越田謙治郎議員が一般質問を実施

第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月8日(木)

1 県と市町の政策協議の場の常設化について

 質問の第1は、「県と市町の政策協議の場の常設化」についてです。
 私は市議会議員として、2期8年にわたり地方自治の最前線で活動する中で、「そもそも市は何をするべきなのか?」「そもそも県はどのような役割を担うべきなのか?」ということについて、真剣に考えなければならない場面に何度も遭遇しました。
 たとえば、平成12年度から取組の始まったスポーツクラブ21ひょうご事業や平成18年度から本格実施されている県民交流広場事業では、市や実際に活動する地域住民の方々からは「予算が付くのはありがたいけれど、細かいルールがあって使い勝手が良くない」という声をいただきました。
 もちろん、地域スポーツの活性化や地域コミュニティ活動の促進を図るという政策目的自体には、私も異論がなく、一定の成果があった事業だと考えます。しかし、現場の状況を見聞きし、ともに地域の一員として活動する中で「これらはそもそも県が直接ルールを作って行う事業であったのだろうか?」「ルール作りの段階でもっと市町との協議を深めていれば、より一層効果がある事業となったのではないか?」との思いを強く持ちました。
 一方で、自治体の規模にもよりますが、地域医療や少子化対策などは、必ずしも基礎自治体では解決できない政策課題であり、各市町がそれぞれに事業を行ったとしても、なかなか有効な成果にはつながりにくいのは実状ではないでしょうか。
 「広域的な連携があれば、もっと有効な施策が打てるのではないか?」「広域的な連携を促進することや、市町の規模では実行できない事業は、本来県が担うべきではないか?」ということを強く感じることがありました。
 従来、県と市町との関係については、二重行政、類似事業等への批判があり、兵庫県としても、過去から見直しに取り組んでいることは理解しております。しかし、私は、二重行政や類似事業等の批判は、あくまで表層の現象面を捉えたに過ぎず、本質的な問題は県と市町との連携や意思疎通が十分に行われていないことだと考えています。
 最も大切なことは県が事業を行う際に「いかに基礎自治体である市町と連携するか」ということです。
 とりわけ、県や各市町の財政状況を考えれば、二重行政や類似事業を行うといった非効率な行政運営を行う余裕はなく、効果的な税金の使い道という観点からもより積極的な連携が必要だと考えます。
 そこで、県と市町とが政策協議を行う場を常設化し、常日頃からの密接な協議、連携を通じて、適切な役割分担の下で、それぞれの行政運営を担っていくべきだと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

2 地域主権改革推進一括法施行に伴う県の取り組みについて

 質問の第2は、「地域主権改革推進一括法施行に伴う県の取り組み」についてです。
 民主党政権では、政権交代後の一昨年9月以降、地域主権の確立は1丁目1番地の重要課題であると位置付け、改革の取り組みを積極的に進めてまいりました。本年4月及び8月には、国会において「地域の自主性及び自立生を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(いわゆる第一次、第二次一括法)が成立しています。
 これら二次にわたる一括法では、地方自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るため、国による義務付けや枠付けを見直すとともに、条例制定権の拡大が定められており、各種の施設や公物の設置・管理の基準を地方自治体自らが条例により定めることになりました。
 このような、国から地方自治体への権限移譲に関しては、国の取り組みの成果と言うよりもむしろ、これまで国に対して権限移譲を強く働きかけてきた地方自治体及び地方議会が勝ち取った大きな成果です。
 そして、未だ道半ばではありますが、国からの権限移譲が実現した今、私たちに求められているのは、これからの分権型社会にふさわしい地方自治体としての覚悟だと考えています。
 とりわけ、私は、公の施設等の設置・管理基準に関する条例づくりは、兵庫県の地方分権にかける思いや覚悟の強さを表す一つのメルクマールになると考えています。
 この点、第一次、第二次一括法では、公の施設等の設置・管理基準に関して、「従うべき基準」「標準」「参酌する基準」の三つが設けられています。ただ、同法の趣旨から考えると、これらの基準はあくまで一つの基準に過ぎず、許容される幅の大小の違いはあるものの、いずれの基準についても、地域の実情に応じたルールを設定することができるのです。
 このような視点で考えると、国から示された従来の基準をそのまま踏襲するという発想で条例制定を行うようでは、地方分権の理念を大きく損なうばかりか、「権限を移譲しても、結局は地方自治体の自主性は高まらない」との印象を国や国民に与え、今後の権限移譲、ひいては地方分権改革の歩みを鈍らせることにもつながるのではないかと危惧しています。
 一部を除き、来年4月1日までに条例を制定することとされていますが、私は今ある基準をもとに「上乗せをするのか緩和をするのか」「それとも現状維持か」を考えるのではなく、市町や県民、施設管理者等の意見や地域のニーズを踏まえながら、それぞれの施設ごとに、そもそもの在り方などを真剣に議論したうえで条例制定に臨むべきだと考えます。
 そこで、地域主権改革推進一括法成立に伴う、公の施設等の設置・管理基準に係る県条例の制定について、今後、県として、どのような基本的考えの下で、どのように取り組んで行くのか、知事のご所見をお伺いします。

