第3次行革プラン 3年目の総点検における課題と検討方向に対する意見開陳

【ひょうご県民連合行革意見開陳】

1 行革の基本的立場

「ひょうご県民連合」を代表し、「課題と検討方向」について意見を述べます。この10年近い行財政構造改革の取り組みの中で、当初より収支不足額は大きく改善しており、当局の皆様の努力、県民の皆様の理解と協力に敬意を表します。

しかし、平成27年度決算では依然として330億円の財源対策を行っており、改めて本県の財政状況は非常に厳しく、将来世代に負担を求めている現状に危機感をもっています。

したがって、今後必要なのは、平成30年度の財政収支均衡という短期的な目標を達成することだけではなく、平成31年度以降も見据えながら、持続可能な行政体質を構築することです。そもそも、行財政構造改革を単なる収支均衡のための量的な削減だけで終わらせては意味がありません。ひょうご県民連合は、「税金の使い道を変える」という視点に立って「質的な改革」に重点を置いた取り組みを求めていきたいと考えています。

 

2 選択の集中の基本姿勢について

これから、「課題と検討方向」について意見を述べるにあたって、基本姿勢について述べさせていただきます。ひょうご県民連合では、これからの都市間競争の中で最も大切なのは、「人への投資」だと考えます。したがって、少子化対策や、教育への重点投資が必要だと主張し、県独自の奨学金創設を提案してまいりました。もちろん、この行革の議論では「各論反対」の姿勢はできるだけ取るべきではないと考えておりますが、教育分野、とりわけ子どもたちに学びを直接支援する施策について、見直しの対象とすることには違和感をもっています。むしろ、苦しい財政状況であっても、他の何を我慢してでも、教育にお金をかけるということが、今の時代を生きる私たちの務めだと考えます。

 

3 今後のポスト行革について

私たちは平成31年度以降の兵庫県政のあり方を見通したときに、平成20年度から始まった「行財政構造改革推進方策」に基づく取り組みは、一度総括するべきだと考えています。今後、人口が減少していく中で、財政状況が急激に好転していくということは想像できません。だからこそ、10年にわたる取り組みの総括なしに行政運営を継続していくことは、組織の持続性を損ねる危険性があります。

もちろん、県として、中長期的な見通しもなしに、その場限りの行政運営を行うことも無責任です。そこで、この10年間の取り組みを総括すると同時に、平成31年度以降の中長期にわたる財政収支の見通しを明確にする必要があります。

 

4 組織・地方機関

まずは、阪神南県民センターと阪神北県民局については統合に向けた具体的な検討を行うべきだと考えています。

また、阪神間や播磨地域のように地域内に複数の県民局や県民センターがある地域では、それぞれの県民局で地域創生にかかわる雇用対策や交流人口増加への取り組みが実施されていますが、より広域的に取り組むことにより、効果が発揮できる事業もあると考えます。

そこで、該当する県民局・県民センターについては、業務の統合・一元化に取り組むべきだと考えます。

また、県民局によっては、関係の事務所や県の関係団体が分散して事務所を設置しているケースがあります。たとえば、丹波県民局と兵庫丹波の森協会はより一体化した運営を行うほうが、業務上はもとより、住民サービスの観点から見ても効率的になると考えます。単なる縮小ではなく、より良い行政サービスを行うという観点から検討をするべきだと考えます。

 

5 給与・定員

定数に関しては、この10年間での3割削減の達成目前にいたっておりますが、県が現在の役割を担い続けるためには、定数の削減は限界にきていると考えます。組織上、限界の人員で活動することは、突発的な課題への対応が困難になる危険性があります。また、長時間残業を行っている職員が多く、有給休暇取得が低調なことも問題です。

このことは労務管理上の問題だけではなく、職員一人一人のモチベーション維持が困難になりますし、日々の職務のみに目を奪われて、能力向上にかける時間もなくなることを懸念しています。正規職員が削減される一方で、行革開始以降再任用職員の採用が増えていることを考えると、組織活力そのものが非常に低下することも懸念しています。もちろん、今後も単純に職員数を増員することは難しいものの、現在の事業実施に支障がないのか、また危機管理上問題はないのか常時検証すべきです。

 

6 事務事業の見直し

先日の質疑において、行革開始以降約1,200の事業を見直すなどの取り組みを行っているとの答弁がありましたが、同時に約60%の事業の見直しが行われていないことも明らかになりました。事務事業の見直しについて、いくつかのステージに分けて提示させていただきます。

