栗山 雅史 議員が代表質問を実施

第328回 9月定例県議会 代表質問

質問日 :平成27年10月1日

質問者  :栗山 雅史 議員

【分割質問・分割答弁方式】

(1~2:一括、3~6:一括)

 

1 ワーク・ライフ・バランスの充実による晩婚化・晩産化対策の推進について

(1)若い女性がバランスの取れたライフデザインを描くための環境整備

現在上程中の「兵庫県地域創生戦略(案)」において、基本的な目標のトップに掲げられている「人口対策」のうち、とりわけ「自然増対策」の「少子化対策」について、女性のライフデザインとワーク・ライフ・バランスの充実の観点から質問をいたします。

まず、地域創生戦略(案)に掲げられた「2015~2019年の5年間で22万人の出生数」、「毎年44,000人の出生数の維持」という目標ですが、出産可能年齢の女性の減少が進む中で、この目標は本当に達成できるのかと、私は感覚的に疑問を持ちました。44,000人の出生数というと、簡単に言えば約44,000人の女性が妊娠をし、出産することになります。総務省の統計によると、2014年の兵庫県内の出産可能年齢の女性は116万8千人で、出生数は44,352人でしたので、約3.8%の女性が妊娠出産をしたということになります。5年間の目標22万人、年44,000人の出生数を維持するには、県ビジョン課によると、2020年の出産可能年齢の女性は約110万人とされていますが、その4.0%の女性が出産することが目標となります。現在よりも0.2%増の目標であり、それ以降も出産可能年齢の女性の減少が進むと予想されていますので、妊娠出産をする女性の比率を4%以上に高めていかねばなりません。

ご承知のように、出生数の目標を達成するためには、子どもが欲しいと思う気持ちを今よりもさらに高めるということをはじめ、子どもを持つことに対する不安を解消すること、また経済的不安を軽減すること、働く環境の不安を解消すること、安心して子育てできる環境を整えることなど、妊娠・出産・子育てに明るい未来を感じ、総合的に安心の体制が今まで以上に整っていなければなりません。

それでは、これから妊娠・出産をする可能性の高い今の若い女性の想いや現実はどうなのでしょうか。

私はこの13年間で、約130名の議員インターンシップの大学生を受け入れてきました。女子学生たちと就職や仕事、結婚、出産についての将来展望について話すことがありますが、彼女らは結婚、妊娠、出産を意識はしているものの、それよりもまずは就職すること、そして働いて認められることが当面の大きな課題だと考えているように思えました。現代の多くの女性にとって、そう考えることは自然なことなのかも知れません。しかし、仕事を優先することは晩婚化や晩産化に至る第一歩ではないか、これで良いのだろうかと感じることがありました。

ご承知のように、女性にとって妊娠・出産に適した時期というものがあります。いくら時代が進もうとも、人間の体は晩産化に対応してくれるものではありません。仕事、結婚、妊娠、出産という大イベントを若い時期に一気に迎える女性にとって、20代を中心とした大切な時期を、不安を感じることなく迎えて欲しいと私は願っています。

現代の若い女性には、ひょっとするとまだ妊娠、出産に関するリスクなどの知識と教育が足りないのかも知れません。その充実を図るとともに、我々は「若い女性が、若い時期に」バランスのとれたライフデザインが実現できるような社会を整えてあげるべきではないでしょうか。

「ワーク・ライフ・バランス」は社会に浸透してきています。しかし、若い女性に対するワーク・ライフ・バランスの取組状況の発信など、まだまだ不足していることもあろうかと思います。今一度、「若い女性」の「若い時期」についてどうあるべきかを考え、さらなるワーク・ライフ・バランスの環境整備に取組むべきではないかと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

 

(2)県庁における在宅勤務等の多様な働き方の推進

次に、「県庁における在宅勤務等の多様な働き方の推進」について質問します。

現場の人手不足感の拡大とワーク・ライフ・バランスの考え方の普及等により、現在企業においては多様な働き方が広がりつつあるようです。最近の報道では、大企業を中心に在宅勤務の導入が進んでおり、また中小企業では子育て中の女性が働きやすい職場を、コストを掛けずにつくろうと、「子連れ出勤」を認める動きも出てきているようです。「子連れ出勤」については、一部の大企業も注目をしているようで、実施企業への視察が相次いでいると聞きます。

