栗山 雅史議員が質問(総括審査)を実施

質問日:平成29年10月20日

質問者:栗山 雅史 議員

 

1.平成28年度の地域創生の取組について

平成28年度は地域創生元年と位置付けられ、地域創生戦略に基づく地域創生に向け本格的なスタートを切る1年となりました。地域創生の大きな3つの目標は、人口対策で「自然増対策」と「社会増対策」、そして「地域の元気づくり」であります。平成28年度は約42億円の税金を投下し、多くの事業を推進してきましたが、決算審議ですので、掲げられた3つの目標に近づいているかどうかという観点から質問をしたいと思います。

1つ目は「自然増対策」です。5年間で出生数22万人、1年あたり44,000人という目標は平成27年度に続いて達成しました。しかし、出生数は減少傾向であり、今後の目標達成見込みについては厳しいのではないかと感じています。

「自然増対策」には基本目標として「多子型の出産・子育てが可能な社会を実現する」として、婚姻率や待機児童数、女性や若者の有業率、出会いサポート事業による成婚者数などに対してKPIとしての目標を掲げ、各種事業を展開してきました。KPIでは達成できたもの、達成できなかったものがありますが、いずれにせよ大きな目標は「自然増対策」の「出生数5年間で22万人」です。引き続きの努力が必要です。

2つ目は「社会増対策」です。人口流入増加として5年間で25,700人の目標を掲げています。平成28年度は3,560人の目標でしたが、達成できませんでした。

基本目標には「地域に根ざした産業を振興する」、「人や企業・資本が流入する兵庫をつくる」、そして「個性あふれる『ふるさと兵庫』をつくる」の3つを掲げ、こちらも各種事業を展開してきました。施策の多くは達成できており、KPIとしては概ね良好と言えます。

3つ目の「地域の元気づくり」は時間の都合上割愛しますが、我々が訴えたいことは、地域創生戦略の中で示した個別事業のKPIでは多くの目標を達成しているにもかかわらず、人口流入増加などの大目標が達成できなかった現実をどのように受け止めているのか、ということです。KPIの設定に問題があるのでしょうか。あるいは事業そのものが人口対策として効果が薄いのでしょうか。県として、この現状をどのようにとらえているのでしょうか。

地域創生の大目標の達成に向け、昨年度の地域創生の取り組みの評価とともに、今後どのような方針で臨むのか、ご答弁ください。

2.男性の家事・育児の参加について

この質問は、部局審査で私が質問をさせていただきました。

現在、「女性の社会進出」がどんどん進んでいます。であるのならば、男性も今のままではいられないのではないか、そう思ったことがきっかけでした。

政策創生部は「男性の家事・育児の参加の推進」を事業として展開しています。「女性の社会進出」と同時に、「男性は家庭進出」するべきではないだろうか、私も思っています。今こそ、家事や育児について夫婦間でどう分担すべきか、考え直す必要があるのではないでしょうか。そうでないと現実的に家庭は回りませんし、女性である妻にずっと負担をかけてしまうことになります。そんな家庭はまだ多いのではないでしょうか。ワーク・ライフ・バランスが進む中、男性陣、夫の皆さんは、もう平気で「仕事が大変だから」とか、「付き合いが多くて」とか言い訳せずに、なるべく早く家に帰り、家事や育児を分担するという意識をもっと高めていくべきではないかと考えています。

先日もご紹介しましたが、2012年に実施された国際社会調査プログラムによると、日本は世界一「夫が家事をしない国」なんだそうです。日本の夫婦の家事・育児の合算時間に占める男性の家事分担率は18.3%、わずか5分の1程度でしかない。1位はスウェーデンで42.7%、その他の主要国でいうとフランス38.6%、アメリカ37.1%、イギリス34.8%となっています。アメリカでは、父親は1日3時間程度、家事・育児をしているというデータがあります。

政策創生部での答弁では、知事や副知事が庁内放送や会議等で定時退庁や休暇の取得推進等を職員に呼び掛けるなど、家族と一緒に過ごしやすい環境づくりを率先して進められておられると聞きました。今までの「職場優先」の組織風土で働いてきた男性に、本当に長時間労働が必要かどうか見直してもらい、同時に家事や育児への参画の必要性についてさらに理解を深めてもらい、男女ともに「仕事に」「家庭に」活躍できる職場づくりを進めていただきたいと私も思っています。

こういったことは社会全体としての機運を盛り上げないといけないんだと思います。県自ら率先して、また知事や副知事から、イベントなどの事あるごとに、男性の家事・育児参加の必要性をお話しいただいて、家庭を持つ世代の職員の皆さんへの後押しをしていただきたいと思いますが、今後の取組みについてご所見をお伺いします。