(1)必要性そのものが問われる事業

まずは、必要性そのものが問われる事業という視点から意見を述べます。

 

○但馬空港

これまでも会派として何度も指摘してまいりましたが、但馬地域への交通アクセスが格段に改善している中においては、空港の存在意義がますます問われています。そのような状況の中で、現在、実現の目処が立たない羽田直行便への働きかけを続けることを大前提とする存続の主張は認められないと考えます。少なくとも羽田空港や関西国際空港以外の路線の開拓等利用者数の増に向け、相当な努力が必要であり、同時に地元自らが存続に向けた取り組みを実施しようとする姿勢を引き出すことが不可欠です。

 

○県民運動やそれに伴う各イベント

本県では参画と協働のもとに様々な「県民運動」が実施されています。「ひょうご家庭応援県民運動」「『ストップ・ザ・交通事故』県民運動」「防災力強化県民運動」「ため池保全県民運動」「青少年を守り育てる県民スクラム運動」「健康ひょうご21県民運動」「おいしいごはんを食べよう県民運動」等88に上ります。

ただ、残念ながら、これらの多くの県民運動は関係者以外の県民に十分認知されておりません。そもそも、価値観が多様化する中、550万人を超える県民を一つの方向に向けようとする運動を継続するのは難しい上、SNSが急速に普及するなど社会状況が大きく変化している中では、旧来の県民運動の手法では効果がさらに限定的となります。ここで一度県民運動全体を検証・整理すべきです。

 

(2)市町との役割分担において、県が実施する必要性が薄い事業

次に、市町との役割分担において、県として実施する必要性が薄いと思われる事業について提示いたします。

 

○高齢者大学事業

生涯学習そのものは、県民一人ひとりの生きがいを生み出すために必要な事業だと考えています。しかし、以前からも指摘している通り、県内全ての市町で同種の事業が行われています。県と市町との関係においては、生涯学習のカリキュラムを直接提供するのは、住民に最も近い市町の役割です。県は、市町が行う生涯学習のカリキュラム作成の支援を行うなど後方支援の役割に徹するべきです。

県は従来から「市町の提供する生涯学習のカリキュラムは身近な内容で、県の施策は公共性が高いものである」と主張しております。ただ、本当に県が専門性の高いものを提供するのであれば、(公財)生きがい創造協会が実施するのではなく、県立大学や震災記念21世紀研究機構のような研究機関が行うべきですし、必ずしも県下全域で行う必要はありません。県として生涯学習へのかかわり方を見直すべきだと考えます。

 

○    県民ボランタリー活動助成事業

「ひょうごボランタリープラザ」が行っている「県民ボランタリー活動助成事業」に関しては、ボランティア活動そのものがスタートした時代であれば大いに有効だったと考えますが、時代は大きく変わりました。助成を受けている団体をみても地域での活動がすでに一定評価されている団体が多く、また同じ団体に長年助成が続いている事例も少なからず見受けられます。他の団体を発掘・支援する意味からも、ボランティアの育成という事業は地域の実情に通じた市町が実施するべきであり、今後見直しを検討するべきだと考えます。

 

(3)事業手法の見直しが必要な事業について

 

○入札のあり方について

現在、総合評価落札方式の適用範囲が拡大しています。政策誘導を図る意味で総合評価入札は今後も必要だと考えます。ただ一方、入札の本来の目的である価格競争が十分に機能するように常に制度を見直していく必要があります。
たとえば、兵庫県産の資材調達は、場合によっては県内複数箇所からの早期の調達が困難な事例もあり、入札全ての主要産品の条件を県内産と制限をした場合、かえって価格競争が働かないことも予想されます。また本社が県外にあると、県内に一定の生産規模を持つ工場を持っていても、評価の対象にはなりません。県内事業者育成という目的は一定評価できますが、1つでも県外の要素があったら加点されない「0か100か」という方式ではなく、より柔軟な運用が必要です。

また、発注の方法も検討が必要です。事業によっては、結果的に長期間1者応札が続いている事業もあり、結果として費用が高止まりしている可能性があります。1者応札になっている事業の洗い出しが必要です。

 

