石井 健一郎議員が一般質問を実施

質問日:平成29年2月27日(月)

質問者:石井 健一郎

質問方式:分割

 

1 人口の東京一極集中について

人口の東京一極集中により、地方では、人口減少や地域経済の縮小等が深刻化しています。これを克服するため、政府は2014年に東京一極集中の是正を柱とする「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を打ち出しました。この戦略では、地方において雇用を創出し、新たな人の流れを構築することで地方からの流出を減らし、現在10万人を超える東京の転入超過を2020 年までに均衡化させるとしています。

一方、2016年の東京圏への転入超過数を見ると、15~19歳が約27,700人、20~24歳が約68,900人、25~29歳が約18,400人と、若者層が転入の大半を占めており、大卒後の就職時、大学進学時の転入、結婚、若者の転勤にほぼ限定されると考えられます。

政府では東京の転入超過をネガティブにとらえているようですが、高校在学時に首都に憧れて東京の大学に入る、就職時に本社が多い東京に移ることは、ある意味避けようのない移動であると言えますし、経験値を上げる観点からも逆に必要と言えるかもしれません。

いずれにしても、現在、東京に若い世代が集中していることは否定しませんが、地域にいる若者が根こそぎ東京に吸い上げられている状況とは言えません。むしろ、若者の全体数からすれば、東京へ移動する割合はわずかであると言えます。また、最近では関東圏の大学において、出身地への就職希望者が増加傾向であるとも聞いております。

地域創生の話では、東京への人口一極集中がいつもクローズアップされ、施策の大きな柱になっている傾向が全国の自治体に見られます。しかし、東京に若い世代が流出することを防止することで人口減少問題がなくなるわけではありません。もちろん、行政として、移住促進策や、地元の企業を知らなかったことによる働く機会の損失を考えますと大学との連携等の施策は、地域活性化につながることも期待されることから推進すべきではあると思いますが、結果として全国の自治体が同じような施策で東京にいる10万人程度の若い世代の奪い合いをしても得られるものは少ないのではないかと感じます。

人口流出による地域衰退の本質は、若者が東京に流出するということではなく、地域に残る若い世代に対する魅力的な雇用、言い換えれば所得向上のための取り組みが充分ではないことにつきるのではないかと考えます。加えて、住環境や子育て支援制度等も、まだまだ充実の余地があります。

東京への転入超過がなくなっても、地方に増える若い世代は微増するだけです。行政の補助で若い世代の奪い合いをすることに主眼を置くことより、地域全体で豊かな兵庫をどのようにして創っていくかが、地域の人口減少で問われる問題の本質であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

2 今後の関西広域連合のあり方について

分権型社会の実現、国と地方の二重行政の解消を目指し、2010年12月に全国で唯一の広域自治体として誕生した関西広域連合は、関西一円の12府県市にまで範囲を拡大し、「広域防災」「広域観光・文化・スポーツ振興」「広域産業振興」「広域医療」「広域環境保全」「資格試験・免許等」「広域職員研修」の7分野について、担当府県市を中心に広域課題の解決に取り組まれています。まずはこれだけの組織を全国で初めて立ち上げ、そして府県の壁を一つ一つ乗り越えながら運用してきた努力に敬意を表する次第でございます。

設立から6年が経過し、特に本県が担当する「広域防災」については、東日本大震災の復旧・復興支援に際して初めてカウンターパート方式を採用し、被災地のニーズに応じた、効果的で継続的な支援を行い、その後の熊本地震にもその経験と教訓が生かされるなど、府県の枠組みを越えた取組は高く評価されているところです。また、ドクターヘリの関西広域連合での一体運用では、関西一円での相互応援態勢を構築し、「いつでもどこでも安心医療圏関西」の実現に成果を上げています。