このように、民間企業では「子育てをしながら働ける環境」の取組みが進んでおりますが、翻って兵庫県の取組みはどうなっているでしょうか。

県においては本年8月から、子育て中の職員の「在宅勤務制度」をスタートされました。都道府県では7例目になるということですが、現在は申し込みのあった本庁の46名の方がこの制度を利用するための事前登録をされ、在宅で資料作成やデータ入力などの業務にあたっていると聞きます。場所にとらわれない働き方、そして通勤時間を省くことで、ワーク・ライフ・バランスを図ることが可能となったことは大変歓迎すべきことでありますし、事前登録者46名中、男性が過半数の24名というのも大変嬉しいものでした。

私は、少子化対策を意識した「子育てをしながら働ける環境の充実」のためには、多様な働き方を進めていくことが重要だと考えています。

そこで、まずこの間進められてきた「在宅勤務制度」に対する評価と効果についてお伺いします。また、国では柔軟な働き方を実現する取組みの一つとして「フレックスタイム」の拡充について検討が進められているということですが、今後、フレックスタイムの導入も含め、県自身が「子育てしながら働ける環境づくり」に向けて、どのように取組む方針であるか、あわせてご所見をお伺いします。

 

 

2 子どもを産み育てやすい環境づくりについて

(1)三世代同居・近居の推進

大きな2番目は、子育て家庭を支える多様な環境づくりについてであります。

県におかれては、「ひょうご子ども・子育て未来プラン」に基づき、子どもの保育、教育、見守りなどの様々な支援と事業を展開されているところです。そんな中、現在県が国に提案されている「三世代同居・近居の推進」について質問をしたいと思います。

「三世代同居・近居の推進」は、二世帯住宅建設や親との近居のための住宅取得への補助など、子育て等のための総合的な支援策を求めているものです。「三世代同居・近居の推進」は、祖父母による子育ての見守りをはじめ、同居の場合は家計全体への経済的なメリットもあります。また、祖父母から孫への消費拡大にも繋がりますし、祖父母の介護も可能な状況を生み出します。

県の調べによりますと、国予算の概算要求では、今のところ、残念ながら「三世代同居・近居の推進」の具体化については動きが確認できないとのことです。しかし、政府が閣議決定した少子化社会対策大綱にも盛り込まれていた項目でもあり、必要性の高い施策であると考えられますので、国の支援を待たずに県独自でも早急に取組むべきではないかと考えます。兵庫県内でも川西市や神戸市で同様の施策を展開しています。県の今後の方針についてお聞きしたいと思います。

 

(2)休日等勤務者のための子育て支援環境の充実

次に、「休日等勤務者のための子育て支援環境の充実」について質問します。

これまでの質問の通り、子育てをしながら働ける環境を支援する体制は日々拡大しているところだと思いますが、労働の現場からは日曜日や祝日、早朝・夜間の勤務などに対応する子育て支援の環境づくりにさらに力を入れて欲しいとの声があがっています。例えば、流通サービス業にお勤めのご夫婦で、夫婦が揃って日曜日勤務の場合などに、子どもをどこに預ければ良いのかと困っているというお声などです。24時間・365日営業という店舗が多く存在する現代では、就業の形態が多様化・複雑化しており、そういった声があがるのも頷けるところです。

NHK放送文化研究所の国民生活時間調査2010によりますと、有職者の勤務曜日は平日88%、土曜56%、日曜36%となっております。平日が圧倒的に多いものの、土曜日においても有職者の半分以上、日曜日においても3分の1以上が働いておられます。

日曜日や祝日、早朝・夜間に働かれるサービス業等に従事される労働者には女性も多く、切実な悩みを抱えておられるケースもあるようです。県内各市では休日保育を実施している市もありますが、政令指定都市の神戸市の保育所182園のうち2ヶ所、中核市の姫路市では58園のうち2ヶ所、私の地元の西宮市では60園で1ヶ所と実施園が少ないのが現状です。それらの保育所は、普段預けている保育所でない可能性が高く、お子さんを連れて行く時間がかかったり、子どもの状況を保育士さんが把握されていないなど、いろいろな面で不都合が生じることがあるようです。

保育所事業については市町が行うものですが、県は市町における休日等の保育ニーズをどう捉えているでしょうか。また、県下市町の取組状況について、どのようにお考えでしょうか。当局のご所見をお伺いします。

 

*************<分割>*************

 