3 地域医療における市町間の連携の促進について

 質問の第3は、「地域医療における市町間の連携の促進」についてです。
 現在、地域医療を確保する上で、市町において確保困難な特殊医療や高度専門医療、先進的医療等の提供体制を確保することが都道府県の役割でありとされており、兵庫県でも地域医療再生計画を策定し、医療体制確保に向けて、日夜取り組んでおられることと思います。
 一方、住民に身近である内科や外科といった一般的な初期医療に関しては、基礎自治体である市町が担うこととされています。このような初期医療の提供体制を確保する上で、とりわけ、公立病院が各地域における中核的な医療機関として大きな役割を担っているのは言うまでもありません。
 しかし、その公立病院は非常に厳しい状況に陥っています。公立病院の役割や使命を考えれば、赤字であることそのものを問題視するつもりはありませんが、本県市町振興課のとりまとめによれば、平成21年度における県内各市町の病院事業の決算状況は、23事業中21事業が、また、平成22年度では23事業中18事業が赤字となっています。
 その根本的な問題は医師不足と言っても過言ではなく、私は慢性的な医師不足等の厳しい環境の中で、今後も必要な医療を地域において提供するためには、それぞれの市町が努力することは当然ですが、これに加え、広域的な行政を司る県として、果たすべき役割がますます大きくなっていると考えています。
 実際に、それぞれの基礎自治体や市町立病院が時間を割き、多くの労力をかけている医師不足の問題は、それぞれの病院が頑張って医師を招聘したとしても、今ある限られたパイを奪い合っているだけに過ぎません。
 さらに、このような限られた医療資源にもかかわらず、その医療資源でさえ必ずしも効果的に配分されているとは言えない状況もあります。
 たとえば、市立川西病院では、病院経営改革プランに従い、平成21年に消化器内視鏡センターを設置しました。しかし、消化器内視鏡センターが定着し始めた1年後には、お隣の宝塚市立病院においても同様のセンターが設立されたのです。私は、「限られた医療資源の有効活用を考えれば、同じ2次保健医療圏域の中で、なぜすみ分けができないのか?」ということを感じざるを得ませんでした。
 つまり、それぞれの自治体や病院が、住民に良質かつ適切な医療を効果的に提供することを目指して様々な取り組みを行ったとしても、より広域な観点、つまり市町の枠組みを越えた地域全体の医療という観点から見ると、必ずしも充実にはつながっていないのが現状です。
 私はこのような状況を見るにつけ、たとえ初期医療の分野であったとしても、すべてを基礎自治体に任せきりにするのではなく、個々の基礎自治体相互間の連携が必要であり、広域的な観点から、県として相互連携をより積極的にコーディネートしていく必要があると考えています。
 そこで、今後、限られた医療資源を有効に活用する観点から、地域医療の更なる充実確保のために、県として、どのような基本方針の下で、市町間の連携を支援し促進していくのか、当局のご所見をお伺いします。

