前田 ともき議員が一般質問を実施

質問者 前田 ともき 議員(民主党・県民連合)

質問日:6月19日(金)

質問方式:分割方式

1 投資教育の推進について

2012年にOECD加盟国において、「金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則」が採択され、金融面での個人の良い暮らしを達成するためには、学校カリキュラムに金融教育を含めることを勧告すべきとされている。金融教育の中にも、家計の収支・将来設計や経済・金融の仕組みなど様々だが、特に投資教育について質問する。

約1,700兆円の家計の金融資産のうち、株式や債券などの有価証券比率は16.7%であり、アメリカの51.2%、欧州の30.2%と比較すると、現預金の比率が圧倒的に多く、投資されずに眠ったままといえる。

政府・日銀は物価上昇率を2%としている。実現した場合、現金1,000万円が30年後には552万円とほぼ半減してしまう。実質賃金が上昇し、喜んだのもつかの間、せっせと貯金に励むほど、価値は激減、ぬか喜びに終わってしまう。

貯蓄から投資への流れを作るべく、政府は税制面で強力に推進しており、少額投資非課税制度NISAが2014年1月にスタート、2016年4月からは未成年向けジュニアNISA、2017年にはすべての現役世代で確定拠出型年金401Kが実現する。これからは全ての人が好むと好まざるとに関わらず投資・運用能力が問われてくる時代に突入する。低成長率下の日本では労働所得以外にも運用によるダブルインカム化が必要であり、インフレを見据えると、今ほど投資教育が必要とされている時代はない。

投資というとバブル崩壊やリーマンショックの悪夢がよぎるかもしれないが、気にする必要はない。バブルピーク時に日本株しか投資していなければ、投資収益は大幅にマイナスだが、債券や海外の株式などしっかりと国際分散投資を行っていれば、大きなリターンを得ている。

また、投資期間は寿命尽きるまでと言え、20歳から始めても60年はある。ピケティによると、全世界の200年間の株や土地などの資本利回りは5%。世界有数の金融資産を保有する日本には大きなアドバンテージがあると認識すべきだ。これは、金持ちだけの話ではない。複利は若者の味方である。20歳の若者が、毎月1万円を投資して、死ぬまで60年間、利回り5%で運用すると、80歳で4,550万円の資産を達成する。投資した金額はたったの720万円だが、運用収益は3,830万円に上る。

更に、投資教育は個人を豊かにすると同時に、県の財政も豊かにする。現状の、現預金中心の利回りが低いポートフォリオでも、株式売却と配当による兵庫県の税収は制度が創設された平成15年度以降を平均すると年間98億円程度ある。県民の運用力が向上すれば、毎年数十億円といった規模感で税収増が期待できる。県民に金銭的な余裕ができ、県財政にも余裕ができる2者両得の関係だ。

そこで、ライフプランについて考え始める高校生の段階において、学校設定教科や総合学習等に投資教育を積極的に組み込む必要性があると考えるが、投資教育の現状と必要性について、当局の所見を伺う。

 

2 不動産の活用について

(1)宿泊ビジネスにおける規制緩和について

次に不動産の活用。家計の資産構成を見ると、現金の次に大きいのが土地。平成25年度は676兆円と資産の1/4のシェアを占める。

しかし、この15年間で地価の下落などにより400兆円近く減少し、家計に大きなダメージを与えている。

人口は既に減少に転じたが、世帯数の減少が数年後に始まる。

つまり、土地や建物の居住ニーズが構造的に減少していく中で、新しい活用法を創生していくことは、家計の資産毀損を防ぐだけでなく、市町村税収の約4割を占める固定資産税収を維持していくためにも必要な取組みである。

空家の活用法に、障害者向けグループホームがある。従来は低コストで開業しようと、中古の戸建住宅を活用しようとしても、建築基準法上の「寄宿舎」になぜか該当し、廊下の幅から防火間仕切りまで追加の改修コストがかかり転用が難しかった。しかし、県条例などの改正により、ほぼそのままで転用できるようになり、空家の新しい利用法が創生された。このように、土地と建物の利用は都市計画や建築基準法など様々な規制がなされているが、時代の流れや社会のニーズにうまく対応できていない部分もあり、不断の改善が必要である。

そこで、新たな不動産の活用として、宿泊サービスの規制改革について伺う。空き部屋や空き家の旅行者への貸し出しを仲介するairbnbというサービスがある。設立から7年弱で時価総額2兆円、190か国、2,500万人以上が利用するなど急成長中である。新しいサービスなので各国の法規制で様々な議論が交わされているが、それだけニーズがある。

昨年4月に国家戦略特別区の旅館業法特例が施行され、宿泊施設として提供できるようになり、新しい活用法の道が開けた。訪日外国人客は一気に2000万人を射程にいれ、ホテルは過去最高の客室稼働率を記録し、ホテル不足の声も聞かれるようになった。この仕組みは、空家対策のみならず、ワールドマスターズゲームやMICEなどの大規模イベントで一時的に増加する旅行者を柔軟に受け入れするためにも必要だ。

