最終2カ年行革プラン 第一次案に対する意見開陳

●はじめに

最終2カ年行革プラン(第一次案)に対する、ひょうご県民連合の意見を申し上げます。

まずは、平成20年度から始まった今回の行財政構造改革への評価です。平成19年度には1280億円の財源不足であったものが、人件費の削減、事務事業の見直し、投資事業の抑制など過去8年間の取り組みによって、数値目標であった「平成30年度財政収支不足の解消」は達成が現実的になってまいりました。懸命の努力により、数値目標に対し着実に進んでいるという点については、過去の行財政構造改革の取り組みも踏まえ評価いたします。

しかしながら、我が会派としては、依然として県の行財政運営には課題が残っていると認識しています。行財政構造改革では財政の数値目標を達成するという「量的な改革」に注目が集まりがちですが、本来は、税金の使い道を見直し持続的な行財政体質を構築するという「質的な改革」が求められており、その点に関しては依然として改善の余地があると考えているからです。そこで、さらなる「質的な改革」を求める立場から、我々の基本姿勢を述べたうえで、順次提案させていただきます。

 

●改革の基本姿勢

(1)平成31年度以降を見据えた改革

具体的な提案に入る前に、基本的な考え方について述べたいと思います。

まずは、今回の一連の改革はあらゆる面で平成31年度以降を見据えた改革であるべきだということです。その観点で言えば、過去から検討課題であったものが、依然として検討するという記述にとどまっているものがいくつか見受けられますので、平成31年度以降には先送りしないという姿勢で臨んでいただきたいと考えています。

 

(2)時代への変化に対応した行政施策の見直し

二つ目の視点は、時代の変化に対応した行政施策の見直しです。たとえば、昨年策定し

た「地域創生戦略」では、元気な高齢者の増加を反映し、生産年齢人口を拡大するという考え方から、その上限を65歳から74歳へと引き上げる提言を行っています。時代の変化に適応した方向性を示したのであれば、同時に従来の施策との整合性を検討していく必要があります。

また、変化へ的確に対応していくために、県においてもPDCAサイクルの徹底が必要だと考えています。特に県では総合計画として、21世紀兵庫長期ビジョン、地域創生戦略をすでに策定していますが、このたび2030年頃の兵庫を展望した計画を新たに策定すると打ち出しています。しかし、これまでも県当局からはplanにかける意気込みや労力はよく伝わってくるのですが、その後のdo、check、actionの段階となると、正直、計画策定当初ほどの熱意を感じ取れないことがあります。そこで、計画はできるだけシンプルなものに特化し、PDCAサイクルの有効化を意識することを提案します。

さらにPDCAサイクルを徹底することで、しばしば痛みを伴う改革と捉えられる行革について、県民の理解を得るとともに、さらなる参画と協働を求めていくことができます。そのためには、我々議員も含めて全力で、県民に県行財政の現状と課題や未来への展望をアピールしなければなりません。

 

(3)新たな施策展開時の優先順位の明示

新たな施策展開時の考え方も整理が必要です。行財政改革の推進により、既存の事業数やその規模が厳しく見直されている一方、新たな施策に関しては、実施の是非の判断基準が見えにくく、廃止された事業に比べ必ずしも優先順位が高いとはいえない事業が予算化されるケースもあります。本県では、既存事業経費の1割カットで生み出された財源の半分を新規事業に充てるという方針を出しておりますが、どのような事業を廃止したことによって、新たにどのような施策に生まれ変わったのかを毎年度県民に明らかにするべきです。

 

●定員・給与

(1)再任用職員のさらなる活用

これまで定員の3割削減の目標達成に向けて、粛々と人員削減を行ってこられましたが、現場からは大変厳しい状況になっているという声を聞いています。この状況の改善のためには、短期的な取り組みと同時に、中長期的な戦略に基づく対応が必要です。

短期的には、過去の経験を活かした再任用制度の充実が効果的です。このたびの第一次案では、ライン職への任用の推進が記載されていますが、このことにあわせ、再任用者のモチベーション向上や現役職員との円滑な関係の構築について考慮する必要があります。

また、中長期的な観点による人事戦略も必要です。短期的な財源対策として退職不補充に取り組んだ結果、年齢構成がいびつな形になっています。これは将来の行政運営に大きな問題をはらんでおります。今後の課題として、将来予想される状況を具体的にシミュレーションしながら、中長期的なキャリア育成方針、民間人材の活用などを盛り込んだ戦略の策定を求めます。

 

(2)給与

厳しい財政状況の中、住民サービスを削るからには、職員給与の抑制もやむを得ないという苦渋の決断をしてきました。一方で、給与抑制措置が長期にわたっており、段階的に緩和しているとはいえ、他の自治体職員との給与格差が生じるのではないかと懸念しています。とりわけ、来年度以降、義務教育費に関する権限移譲が政令市になされるため、身近なところでの格差が生じる恐れもあり、財政健全化が果たされたのちには、給与抑制措置に関しては、いったん区切りをつけることを望みます。

