2018年度当初予算編成に対する重要政策提言(全文)

Ⅰ 「地域主権社会」の確立に向けて

1  地域の自主性及び自立性の向上

(1) 地域創生の推進

県内の市町間で、過度な人口の獲得競争が行われないよう、県と市町が密接な連携を図りながら「オール兵庫」で地域創生に対応する体制を構築すること。

また、具体の施策展開に当たっては、効果が十分に出るよう施策の絞り込みを行い、市町の自主的・主体的な取り組みへ支援するとともに、必要な特区や規制緩和が実現するよう国に強く求めること。

 

(2) 県内分権の推進

「補完性の原理」に基づいて市町への権限移譲に取り組むこと。その際、市町と県が対等な協力関係のもと、市町の実情を踏まえて進めるとともに、受け皿づくりを支援すること。

 

(3) 「関西広域連合」による取り組みの強化

広域計画に基づき、国出先機関の関西広域連合への移管や事務・権限の移譲の実現を、関西府県全てが一体となって、引き続き、国に対して強く働きかけること。

 

(4) コンパクトシティ構想の推進

持続可能な自治体経営に向け、コンパクトシティを目指す市町に対する協力と支援を行うこと。

 

(5) 若者の県内定着推進

若者の県内定着を推進するため、魅力的な就学や就業の場づくりに取り組むとともに、効果のあるUターン就職を推進するため、県内学生の高校卒業時及び大学卒業時の進学先、就職先を調査して状況を把握すること。

また、Jターン、Iターンについては対象を絞り切れないものの、兵庫県の魅力を高めて就職、県内定着に結び付けていくこと。

 

 

(6) 芸術文化の振興

県民が芸術文化に触れる機会を増やし、豊かな感性の涵養に資するため、美術館・博物館等芸術文化に係る県有施設について、入館料の月1回無料化を実現すること。

また、併せて、パブリックアートの普及促進を図り、県民や本県を訪れた旅行者等が身近に「芸術文化立県ひょうご」を感じられるよう取り組むこと。

 

2  参画と協働の推進による「新しい公共」の実現

 (1) NPO法人等に対する財政基盤強化に向けた支援

財政運営の基本となる寄附を安定的に確保するため、認証NPO法人等への寄附金に対する税額控除制度を導入し、寄附文化の醸成・定着を図るなど、NPO法人の財政基盤強化に取り組むこと。

 

 (2) NPO法人等との協働による課題解決の推進

「県民の参画と協働の推進に関する条例」の理念に基づき、専門的知識を有するNPO法人等によるモデル事業の実施など、地域団体、ボランティアグループ等との協働による取り組みを推進すること。

 

(3) 多様な主体による参加の促進

審議会等において、公募による女性や若者の委員を一定割合確保するなど、多様な意見を反映させること。

 

Ⅱ 「持続可能な行財政構造基盤」の確立に向けて

1  行財政構造改革の推進

(1) 最終2ヵ年行革プランの着実な推進

平成30年度に収支均衡を実現することはもちろん、持続可能な行財

政基盤を確立するため不断の改革に取り組み、行革の総仕上げに向け、改革を着実に推進すること。

 

(2) 職員の体制整備

職員のワーク・ライフ・バランスに配慮し、有給休暇取得率の目標である70%の早期達成、在宅勤務制度やフレックスタイム制の利用促進など、県庁の職場環境の整備を図ること。

また、行政の手続きコスト2割削減の取り組みを兵庫県においても実行するとともに、内部の手続き・運営についても合理化・簡素化を図る仕事の中身改革に取り組むこと。

 

(3) 投資事業の改革

厳しい財政状況と人口減少を前提に、「国土強靱化」の名の下での過度な投資事業は慎み、身の丈にあった事業のみに限定するとともに、将来世代に過剰な負担を負わせないために、将来にわたって発生する負担額を明示すること。

また、事業の実施にあたっては、その必要性と優先順位、費用対効果を明確にするとともに、実施過程の透明性を確保すること。

さらに、一定金額以上の公共工事に関しては、事業効果の事後検証も確実に行うこと。

 

2  組織改革の検証

(1) 組織体制

県民局・県民センターについては、果たす役割を十分明確にした上で、業務の実施状況や市町との関係等を踏まえながら、阪神地区、中播磨地区・西播磨地区の統合や丹波県民局の見直しなど、再編を検討すること。

