竹内英明議員が質問(決算審査・総括審査)を実施

第310回9月定例会 決算特別委員会質問 (総括審査)
2011年10月21日(金)

1 自殺抑制の取り組みについて

 昭和60年以降、1,000人前後で推移してきた本県の自殺者数は、平成10年に1,400人を超えて急増して以降、1,300人~1,400人という高い水準を続けている。
 平成22年4月に、わが会派の代表質問を受けて兵庫県は、全国に先駆けて「兵庫県障害福祉課いのち対策室」を設置し、専属の部署を設けて市町と連携した自殺防止の取組を進めており、一定の評価しているところである。
 一方、厚生労働省は、平成19年以来の重点的な対策として取り組んできた、「がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病」について、近年の患者数の急増を背景に「精神疾患」を加えて「5大疾病」として重点的な取り組みを行う方針を固めた。
 平成20年に同省が行った調査によれば、糖尿病の患者が237万人、がん患者が152万人だったのに対し精神疾患は323万人と、いずれをも上回っていたことが、その大きな要因であるが、年間3万人を超える自殺者のおよそ9割が何らかの精神疾患にかかっていた可能性があるとの指摘もあることから「5大疾病」の位置づけとその対策の重要性が理解できる。
 本県における自殺対策推進方策においては、その基本的認識として、次の2点があげられている。
 1つには、「多くの自殺は、経済・生活問題、健康問題、家庭問題など様々な要因とその人の性格傾向等が複雑に関係して発生しており、自殺を図る直前には、うつ病、アルコール依存症等の精神疾患を発症するものの、うつ病等の精神疾患に対する早期発見と適切な治療によって、多くは防ぐことができる。」ということ。
 2つには、「家族や職場の同僚などは、自殺のサインに気づいていることも多く、県民一人ひとりの気づきを自殺予防につなげていくことが重要」ということである。その通りだと思う。
 兵庫県自殺対策推進本部会議の資料をみると、平成15~19年における圏域別年齢調整自殺死亡率で、「男性では、但馬・丹波県民局管内が高く、女性では、淡路が高い傾向にある」と分析されている。
 しかし、私が平成22年の個別の自治体や県民局ごとの数値を調べても、但馬の自治体でも、但馬県民局平均では人口10万人当たり22.3というが、香美町が9.5で、朝来市が67.6と大きく違っていることからも、エリアを区切った優先的な対処療法というよりは、各市町レベルでのきめ細かな取り組みが重要である。
 現在、兵庫県いのち対策室では、「①県民の自殺予防に対する理解の促進」、「②こころの健康保持対策(相談体制の充実等)」「③うつ病を中心とした精神疾患対策」そして「④自死遺族支援対策」の4項目を柱に取組を進めているが、最初に申し上げた5大疾病の話を持ち出すまでもなく、私は中でも②と③が重要だと思っている。
 私はフィンランドに行って自殺対策についてその取組、すなわち日照時間に関する研究や自殺のサインなど医療的ケアの先進事例による成果を勉強させてもらったことがあり、また、日本で自殺率の一番高い秋田県では、2001年度から2005年度にかけて、県下6町をモデル地区に指定して、うつ病と自殺に関する地域ぐるみの健康教育活動で、自殺率を下げることに成功したと聞いている。
 さらに日本では、気候風土のほか、景気と男性の自殺に相関関係にあるとも言われており、こうした面からの対策も必要になってくるだろう。
 平成22年における県内自殺者は1,359人であり、目標として「平成28年までに県内の自殺死亡者を1,000人以下に減少させる」とされている。
 我が会派としても、9月に行った重要政策提言で、「マスコミとの協力体制の構築も含めた、職域、学校、地域等との連携」「相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備等の推進」「目標達成に向けた年次計画の作成」「精神保健的な視点だけではない社会・経済的な視点をも含めた県民運動としての取り組み」などの重要性を申し述べるなど、重要なテーマとして取り組んできた案件である。
 しかしながら、一方で講じられる対策が、総花的になり過ぎてはならず、施策の優先順位をきちんと付けた取り組みとすべきであるとともに、実務面でも部局間の縦割りを克服してオール県での対策であるべきこと、さらに支援対象者に関して重要なのは、より複雑な問題を抱えた人ほど、本来支援を必要としているにもかかわらず支援対象から埋没しているケースは多くあり得るということをしっかりと認識しておくべきである。
 こうした課題や施策の検証等を考えるとき、県の目標達成はそんなに簡単なことではないと思われるが、政府も3万人以下という目標達成に力を入れており、積極的な取り組みを期待する意味から、本県における自殺者数の現状と目標達成に向けた決意を伺う。