その一方、他の分野については、残念ながら未だ目立った成果に乏しいように感じております。効果が期待できるインバウンドをはじめとする観光分野の取り組みにおいてはやや一体感に欠けているようにも感じますし、産業政策の面からもインパクトに欠けることは否定できず、そういったことが関西広域連合に対する期待感の盛り上がりを欠くことになっているのではないかと考えます。また、一時進みかけたように見えた国の出先機関の事務移管が実現していないこともその理由の一つと考えられます。

しかしながら、関西広域連合でしっかりとした地域主体の将来ビジョンを示すことが今後の国の出先機関の移管につながることもあり得るかもしれませんし、これからワールドマスターズをはじめ、急浮上した万博やIR施設の誘致などオール関西で取り組んでいかなければならない課題も山積しています。

道州制に対し関西においても様々な議論がありますが、まずは関西広域連合で広域行政の充実をはかり経験と実績を積み上げることが大切です。

東京や他地域から「やはり関西はバラバラで一つにまとまらないではないか」という誹りを受けないように、府県を超えたオール関西実現に向けて、小異を捨てて大同につくといった意識を持って、関西広域連合を充実したものにしていかなければならないと考えますが、今後の関西広域連合のあり方について改めてご所見をお伺いします。

3 官民人事交流について

人口減少、少子高齢化、グローバル化が進展し、財政状況も厳しくなる中で、これまで以上に効率的、効果的な行政運営とサービスの向上が求められるようになっております。このような状況を克服するには、各職員が仕事を進めるにあたって、新たなノウハウや技術を取り入れ、これまでにない工夫を行うことが重要ですが、これはなかなか容易なことではございません。そういった中、有効な取組のひとつとして、他業種との人事交流が挙げられます。

兵庫県では外郭団体等の公益法人への出向・派遣者数は全国でも上位に位置する一方で、近年の兵庫県の民間企業との人事交流状況を拝見しますと、これまでJR西日本や設計事務所等、また、昨年はオリックスとの間で、職員の企業への派遣、企業からの県への受け入れを行っていますが、件数的にみれば少なく、また、純粋な民間企業ということで考えますと微々たるものとなっております。

現在、官民を問わず新しい領域の仕事が増加する傾向にあります。また、それぞれの仕事の専門性も高まっており、これまでのようなオールラウンドプレーヤ型の職員よりも、セミプロのような専門知識を持った人材が求められてまいります。

県庁に出向してきた民間企業の社員からは、民間特有の専門的、効率的かつ機動的な仕事の進め方を取り入れる、また、県庁から民間企業に出向し、行政の職場にはない業務の進め方を体得することは、これからの行政に求められる資質やサービスの向上に役に立つし、民間企業の側にも、行政の考え方への理解を促進する効果が期待できます。

交流先の企業についても、現在行われているような行政に近い企業との交流も大切ですが、全く異業種との交流を試みてみるのも、得るものがあるのではないかと感じております。そういった意味においては、専門職の中途採用の拡大ということも、組織の活性化につながり、重要ではないかと考えます。

国家公務員においては、民間と国との相互理解を深めるとともに、双方の組織の活性化と人材の育成を図るために、官民人事交流法を制定し、2000年から国と民間企業との人事交流が積極的に行われており、交流実績は、平成27年度末までに、約550社の民間企業、国から民間に派遣された人数507人、民間から国に派遣された人数1346人に上っています。

そこで、職員の執務能力や専門性、行政サービスの質を高めるために、こういった官民人事交流については、もっと積極的に推進するべきだと考えますが、当局の考え方をお伺いします。

4 観光地における収益力の向上について

日本各地、海外からも多くの観光客が訪れる兵庫県の観光地は、地域創生に大きな役割を担っており、兵庫の貴重な地域資源として、今後とも守っていかなければなりません。そのためには、各地域においてブランド力を維持し、収益性を上げることが重要です。

長引く不況から、観光地においても、経営不振等により宿泊施設が廃業に追い込まれたりするケースが見られます。ひとつの宿泊施設が閉まると、客数の減少や景観の悪化等により、観光地全体としても寂れた雰囲気になり、ブランド力や収益性の低下を招く恐れがあります。