兵庫県でも条例を制定し、新しい不動産の利用法を創生させると同時に、最低7日間の使用期間や外国語を用いた情報提供の実施といったハードルの高い要件を自治体条例でさらに緩和して運用できるよう政府に求めるべきと考えるが、所見を伺う。

(2)宅建業者への指導・監督体制について

不動産の活性化には円滑な流通が必要だが、流通を阻害する問題点の一つが、宅建業者による物件情報の囲い込み問題である。

宅建業者は、専任媒介契約を締結したときには、基本的に7日以内に物件情報の共有システム「レインズ」に登録する必要があるが、それに登録しない。また、他の仲介業者が買い付け打診をしても契約予定などと偽って断り、自社で買い付け顧客を探索し、売り手・買い手の両者から手数料を獲得する、いわゆる両手取引による収益増を図る問題がある。

この行為は、物件情報を囲い込まれることで需給バランスが崩れ、売却価格が下落することにつながる。また、引っ越しなどで売却に時間がかかると、二重ローンや二重家賃に苦しむことになり、県民に大きな不利益を及ぼす。平成24年9月に取りまとめられた、国土交通省の不動産流通市場のあり方研究会においても、囲みの問題が指摘されている。また、先月の週刊ダイヤモンドによると、首都圏約500件を対象に調査をした結果、囲い込み率は10.5%、某大手企業では2割以上も囲い込んでいたという実態があきらかになった。

問題は囲い込みだけではない。成約済みの物件や実在しない好条件の物件を掲載することで集客を図るおとり広告や建築条件付き土地と建物の同時契約を求めるなど、多くの問題事例が明らかとなっている。このような事態を防ぐのが、2015年4月から名称が宅地建物取引主任者から変更された宅地建物取引士であり、公正誠実義務や信用失墜行為の禁止が課せられている。不動産取引の専門家として、当事者の利益保護及び円滑な流通に資する必要があるが、十分には機能していないように感じられる。

ついては、円滑な不動産の流通と消費者保護のため、県当局は受け身でない能動的な指導・監督を行っていくことが望ましいと思うが、ご所見を伺う。

 

3 ふるさとひょうご寄附金のさらなる改善について

最近、ふるさと寄附はお返し商品の豪華さを競う争いが激化し、投資雑誌に大きく特集が掲載されるなど本来の趣旨から逸脱しつつある。総務省からは高額返礼は自粛するよう通達が出ている状況である。

私は、平成24年度の決算特別委員会で、本県への寄附金を増やすためには、納税者が寄付したいと思える政策をしっかり提示することが先決であるとの考えから、3点の改善案を提言した。

1 寄付金を活用して行う事業を選択制にすることで、税金の使い道は納税者が決める仕組み。

2 クラウドファンディングを活用し、意義や理念をしっかり伝え、多くの人に伝播させる仕組み。

3 寄附金を新規事業や意欲的な事業に充当することで、県庁職員の政策力と意識向上を図る仕組み。

1つ目は提言通り改善され、筋電義手や神戸マラソンなど寄付する人が税金の使い道を選択できるようになり、平成25年度の14百万円から平成26年度は64百万円と大幅に増加した。

しかし、ふるさと寄附金には控除の制度がある。人口数万規模の市町が数千万・数億円の寄付金を集めている事例を見ると、本県の収支はマイナスの可能性すらある。

2015年4月からは特例控除の上限が約1割から約2割に拡充され、確定申告も一部不要となった。ふるさと寄附金の規模は数倍に跳ね上がるだろう。

したがって更なる改善を実行し、収入額を確実に増やしていく必要がある。そこで改めて提言したいのが、次の提言だ。

1つ目は、ふるさと寄附金で実施する事業を県庁はもちろん全国から公募する政策コンテストの実施だ。26年度から、対象事業への寄附金は、その事業に100%充当されることにはなっている。その事業案を、県庁職員のみならず、県民や県にゆかりのある人からも募集する。これによって、財源不足から存続が危ぶまれていた事業や税金の使い道として適切なのか判断しづらく、実行できなかった先進的な事業に光が当たる場合もあるだろう。また、県庁では考え付かなかった面白い政策が納税者側から出てくるかもしれない。そして納税者の事業に対する支持・評価が寄付金額として定量的に結果がでることである。ある種、直接民主主義の実現ともいえる。

2つ目はクラウドファンディング事業者の活用だ。残念ながら、現在の兵庫県のサイトには訴求力が感じられない。5行程度の事業概要を伝えてHPのトップページにリンクを張るだけ。これでは事業の意義で寄付はしてもらえない。例えば、シリア難民支援議員連盟。今年の3月に設立された議員連盟が、シリア難民の子どもたちの学校をつくるために寄附金を集めているものだが、意義やストーリーをホームページで分かりやすく紹介しており、6月19日現在、1,800万円を越える寄附が集まっている。このような訴求力あるホームページづくりが大切である。