○補助金の見直し、情報の格差解消と一括交付金化について

補助金に関しては、本庁の各部署、県民局、ボランタリープラザなどの団体において様々な事業が執行されています。しかし、地域団体やNPO間で情報格差が生まれており、必ずしも必要性の高い団体に補助金がわたっているのではなく、情報を入手できる団体が補助金を活用している印象を受けています。実際に、毎年度同じ団体が異なる事業で補助金を獲得しているケースもあるため、公平性を担保するための仕組みが必要です。

また、目的が同じような補助事業は見直しが必要であり、場合によっては市町を対象とする一括交付金制度の創設が必要だと提案します。

たとえば、防犯カメラ助成と防犯グループへの助成は、地域安全の向上という目的は同じです。具体的にどのような防犯活動が効果的なのかは、それぞれの地域によって異なります。むしろ、地域の判断にゆだねた方が、よりよい効果が出ると考えますし、県にとっても審査業務の減少につながると考えます。
○民間提案による業務改善について

この10年間にわたり多くの業務改善を行ってきたことについては、敬意を表します。しかし、職員の皆さんからすれば、今回の点検には「乾いた雑巾をさらにしぼる」という感想を持っているのではないでしょうか? 行政による行政改革は限界に来ていることから、今後は民間との協働による行財政構造改革とする必要があります。具体的には、県の事業について、民間が業務改善の提案をできる窓口を設置するべきです。県の事業について民間から改善の提案があった場合は、前向きに検討し、受入れられるものは受け入れるべきだと考えます。

たとえば、現在いくつかの自治体で携帯用のアプリをつかって住民から道路の損傷などについての情報を提供してもらうシステムが導入されておりますが、住民参加を促すツールなど、民間には行政の中では思いつかないツールがたくさんあるのです。

 

7 投資事業について

現計画では、投資事業の金額が平成26年度から28年度の当初予算3か年平均で年間1,757億円となっています。社会基盤整備プログラムに基づき、南海トラフ巨大地震対策、公共施設の老朽化対策、ミッシングリンクの解消等を推進すると、多額の財源を要することになるのは間違いがありません。しかし、人口が減少することは、県民一人当たりの負担額、返済額が上昇することを意味します。

現状の計画を実施した際に、将来世代にどの程度の負担がかかるのかを明らかにするべきです。各論としては必要な事業であったとしても、返済可能能力に応じた投資であることが明らかにできない場合は、事業の見直しも検討するべきです。まして、現段階で計画にさえ乗っていない事業に関しては、緊急性の高い事業を除き新たに進むべきではありません。

また、投資事業の評価においては一定の改善が必要です。現在投資事業等審査会が開催されていますが、平成12年~平成14年には各年度で休止や、中止があったものの、平成15年度以降「妥当」以外の判定が極端に少なくなっており、平成18年、平成21年にそれぞれ1件休止の判定になっているだけです。もちろん、投資事業の予算が減少している中で、より必要性の高いものや緊急性の高いものが実施されているということは想像できますし、投資事業等審査会が設置されていることにより、事業の選定や費用対効果が当初から内部で十分検討されたうえで提案されてきている成果だとは思います。それでもこの審査結果では、評価そのもののあり方が正しいのかの検証が必要だと考えざるをえません。

 

8 公社・外郭団体による運営事業について

公社・外郭団体においては、収益性が求められる事業については運営を民間に任せ、県の関与を薄くすべきです。「課題と検討方向」でも指摘されていますが、新西宮ヨットハーバー(株)については、大幅な見直しが必要です。

また、外郭団体が運営する施設では必ずしも民間の経営感覚の導入に至っていないケースが散見されます。とりわけ、県民の多くが休暇をとる夏休みや冬休みといった時期に、閑散期と同様の休園日を設けている施設があるように、必ずしも民間の発想が徹底されていないため、見直しが必要です。

 

9 クラブ活動のあり方と教職員の多忙化対策について

「課題と検討方向」の中で、約半数の教員が経験のない競技を指導していることから、指導力の向上が謳われています。クラブ活動による教育効果は否定しませんが、クラブ活動が教員の負担になっている現状は好ましくありません。ましてや、得意ではない分野の競技を学ばせるようなことは避けなければなりません。

そもそも、既に中学校単独でクラブ活動が完結できない地域もあり、クラブ活動に関しては、外部人材の活用、地域団体との連携が必要です。今後、学校教育から社会教育へと位置づけを転換する方向で検討するべきです。またこのことは結果として、教職員の多忙化の解消につながることも意見として申し上げます。

 