このような事態を避けるため、行政と事業者は、常日頃から密に情報交換し、協力して、その宿泊施設への支援や継承者の発掘などの対策を講じることが重要になります。そのために県は、アドバイザーの派遣や融資制度の紹介など、更にきめ細やかな支援を充実させる必要があるのではないかと考えます。

例えば、近年、古くからの温泉地で、廃業、または経営不振にある宿泊施設等の運営に乗り出す等、全国展開する宿泊事業者が増えています。県内の観光地においても、このような県外事業者の資本に宿泊施設の運営が移譲されることもありますが、この対応も重要です。

一般的に安価な価格設定の事業者が参入すれば、地元事業者は価格競争を強いられ、宿泊料金が維持できない、地域の収益性とブランド力が低下する、また、雇用は合理化のためパートタイマーのみに留まる、地元産の食材が使用されない、雰囲気が景観にマッチしていないなどの影響が出る可能性があり、長い目で見れば、地域のブランド力と収益性が低下することもあり得ます。一方、地域のブランドを生かすことを優先する事業者の参入は、宿泊料金の維持や引き上げ、地元産の食材の利用、人材の育成など、地域のブランド力向上や収益面において良い影響が期待できる等、観光地ごとにどのような宿泊施設がマッチするかを踏まえた検討が必要です。

温泉地のみならず全ての観光地において、地元事業者がより収益を上げていくことが地域創生につながるといった観点から、まず第一は、県、地元市町、地元事業者が連携を図りつつ、地域のブランドを生かすことを重視する事業者をはじめ、価値観を共有できる他の事業者とも日頃から情報交換することが大切です。そして、必要があれば、これら事業者とのマッチング等に積極的に乗り出し、ブランド力の維持や向上を図っていくことも大切であろうと考えます。

そこで、観光地における宿泊施設等の維持やマッチング体制を確保することにより、観光客に満足度を与えるとともに、収益力のある観光地をつくっていくことにつながり、ひいては観光客の入れ込みやインバウンドにも良い影響を与え、観光地を中心としたその地域を守ることになりえるのではないかと思いますが、県のご所見をお伺いします。

5 六甲山の活性化について

来年度予算において、県民・企業・行政等の協働による六甲山地域のブランド力向上に向けた仕組みづくりと施策推進により「人が集い、街とつながる魅力的な山」を実現すべく、六甲山のグランドデザインを描くための六甲山再生委員会を設置するとともに、観光客の利便性向上や自然公園の魅力向上など六甲山の賑わいづくりのため、六甲山上にある遊休施設の改修費用等を支援することが盛り込まれました。

昨年5月に、兵庫県、神戸市、有識者・民間人等を加えた「六甲山土地利活用プロジェクト」を発足させ、県市が協調して検討を進め、六甲山の保養所等の利活用に積極的に取り組んで頂いていることに感謝するとともに、今後の取組にも多いに期待するものです。

現在進められている保養所等の利活用については、まずは利用して頂けることが第一ではあるものの、六甲山の魅力アップという点で考えると、民間からの提案を待つだけではなく、こちらからも積極的に、例えばオーベルジュの誘致のような付加価値を上げる視点も必要であると考えます。

また、気になるのが六甲オリエンタルホテル跡の利活用です。これまで阪急が六甲山ホテル、阪神が六甲オリエンタルホテルを経営していましたが、阪急と阪神の合併により六甲山ホテルだけに宿泊施設は集約され、六甲オリエンタルホテルは閉じられ空き施設のままになっています。

六甲山ホテルは、昨年所有者が変わり、新たな所有者は旧館も改めて利用する意向とのことですが、六甲山の歴史的な財産としてその改修や保存についてはしっかりと気配りをして頂きたいということを要望しておきたいと思います。