4 県立阪神昆陽高等学校(仮称)への通学手段の確保について

 質問の第4は、「県立阪神昆陽高等学校(仮称)への通学手段の確保」についてです。
 兵庫県教育委員会は、平成20年10月に、定時制である県立川西高等学校、同宝塚良元校、伊丹市立高等学校の3校に関し、阪神昆陽高等学校への再編という形で平成24年度から新入生の募集を停止する方針を打ち出しました。
 この県教委の方針に対しては、多くの地域住民が反対の声をあげており、地域では今なお、県立川西高等学校や同宝塚良元校の存続を求める活動が展開されております。
 実際に、川西市議会では平成21年2月に「県立川西高等学校及び川西高等学校宝塚良元校の存続を求める意見書」が可決され、県教育委員会に提出されました。 
 しかしながら、このような取り組みにも関わらず、残念なことに、平成24年度より県立川西高等学校は募集停止となってしまいました。川西教室、宝塚教室として当面の間存続するなど、県としては、地域の声に一定配慮したものと考えています、ただ、これはあくまで3年間の限定措置であり、依然として「地域の学びのセーフティネットを残してほしい」という地域の声が大きいことをまず申し上げておきます。
 一方で、私は目の前にある川西市や猪名川町から県立阪神昆陽高等学校への交通アクセスの問題も指摘しなければなりません。
 この問題は、県議会でもたびたび議論をされており、平成22年度の決算特別委員会においても篠木和良委員から交通アクセスに対する質問がなされており、川西市ならびに猪名川町では、政党・会派の垣根を越えた重要な課題です。
 猪名川町議会においても、交通アクセスが困難になることを問題視し、平成21年3月26日に「旧武庫荘高校跡地での「多部制単位制高等学校」開設に関する意見書」が可決され、「就学を希望する生徒が通学時間や経済的負担などにより通学を断念することがないよう、交通手段の確保や経済的負担の軽減措置を講じること」等を求める意見書が採択されており、知事ならびに県教育委員会に対し送付されています。
 実際に、猪名川町の六瀬中学校に通う子どもたちは、最終の授業である12限目を受けた場合、部活動や放課後の活動を一切しなかったとしても、現在の公共交通機関の運行状況では、自宅まで帰ることができません。
 私は、学びのセーフティネットとなる定時制高等学校として、これまで地域で重要な役割を果たしてきた県立川西高等学校を廃止してまで設立する県立阪神昆陽高等学校には、従来、県立川西高等学校が地域で果たしてきた教育におけるセーフティネットの機能を引き継ぐ責任があると考えています。
 したがって、県立阪神昆陽高等学校への交通アクセスの確保は、単なる利便性の向上という視点ではなく、地域における学びのセーフティネットをいかに守るのかということだと考えています。
 そこで、県立阪神昆陽高等学校への交通アクセス確保に向けた取り組みの進捗状況と今後の見通しについて、教育長にお伺いします。

5 シティズンシップ教育の導入について

 最後の質問は、「シティズンシップ教育の導入」についてです。
 現代社会では、高度情報社会化やグローバリゼーションの進行が加速しており、社会の形が大きく変革する中、私たち一人ひとりも国民としての意識改革が求められています。一方で、若年層の政治離れに歯止めがかからず、従来の教育だけでは対応できないと感じています。
 このような中、これからの教育においては、今まで以上に、生涯にわたって、いかに生きる力を身につけていくかという視点が大切になってきているのではないでしょうか。とりわけ、私は、学校教育の中で、社会に自ら積極的に関わっていく力を育てていくこと、市民としての力を身につけていくことが求められていると考えています。
 兵庫県では、小学校の段階で環境体験教育、中学校の段階ではトライやる・ウィーク、高校の段階でもインターンシップ推進プランなど、「体験活動を通じた学び」を一つの大きな柱としており、先進的な取り組みも多いことから、全国的にも高い評価を受けています。
 ただ、私は、これからの時代や社会の在り方を考えたとき、想像を超えるスピードで発展する新しいメディアの登場と、それによって引き起こされる人権侵害などの諸課題、新しい公の概念、多様化する価値観など、従来の授業だけでは対応できず、また短期間の体験教育だけでは十分身に付かないこともあるのではないかと考えています。
 この点、近年、欧米諸国を中心に、めまぐるしく変化する現代社会において、子どもたちが将来、市民としての十分な役割を果たせるよう、「シティズンシップ」を育む取り組みが、学校教育の中に導入されるようになっています。
 シティズンシップとは、「国などの正式な構成員たる市民として保障される権利」という側面と、「市民たるにふさわしい資質」という側面の二つを併せ持つ概念です。つまり、シティズンシップ教育とは、自らが属する社会における市民としての権利に関する認識を培う一方で、その社会に自ら積極的に参加するための資質を育む教育であると言えます。
 このシティズンシップ教育は、単に知識を身につけるだけではなく、それを基に能動的に参画しようとする態度を育むこと、子どもたちが、参加型民主主義を理解・実践するために必要な知識・スキル・価値観を身につけ、行動的な市民となることを目的としており、将来の民主主義のプレーヤーとなる市民を育てていくことにつながると考えています。
 本県教育委員会でも、高校生に「社会で生きる力」を身に付けてもらうため、本年度から「社会人基礎力育成カリキュラム」の研究開発に乗り出しており、県立高校4校をモデル校に指定し取り組みを進めています。その中ではシティズンシップ教育の観点も取り入れた取組が進められていますが、本県の将来を支えてくれる行動的な市民をより多く育てていくためには、県下すべての高校でシティズンシップ教育を進めていくべきだと考えます。
 そこで、今後、兵庫県における高校教育の柱の一つとしてシティズンシップ教育を導入するべきだと考えますが、教育長のご所見をお伺いします。

 以上5点にわたり質問をさせていただきました。
 どんなに難しい課題であったとしても、今の時代にある課題は、今の時代を生きる私たちの手で解決していきたい。それが未来に対する責任。そんな決意を最後に付け加え、壇上での質問を終了いたします。

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