 

(2) 公社等外郭団体の改革

公社等外郭団体については、監査委員の監査対象とならない団体であっても、出資者として監査体制の強化や十分な情報を開示するなど、透明性の確保と効率的な運営を求め、その存在意義や必要性を絶えず検証すること。

また、専門機関としての組織体制とする観点からも、県派遣職員や県退職者の登用は、在職期間が短く、運営に対して長期的な展望が持ちにくいことから、経営責任が曖昧になる危険性があるため、最小限にとどめること。

 

3 県有施設の最適化の推進

県有施設に関して、人口減少社会を前提に、廃止も選択肢の一つとして、その管理運営に係る基本方針や具体的な整備計画を定め、全庁的な保有総量・利用調整のあり方について具体的な検討を進めること。

管理運営については、民間事業者のノウハウを活用することにより、効率的で質の高い管理運営が期待できる施設について、原則として公募により指定管理者を選定するとともに、選定にあたっては透明性や公平性の確保に加え、財務の安定性にも配慮するなど制度運用の改善に努めること。

Ⅲ 「健康福祉社会」の実現に向けて

1  健康づくり対策の推進

 (1) 県民の健康づくりの推進

より多くの県民が健康上問題なく日常生活が過ごせる「健康寿命」の延伸を目標とし、健康寿命全国1位を目指して、様々な取り組みを進めること。

特に、食生活の改善や運動不足・ストレスの解消など、県民一人ひとりによる生活習慣の改善や社会全体での健康づくりの支援を拡充するとともに、歯の健康づくりや受動喫煙の防止、心の健康づくりの推進など体系的な取り組みを行うこと。

特定健康診査(メタボリックシンドローム健診)・特定保健指導のより円滑な実施に向けては、医療保険者や市町等と連携し、健診受診率及び保健指導実施率の向上を図ること。

(2) 疾病対策の推進

がん対策については、企業の健康診断等における検査や市町の個別勧奨等の予防対策において、肝炎ウィルス検診やピロリ菌検診を行うなど、充実を図ること。

難病患者対策については、国の認定を受けていない疾病も含めて、課題と対応策等を調査・検討し、対策の充実強化を引き続き国へ働きかけるとともに、県としての対策も検討すること。

腎疾患対策については、地域バランスに配慮して、医療体制の充実を図ること。

さらに、アルコール依存症対策を推進するため、健康被害の発生・再発防止策の体系的な充実を図るとともに、総合的な推進体制や県の推進計画の策定を検討すること。

 

2 地域医療の確保

 (1) 地域医療の確保

地域の医療連携を推進するため、2次保健医療圏域を単位とした医療機関の適切な役割分担、相互連携を進めるとともに、かかりつけ医の普及・定着等在宅医療の推進に取り組むこと。

また、県内における救急体制の格差解消に向け取り組むとともに、積極的に各市町間における広域連携体制の構築を進めること。

特に、小児科、産科、麻酔科などの診療科偏在及び地域偏在の解消を図るため、兵庫県地域医療支援センターを中心に、就労環境の整備やへき地医の養成などに積極的に取り組むこと。

さらに、看護師不足に対応するため看護師等の確保対策を進めること。

 

(2) 県立病院の円滑な運営

医療ニーズの高度化・多様化、医療技術の進歩に対応し、県立病院の役割である高度専門・特殊医療を中心とした政策医療の提供など、より良質な医療を提供できるよう、診療機能の高度化・効率化に努めるとともに、公立病院として期待されている機能を果たすため、県立病院を中核とした公立病院のネットワーク化を推進すること。

また、適切な公的負担の下で、自立した経営が確保できるよう、経営状況の推移の分析を十分に行うことはもとより、医療資源の有効活用や職員の経営意識の向上及び計画的な経営改善に取り組むこと。

さらに、インシデント・医療ミス、医療事故の発生予防に向けて、医療安全対策に取り組むこと。

 

3  高齢者福祉・介護の充実

(1) 介護サービス基盤の充実

地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域包括支援センターの機能強化や地域医療と介護事業の連携の強化などにより、地域ケアの総合的な推進を図ること。

