迎山 志保議員が質問(予算審査・総括審査)

予算特別委員会(総括審査)

質 問 者   迎山 志保 委員(ひょうご県民連合)

 

 

1 財政運営の考え方について

本県の実質公債費比率は、新行革プランを開始した平成20年度単年度で21.0%であったが、平成28年度見込みでは15.1%と大きく改善した。一方、将来負担比率は同じく20年度で360.1%であったのが、28年度の見込みで329.2%とそれほど改善せず、残念ながら全都道府県の中でワースト1位のままの見込みである。

一体何が原因で、この2つの指標に差が生じたのか。これは、実質公債費比率が一定期間内の予算における公債費の占める割合、つまり県債償還に充てた比率を示すフロー指標であるのに対し、将来負担比率はある時点における負債の量を示すストック指標であるという、指標の性質の違いによる。

また、フロー指標である実質公債費比率とストック指標の将来負担比率は、その指標の算出方法、特に負債の補足範囲が異なるため、一定の差違が出るのはやむを得ないが、それにしても差が大きい。

我が会派ではこれまで、将来に負担を先送りしない財政運営を繰り返し求めてきた。その結果、このたび実質公債費比率にも今後影響する一般会計と企業会計の貸借関係の公表や整理、土地・美術品の県債管理基金計上の解消などが、知事の判断により実現されることとなった。これは負債解消に向けた取り組みの前提条件となる、より正確な財政状況の明示につながるものとして評価するが、いまだ県有環境林等特別会計の活用などの課題があることは部局審査でも指摘したところである。

そこで、将来人口の減少が確実な中、負担の先送りにさらに厳しく対処するため、ポスト新行革プランにおいてはこれまで以上にストック指標を重視し、高い目標を設定することが必要だと考えるが、所見を伺う。

また、ポスト行革での本県は、震災から20年以上の時を経て、一定の財政目標を達成した状態、つまりある程度の体力を回復して次なる課題に臨む状態といえる。その際、「震災関連県債は、県が償還しなければならない負債であるというのは、厳然たる事実である」という認識を示すとともに、今後はその償還にあたって、より健全な財政マインドで取り組むという強い決意を示す必要があると考える。ついては、同じくポスト新行革プランではこれまでプランの財政運営の目標に記載してきた、「震災関連県債残高を除く」という表記をとりやめることを提案するが、あわせて所見を伺う。

 

2 県と市町の関係について

県は広域的自治体、市町は基礎的自治体として、それぞれの役割を果たす。この考え方は、今回の最終2カ年行革プランの中でも、鳥獣被害対策事業やバス対策費補助等の見直しを通して、県の考え方として明らかとなっている。

一方で県は地方自治法において、「広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする」と規定されているとおり、広域的な政策課題への対応が求められるとともに、市町へ一定の支援を行うことが期待されている。そして、その市町への対応や支援の実施にあたっては、県民の納めた税金を使うという意味でも、また各市町の事情を考慮しつつも県内でバランスの取れた施策効果を発揮させるためにも、ある程度の「合理的な公平性」が必要であると考える。

このたび県は、新長田駅南地区や兵庫津の賑わいの拠点づくりに積極的に関与していこうとしている。神戸の賑わいが、県全体の賑わいにつながることへの期待も大きいことから、例えば、商店街空き店舗対策事業の拡充や、県政150周年記念にかかるソフト事業の展開・推進については理解する。しかしながら神戸の街の賑わいづくりのため、新たに30億円を庁舎整備に充てることには、税の使途や他の市町とのバランスの面からして、合理的な公平性についての懸念を感じざるを得ない。

そこで、県が市町に財政的支援を行うにあたっての考え方について、当局の所見を伺う。

 

3 待機児童問題への県の取り組みについて

待機児童問題が解消しない。今や多くの自治体が血道を上げて取り組む事業の一つとなっているが、実はこの問題はここまで大きな社会問題になる相当以前から課題と捉えられてきた。しかし本当に困っている当事者も、困りながらもその数年を何とかやり過ごし我が事でなくなれば、また新たな子育て課題が待ち構えていることもあり、待機の問題に意識を持ち続け声を上げ続けることもなかったことから、長きにわたって進展がなかったのではないかと思う。県でも平成21年度から安心こども基金を活用して待機児童対策に取り組んできた。そのうち保育所緊急整備事業に限っても、当初予算と補正予算の総額は平成21年度~28年度で333億円であったが、各年度2月補正で減額され、その減額の合計額は104億円であった。皮肉にも今後、少子化がさらに進むことで施設の余剰が見込まれることから、市町や事業者が簡単に事業に乗り出せないという事情があることも一定理解する。