 

3.里親・特別養子縁組制度の普及について

この質問は、健康福祉部の決算審議で、小池議員が質問された「赤ちゃん縁組(特別養子縁組)制度の充実」について聞かれたもので、また我が会派がこれまでも繰り返し主張してきたものであります。

小池議員がこの質問をされた想いは、私も本当によくわかります。産まれてすぐの子どもが、自分の親に育てられることなく、社会のシステムのように乳児院に直行することになるのは私も忍びないと思いますし、本当に可哀そうだと感じます。

子どもが実の親や家庭から離れて生活しなければならない理由には、保護者の家出や離婚、病気など様々な事情があるかと思います。しかし、親の深い愛と温もりの中で、安心した気持ちで育つということは、何ものにも代えがたいことだと思います。小池議員の質問の中でありましたように、家庭という憩いの場を知らずに育った子供は、社会生活の面でも問題を引きずる場合が多々あると言われています。また、ある研究では施設で2歳まで育った子どもは、里親委託された子どもに比べて、甚大な脳の障害を負うというデータを公表しています。

乳児院があるということ、そして児童養護施設があるということは、社会の制度として存在していること自体ありがたいことですし、備えておかなければならない制度だと思います。しかし、やはり幼い子どもにとっては、他人であっても親代わりの深い愛情に包まれて、家庭の中で健やかに育つことが発育上望ましいんだと思います。それを実現するのが里親制度であり、特別養子縁組です。

実は今月10月は「里親月間」なんですね。県のホームページに書いてありました。この里親月間にあわせて、県は里親制度の普及啓発を図るために、一般県民の方を対象に里親出前講座等を開催されているようです。

小池議員への答弁では、平成28年度末で里親登録は357組となり、里親委託児童数は179人に増えて、推進計画を上回る状況にあると言われました。また、児童養護施設や乳児院等の施設の小規模化、地域分散化、ユニットケアを進めてこられ、施設の定員は平成29年度で1,064人にまで減少していると答弁されました。我々の想いにお応えいただき、家庭的養育の環境を着実に推進していただいていることに感謝いたします。

答弁では、「赤ちゃん縁組」が進んでいない理由として、こども家庭センターが医療機関等と十分連携してこなかった点が挙げられるとありました。ぜひその点を見直して強化していただきたいと思います。児童虐待が増えて、こども家庭センターの負担は増すばかりで心配もしておりますが、今後もさらに里親制度の普及に取り組んでいただいて、里親委託、養子縁組件数をもっと増やしていただきたいと思いますが、その決意をお聞かせいただきたいと思います。

 

4.神戸製鋼所のデータ改ざん問題による県内企業への影響について

神戸製鋼所がアルミ製品などの性能データを改ざんしていた問題が発覚して2週間近くになりました。農政環境部の部局審査でも平成18年に発覚した環境データの改ざんをはじめ、グループ企業による様々な不正が続いていることが取り上げられていました。

この問題の影響は、製品納入先の自動車メーカーから鉄道、航空宇宙、防衛分野まで広がっており、大規模なリコールや訴訟に発展する可能性を含んでいます。

帝国データバンクが16日に公表した調査によると、国内の取引先は約6,100社に及ぶことが判明しました。中小企業がその過半を占めているようですが、不正問題の今後の広がり次第では、県内の多くの企業ユーザーや取引先にも影響が出てくるのではないかと心配しております。

調査によると、神戸製鋼所グループの国内取引先は47都道府県全てに及んでいるようで、下請けと部品などの仕入れ先が3,948社、製品の販売先は2,688社だそうです。重複を除けば、国内6,123社と取引していることになるようです。都道府県別では大阪府の1,146社が最も多く、全体の2割弱に上り、2位は主力の製鉄所がある兵庫県で997社、東京都が875社だそうです。兵庫県経済や関西経済、日本や世界にも大きな影響を及ぼす大事件になるのではないかと考えております。

現在、神戸製鋼所からの調査結果の公表や、同社の今後の対応を見極める必要があるとは思いますが、これだけの規模の事件ですから、リコールなどによる巨額の損失補てんによって同社の経営は大きく悪化すると思われます。その影響が県内企業、県内経済にも大きく反映されるのではないかと思いますが、県としてはどういった事態を想定し、県としてどういった対応策を取るべきであるとお考えでしょうか。現時点ではまだ全容がわからないところではありますが、今のうちから様々な事態を想定しておくべきではないかと思いましたので質問させていただきます。

 

5.楽農生活の推進について

この質問は、農政環境部の部局審査の際、我が会派の石井健一郎委員が質問をしたものですが、答弁内容を聞いて少し物足りないと感じましたので、さらに突っ込んで質問をさせていただきたいと思います。

