黒田 一美議員が一般質問を実施

 

質問日 :平成28年6月8日(水)

質問者 :黒田 一美

質問方式:一括

 

1 がん対策の推進について

(1)がん教育の推進について

「がん」という病気イコール「不治の病」「怖い」「死と直結した悲観的なもの」というイメージを持たれている方が今でも多いのではないでしょうか。日本人の2人に1人ががんにかかる時代。しかし、自分が健康な時には、がんの正しい知識を知る機会が非常に少ないのが現状です。

私は、小学生など早い時期から、がんについて正しく教えることが必要であると考えています。がんは、治療することで必ずしも死に向かう病気ではないことや、どのように予防すればよいのか、また、がんになった時に、どう向き合い治療していくのかなどについて学ぶことにより、がんを予防する良い生活習慣やがん検診の受診につながります。また、万一がんになったとしても、適切に治療を受けることができます。

平成24年度から始まった国の「第二期がん対策推進基本計画」に、子どもに対するがん教育の推進が盛り込まれ、文部科学省は、「がん教育の在り方に関する検討会」を設置し、検討が進められました。平成27年3月には、報告書がまとめられ、平成26から28年度にモデル校を中心に今後の課題を検討したうえで、平成29年度以降全国に展開することとしています。

県の「がん対策推進基本計画」においても、正しい知識の普及啓発を掲げられ、昨年度から、教育委員会において、学校教育活動全体の中でがん教育を推進するための準備が進められています。

私は、がん教育を効果的に実施するためには、教え方に工夫が必要であると考えています。学校の先生から正しい知識を教えることはもちろん必要ですが、例えば、医者等から専門的な立場で話をしていただく。また、実際にがんになったことがある方から話を聞く機会を設けてはどうでしょうか。自らががんになった時の気持ちや具体的な対応、仕事や家族などについて語っていただくことで、子どもたちが、より現実のこととして深く理解するのではないでしょうか。

そこで、がん教育を実効あるものにしていくために、今後どのように取り組んでいかれるのかお伺いします。

 

(2)粒子線治療の保険適用の拡大について

平成27年2月定例会で、私は、小児がんについての粒子線治療の保険適用に向けた取組について質問しました。当時、粒子線治療は、先進医療として保険診療との併用が認められていましたが、粒子線治療の部分は、全額自己負担となるため、患者の経済的な負担が非常に大きく、受診を希望する患者すべてが、粒子線治療を受けることができない状況でした。

西村病院事業管理者からは、「国に対する要望や粒子線治療施設を有する自治体で構成する全国粒子線治療促進協議会等を通じた要望活動を展開してきた。」、「放射線腫瘍学会の要請を受け、県立粒子線医療センターの医師が治療効果の検証作業に協力するなど、保険適用の実現に向けた取組を精力的に行っている。」と、小児がんに苦しむ子どもたちに希望を与える答弁をいただきました。

国への粘り強い働きかけなどにより、本年4月の診療報酬改定で、粒子線によるがん治療の一部の症例に保険が適用されることになりました。対象は、小児がんに対する陽子線治療と、手術非適応の骨軟部がんに対する重粒子線治療で、大きく前進できたと考えています。兵庫県が保険適用の風穴を開けたと言ってもいいでしょう。これにより、医療費の自己負担は、高額療養費制度や乳幼児等・こども医療費助成事業による助成も合わせて、大幅に少なくなります。一方、死亡率が最も高い肺がんをはじめ、頭頸部の非扁平上皮がん、肝臓がん等については、粒子線治療の保険適用が見送られました。

粒子線治療は、従来の放射線による治療が効きにくかったり、手術が困難ながんに対して効果が高い場合も多く、また、がん患者の身体への負担や副作用が少ないため、ニーズはますます高くなることが見込まれます。

私は、より安全にがんを治療できる方法があり、そして、その治療法を患者が望んでいるにも関わらず、経済的な理由から治療が受けられず、命を失う、または合併症が残ってしまうことがあってはならないと考えています。

そこで、成人がんについても、粒子線治療の効果が高いがんから優先的に、できるだけ早期に保険適用が図られるよう強く望みますが、今後の取組も含めて、当局のご所見をお伺いします。

 