 

●組織

第3次行革プランにおける阪神南県民センターと阪神北県民局の統合については、先日の第一次案質疑の自民党会派への答弁の中で、一定の時期が明示されました。しかしながら、私たちの会派は従来から「統合の是非を検討する」のではなく、「統合を前提に」具体的な検討を行うべきと主張してきました。私たちが統合を主張するのは、単なるコスト削減という観点からだけではなく、大阪と神戸という二大都市に挟まれた阪神という地域においては「南」「北」の取り組みをそれぞれで行うのではなく、一つの阪神という地域として、効率的に行政課題に取り組む必要があると考えているからです。統合となると、県民局の本局の位置決定など、現実的に解決すべき課題もあるため、来年度から即実施ということはできないものの、前回の見直しの議論の経緯も尊重した上で、統合を前提に検討をするべきだと考えます。

 

●県と市町との役割分担

我が会派では、県と市町の役割分担を財政状況やマンパワーの面だけでなく、自治の面から捉えており、先の代表質問においても、県は「広域的な事務」と「市町が行う先導的な取り組みへの支援」を行うことを基本的な姿勢として、各種施策を展開している点に言及したところです。

その点で言えば、これまで県が先導的に行ってきた、バスへ対策費補助や多自然地域アンテナショップ運営事業、老人クラブ活動強化推進事業、鳥獣被害対策事業、こども多文化共生教育推進事業、山腹崩壊対策事業などの負担割合を見直すことは、本来の県と市町との関係をあるべき姿に近づけるものであり賛同します。

しかし、役割分担の見直しによって、県民に及んだ影響については、一定期間県としても注視していただきたいと考えています。また、市町にとって影響がある事業を実施する際は、市町との政策協議の場を設定した上で、十分に協議・調整することを原則とする等、プランの中でその手続きを明文化するべきです。

さらに、過去から我が会派が主張している県と市町で重複している「高齢者大学事業」に代表される二重行政の見直し等は、絶えず行っていく必要だがあると考えます。

 

●指定管理の公募時における競争性の担保

指定管理者制度については、1次案の質疑において、本来の目的である民間活力の導入や企業間の競争性が十分に発揮できていないのではないかという点について指摘をさせていただきました。答弁の中では、依然として約6割の施設において県の外郭団体が運営をしているなど、必ずしも民間企業等が参入していないことが明らかになりました。また、指定管理受託後、同じ管理者が連続して応札している事例や結果的に入札者が1者であるものも約6割となるなど、残念ながら十分な競争環境にあるとは言えません。

競争性を高めるために、公募期間の延長、公募条件の見直しなど、従来以上に民間の参入を促す方法について早急に検討することを提案します。

 

●老人医療費助成制度・高齢期移行助成事業

昭和46年度から開始された老人医療費助成制度の見直しは、従来必要とされてきた事業であっても時代の変化によって事業を見直していかなければならないという象徴的な取り組みであると評価をしています。もちろん、負担増となる県民が出てくるのは事実でありますが、厳しい財政状況と時代の変化を考慮するとやむをえない判断だと考えます。特に、平成30年度以降の兵庫県を考えたときに、社会のあり方を見直すきっかけになる可能性があります。

また、実務に携わる市町の実情に合わせた緩和措置をとったことも評価できます。

ただ、地域創生戦略の中では、74歳までを拡大生産年齢と位置付けるなど、時代の変化、長寿化等により、高齢者とされていた概念を大きく変えようとしています。助けを必要とする高齢者という従来の概念から、地域活動に主体的にかかわる担い手へととらえ方を変えようとしている中、高齢期移行助成事業が計上されました。事業そのものに必ずしも反対というわけではありませんが、65歳~70歳は地域の担い手として位置づけようとしている県の施策の方向性とを整理しなければならないと考えます。

 

●但馬空港

但馬空港に関しては、再三主張していますが、いつまでの目途の立たない羽田直行便の実現を存続の取り組みの中心として考えるのではなく、新たな路線開拓の検討や定期便就航にこだわらない利活用をするべきです。

そもそも、多額の運賃補助により辛うじて運航している現状を考えれば、そもそも市民ニーズは高くないというのが現実ではないでしょうか。

また、先日の質疑への答弁の中で「豊岡-伊丹空港間は車では2時間かかるが、飛行機では40分で行ける」との発言がありましたが、飛行機の場合、搭乗前後に時間が必要であることや、空港からのアクセスなどを考えると時間的な優位性はもはやほとんどないと言えることから、現実的な認識に沿って、抜本的な見直しを行うべきです。

 

●私立高等学校生徒等授業料軽減補助

本県の場合、今年度から年収350万円以上590万円未満世帯では、国の就学支援金に21千円上積みして199,200円の授業料軽減補助を実施していますが、県内私立高校平均授業料の約379,000円と比較すれば、約179,800円の負担となります。一方本県と隣接する大阪府では、年収590万円未満世帯では授業料が無償化されています。家庭にとっては、この大阪府との差はあまりにも大きく感じられます。本県では経常費補助と授業料軽減補助をバランスよく実施するという考え方を取っていますが、経常費補助は家庭にその恩恵が伝わりにくいため、授業料軽減補助を重視するとともに、子ども達の学びの場の確保のため、選択と集中の観点からは、選択する分野として総額についてもいただくよう求めます。

