日系スーパーで、JA兵庫六甲、JAあわじ島などと連携し、いちじく、柿、たまねぎなどの県産農産物の試食販売、消費者調査を行う「兵庫農林水産フェア」の開催や試験的な通年販売を実施しましたが、好評により平成26年6月からは、淡路島たまねぎ、いちじくなどの県産農産物の通年販売を行っていると聞いています。

一方の水産物では、兵庫県漁業協同組合連合会がブラジルでの海苔販売を目指し5年前から現地での販売調査を行い、今年、現地での焼き海苔販売や焼き海苔加工についてパラナ州等で説明会を開催したと聞いています。

これらは一例ですが、それぞれの取り組みは確かな成果を上げており、販売ルートなど貴重なノウハウを蓄積しています。それぞれの農・漁業者がこれらの情報を共有することにより輸出へのハードルは確実に下がり、一体的な取り組みにより輸送コストの削減をはじめ、メリットも多く出てくると考えます。

そこで、農水産物輸出で築き上げた販売ルートなどのノウハウを相互に活用したり、各分野中心の取り組みでなく、オール兵庫で県が先導してこれまでの情報を共有させた戦略、取り組みが必要と考えますが、これらを踏まえたオール兵庫での農水産物の輸出促進連携について所見を伺います。

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