介護予防サービスについては、地域やサービス受給者に最も効果的に提供できるよう、市町への支援を強化すること。

また、介護福祉士を含む介護職員の処遇改善やキャリアアップへの支援等により、介護人材を確保するとともに、介護人材の養成を積極的に推進すること。

 

(2) 認知症対策の推進

認知症高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、認知症サポーターの育成支援、認知症疾患医療センターの拡充、認知症サポート医の養成に努めること。

併せて、認知症による徘徊高齢者が行方不明になる事案が増加していることから、警察、地域住民などとの連携を強化し、速やかに発見・保護できる体制を充実すること。

さらに、若年性認知症についても、課題を検証するとともに、職場などの理解促進に努めること。

 

 

4  障がい者福祉の充実

(1) 就労・社会参加支援の充実

障がい者の自立に向けて、就労のほか、スポーツや芸術文化を通じた社会参加を支援すること。

特に、就労については、福祉的就労から一般就労への移行に対応するため、教育機関・福祉関係機関やハローワークと連携を図りながら、障がい者の特性や希望に応じて、職場適応援助者(ジョブコーチ)を活用した職業訓練、職業指導に積極的に取り組むとともに、障がい者の支援に積極的な企業の開拓に努めること。

 

(2) 障がい者の生活支援の充実

障がい者が、地域の一員として、その生き方が尊重され、安心して当たり前に暮らせることができるよう、障がい者の生活支援の充実を図るとともに、障害者差別解消法についての県民への周知や関連施策の積極的な推進に努めること。

特に、精神障がい者への支援については、家族への支援の観点も踏まえ、精神科の訪問看護の充実に向け取り組むこと。

また、障がい児を持つ親が子育てと仕事を両立できるよう、長時間受け入れ可能な施設の整備など、支援を拡充すること。

 

5  少子化対策の総合的な推進

(1) 保育サービスの充実・強化

病児・病後児や医療的ケアの必要な障がい児保育に加え、休日・祝日・早朝・夜間における保育など、多様な働き方や家族形態に対応する保育サービスの展開を支援するとともに、待機児童の解消に向けた保育人材の確保やさらなる処遇改善に取り組むこと。

 

(2) すべての子育て家庭に対する支援の充実

シングルマザー、シングルファーザーへの支援、第3子以降への経済的支援、在宅勤務など柔軟な働き方の拡充、三世代同居・近居への支援など、妊娠、出産への安心感の醸成も含めて、誰もが安心して子育てができる環境を整備すること。

さらに、不妊症・不育症に対する経済的負担の軽減に向けた支援のさらなる充実を図るとともに、里親制度や養子縁組・特別養子縁組制度の普及・促進を少子化対策として実施すること。

 

 

6 総合的な自殺対策の推進

「自殺者ゼロ」に近づけるため、兵庫県いのちと心のサポートダイヤル等での相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備など、実効ある対策を推進すること。

特に、死因の第1位が自殺となっている15~39歳の年代(平成27年版自殺対策白書)に対し、重点的に取り組むこと。

 

7 児童虐待・DV・要保護児童対策の推進

(1) 児童虐待防止対策の推進

児童虐待の予防に向けた子育て支援に加え、親や将来の親に対する子育て教育のさらなる充実に努めること。

さらに、児童虐待通報件数が増加傾向にある一方で、児童虐待の恐れのある児童の一時保護先の確保が困難になってきていることに鑑み、一時保護施設の拡充、新設を検討すること。

また、各学校においても、主幹教諭や人権教育担当教員などを中心とした早期発見・解決できる体制整備を行うこと。

 

 (2) DV・家庭内暴力対策の推進

各地域において、市町、警察等も含めて総合的に取り組む体制を構築したうえで、関係機関の密接な連携の下、相談体制の強化や被害者へのサポート体制の確立、加害者への教育の充実や民間施設も含めた被害者保護施設の整備促進など、効果的な抑止及び被害者の救済・支援に取り組むこと。

また、各市町におけるDV対策基本計画策定、支援センター設置への働きかけを強化すること。

被害者の自立支援においては、生活の基礎となる住居・就労の確保を連動して進めること。

 

(3) 社会的養護の充実

親からの虐待などにより家庭で生活できない子どもたちを家庭的環境の中で養育する受け皿の充実に向け、児童養護施設の小規模化や人材の確保・育成などの専門的なケア体制の整備など、「子どもの最善の利益」を考え「社会全体で子どもを育む」という理念に基づいた、きめ細かな社会的養護が行える環境整備を行うこと。