そこで、ふるさと寄附金の収入増加のため、対象事業を県庁内外から広く公募し、現状の5事業から大幅に拡充すること、また、クラウドファンディング事業者も活用した、よりわかりやすく、広く全国の人々に伝わる仕組みづくりの実施について、当局の認識を伺う。

 

4 性的マイノリティへの理解促進について

(1)性的マイノリティの位置づけについて

3年前の本会議において、性的マイノリティに対する理解促進を提言した。最近は、この問題をよく目にする機会が増えてきた。2014年にロシアで開催されたソチ五輪では、同国の同性愛宣伝禁止法が国際的な非難を浴び、国際オリンピック委員会は憲章の根本原則に「性的指向」を盛り込むことを決議した。渋谷区では「パートナーシップ証明書」を発行する条例が可決。今年3月には国会でも超党派による議員連盟が発足するなど、性的マイノリティに対する意識・取り組みは大きく変わってきた。

しかし、未だに変わらないものがある。平成13年に策定された、兵庫県の人権教育及び啓発に関する総合推進指針には、女性や子ども、障害者などはあるものの、性的マイノリティを課題とする記載は未だない。

策定から14年が経過した中で、今こそ人権課題の一つと位置づけるべきと考えるが、当局の見解を伺う。

(2)教育現場での取組みについて

3年前の質問では、教育現場では性同一性障害については取り組みをするものの、性的指向は、国からも明確な指導方針が示されていないという答弁であった。要は対象外であった。

1年後の予算委員会では、小学校高学年用教育資料に性的マイノリティを追加するほか、中学生用にも掲載予定との答弁があり、県教育委員会は大きな前進を見せたと感じている。

国も大きな変化を見せた。この4月、文科省の通知では、性同一性障害のみならず、性的マイノリティの児童・生徒に対しても、悩みや不安を受け止める必要性や教職員の適切な理解を促進することが必要と記載された。国として学校に対応を求めたのは初めてのことである。

これまで、遅れていた性的マイノリティへの学校教育における取組みであるが、県として、私立学校も含めた今後の取組みはいかなるもので、どのような将来像を描いているのか、またそれをいつまでに実現されようとしているのか、あわせてご所見を伺う。

 

5 警察捜査の効率化・最適化について

DVや認知症高齢者の保護など多様化する警察業務を遂行するうえで警察定員の増加が図られている。兵庫県警においても定員不足約270名の解消に向けて施策を行っているが、単なる人員増だけではなく、積極的なICT・設備投資を行うことで、一人一人の効率性を向上させていくことも必要だと考える。

昨年、本会議で政策提言したICT戦略の推進は今年4月からスタートした。今後は具体的な施策が展開されていくと思うが、多数の人員を抱える警察組織においては非常に大きな効果をもたらすと考えている。

効率化だけではない。従来の事件・事故の「事後」対応から「未然」防止に向けたパラダイムシフト。これが、ICT活用で可能となる。

犯罪捜査では、天気予報ならぬ犯罪予報が実現しつつあり、捜査の効率化が進んでいる。

ニューヨーク市警は、全捜査情報のデジタル化や過去の犯罪データはもちろん、SNSや街頭カメラの稼働状況などのビッグデータを活用し、いつどの地点で犯罪が起きそうなのかを予測し、警察官を先制配備。さらにリアルタイム捜査情報システムで、2割の人員が削減されたにもかかわらず、検挙率を維持している。既にアメリカ60都市では同様のシステムが導入され、警察官の巡回エリアの最適化などで、数百万円の年間投資で犯罪発生率を10%以上減少させているとの報告もある。

交通事故の防止についてもICTの力は成果をあげている。埼玉県とホンダはカーナビの走行データを活用して、急ブレーキ多発地点を抽出し、160か所の安全対策を施した結果、急ブレーキ数は7割減、交通事故は2割減を実現。交通取り締まりや事故対応は業務量も多いが、ICTの活用によって業務を確実に縮減できるのであれば、道路管理者にしっかりとその活用を求める必要がある。

このようなICTの活用による、事件・事故を起こさせない環境づくりは、県民の財産・安全を未然に守ることと同時に、その分の犯罪捜査や事故処理などの業務量を0にし、警察業務の縮減が実現できることとなる。

また、広大な範囲の山間部や危険個所、災害現場を警察官だけで捜索するのではなく、ドローンなどの先進機材を活用して職員の安全性と効率性を両立できる体制も必要と考える。

もちろん、現場の経験と勘による捜査や地道な聞き込みなどは警察活動の前提である。しかし、ICT投資により警察官定員約1万2千名のパフォーマンスを3%でも改善できれば、実質的な定員不足の解消を低コストで実現できる。

そこで、今回は犯罪捜査に係る警察捜査の更なる効率化に向けた、ICT活用による犯罪捜査の効率化や先進機材の導入について、当局のご所見を伺う。

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