しかし、この保育所待機、学童待機は、これから結婚しようという人や子供を持とうと考えている夫婦にも非常にネガティブな影響を与えているということは看過できない。マスコミなどで、炎天下、生れたばかりの子供を抱えて、10か所、20か所と保育園をまわる母親の姿や不承諾通知に打ちひしがれる姿、子どもが小学生になるや退職・転職を余儀なくされる姿が取り上げられるのを見るにつけ、この国の子育て環境の厳しさを実際以上に大きなものとして捉えている。これだけ少子化による社会への影響が指摘され、人口対策が最大の課題であると認識されているのに、手をこまねいている今の状況を歯がゆく感じる。待機児童対策が難しい理由として、女性の社会進出が進む中、保育所や学童が整備されると、さらに子どもを預けて働く母親が増えるという、供給と需要がいたちごっこになることへの指摘もあるが、人口減少社会が進む中、県は女性の労働力へも大きく期待しており、互いを言い訳にすることなく両輪で進めていくほかない。県はまさにその覚悟が問われている。少子化対策としては、待機問題の他にも働き方の変革による長時間労働の是正、父親の家事育児共有、さまざまな側面から考えていかなければならないが、これらの環境整備は価値観の問題でもあり、どのような状況になれば問題が解決したと言えるのかが難しい。また意識変革は家庭や企業の働きかけによる部分が多く、行政だけの取り組みでは、効果が限定的である。その点、待機児童解消は目標が明確である上、取り組みの主体が行政であることもはっきりしている。そこで、子育て施策の本気度の物差しともなる待機児童対策への県の所見を伺う。

 

4 地域活力向上につながる女性の起業支援について

日本政策金融公庫総合研究所の2013年度新規開業実態調査の結果をみると、起業直前の仕事について男性の6割が「会社や団体の常勤役員」や「正社員・管理職」であるのに対し、女性は3割程度で、「専業主婦」や「非正規社員」も同程度の3割を占めている。女性の起業をめぐっては、ビジネス経験や人脈が不十分なため意気込みとはうらはらにスタート地点にさえ立てなかったり、起業直後に資金繰りなどで挫折するケースも少なくない。そこを支援する県の「女性起業家支援事業」は先の部局審査でも大いに評価し、事業継続につながる持続的なサポートについても来年度以降積極的に取り組んでいかれるとの答弁を得た。

加えて、先の同調査では女性には「年齢や性別に関係なく仕事がしたい」という特有の開業動機がみられ、組織の枠にはまらずチャレンジしたいという姿勢がみてとれる。特に、最近では男性と同様に組織で鍛えられたキャリア女性の層が厚くなり、自分の望む生き方をしようとする中で起業が選択肢の一つと捉えられ始めていることを周辺でも感じる。日々の暮らしで向き合う社会的な課題を解決しようとする社会起業家も増えているが、ビジネスとして軌道に乗せることの壁は想像以上に厚い。女性特有の自身への過小評価も事業拡大の手枷足枷となっている。「女性ならでは」のきめ細かい支援をすることで、女性それぞれが望む形で活躍できるものと考える。生活に密着した小商いも、女性視点の課題解決型起業も、海外を視野に入れた展開も、地域活力向上へ寄与する部分が大きい。ステレオタイプにはまらない女性活躍支援は地域創生の核にもなりうると考える。県のさらなる後押しを期待するが、所見を伺う。

 

5 ひょうごアドプトの活性化について

県土整備部の部局審査でも県管理の道路、河川、街路樹などの維持管理について質疑があった。安全に長期間にわたって公共物を利用するために欠かせない視点である。維持管理については、以前は行政によるメンテナンスが手厚く行われていたのに、近年回数が減ったり、その内容が満足いくものではなくなったというのはよく聞く話である。以前の記憶が前提となり現状に不満を感じている県民が多いのが実情だが、厳しい財政状況やマンパワー不足から一定やむを得ないものと考えている。だからといって、植栽をコンクリートで埋め立ててしまったり街路樹を軒並伐採すればいいのかというと、それは違うというのもまた多くの県民の思いである。

そこで、維持管理の中でも、行政の手によって計画的な管理が必要なものと、市民による手入れが可能なものとに改めて整理し、適材適所の維持管理を進めていく中で、アドプト活動の推進、参画と協働のさらなる深化を目指してはどうだろうか。

今定例会の我が会派の代表質問でも、人口減少社会における社会の担い手づくりの必要性について指摘したところであるが、公共財の効率的な維持管理を県民一丸で担うという観点に立ち、個人の生きがいづくり、地域への愛着や連帯意識の醸成、企業の地域貢献、教育的効果なども期待できるアドプト活動のさらなる推進に向け、維持管理項目の整理を行い、県民の手で責任を持って担える分野については積極的に委ねていくべきであると考える。現状、高齢化や後継者不足などの課題を抱えているアドプト活動であるが、活動の方法を見直したり、価値を認識し直すことにより、新たな担い手を確保することができるのではないか。そこで、公共の財産を守る一翼としてのアドプト活動に、さらなる県民の参画と協働の可能性を広げることについての県の所見を伺う。