3 今後の経済成長政策について

3番目の質問は、「今後の経済成長政策について」であります。

「地域創生戦略(案)」の基本的目標の2つ目には「地域の元気づくりの基本的な目標」として、経済成長についての方向性と数値目標を掲げておられます。2060年の県内人口450万人を前提として、就業者の裾野の拡大・人材育成、産業・投資の活性化、世界化の推進、イノベーションの創出に取り組み、2020年度には県内総生産(GDP)が国を上回る成長率を維持することを目指し、2050年代には1.5%~2.0%程度の成長率を確保するというものです。また、県民総所得(GNI)についても、「県民総所得に占める海外等からの所得の比率を高めていく」とあります。海外からの所得は、ここ10年間は概ね2兆円程度で推移していますが、さらに拡大していく可能性を私も感じているところです。

このような経済目標を達成していくための鍵は、やはり「人・企業の世界化」ではないかと考えています。海外展開を積極的に進める県内企業の売上高、従業員数の伸びは、その他の企業の伸びを上回っています。その中でも世界に通用する産業、私は特にスパコン「京」やSPring-8など、世界最高水準の科学技術基盤や研究集積を活かした次世代産業分野を、兵庫県発で生み出せないかと考えております。

具体的に言うと、候補に掲げられている航空機や水素エネルギー、ロボット、先端医療などの分野ですが、研究を進め、事業化・産業化に結び付けていかなければなりません。そこで、それぞれの分野における事業化・産業化の可能性等を見越した、県としての支援策についてお伺いします。

 

 

4 ひょうごの森づくりの推進について

4番目の質問は、「ひょうごの森づくりの推進について」であります。

県土面積の約67%を占める森林。これを県民共通の財産と位置付け、森林の機能回復を社会全体で支え、県民総参加で進めるため、県では「新ひょうごの森づくり」と「災害に強い森づくり」を推進しているところです。そんな取組みによって大きな効果が出ている一方、課題も見えてきたところであります。

「新ひょうごの森づくり」では、「森林整備への公的関与の充実」と「県民総参加の森づくりの推進」を基本方針として、①森林管理100%作戦、②里山林の再生、③森林ボランティア育成1万人作戦、の三大作戦を中心に平成14~23 年の第1期、そして平成24年からはその成果を踏まえ、第2期対策を進められてきました。そのうちの「森林管理100%作戦」ですが、近年の実績が目標を大きく下回っています。

第1期の10年間では目標の87,500haに対し、86,073haという間伐を実施し、達成率は98%となりました。しかし、第2期に入ってからの平成24年、25年、26年は、3か年の目標25,632haに対して実績は11,088ha、達成率は43%となっています。明らかにペースが落ちております。

目標を達成できなかった理由として、「伐採や搬出等の効率の良い森林に間伐が集中し、条件不利地等で間伐が進まなかった」と、安全元気ふるさとひょうご実現プログラムの取組み状況に記載されています。また、昨年の決算特別委員会においても、平成24年、25年の実績が目標を大きく下回っていることについて質問されていますが、その際、環境創造局長から「森林の土砂災害防止機能など多面的機能の増進を一層図るため、森林組合等に対して、高密度路網と高性能機械を組み合わせた集約化施業によるコスト低減を図り、搬出間伐と切捨間伐をバランスよく実施するよう指導していくことなどにより、着実に推進していきたい」と答弁がありました。しかし、平成26年度の実績も芳しくありませんでした。

達成できなかった原因を端的にいうと、国の方針に伴って、これまでの切捨間伐ではなく搬出間伐に転換したことが原因ではないかと私は理解しています。

 

次に、話は変わりまして「災害に強い森づくり」についてです。

森林の防災面での機能強化を早期・確実に進めるため、県民緑税を活用した災害に強い森づくりを第1期の平成18年~、そして第2期の平成23年以降も継続して取り組まれています。緊急防災林整備や針葉樹林と広葉樹林の混交林整備、野生動物育成林整備などであります。これらの整備により、急勾配の渓流における土砂災害の軽減や、野生動物による農作物被害の軽減などの効果が出ています。しかし、昨年の8月の集中豪雨により、丹波地域では流木・土石流災害、六甲山系では松枯れ跡地の表層崩壊が発生しました。そんな中、県は学識者による事業検証委員会から、第2期の事業効果検証を含む「災害に強い森づくりの新たな提言」を受けたところでありますが、今後はそれらを活かし、さらに効果の高い取組みの推進を願うところであります。

 

このように刻々と状況変化する森への取組みは、現実味ある目標や考え方のもと、施策を検証・展開する必要があると思いますので、当局に今後の取組みについてのご所見を伺います。また災害に強い森づくりについては、県民緑税の延長について上程されているところでありますので、その事業の内容・効果についてもご答弁ください。