 

 

 

8 生活困窮者対策の推進

(1) 高齢者等の貧困対策の推進

近年指摘されている高齢者の貧困化については、問題を抱えた高齢者が孤立しないよう、地域の行政機関の連携を深め、情報を共有するなど、セーフティネットの役割を果たせる体制づくりに努めること。

また、生活困窮者自立支援法に基づき、生活困窮者への支援に努めること。

 

(2) 子どもの貧困対策の推進

地域における居場所づくりやすべての子どもへの学習機会の提供など、「貧困の連鎖」を断ち切るための対策を講じること。

Ⅳ 「子どもが輝く社会」の実現に向けて

1  児童生徒の発達段階に応じた教育環境の充実

(1) 発達段階に応じた教育環境づくりの推進

少人数学級の着実な推進などにより、読み・書き・計算をはじめとする基礎・基本の学力の確実な定着や、一人ひとりの個性・能力を伸ばすことなど、児童生徒の発達段階に応じた教育環境づくりを推進すること。

 

(2) 「生きる力」を育む教育の充実

子どもたち一人ひとりの豊かな心を育み、主体的に生きる力を育成するため、これまで取り組んできた「自然学校」や「トライやる・ウィーク」等の成果の検証を行い、職業体験教育へ転化させるのではなく、心の教育という原点に立ち返って当初の趣旨を十分に踏まえながら事業を進めること。

 

(3) シチズンシップ教育の推進

公職選挙法改正により18歳以上に選挙権が拡大されたことを契機として、本県の将来を支える行動的な県民をより多く育てるため、自らが属する社会における権利に関する認識を培い、その社会に能動的に参加し、参加型民主主義を理解、実践するための必要なスキル、価値観を身につけることを目的としたシチズンシップ教育を、兵庫県における教育の柱の一つとして、効果的に推進すること。

 

(4) いじめや問題行動、不登校等に対応する生徒指導の充実

いじめや不登校などの問題行動等を早期に発見・対応し、児童生徒が充実した学校生活を送ることができるよう、校長のリーダーシップの下、いじめの情報を広く収集できる体制を確立し、早期に対応できる体制を整備するとともに、適切に機能するよう図ること。

また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域とも協力しながら、未然防止のための体制整備や問題行動を起こす複雑・多様化する要因への対応を早急に進めるとともに、学校以外での対応検討のため、フリースクールの実態把握を行うこと。

心のケアが必要な子どもたちに対しては、県立但馬やまびこの郷での取り組みをはじめ、児童生徒の心に寄り添う生徒指導の推進体制や支援システムを確立するとともに、教員の資質向上に向けた各種研修の実施等、人的支援の充実を図ること。

 

2 教職員の勤務環境の改善

多忙化している教職員の勤務実態を踏まえ、勤務時間の適正化やメンタルヘルスケアをはじめとする教職員への支援体制の充実、業務・研修のあり方の見直し、業務の総量削減、思い切った業務の分離・委託の検討などにより勤務環境の改善を図ること。

特に、長時間労働の主要因である部活動については、各学校における特色化や部活日数の上限設定などを検討すること。

 

3 教育機会の充実

生まれ育った環境に関わらず、あらゆる人が教育を受ける機会を拡大させ、貧困の連鎖を断ち切るため、奨学金制度を貸与ではなく、条件付きで給付するなど充実を図ること。

また、貸与型奨学金の利用に関しては、生徒や保護者に対し、返済にかかるリスク等に関する説明を十分に行うこと。

 

4 特別支援教育の充実

発達障がいの特徴に応じた教育環境の整備やキャリア教育等将来を見据え長期的視点に立った教育を展開すること。

また、真のインクルーシブ教育を目指して、普通高校内に特別支援学校の分教室を拡大するなど、共に学び合う環境の整備を行うこと。

 

5 特色ある高等学校教育の展開

個性を尊重する多様で柔軟な高等学校教育を推進するため、学校の創意工夫を生かした特色ある取り組みや、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりのための施策を積極的に展開すること。

特に、定時制・通信制高校については、多様化する生徒に対応するため、現状に即した高校づくりを進めること。

 