一方、六甲オリエンタルホテルでありますが、この場所は特に景色もよく、施設内には兵庫県と縁の深い安藤忠雄設計の風の教会もありますが、放置された状態が続いています。閉鎖してから年数も経つので設備も痛みが進行していると思いますが、是非とも所有者と協議し、新しい事業者を探す等の取り組みを期待しているところです。

さらに、神戸の観光資源の一つとして必ず挙げられる六甲山の夜景についてです。これだけ観光スポットとして宣伝しているにも関わらず、実際は夜八時以降に公共交通機関で登ることが事実上不可能です。夜景が観光客を多く引き寄せている観光地は他にもありますが、そういった場所で夜遅くまでビューポイントにたどりつけることはもちろん、営業している店もあり賑わいを見せております。ケーブルやロープウエイの運行延長は難しいかもしれませんが、主要ホテルや駅を起点としたバスの運行なども検討課題の一つです。

いずれにしても、このままでは「人が集い、街とつながる魅力的な山」としては不完全であり、新しい取り組みが本格的に始まるこの時に、六甲山の活性化のため、神戸市の事業だということで一線ひくことなく、県として逆に後押しをするくらいの意識を持って県市連携で取り組んでいただきたい課題であると思いますが、改めて当局のご所見をお伺いします。

6 兵庫の農林水産物の販売促進について

県産農林水産物については、それぞれの産品が持つ魅力を明確にしながら、阪神、神戸といった大消費地に近接し、食関連産業が集積しているという兵庫の強みを生かし、生産から流通、販売までを一連のものとして見据えた産品ごとのブランド戦略の策定・実践を進め販売促進に努められています。

しかしながら、県民にどこまで県産農林水産物やその加工品のブランドが浸透しているかというと些か疑問です。そもそもブランドは、知名度のある地域が特徴ある商品を送り出すことによって成立するものであり、全国どこにでもある農林水産物やその加工品で差別化を図ることは難しいと思われます。

東京での販売についても、47都道府県の恐らく全てが期間限定で似たような取り組みをする中で、知名度が足りない県産農林水産物や加工品を売り込むことの効率性を考えさせられます。

そのことからも、県産農林水産物やその加工品の販売促進で大切なのは、地産地消の観点からも、第一は県内での販路拡大であると考えます。県内でもまだ十分販売されていない産品を、兵庫県の特産物として広く県外等に売り出すことには無理があるように思います。そして、その販路を拡大するには、消費者のニーズを把握することが重要で、生産者が一方的に生産しても、県外はもとより地元の消費者にすら受け入れられるわけではありません。

また、生産者が不足し生産量に限りがある中では、どうやって生産物・加工品に付加価値を与え、より高い収益を上げていくかということを考えていかなければなりません。そのことにより生産量が増えれば、生産者も増えるという好循環を生む結果を得られるかもしれません。

販路拡大に必要なのは、単に商談の場を設けることだけではなく、一歩踏み込んで県産農林水産物やその加工品を確実に販売してもらえるルートを積極的に開拓することです。

例えば、県内スーパーチェーンとうまく連携できれば、販売量の安定化につながるほか、新たな産品の販路拡大にも有効です。生産者がバイヤーとのパイプを持ち、ニーズをしっかりと把握して、マーケットインの発想のもと生産・販売に努めていくことが必要ですが、そのためには生産者とバイヤーが生産する前の段階から連携し、どのような農林水産物・加工品がどのような値段でどのくらい消費者に受け入れられるのかを検討した上で、販売ルートの拡大に努めなければなりません。それには県のサポートが重要だと考えます。

そこで、兵庫の農林水産物やその加工品の販売を促進するには、県産農林水産物を、様々なバイヤー、県内スーパーをはじめ小売店で取り扱ってもらえるよう、そのニーズに応える取り組みを強化しつつ、県内における県産農林水産物や加工品の販路拡大に一層力を入れることが必要であり、結果として兵庫ブランドの確立に寄与するのではないかと考えますが、当局の見解をお伺いします。

 

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