(3)がん患者の就労支援について

がんの手術は、日帰り手術や3日程度の入院の内視鏡手術も行われるようになるなど、患者への負担が少なくなってきています。粒子線治療や放射線治療も通院で済み、治療法の進歩とともに、仕事を続けながらがん治療を行うことが十分可能になってきています。平成22年国民生活基礎調査に基づく推計によれば、約32万5000人ものがん患者が、仕事を行いながら通院されています。かつては不治の病とされていたがんも、5年生存率が6割に近づき、がんと共存する時代になってきています。

一方、がんが原因で仕事を辞めなければならないケースも少なからず存在しています。平成26年の厚生労働省の報告によると、がんにかかった勤労者の約30%が依願退職し、約4%が解雇され、自営業者等の約13%が廃業されています。がん告知のショックで仕事を辞めたり、働きながら治療ができるにも関わらず、治療に専念しなければならないと思い込み仕事を辞める人もいます。また、職場に病状を理解してもらえなかったり、支援制度が十分でなかったりする場合も見受けられます。

がん患者が仕事を辞めることになると、治療費の負担が困難になったり、生きがいややりがいを失うことにもつながります。一方、企業側としても、これまで育成してきた貴重な人材を失うことになります。

平成24年度から始まった国の「第二期がん対策推進基本計画」には、新たに「がん患者の就労を含めた社会的な問題」が分野別施策として追加されました。本年2月には、がんなどの疾病を抱える方々が治療と仕事を両立できるよう支援する企業向けのガイドラインが発表されました。さらに、がん患者の雇用継続への企業の努力義務を新たに定める「がん対策基本法」改正案が次の国会に提出される動きもあります。

私は、がん患者の就労については、企業側が、がん患者の状況を十分勘案し、患者の身になってきめ細くサポートしていかなければならないと考えています。

そこで、がん患者の就労支援について、がん患者を取り巻く現状と今後の企業側の理解促進に向けた取組についてお伺いします。

 

2 原子爆弾被爆者と被爆二世対策の充実について

去る5月27日に、オバマ大統領が、G7伊勢志摩サミットの閉会後に広島を訪れました。平和記念資料館を視察、原爆死没者慰霊碑に献花し、すべての犠牲者を追悼しました。被爆者の前で「我々は核兵器のない世界を追求しなければならない」「勇気を持たなければならない」と核廃絶を国際社会に訴えました。私は、この時を、特別な思いで見守りました。私の母は広島の爆心地で原爆に遭った被爆者で、5年前に他界しました。オバマ大統領が献花された原爆死没者慰霊碑には、母の名前が納められています。母は、原爆の後遺症や不安の中で、被爆二世である私たち兄弟を産み、育ててきました。他界する最後まで、戦争のない、核兵器のない世界を悲願していました。原爆を投下した国の現職大統領が、投下されたまさにその地を訪問し、被爆の現実に触れられたことは、歴史的に意味深く、この動きが一過性にならないよう、核兵器の廃絶に向け決意を新たにしなければなりません。

昭和20年8月、人類史上最初の核兵器である原子爆弾が広島市、長崎市に投下され、強烈な熱線と爆風により、一瞬にして街が破壊されました。多くの尊い命が奪われ、数え切れない人々が傷つきました。被爆直後だけでなく、その後も長きにわたって多くの被爆者が健康被害に苦しまれ、多くの方々が亡くなりました。

被爆70年が過ぎ、被爆者健康手帳所持者の平均年齢は80才を超えています。被爆二世も多くが定年退職を迎える年齢になっています。これからも、被爆者自らが被爆体験の風化を防ぎ、原水爆禁止運動や平和運動を担っていかれるとともに、被爆体験の継承者として、被爆二世により、これらの運動が引き継がれることが期待されています。

県は、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」に基づき、被爆者健康手帳の交付、医療費の給付や健康診断を行っています。また、本県が広島県、長崎県に次いで創設した介護保険サービス自己負担額への助成を行うとともに、原子爆弾被爆者相談室において、被爆者の心身の健康、日常生活に関する相談に応じています。

一方、県内の被爆者数は、年々減少し平成27年度3,543人で、さらに高齢化が進み、不安が高まっています。被爆二世の健康診断受診者も平成27年度339人と極めて少ないのが現状です。