6 私立学校に対する支援の充実

公教育の一翼を担う私立学校については、経営の安定に資する経常的経費の支援に加えて、部活動の全国大会出場など特別な活動にかかる臨時的な経費についても、その捻出が厳しいことから、支援を行うこと。

 

7 県立大学の自律的かつ効率的な運営支援

(1) 時代にふさわしい県立大学の運営

地域社会への還元、社会貢献、県政への連携といったこれまでの大学運営における視点も踏まえ、県立大学のあるべき姿を確認しながら自律的かつ効率的な運営が行えるよう支援すること。

また、新学部の設置を含む学部・学科の再編については、ICTなど時代のニーズに応じたカリキュラムの設置や大学間競争に打ち勝つ特色ある学部・学科を創設するよう図ること。

 

(2) 独自奨学金の拡充

優秀な人材確保と教育機会の提供のため、入学・在学時の成績に応じた給付型奨学金に拡充すること。

 

Ⅴ 「危機管理型社会」の実現に向けて

1 危機管理体制の充実

(1) 防災・減災対策

「津波防災インフラ整備5箇年計画」や「第2次山地防災・土砂災害対策5箇年計画」等に基づき、発生が懸念される南海トラフ地震による津波、洪水、土砂崩れ、高潮等の自然災害に備え、計画的な基盤整備やシステムを構築するとともに、阪神・淡路大震災のこれまでの取り組みや東日本大震災、熊本地震への支援にかかる検証、災害対応にかかる広域での連携などを進め、「減災」の観点から、ハード整備・ソフト対策が一体となった防災体制の確立に取り組むこと。

また、熊本地震では、職員が目前の課題から応急的に処理せざるを得ない状況であったため、優先されるべき業務が進まなかったことなどを踏まえ、有事の際に備えて、市町の業務継続計画策定をさらに支援するなど、自治体の災害対応力の底上げを図ること。

 

(2) 災害時要援護者への対応

災害時に障がい者や傷病者などの要援護者の安全を確保するため、平素から医療機関のみならず警察、消防など様々な関係機関も含めた連携と役割分担、的確な情報共有を図り、支援体制を構築すること。

 

2  治安の向上

(1) 犯罪の抑止と徹底検挙

犯罪のハイテク化や国際化など社会の変化、犯罪の性質の変化に柔軟に対応するため、警察組織・人員の効率的な運用や初動捜査体制の整備など、捜査力・執行力の充実・強化を図ること。

特に、「暴力団排除条例」の適切な運用による暴力団等による組織犯罪への対策を強化し、銃器や薬物の密輸・密売の防止を推進すること。

さらに、県民の身近で発生し、年々新たな手口で、悪質、巧妙化する生活経済事犯やサイバー犯罪などの予防に向け、取締りの強化や関係機関との密接な連携による啓発活動を実施すること。

 

(2) 信頼される警察行政の推進

生活者の視点に立った警察活動を展開するため、警察署協議会の開催はもとより、地域の課題に沿った基礎自治体・自治会とのネットワークを構築し、より広く県民の要望・意見の的確な把握と適切な対応に努めること。また、積極的な情報公開や取調べの可視化による警察行政の透明性の確保を進めるとともに、ここ数年、急増している警察官の不祥事に対し、警察官の資質向上に向けた取り組みを行うなど、自浄機能の強化を図り、信頼される警察行政の推進に取り組むこと。

さらに、警察官については、常に200人以上の欠員が続いており、警察学校での退職者も毎年多数出ることから、治安の維持や県民の安全安心のために、欠員の解消に向けた取り組みや柔軟な人的支援を行うこと。

 

(3) 犯罪被害者支援の充実

犯罪被害者等の精神的負担を軽減するとともに、再び平穏な生活を営むことができるよう、犯罪被害者等早期援助団体への運営支援を強化すること。

特に、性犯罪被害者は、精神的ダメージが大きく、回復に向けた支援が必要であるとともに、裁判等においてプライバシーが侵害される不安が大きいことから、被害者に寄り添った長期的かつ総合的な支援体制を構築すること。

 

(4) 警察署人員の最適化

人口減少や犯罪動向を踏まえ、阪神・神戸地域の警察署の人員を拡充すること。

 