2 障害者雇用の推進について

 我が会派はこれまでも障害者雇用に関しては、「障害者雇用率制度を中心として一層の雇用拡大を図ることとし、企業に対する制度の普及・啓発、採用後のサポートや特例子会社設立への支援等を推進するとともに、福祉関係機関やハローワークとの連携を図りながら、障がい者の特性や希望に応じた職業訓練、職業指導に積極的に取り組むこと。」の大切さを提言し、取り組んできた。
 雇用情勢の低迷が長期化している中、不況の影響を大きく受ける障害者の雇用に対しては、より実効性のある対策が急務となっている。
近年における企業の社会的責任や共生社会の実現に向けた関心が高まる中、障害者の自立支援に向けた企業の取り組みをしっかりと調査するとともに、そのノウハウを活かした支援策を講じる必要がある。
 例えば、精神障害者の雇用率が低いとされる原因の一つに、企業職場の理解の低さや心の健康管理上の問題もあることから、それに対応する環境づくりも大切で、臨床心理士等の配置が急がれるという見方も多い。
 本県では、障害者の就労支援に積極的な「就労応援企業」を募集・登録し、企業等における障害者雇用の理解促進を図ることとしており、平成23年10月1日現在で、542社の登録を戴いているが、今後はさらに進めて、企業職場で障害者が能力を発揮しやすい雇用・就労条件や職場環境づくりを積極的に進められるような支援と、その進展プロセスを社会的にモニタリングできる仕組みの構築などの施策展開も検討していく必要がある。
 一方、部局審査の際に我が会派の掛水委員が指摘したように、改正障害雇用促進法で定められた法定雇用率1.8%について、本県は2010年実績で1.81%と辛うじて上向いているものの、極めて際どい状況にあり、間違っても法定雇用率をギリギリ達成しさえすればクリアしたかのような錯覚を抱くべきではない。
 障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現することは少子高齢化が進展し多様化が進む我が国の今後の在り方を考える上で大変重要な課題である。
 そうしたことを県民に対してしっかりと周知しながら、自治体、教育機関、医療機関、企業、NPO等が実施して成果を挙げている先進事例やノウハウを活かした取り組みが必要と考えるが、障害者雇用の推進について当局の所見を伺う。

3 特別支援教育の充実について

 平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障がいのある児童生徒の支援をさらに充実する特別支援教育がスタートして以来4年が経過した。
 障がいのある児童・生徒が生活や就労などの面で本来の力を発揮できる環境整備は全国的に進められており、特別支援教育を取り巻く環境変化が著しい中、従来の対象とされる障がいだけでなく、知的な遅れのない発達障害や、児童生徒数の約6%存在しているとされる、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症を含めた児童生徒の自立や社会参加に向けた取り組みが、ますます重要視されている。
 しかしながら、特別支援教育を取り巻く状況は、障がいのある児童生徒の増加や、障がいの多様化による質的な複雑化が進んでいるといわれており、一方でこれに対応できる教員の人的不足や、専門性が不十分なものとなっているとの指摘もあり、これまでの取り組みをさらに工夫・拡充しつつ、様々な障がいに対応できるよう支援体制づくりや、学校種間の連携、教職員の専門性の向上などを一層進めていくことが肝要である。
 さらに、通常の学級にいる軽度の知的障害のある子どもたちが逆にエアポケットに入りつつある現状も見落としてはならず、子どもたちを落ちこぼすことのないセーフティネットとしての特別支援教育の全体的機能を、今一度考える必要がある。
 本県では、平成19年に「特別支援教育推進計画」を5カ年計画として策定し、県立特別支援学校の整備推進やLD、ADHD等の理解と支援、後期中等教育の充実、教職員の専門性の向上など、様々な取り組みを精力的に行ってきたところであるが、今後とも子どもたちの障がいの種類や程度に応じて、一人一人の個性を尊重するとともに、個人の才能を伸長して、自立に向けた成長を促すためには、障がいのある児童生徒をとりまくすべての人々が特別支援教育への理解を深め、年齢が進んで教育機関の変化(保育所・幼稚園から特別支援学校小・中・高等部への変化)により支援が寸断されることのないよう部局間の連携を図りながら、一層きめ細かく適切な支援を強化していく努力が欠かせない。
 先日の教育委員会部局審査でも指摘があったように、姫路特別支援学校をはじめ県内各地の特別支援学校に関わる課題として、普通教室や運動場の不足などといった環境改善の問題なども取りざたされている中、制度から4年を経過した特別支援教育はまさに転換期にある。
 特別支援教育の一層の充実化に資するため、これまでの課題の先送りで無い決意のもと、その予算確保と事業の着実な実施について、所見を伺う。