 

●県立大学

兵庫県立大学については、来年度4月より学長と理事長職を分離することにより、それぞれの分野で力強いリーダーシップを発揮することが求められています。したがって、学長と理事長についてはそれぞれに求められる役割やそれに必要とされる経験や能力を明らかにすることを求めます。とりわけ、理事長に関しては、今後学部の再編や県立大学の地域貢献、さらにはブランド力の向上などが求められることから、大学や企業など、民間における経験が重要であると思われます。1次案の質疑の中では、理事長に求められる能力や経験に関して、必ずしも明らかにはなりませんでした。今後、理事長選任に当たっては、求められる資質を予め明確にしたうえで選定作業を進めていただくことを求めます。

 

●公社・外郭団体

公社・外郭団体においては、収益性が求められる事業については運営を民間に任せ、県の関与を薄くすべきです。特に新西宮ヨットハーバー(株)については、大幅な見直しが必要だと主張してまいりましたが、今回の案においても、具体的な改善策が提示されず、第三次行革プラン同様、「あり方を検討する」にとどまっています。また、(公財)丹波の森協会についても同様です。構造改革が総まとめになっているこの段階において、先送りは許されません。最終2か年の中で大きな見直しが行われないとなると、今後見直していくきっかけを失いかねないと危惧しています。公社・外郭団体に関しては、検討すべき項目については検討し、結論を出す時期、検討をする主体を早急に明らかにしていただきたいと意見を申し上げます。

 

●企業庁

企業庁については、メガソーラープロジェクトや播磨科学公園都市のサッカー場、小野市市場地区開発など、ここ数年、当初の目的と異なる方向で新たに展開する事業がいくつか見受けられます。我が会派としては、これらの方向転換を一概に否定するものではありませんが、唐突さを感じるものも少なくありませんでした。第一次案の質疑の中で、企業庁の最大の課題である播磨科学公園都市に関しては「街びらき20周年」を契機に総括するという答弁がありましたので、その総括に期待をするとともに、今後それぞれの事業ごとに取り組みを評価していただくことを望みます。

また、今回は一般会計と企業庁との貸借関係を整理することが盛り込まれたことは、我が会派が従来から強く主張してきたことであり、構造改革の一環として重要な取り組みだと考えています。

企業庁の改革の取り組みの方向性は全体的に評価できるものではありますが、我が会派がいち早く主張してきた、進度調整地の評価が簿価評価となっていることは問題であり、早急に改善するべきです。

 

●150周年記念事業

企画部会案、第一次案においても、「未来への橋渡しとなるシンボリックな施設や交流拠点の整備」ということが記述されていることに対しても意見を申し上げます。

質疑の中で、150周年の事業に関する財政フレームは特別に用意しているわけではなく、地方創生に関する交付金などを活用する趣旨の発言もありましたが、基本的には投資事業費の枠組みの中で実施するということを明確に答弁されました。

しかし、ミッシングリンクの解消等インフラ整備の要望に対し、財源不足で応えられていない中事業の目的が明確ではないまま、施設整備に進むことは、事業実施の優先順位の点から見て、県民の理解が得られるとは思いません。

それゆえに、150周年に関しては、投資事業など財政フレームの枠内で行うことをプランの中で明確にするとともに、県民の理解が得られる取り組みになるよう取り組むことを強く主張します。

 

●まとめ

今回はまさに総まとめとなるプランとなります。「課題と検討方向」の中で出てきた議会からの意見に真摯に向き合い、平成30年度を一つの大きな区切りとする計画とした点に関しては、ひょうご県民連合として評価をしたいと考えています。

ただ、事業の削減等による影響を懸念する声に対しては緩和措置を設けるなど、一定の配慮がされていますが、構造改革を進めるための提案が必ずしも反映されたわけではなく、改善の余地があるのは事実です。将来に向かって課題を先送りしないために、2次案においては、検討するという表現になっている項目については、より具体的な検討時期や検討体制を明らかにすることを望みます。

兵庫県は間もなく150周年を迎えます。兵庫県を支えてきた先人に改めて感謝を申し上げます。また150周年という区切りに政治の世界に携わる一人として、次世代に負の遺産だけは引き継がないよう努力していきたいと改めて決意を申し上げます。引き続くべきは、本県のシンボルである歴史・伝統・文化、美しい県土、何より知事が常に議会で語られる、多様性を重んじるという兵庫県のDNAであると考えます。

知事をはじめ当局の皆様には、県政200年を迎える50年後の兵庫県の基礎をつくる気概で、行財政構造改革に取り組んで頂くことを期待し、意見開陳といたします。

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