3  防災副首都の関西誘致

わが国全体の危機管理能力を向上させるため、首都圏における非常事態に備えた首都機能のバックアップを行う仕組みの早急な構築が必要であることから、関西を国土・防災・有事に関する法律や計画等に位置づけるとともに、東京一極集中を是正する「地方創生」の観点からも、首都代替機能の設置促進に向け、具体化していくことを強く国に求めること。併せて、企業の本社機能の関西誘致についてもより積極的に進めること。

 

Ⅵ 「産業活力社会」の実現に向けて

1  産業活性化対策の推進

(1) 活力ある兵庫の産業の構築

ものづくり産業を支える中小製造業や基幹産業、大学、「SPring-8」、「京」、「SACLA」等の知的資源を有機的に結合することにより、ナノ、情報通信・エレクトロニクス、健康・医療、環境・エネルギー、ロボット(人工知能)などあらゆる技術分野において産業活性化を図ること。

また、産業集積条例の活用等により、国内外の優れた企業、研究所の誘致に取り組むとともに、産官学連携や関西イノベーション国際戦略総合特区の活用を推進し、地場産業の活性化、雇用創出を図ること。

さらに、成長産業の一角である医療産業など、本県に集積する高い技術を持つものづくり企業の海外展開を支援すること。

 

  (2) 中小企業の自立と地域経済の活性化の推進

(公財)ひょうご産業活性化センターや工業技術センターの機能強化・充実を図り、中小企業における開発力・技術力を高めるとともに、知的財産の創造・蓄積・活用を支援し、情報通信や防災など次代の兵庫経済を担う多様な成長産業の創出を図ること。

また、地域経済の発展、雇用の促進及び県民生活の向上を図るためには、中小企業へのサポートが必要不可欠であることから、「中小企業の振興に関する条例」に基づき、人材確保、経営・技術支援、海外展開支援や社会情勢の変化に対応する適切な経営支援、オンリーワン企業の創出を行うこと。

(3) ものづくりを支える人材の育成

ものづくりの優れた技術・技能を有する匠や企業内人材の育成、技術の産業化を担うプロ人材の育成など、ものづくりを支える技術・技能、特に、科学技術人材の厚みと資質の向上を図るとともに、学校教育段階から職業生活の各段階に応じた総合的・体系的な人材育成の仕組みを構築すること。

 

2  雇用就業対策の推進

(1) セーフティネットの構築

企業に対して雇用維持や労働法令の遵守、長時間労働の抑制を積極的に働きかけるとともに、過労死等の防止や労働者の権利擁護に対し関連機関との連携を強化し、悪質な案件については公表すること。

特に、県が発注する工事などにおいて、労働者の賃金や労働条件等を確保するため、「県契約における適正な労働条件の確保に関する要綱」を労働者・使用者に周知するとともに、法令違反があった場合に労働者から申し出がなされるよう制度の実効性を高めること。

 

(2) 雇用対策の充実

企業ニーズや社会ニーズを踏まえた機動的・効果的な職業訓練の実施を進め、就業力の向上を図ること。

また、求人・求職の適切なマッチングの推進やワークシェアリングによる雇用機会の拡大等により、若者、女性、高齢者など多様な人材の安定した雇用の創出・確保を図ること。

特に、若年者の雇用の安定については、少子化対策の観点からも積極的に対策を進め、雇用・福祉・教育分野における連携体制を構築し、就業体験等による職業意識の涵養や若者しごと倶楽部等におけるキャリアカウンセリングなどの取り組みを推進すること。

 

(3) 中小企業の人材確保

生産年齢人口が構造的に減少していく中、中小企業の経営課題として深刻化する人手不足の速やかな解消を図るため、関係機関とも連携し、実効ある対策に取り組むこと。

また、定着率の向上を図るため、企業や業界に対して、働きやすい職場環境の整備などについて働きかけること。

 

3 多様な働き方の実現

(1) ワーク・ライフ・バランスの推進

「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」等を尊重し、大企業だけでなく、中小企業も含めた取り組みの中で、多様な働き方が可能となるよう働き方の見直しを支援すること。

また、育児介護休業、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、事業所内の託児所の設置、在宅勤務など働きやすい職場環境づくりを推進するため、既存の助成金制度が積極的に活用される環境をつくり、企業等におけるワーク・ライフ・バランスの取り組み支援を充実させること。

 