 

6 病院局の予算編成の考え方について

病院局の平成29年度予算では、経常損益で2億円の黒字を見込んでいる。実に3年ぶりの黒字予算となる。これは、建替移転に伴い一時的に収支が悪化した尼崎総合医療センターやこども病院の経営安定化を図るとともに、地域医療連携の推進や救急患者の積極的受け入れによる新規患者の確保による収益の確保や費用の抑制に努められた結果とのことで、評価できる。

ただ、我が会派が注目しているのは、この当初予算編成時の黒字が、補正予算を経て決算で赤字化しないかということだ。これは以前から指摘していることであるが、給与の改定や資産の減耗、土壌の汚染対策等、経営上の変動要素に対して、適切な予算計上が行われていないことにより年度途中に多額の追加負担が起こる問題である。予算は会計の実態により近いものを提案すべきである。

地方公営企業法では、独立採算制が原則とされているが、県立病院が果たす公共の福祉の役割を考慮し、収益的収支で155億円の一般会計からの繰入金、すなわち患者以外にも広く納税者負担を行った上での予算となっている。そのような状況下で、県立病院を持続的に経営していくためには実態に即した予算が大前提となると考える。

そこで、病院局の予算編成にあたっての考え方及び来年度の決算における黒字確保の見通しについて、所見を伺う。

 

7 優秀な教員の確保について

近年、教員という職業には、そのやりがいや崇高さよりも、勤務時間の長さに加え、保護者対応やいじめ不登校への対応といった業務の幅広さや難しさというネガティブな勤務環境のイメージが先行しているように感じる。以前と比べ当然のように尊敬される存在ではなくなり、保護者によって序列が付けられる「サービス」職的な色合いが強くなってきていることも、やりづらさを感じさせる原因になってはいないかと大いに懸念している。実際、保護者・地域との対応に起因している休職者も多いと聞いている。

このような状態が続けば、教員を目指す優秀な若者が少なくなってしまうのではないだろうか。現職の教員から自分の子供に自信を持ってこの道を薦められないとお聞きしたこともあり憂慮している。
しかし当然ながら教員一人一人は教育力の要であり、教員が子ども達に与える影響は大きい。優秀で幅の広い人間性を持った人物に、教員になってほしいと願うのは当然のことだ。県では平成27年度に実施した教員採用試験から出願資格を満45歳から満49歳に引き上げられたが、有為な人材の確保及び資質の向上方策にどのように取り組んでおられるのか伺う。
また、教員の中でも管理職は、学校運営に必要なリーダーシップを発揮するとともに、教職員全体の士気を左右し、学校の雰囲気づくりにも大きな影響を及ぼす存在である。最近ではその管理職、特に教頭の多忙化が著しく、勤務時間が非常に長くなっていることから、志願者が少なくなっていると聞いているが、県における管理職確保の状況、課題なども併せて伺う。

 

8 大規模災害発生時における災害警備態勢の確保について

近年の他県での大災害発生時の県警察の支援体制の立ち上がりの速さ、的確な応援は本当に誇らしく全国屈指のその活躍に敬意を払う。阪神・淡路大震災以降の様々な経験をふまえた、以降の支援の中でも災害に備えることの意義を十分に感じておられることと思う。

本定例会代表質問における、我が会派の「災害時のスムーズな交通確保」についての質問に対して「被害想定に基づいて警察官を配置すべき交差点や所要の人員を定めている」と答弁があった。緊急道路網の確保だけでも相当な数の人員が必要かと想像するが、県下での発災となると、救命活動、避難誘導、被害状況や危険箇所などの情報確認などその他にも大勢の警察官の活動が必要となる。つまり、交通路をしっかり確保した上で、特に勝負と言われている72時間以内にどれだけの警察力を確保出来るのかが重要だ。他府県の支援が十分に得られないであろう大規模な南海トラフ地震や、自県での大規模災害時、まずは自前でどれだけの警察力を確保できるのか、災害レベルに応じた検証を行い、ハード面、ソフト面の整備を積み上げておくことが必要になる。

ハード面では、今議会の上程議案に警察待機宿舎の存置が記載されているが、その約7割は建設後40年を経過し老朽化が進んでいる状況である。現在約700世帯が住まわれているが安全性はどうなのか。必要に応じて整備を行っていかなければならない。

あわせてソフト面では、現場活動をする警察官を集合させる方法や、参集した警察力の効果的な運用、配分などにかかるマニュアルの整備が欠かせない。加えて、現場活動のための訓練の実施も必要となるが、大規模災害に備えた、警察の災害警備態勢の確保について、当局の所見を伺う。

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