石井健一郎委員から、楽農生活の推進の中で「ひょうご市民農園整備推進事業や田舎暮らし農園施設整備支援事業について、その予算が消化しきれていないことが目につく」と指摘し、その実態についてご答弁いただきました。

両事業の平成28年度の取組みが低調に終わった要因として、ひょうご市民農園整備推進事業では、都市部において税務署との協議に時間を要したことや、不特定多数の者が訪れることへの周辺住民の抵抗感があったこと、また農村部では利用者確保が困難だったことなどの理由から、マッチングできずに開設が進まなかったと答弁されました。しかし、このようになった結果は、いずれも開設する前、準備段階で把握できる内容ではないかと感じました。

私はこれらの事業を円滑に、そして成功させるポイントは、事業者つまり土地所有者の農家さんに対して、市民農園の開設がスムーズにいくように、行政がもっと手厚くサポートをしてあげることではないかと感じました。農家さんは、そもそも補助金申請や文書作成などに不慣れな方が多い気がしますし、周辺住民への理解を得るというのも、一人でやるのは大変なことです。

市民農園を利用したいという団塊の世代などの需要は大きいと思いますので、さらなる市民農園開設を目指してほしいと思っていますし、利用者とのマッチングについても情報が届き、そして煩雑な手続きがなくて簡単に利用できるように工夫をしていただきたいと思います。

それでは質問します。県では楽農生活の取組全体として、市民農園の開設数や市民農園利用者数の目標は一部ではあるものの、全体としてはないと聞きました。補助金がしっかりと使用されるように目標設定することが重要と考えますが、いかがでしょうか。また、市民農園の開設にあたっての法令や手続き等に関して、土地所有者の農業者に対する環境整備のハードルを低くするためのアドバイスやフォローを積極的に実施することが、楽農生活のますますの推進のために必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

 

6.地域創生とモノづくり立県ひょうごを支える公立高等学校の職業学科定員のあり方について

この質問は、我が会派の小池議員が質問しました「県立工業高等学校の支援強化について」を基に、人手不足で苦労されている県内企業や、地域創生の観点で若者の県内定着を図って施策を展開していることを意識しながら、県内公立高等学校の職業学科を中心とする定員について、将来的にどう考えるべきかという主旨の質問であります。

小池議員の質問から少し引用しますが、日本、特に我が兵庫県のモノづくり産業は世界に誇る産業であります。そのモノづくり産業で勤務されている方々の中には、地元の工業高校を卒業した方も多くおられるのではないでしょうか。そして、工業高校を卒業された方々は、高卒で就職した人の5割が離職するといわれている中、1割から2割の離職率であり、企業定着率は高いということもご紹介がありました。工業高校生に対する生涯にわたる職業観の形成を支援するキャリア教育や職業教育の充実が伺えるところではないかと思っています。

小池議員の質問を踏まえ、我が会派として思うことは、少子化で生徒数が減り、全体的に学級数を減らすことは理解するが、地元企業への貴重な人材供給源となっている工業高校生の枠を一律に減らすということは、地域創生の観点からも、また現在の企業の人手不足を解消する意味からも、将来を見通した十分な配慮と考慮が必要なのではないかということであります。

折しも、本日朝刊にて、兵庫県の平成30年度の公立高等学校生徒の募集計画について報道がなされました。それによりますと、工業学科は2学級80名の減となるようであります。大変残念に思っています。その他の職業学科では農業学科が1学級40名の減となっています。

教育委員会からの答弁では、「工業科の役割やその重要性については十分に認識しており、将来の工業各分野で技術者として活躍できる人材を育成する」と答えられました。そして、「進学希望状況などを踏まえながら、適切な学級数の設定に努める」とも答えられましたが、再来年度以降は今一度、地域創生の観点や地元企業への貴重な人材供給源となっているという観点で、工業高校をはじめとする職業学科の定員について、特段の政策的配慮が必要ではないかと考えますが、教育長のご所見をお伺いします。

7.特殊詐欺等防止に向けた更なる啓発の推進について

この質問は、私が企画県民部②で質問させていただいた「特殊詐欺対策を含む消費者トラブル対策について」の続編ということで、今度は取締りなど特殊詐欺対策の前線におられる県警本部に、特殊詐欺等防止に向けた更なる啓発の推進について質問をします。