(2) 女性が活躍できる働く場等の確保・創出

女性が能力を生かし、生き生きと働くことのできる場の確保と創出に努めるとともに、地域経済の活性化に資する新事業展開などの女性の積極的な取り組みに対し、支援すること。

特に、女性就労の促進に当たっては、出産、育児による不利益が生じないよう、企業に対する働きかけを強化するとともに、相談体制を充実させること。

 

(3) 障がい者雇用の促進

特例子会社設立の大企業だけでなく、地域に根ざした中小企業への雇用促進のための仕組みづくりを推進すること。

例えば、企業に対して制度の普及・啓発や先進事例の紹介、採用後のサポートや特例子会社設立への支援等を行うとともに、2018年からの精神障がい者の雇用義務も念頭にいれた企業と連携した取り組みを行うなど、障がい者の雇用に対する企業の不安感を払拭させる取り組みを推進すること。

また、直接雇用だけではなく、間接的に障がい者の雇用促進や自立支援につながる購買活動の推奨や調達の評価などに取り組むこと。

さらに、特別支援学校高等部卒業生に対しては、自立と社会参加を実現するためにも、可能な限り就労できるよう様々なサポートを充実するとともに、生徒たちの技能が生かされる業務のある企業との関係を構築すること。

 

(4) 非正規雇用の待遇改善

勤労者の生活の安定・充実、社会保険の空洞化の防止等の観点も踏まえ、非正規雇用から正規雇用への転換を促進するとともに、正規雇用と非正規雇用の均等待遇・均衡処遇の実現に向け、賃金のみならず、教育訓練機会の均等についても、公的教育訓練機関と企業内教育訓練との連携により取り組むこと。

 

4 ひょうごのツーリズムの振興

多彩な地域資源を生かした交流人口の拡大による地域活性化に向け、関係団体や市町等と連携し、明確な目標を定めた上で、国内外からの観光客誘致を図る大型観光交流キャンペーンや地域ぐるみの交流の仕組みづくりへの支援等を推進し、さらには広域連携の一層の推進などにより、ひょうごのツーリズムの振興を図ること。

また、アジア諸国をはじめとする訪日外国人について、有力な観光動線として、神戸港においてクルーズ市場を的確に取り込むほか、兵庫の強みを生かしたテーマツーリズムを推進するなど、本県への誘客を促進し、県内経済の活性化や雇用創出につながる取り組みを強化すること。

 

Ⅶ 「環境循環型社会」の実現に向けて

1  実効性あるエネルギー政策の推進

エネルギーの安定供給と省エネルギーの推進等に対応するため、県自らが率先して、省エネルギー・節電行動を推進するとともに、家庭や民間に対しても積極的に促進すること。

また、太陽光、風力、バイオマス、小水力発電をはじめとしたエネルギー源の多様化や再生可能エネルギー導入促進に向けた取り組みを積極的に推進すること。

 

2 温室効果ガスの排出抑制

環境の保全と創造に関する条例等に基づき、エネルギー多消費事業者等の温室効果ガス排出抑制の自主的な取り組みを促進するなど、産業部門における企業の排出抑制を支援すること。

また、地球規模での抑制の観点から、発展途上国等の環境技術への支援を行うこと。

 

3 農林水産業の活性化

(1) 安全・安心な農林水産物の安定供給の実現

力強い農林水産業を確立するため、多岐に渡る分野での取り組み・支援強化を図ること。

また、消費者が安心して農林水産物を選択できるよう、農薬等の適正使用管理の徹底を図るとともに、人と環境にやさしい栽培技術等の導入などを促進すること。

さらに、生産者等に対する食品表示適正化の指導や、安全で衛生的な処理加工の管理手法の導入を推進するとともに、生産履歴の記帳やトレーサビリティシステム、農業生産工程管理手法(GAP)の導入に向けた取り組みを進めること。

 

(2) 食と農への理解促進

住民・消費者・特に子どもを対象とした農業体験活動・食体験活動や、生産者と消費者の交流活動を通じて、食と農への理解の促進を図り、地産地消を推進するとともに、次世代に対する「食育」、日本型食生活実践の観点から、米をはじめとした県産農林水産物が学校、老人福祉施設、病院などの給食に導入されるよう取り組むこと。