私は、被爆体験をいつまでも継承し、再び戦争犠牲者、被爆者をつくらせないためにも、県がしっかりと被爆者と被爆二世を支援していくことが重要であると考えています。

そこで、原子爆弾被爆者と被爆二世対策を一層充実させていくために、どのように取り組んでいかれるのかお伺いします。

 

3 インターネットによる人権侵害について

(1)インターネットによる人権侵害への対策について

インターネットは、今や情報収集やコミュニケーションツールとして、私たちの生活に欠かせません。しかし、一歩使い方を誤ると、いじめや犯罪を誘引し、個人情報が流出するなど、人権に関わる重大な問題を引き起こします。法務省によると、平成27年に発生したインターネットによる人権侵害行為は、過去最多の1736件で、10年前の6.4倍と急増しています。平成25年度に実施した県の「人権に関する県民意識調査結果」においても、インターネットによる人権問題がクローズアップされています。

昨年、被差別部落の具体的な所在地等を記した「部落地名総鑑」がインターネット上に掲載されるという極めて悪質な人権侵害事案が発生しました。昨年8月、兵庫県町村会から掲載削除に係る緊急要望が県に寄せられたことを受け、知事は、法務大臣に対して、所要の対応を緊急かつ積極的に取り組まれるとともに、法的措置を含めた抜本的な対策を講じるよう強く要請されました。本年4月、横浜地方裁判所相模原支部は、インターネットへの掲載削除の仮処分を決定し、ネット上へのリスト掲載は、部落差別を助長する悪質な行為であると認めました。しかし、被差別部落の関係者の実名がインターネットに掲載されることなどが後をたたず、兵庫県の関係者も掲載されています。そして、いったん拡がった情報は取り返しがつきません。

インターネット上の人権侵害は、誰でも簡単に匿名で書き込みができ、世界中のどこからでも閲覧やコピー、転載が可能で、削除も難しく、被害者に対する対応が非常に困難な状況にあります。

本年3月、人権啓発の基本方向を示す県の「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」が、社会情勢の変化等を踏まえ改定されました。インターネットによる人権侵害も新たに位置づけられました。

また、さきの第190回国会に「部落差別の解消の推進に関する法律案」を、民進、自民、公明の3党共同で提出されました。この法案は、現在もなお部落差別が存在し、かつインターネットなど情報化が進む中で、部落差別が新たな状況にあることを踏まえ、国と地方公共団体の責務や相談体制の充実、教育と啓発などを行うことを柱としており、一日も早い成立を願っています。

そこで、本県の新たな総合推進指針に基づき、実効性のある取組が必要であると考えますが、インターネットによる人権侵害対策に、今後どのように対応していかれるのかお伺いします。

 

(2)インターネットによる人権侵害の防止に向けた教育について

高校生や中学生、最近では小学生までもが、スマートフォン等を使ってインターネットを利用する時代になり、利用者数は年々増加しています。

平成27年度の内閣府の調査によると、スマートフォンを所持している青少年の利用内容は、高校生の92%、中学生の80.3%、小学生の43.9%が主にフェイスブック、ツイッター、LINE等のコミュニケーションアプリを利用しており、子どもたちの間でインターネット上のコミュニケーションが日常化する中、新しい型の人権侵害が発生する危険性が高まっています。

インターネットを通した人権侵害は、24時間陰湿に繰り返されることもあり、逃げることができません。人の心を深く傷つけ、命にかかわるほどの深刻な事態になることもあります。一方、軽い気持ちで、他人の名前や住所、写真、アドレスを無断でインターネットに公開したり、サイトを介して人と知り合い、犯罪にまで発展するケースもあります。インターネットによる人権侵害から自分を守るため、また、相手を傷つけないためにも、インターネットと人権について、学校で適切に指導することが重要になっています。

昨年度、県内の小・中・高等学校の9割を超える1,185校において、インターネットによる人権侵害を、重点的に取り組む人権課題として位置づけ、指導にあたられました。また、新たな課題に対応した人権教育研究推進校において、効果的な指導内容・方法などを実践的に研究されています。

私は、日頃から各学校において、子どもたちを取り巻くインターネットによる人権侵害の実態把握に努めるとともに、実効性のある教育を行い、人権侵害行為を未然に防止することが重要であると考えています。

そこで、インターネットによる人権侵害防止に向けた子どもたちへの教育について、どのように進めていかれるのかお伺いします。

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