小池 ひろのり議員が質問( 教育委員会)を実施

質問日:平成29年10月17日

質問者:小池 ひろのり 議員

 

1.県立工業高等学校の支援強化について

日本には、世界に誇れる産業が数々あります。中でも中小企業が基盤であるモノづくり産業は、徒弟制で伝統が引き継がれ、日本人の器用さ、真面目さ、勤勉さも相まって、他国の追随を許さない圧倒的な高度な技術となって日本の産業を支えてきたと言えます。

そのモノづくり産業に大きな影響を及ぼしているのが、工業高等学校の存在です。工業高校生の場合、学校で身に付けた技術が、即戦力として企業に役立つことで、モノづくりに関わる自分の仕事への遣り甲斐と自信に繋がっているように感じます。

その傾向は、卒業後の若者の早期離職率に表れています。例えば、新入社員が3年以内に離職する割合は、これまで「七五三現象」と称されていたように、中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割と言われてきました。

しかし、全国工業高等学校長協会の調査結果によれば、工業高校卒業生の場合、定着率は非常に高く、離職率は10~20%台で推移しており、厚労省調査における他の若者の数値より20ポイントも良い結果になっています。これは、明らかに工業高校卒業生の技術に対する誇りと努力の賜物に由来すると言えます。

さらに、兵庫県立工業高校卒業生の場合、もっと顕著な数字が出ています。離職率が就職1年目で6.5%、2年目で10.7%、3年目で14.4%という状況からも、工業高校生に対する生涯にわたる職業観の形成を支援するキャリア教育や職業教育の充実が成果を挙げていることが伺えます。

県教委の調査では、平成29年9月での中学3年生の高校進学希望者の内、工業系学科で見ると、洲本実業が平成29年度の定員80名に対し70名、篠山産業が120名に対し84名、東播工業が定員240名に対し237名、相生産業が定員120名に対し111名ですが、他の10の高校は全て定員をオーバーしているという現状です。

更に、県立工業高等学校長協会の調査では、工業高校への志望校入学は、版数の高校で90%を超えています。高校入学という入り口で人気がある上、在学中の進路変更の割合は、多くの学校で5%以下という状態であり、さらに出口で専門教育を生かした進路先は、70%以上が合致しているという現状です。

このように工業高校の入学希望生徒が、定員以上に達し、卒業後もしっかりと技術に磨きをかけ、頑張る卒業生を多く送り出している工業高校に対し、県教育委員会の県公立全日制高校募集学級数の資料では、平成2年に100学級あったものが、平成29年では65学級に減少している上、平成33年までに全日制高校全体で大幅な学級減を行うとも聞いています。

少子化が進む中で生徒数が減り、全体的に学級数を減らすのは、ある程度やむを得ないことだとは理解しています。しかし、希望生徒がおり学校も成果を挙げ、地元企業への有能な人材育成の役割を担っている工業高校生の枠を一律的に減らすことは、国や県の目指す地域創生の施策に逆行することにもなると思います。更に、工業高校の学級減は、技術を習得し将来の仕事として頑張ろうと“夢や目標”を抱いている学科の生徒の門戸を閉ざすことにもなりかねません。また、世界に誇るモノづくり日本の根底を壊しかねない工業高校の学級減を一旦実施すれば、10年後には取り戻しがきかないことになるのではないかと危惧します。

そこで、質問します。県立工業高校の学級数を一方的に減らすのではなく、工業高校でしっかり技術を身に付け、夢や目的を与えるような教育も重要であることから、より一層の支援を図るべきと考えますが、当局の認識をお伺いします。

 

2.県独自の給付型奨学金制度の創設について

昨年3月の予算委員会で、奨学金制度の改善について取り上げましたが、再度、県独自の給付型奨学金制度の創設についてお尋ねします。

昨今、経済格差が教育格差にまで広がり、経済的困窮者の高校生の進路に影響が出ており、経済的理由で進学を諦めざるを得ない高校生が出て来ています。

私は、誰に対しても大学進学を促すものではありません。しかし、進学したくても経済的理由で進学を諦めざるを得ない子供がいれば、行政が支援をすべきではないでしょうか!

「貧しい家庭に生まれたと言う『不運』だけで、子供の人生が決まる」のは、理不尽としか言いようがありません。子供は、親を選べませんし、貧しい家庭に生まれたのは、子供の責任ではありません。

日本は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合が極端に低く最下位だそうです。

特に、幼稚園と大学は私費負担に支えられています。幼児教育の費用に占める公的支援の割合は46%で、OECD加盟国中で最低です。また、現在、大学生の半数近くは、貸与型奨学金を利用しています。しかし、貸与は、当然、卒業後に返済義務があります。卒業し社会人になった途端に、奨学金は何百万円という負債(借金)に変わります。本当に貧しい家庭の子供にとっては、“貧困の継承”に繋がると言えます。

私が関わっていた児童養護施設の子供は、非常に頭の良いトップレベルの成績で、将来弁護士になりたいと言っていました。しかし、彼女は施設退所後の生活費・家賃・授業料を考え、進学を諦めてしまいました。このことは、社会の大きな損失であるとも言えます。

私達の要望に応えて、国は不十分ではありますが、このような子供たちの為に給付型奨学金制度を平成30年より創設しました。目の前に経済的理由で悩んでいる高校生に、進学する夢や希望を与える制度として給付型奨学金を高く評価するものです。しかし、仮に「月額2~4万円、全国で2万人が対象」と言う国の給付型奨学金が認められ、私大・下宿で最高の月額4万円を受給出来ても、授業料等の1/3しか充たされません。更に、アルバイトで生活費・家賃等のカバーすることが必要となります。その結果、県下の児童養護施設の子供の大学進学率は、依然として約13%という低水準で、一般家庭の55%の1/4という状態が続いています。この理不尽をいつまでも放置しておいて良いはずがありません。

そこで、県は独自の給付型奨学金制度を創設し、国の不十分な給付型に上積みし、家庭が苦しく“やる気”があっても経済的な理由で進学を諦めている高校生を、例え何人かでも救って頂きたいと思います。“貧困の連鎖を教育で断つ”という観点からも、この県独自の給付型奨学金制度の創設を是非実現させて頂きたいと思いますが、当局のお考えをお尋ねします。

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