 

 

5 民間集客施設等の耐震化の推進について

5番目の質問は、民間集客施設等の耐震化の推進についてであります。

地域創生戦略(案)においては、2060年の兵庫の姿として、世界最高水準の防災基盤と防災意識を持つと記載されています。その将来像に向かって、県では建物の耐震化の推進に向けた様々な先進的助成制度を展開しているところです。

まず、建物の耐震化ですが、平成25年に国レベルで集客施設の耐震化を目指す動きがあり、同年11月には「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が改正施行されました。5,000㎡以上の大規模な病院や店舗、ホテル等の不特定多数の者が利用する「多数利用建築物」が対象で、耐震診断の実施と本年12月末日までにその結果報告が義務付けられております。著名な観光地や温泉街を複数抱える本県への影響が心配されるところですが、これまでの間、県は市町とともに該当する建築物の耐震診断や耐震改修の設計、工事に対する補助を実施されてこられました。旅館・ホテルでは該当の建物28施設のほとんどで耐震診断は着手済みで、補強設計、改修工事に今後進んでいくと思われるとのことです。

しかし、次に問題となるのがそれより小さい規模の集客施設です。延べ床面積が2,000㎡~5,000㎡のいわゆる中規模の建物で、旅館・ホテルで言いますと、県内にはおよそ50程度あると見込まれています。これらは耐震診断の義務化の対象とはなっていないものの、耐震基準に達しない建物については指示対象となることから、こちらも耐震化を進める必要があります。大規模の場合と比較し、これらの施設を運営する事業者には資金面での余力は少ないと思われますので、事業者負担を軽減する支援策が必要ではないでしょうか。また、大規模な場合は、避難所としての活用の協定を県や市町と締結すれば、防災拠点建築物として国の補助制度を活用し、手厚い支援を受けられますが、中規模には現在そういった補助制度はありません。今年度改定期限を迎える兵庫県耐震改修促進計画の見直しを行う中で、中規模の旅館やホテルの耐震診断や改修について、今後の方針やご所見をお伺いしたいと思います。

また、関連する質問になりますが、以前から課題となっている住宅の耐震化の推進についてもあわせてお聞きします。

「安全元気ふるさとひょうご実現プログラム」の平成26年度の取組み状況の中で、簡易耐震診断の実施戸数が目標5,500戸に対して3,096戸という結果になったとの発表がありました。居住者が高齢化する中、改修意欲が年々低下しているとの分析をされているようですが、神戸市の取組みのように対象物件にお住いの方々を訪問するなど、所有者に対して積極的な取組みを展開する必要もあるかと思いますが、ご所見をお伺いしたいと思います。

 

 

6 特別支援学校における就労支援について

6番目の質問は、特別支援学校における就労支援についてであります。

特別支援学校では、障碍のある生徒の希望や特性に応じて適切な教育、指導が行われているところでありますが、その中でも卒業後を見据えた職業教育やキャリア教育、就労支援について質問をしたいと思います。

会派での視察や調査などによりますと、平成26年3月卒業の本県の特別支援学校高等部卒業生の一般就労率は16.5%ということで、全国平均の28.4%に比べて大変低いということがわかりました。都道府県別でみても下から2番目という状況です。

就労にあたっては生徒のやる気や希望に加えて、保護者の方々のお気持ちもあろうかと思いますが、特別支援学校の教育を通じて「生きる力」を育んでいるわけですので、自立と社会参加を実現するためにも可能な限り就労できるよう様々なサポートをしていかなくてはならないと考えます。

県ではその対策として、就職支援コーディネーターの配置を県内3か所に拡充され、また地元企業の人事担当者等に授業を公開して理解を深めてもらうことを進めておられます。また、生徒の技能水準を公的に証明する認定資格の開発を進めるなど、兵庫県特別支援教育第二次推進計画に基づいて順次施策を展開されてきているところです。

他方、障碍者の法定雇用率を達成している企業は県内の49.1%であるものの、雇用されている障碍者は年々増加しており、現在12,000人を超える方々が就労されています。障碍者を雇用されていない企業もまだ数多くあるわけですから、生徒たちの技能が活かされる業務のある企業に対し、受入れていただけるように、企業との関係を新しく築いていくことが必要だと考えます。

以上のように考えますが、県教育委員会の今後の方針についてご所見をお伺いします。

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