この9月定例会においても、各会派の代表質問や一般質問で特殊詐欺に対する質問がありました。私はまず、県警察へのこの質問の機会の前に、特殊詐欺対策防止の啓発を行う企画県民部の部局審査がありましたので、消費生活課ではどのような啓発や対策を行っているのか質問しました。未然防止対策としては、通話録音装置の貸出や啓発DVDの作成などの対策を強化していくとの答弁がありました。しかしながら、特殊詐欺はその手口が巧妙化しており、被害が増加しています。水際で被害を防止することが重要であることは言うまでもなく、警察当局や県の消費生活部局のどちらも、様々なメディアや機会を通じて被害防止に向けた広報啓発を展開しておられます。

今回質問したいのは、特殊詐欺対策等で同様の啓発業務を行う県警察と県消費生活部局が、効果のある一体的な取組みをしているのかどうかということです。どの程度の連携ができているのか、また被害防止に効果があがっているのかどうかです。

県の消費生活部局も長年にわたって消費者行政を担ってきていますし、特殊詐欺を含む様々な消費トラブルに対応してきた知見があります。見守り活動等もされています。県警察当局と県消費生活部局が密に連携し、情報交換しながら犯罪に向き合っていけば、県民の被害防止に大いに資するのではないかと期待しています。

そこで質問しますが、県警察として、今後の特殊詐欺対策をさらに進めるために、県消費生活部局との関わりが現在どのような状況であるのか、お聞かせいただきたいと思います。また、今後の連携のあり方についてどうお考えか、ご所見をお伺いします。

 

8.県立病院の経営について

病院局の部局審査では、私から「診療単価の向上はなぜ続くのか」、「費用の抑制ができていないのではないか」、「医師等の超過勤務とワーク・ライフ・バランスはどうなっているか」という3点を質問させていただき、県立病院全体の経営の課題、そして患者目線での診療単価の負担感について指摘しました。

まず、「診療単価の向上」では、この20年間で入院・外来ともに約2倍になっており、患者の負担感が増していることを指摘しました。診療単価が向上してきた理由は、国の定める診療報酬改定のもと、県立病院の役割の変化や高度で濃厚な医療を提供することにより、上がっているものだとの答弁がありました。その経緯と背景については理解しました。しかしながら、病院局の経営目標として「診療単価の向上」を掲げるというのはいかがなものか、という気持ちは拭えませんでした。

また、今後も診療単価は向上していくのかと尋ねたところ、「県立病院の役割が取り巻く医療環境が変わってきており、地域包括ケアシステムが進む中では、おそらく高度急性期あるいは急性期の役割を担い、重篤、重症患者を受け入れることになって、高い診療費に繋がるという傾向は今後も続くことが予想される」ということでした。理解はしますが、高度な医療を受けようとすると、多額の費用がかかるということなんだと改めて認識することになりました。

次は経営についてです。私からは、医業収益に対する給与費、材料費、経費の比率が高く、費用抑制の取組みは甘いのではないかという指摘をさせていただきました。それに対し、「早急に改善すべき課題であると認識している、今後も引き続き費用抑制に努めてまいりたい」との答弁がありました。この答弁を信じますが、目標はまだまだ低いと感じましたし、その目標でさえ達成するのはハードルが高いのではないかと感じざるを得ませんでした。この20年間で患者数は外来で59万人、入院で19万人も減少しているのに、職員数が1,500人以上も増加していて、給与費の増加が経営収支の悪化に繋がっているのではないかとも感じます。

医師等の超過勤務とワーク・ライフ・バランスについては、「長時間労働が生じている現状については病院局としても課題であると認識している」とのことで、国の進める「働き方改革実行計画」での医師の時間外労働規制について注視するとともに、「県立病院におけるワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、問題意識を持って取り組んでいく」との答弁をされました。

以上、部局審査でのやり取りを振り返らせていただきましたが、私から今一度質問したいのは、おそらく、いろんな意味での「バランスはどうか」ということなんだと思います。県立病院は、今まで以上に高度な医療を提供する専門機関となっていくでしょう。しかしながら、患者の金銭的負担についてはどう考えてもらえるのか。配慮はできるのか。そのバランスです。高度な医療を提供することによって医業収益は上がると考えられますが、その収益に対するコストは過剰ではないかということ。給与費、材料費、経費。そのバランスです。そして働く医師や看護師などの職員のワーク・ライフ・バランス。心身ともに健康な状態で業務に励んでいただくことによって、健全で快適な医療を提供できるんだと思います。

以上のような観点から、私は、病院局として、何か甘えというか、県立病院なんだからいいだろうと許されるというような考え方や雰囲気があるのだとしたら、それこそがいろんな意味でのバランスを欠く原因となっていないかと危惧しているのです。

明確な質問となっていないかも知れませんが、今後の病院経営について、病院事業管理者からの率直な意見とお考えをお聞かせいただきたいと思います。

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