4 都市計画道路の見直しと公共交通機関の充実について

 都市における人や物資の円滑な移動を確保するための交通機能のほか、市街地形成機能、景観形成機能など様々な役割を有する都市計画道路は、急速にまちづくりが進められた高度経済成長期に多くの計画が決定されてきたといわれるが、本県では、戦後からの高度成長期に、都市の拡大を想定して多くの都市計画道路が決定されたものの、50年以上未着手の区間が多く残されていると聞いている。
 例えば、県全体の都市計画道路の延長を見ると、これまで計画された約2,500㎞の幹線街路のうち、未着手となっている部分が約720㎞に及んでおり、その割合は約28%で、特に昭和20年~33年に決定された1,335㎞の幹線街路のうち、約3割にあたる396㎞が未着手の状態である。
 老年人口の増加に伴い、今後の都市計画道路の整備には、安全・安心で快適な移動空間機能の確保など質の高い都市施設としてのニーズが求められているとはいえ、こうした状況を鑑みれば、その必要性や整備手法等の適正化等を改めて検討する必要性がある。
 一方、少子高齢化や地球環境問題などの社会情勢が大きく変化する中、都市部における交通環境改善や地方部での生活の足の確保などを鑑みた公共交通ネットワークの充実が求められている。
 政府は本年2月に「交通基本法の立案における基本的な論点について」を発表し、環境問題やまちづくり政策など、持続可能な交通、社会づくりに資する私鉄、バス、フェリー等の公共交通の充実・発展は21世紀に求められる国家的な重要政策と位置づけている。
 本県でも、公共交通の充実や利用促進方策をひょうご交通10カ年計画としてとりまとめ、その推進を図ってきたところであるが、特に今年は策定から5年を経過した節目といえる。
 バリアフリー新法に伴って、まちづくりとともに公共交通の重要性が高まっている中、生活交通バスや鉄道など、県内公共交通の廃止・削減などにより移動権が侵害されつつある現状を打ち破るとともに、買い物難民や通院難民の解消や計画で定める公共交通の輸送分担率40%達成に向け、地域で安心して暮らせる整備が重要である。
 成熟社会にふさわしいまちづくの推進にあっては、地域特性に応じた新たなまちづくりの視点から、都市計画道路については、強力なリーダーシップをもって、見直すべきは見直される決断を行う一方で、公共交通機関の整備充実を一層進める取り組みが必要になってくると思われるが、所見を伺う。

5 総合治水対策の推進について

 県土整備部の部局審査において我が会派の三戸委員が質問したが、改めて所見を伺う。
 治水事業は、県土を保全して、水害や土砂災害から国民の生命と財産を守り、活力ある経済社会と安全で快適な国民社会を実現するための生活基盤の中でも最も優先的に整備すべき根幹的事業である。
 ごく近年だけでも2004年の台風23号や、22名の死者を出した2009年の台風9号による兵庫県西・北部豪雨などは未だその傷跡も癒えず、台風12号と15号もあわせると、いわば本県全域が台風常襲地帯ともいえるのではないかとも見まがわれる状況にあり、洪水・高潮といった水害や、地すべり・土石流・急傾斜地崩壊などの土砂災害からの防御策の取り組みが急がれることが改めて実感された。
 また、近年は全国各地で局所的な集中豪雨が頻発しているなか、いわゆる都市型水害が増加しており、本県においても同様な浸水被害が増えている。
 その主な要因としては、都市化の進展に伴う雨水の地下浸透の減退等によって、流域が持つ保水・遊水機能が低下し、雨水の流出量が短時間に増大することが指摘されているが、こうした都市型水害の発生を防止するためには、雨水の河川や下水道への排除のみならず、地域全体での雨水の流出抑制に取り組むことが大切で、加えて、土地利用や減災対策といったソフト対策も併行して進める必要がある。 
 本県でも、河川や下水道の整備に加えて、雨水を貯めて流出量を抑える「流域対策」、浸水被害が発生した場合でも被害を小さくする「減災対策」を組み合わせた『総合治水』の推進が重要との認識のもと、これを実現するための、「兵庫県総合治水条例(仮称)」の策定が計画されている。
 これは一定規模以上の宅地開発をする業者などに調整池の整備を義務付けるほか、流域ごとに推進計画を策定するもので、都道府県単位では全国初の条例化といわれている。
 台風や集中豪雨による洪水被害の多発を受け、県では従来の河川整備による対策では限界があるとして、総合的な治水対策を先駆けてまとめた武庫川水系河川整備計画を踏まえた検討を進めていたと聞くが、今後はとりわけ、ハード面の対策の限界をどのように踏まえ、県民に対する説明責任をどのように果たしていくのか、また他府県内の市が施行した条例による効果や、昨日(10/20)まで行われていた条例骨子案に関するパブリック・コメントの声を如何に分析した上で、その評価をどのように本県施策に活かそうとしているのか伺う。