10 病院局

西宮における県立病院と市立病院の統合に向けた取り組みは、今後の県内の自治体病院のあり方に大きな影響を与える一歩です。ただ、県内では財政力があるといわれる西宮市でさえ、公立病院の経営や医師確保などの医療の提供が困難である実態を考えるならば、より小さい自治体の公立病院の状況はさらに厳しいものがあります。従来から、県立病院の配置に関しては、地域間のアンバランスが指摘されてきましたが、今回の統合はその問題に対してもあらたな道筋を示すべきものになったと考えます。具体的には、県立病院をそれぞれの地域の医療機関の中核と位置づけ、将来的には県下の自治体病院の再編、ネットワーク化に取り組むべきと提言します。

 

11 企業庁

残念ながら、進度調整地の解消が進まない中で、当該自治体の協力や採算性の確保が前提とはいえ、新たな開発に進む方針には不安を覚えます。採算性を検討するにあたっては、具体的な収支計画を明確にするべきであると考えます。

水道事業に関しては、県と市町水道において業務範囲が異なるものの、大きなネットワークでつながっていることに鑑み、市町の広域化への調整、さらには県と市町の業務統合などを含めて検討を行うべきです。

 

12 職員住宅

職員住宅に関しては、職員のニーズが少ないことを考えると危機管理上必要な住宅や緊急時へのニーズに対応するための最低限の施設以外は、廃止する方向で進めていくべきです。本質的な話をすると、もはや県としての必要性が薄くなったと考えるのであれば、無理に修繕して使用するのではなく、廃止することを検討するべきです。ただ、その際に現在どのような理由で職員住宅が利用されているのかという分析は必要です。たとえば、神戸・阪神地域から但馬地域への異動があった場合、当事者にとっては異動まで10日程度の日程しかなく、急な対応ができないことが多いとお聞きします。たとえば、このようなことを少し改善することによって、職員住宅の必要性を低下させることもできます。

 

13 受益と負担との関係

(1)市町との関係

市町との負担見直しに関しては、見直し候補の事業が必ずしも広域的な観点で取り組むものばかりとはいえないので、見直しについては必要だと考えます。ただし、当然のことながら、市町の理解が必要であり、「県と市町の政策協議の場」において協議を行うべきと考えます。また、県の補助事業で市町の随伴補助を期待する事業を新設する際や、県と市町の負担比率を変えるときは「県と市町の政策協議の場」において議論し、意思決定過程を「見える化」するためのルール化をつくるべきだと考えます。

 

(2)個人の受益負担

受益と負担の観点からは、個人の負担をどう考えるかも検討が必要です。個人が希望して参加する事業の参加料の設定が低額にすぎると感じる事例もあります。今後、事業にかかる人件費以外のコストをある程度まかなえるような、負担は求めるべきです。

 

14 自主財源について

単にサービスを切って収支均衡を果たすだけでは行政としての責任を果たしたことにはなりません。従来からも、企業への超過課税や県民緑税などで自主財源を確保していますが、さらなる取り組みが必要です。たとえば、東京都等で実施・予定されている宿泊税等を検討するべきだと考えます。

また、過去から行われているネーミングライツに関しては、必ずしも効果が出ていないものもあることから、その評価を行い改善するべきです。

 

15 まとめ

本県においては少子高齢化・人口減少による社会保障経費の増といった日本の地方自治体に共通した課題にくわえ、阪神・淡路大震災からの復旧・復興に関する県債償還が重くのしかかっています。また、ここにいる方々にその原因があるものではありませんが、過去の行政運営の中において解消できていない負の遺産も受け継いできたのも事実です。

ただ、残念ながら人口減少の中にあっては、財政状況が急激に改善するような事態は想像することができません。だからこそ、今回の行革では、変化に対応できる組織へと、質的な転換が図れるよう取り組むこと、過去から積み残された負の遺産に対し情報を県民に分かりやすく説明することや、解消に向けた道筋を明らかにすることを求めてまいります。

兵庫県は間もなく150周年を迎えます。先人から受け継いだ私たちの故郷兵庫県。次世代に引き継ぐべきは、負の遺産でもなく、ランドマークのようなハコモノでもなく、歴史・伝統・文化、なにより美しい県土だと考えています。

私たちの世代でこれまでの積み上げられた課題を解決し、さらに未来に責任を果たしていくために、私たちも今後議論をしたいと思います。今回の意見開陳での提案が、今後の企画部会案で十分に反映されることを期待し、意見表明を終わります。

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