6 健全な財政運営のあり方について

 これまで財政状況については今回の決算委員会だけでなく、本会議、予算委員会等でも多くの時間を割いて議論してきたが、今回は知事も出席されるのでマクロの話をさせていただく。
 まず、昨今の金融不安、ヨーロッパ、ギリシャの例を取り上げたい。
 ギリシャは、外国に国債を買ってもらっていたが、市場でギリシャの財政赤字が取り沙汰され、ギリシャ国債が暴落した。簡単に言うとこれがギリシャ問題、ヨーロッパの金融危機の発端で、その後、ギリシャを支援するヨーロッパ諸国の通貨であるユーロの信用が落ち、ユーロ安となり、その結果、相対的に信用があるスイスや日本にお金が流れて円高やスイスフラン高になっている。日本も多額の財政赤字を抱えているが、日本国債の外国人保有率は5%ほどとかなり低く、個人資産の方が国債残高より多いから暴落しないとも言われる。
 いずれにしろ、こうした観点から各国は財政赤字を減らす、すなわち財政収支のバランスをとろうという動きになっているが、日本やアメリカはなお赤字を続けており、増税や歳出削減ができない国、痛みから逃げる国と言われている。しかし、兵庫県は、知事や職員の給与カット、県単独福祉医療の見直しなど痛みを伴う改革を実施してきており、議会としても報酬の10%カットを継続するなど、国に先んじて取り組んできたところである。
 しかし、私が本県財政で心配するのは、財政指標・地方交付税リスクと県債総額・金利リスクであるが、やはり最大のリスクは金利だと思っている。
 行政の場合、先物取引や外国債での運用など金利のリスクヘッジを資金運用でできる民間企業ではない。金利を自由に設定できる立場にもない。やはり県債残高という量でリスクを管理しないといけない。
 というのもフローの指標である実質公債費比率が21.2と兵庫県の21.0を抜いてワースト2になった徳島県であるが、ここの将来負担比率は238.6%と兵庫県の350.2%より111.6%も良い。実質公債費24.1とワーストの北海道でも将来負担比率では330.2と兵庫より20%もいい。兵庫県はやはりストック面での課題が数字にも現れているということである。
 本県の場合、起債が認められるものは全て起債を原則とし、通常の起債で足りない部分も行革推進債、退職手当債といった資金手当債を活用してきた。本県は、地方債の許可期限が30年となっていることから、最長では30年の超長期債も発行しているが、それより短い償還期間で満期を迎えた県債については一定の範囲で再び借換債を発行して、その償還資金を工面している状況である。つまり、当面は高水準の県債残高が維持されるものと見ている。しかし、残高が多いまま、金利が高くなれば、必然的に利払い額は増えていくことになる。現在は低金利によって助かっているが、今後金利が上がれば大変な負担になってくることは容易に想像できる。
 金利と言う観点から、一般会計等のほか公営企業会計も含めた支払う県債総額をみるが、全会計の21年度末県債残高4兆7032億円に対する支払利子は22年度747億円、金利は1.59%。一方県全体の基金の受取利息は16億円。ただし、財政基金、特定目的基金や他の集約基金等の利子は、県債の償還財源には充てられないため、県債管理基金のルール積立分に限れば、2億円の受取利息しかない。差し引きをすると金利だけで745億円の支払超過となっていることになる。この利払いについては交付税措置で一定のカバーがあるため、差額そのものが県だけでなく国も負担しているということであるが、いずれにしろ、この金利リスクは厳しく見ておかなければならない。
 「第2次行革プラン」の中間目標として、「県債残高を平成25 年度末には平成19 年度末[地財33,591]の95%水準に圧縮する」という目標が掲げられている。22年度は原口総務大臣の強いリーダーシップで地方交付税の代替措置と言われる臨時財政対策債の発行が1900億円も認められたが、現在の推移を見ていると、この目標達成は容易だろう。新行革プランの想定より内容は改善傾向にあるということで、もう少し厳しい目標設定が可能になったのではと感じている。そこで本県の県債残高を縮減する取り組みについて、もう少し厳しい目標設定にすべきではないかと、また、そうしたメッセージがやや弱いのではないかという気もしているが、また、財政の最大のリスクである金利についての所見もあわせてお伺いしたい。

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