また、フードバンク運動やドギーバッグ運動などの取り組みへの支援を通じて、食品廃棄物の発生を抑制するとともに、食品残さの飼料化、たい肥化など、食資源の有効利用を推進すること。

 

(3) 6次産業化の推進

農林漁業者による2次・3次産業分野への働きかけを促進するため、地域の農林水産物の特徴を生かした商品の開発・生産、市場の開拓、人材育成など、生産から加工・流通・販売までの取り組みに対する支援を行うこと。

 

(4) 農畜水産物ブランド戦略の推進

消費者や実需者のニーズを把握し、ブランドとしてふさわしい品目の選定や品質の改善、新品種の開発などを通じて、他県産よりも優れた商品の生産を図るとともに、地域団体商標の活用など、効果的な宣伝活動を実施することにより、全国の主要都市やアジア諸国をはじめとする海外への販路拡大を積極的に推進すること。

 

 4  農山漁村振興と担い手対策の推進

(1) 農地・農業用水の保全

農地や農業用水は、農業生産の基盤としてだけでなく、水源涵養等の公益的機能を有しており、これらの機能を維持する観点から、農地、農業用の水路、井堰、ため池等の整備・保全等の取り組みに対して支援を行うこと。

また、整備した優良農地を適切に確保するため、土地の利用関係を適切に調整するとともに、公共事業実施に当たって、優良農地を安易に転用することのないよう取り組むこと。

さらに、ため池等の農業用水利施設における水難事故防止対策や老朽化等による災害時の決壊防止対策も徹底すること。

 

(2) 担い手対策の推進

県民はもとより、UJIターン希望者や地元企業の農林漁業への新規参入に対する技術研修や財政的支援、新規就農の成功事例や農山漁村のゆとりある生活の魅力の情報発信など、意欲と能力のある者の参入を促進するとともに、農山漁村で経験を積む外国人技能実習生に対する的確な受入等への支援を行うこと。

 

Ⅷ 「快適で潤いのある社会」の実現に向けて

1  社会資本ストックの有効活用

施設の耐久度を把握・評価し、将来の劣化を予測して維持管理・更新を計画的に行うアセットマネジメントの導入を進めるなど、「つくる」から長く大切に「つかう」へと視点を変えた取り組みを進めること。

また、「長く使う」にあたり、費用対効果が低いものについては、「こわす」ことも視野に入れた取り組みを行うこと。

さらに、社会資本ストックの維持・更新を着実かつ戦略的に進めていくため、民間の資金、経営能力、技術能力を活用した仕組み・手法を積極的に取り入れること。

 

2 総合的な交通施策の推進

(1) 地域課題に対応した交通政策の推進

地域交通を確保する公共交通優先システムが推進されつつある中で、「ひょうご21世紀交通ビジョン」を実現するため、公共交通の利用促進、交通安全対策、交通事故防止、交通量の削減、高齢者の移動手段の確保、交通アクセスの円滑化など、地域課題や政策と関連づけた総合的な交通政策を推進すること。

特に、県民の社会参加の機会確保や、地球温暖化防止と低炭素社会実現に向けた公共交通のあり方などを踏まえ、公共交通の維持・活性化に向けた取り組みを展開すること。

また、交通政策基本法に基づき、市町との連携を深め、県のまちづくり・教育・福祉・観光施策推進のため、地方自治体・事業者・県民の役割を明確にした「県交通基本条例」を制定すること。

 

(2) 総合的な交通安全対策の推進

悲惨な交通事故を防止するため、関係部局が連携して交通実態の的確な把握・分析を積極的に進め、総合的な交通安全対策を推進すること。

特に、県民参加型の交通安全活動などを一層推進するとともに、飲酒運転や悪質な駐停車違反の取締り、暴走族の検挙、さらには、自転車事故の防止、義務化された自転車保険への加入促進などに重点的に取り組むこと。

また、道路の利用実態に応じて、適切な速度規制の見直しや信号機の最適化を図ること。

 

3 都市のあり方の適正化と緑化推進

(1) 空き家対策の推進

空き家の増加は、地域の防災や防犯、生活環境、景観などに悪影響を及ぼし、さらにはまちの活力の低下につながることから、民泊や介護施設など居住以外の目的で新たに活用できるよう規制緩和を検討すること。

また、専門家や関係団体等と緊密な連携を図り、空き家の利活用を促進すること。

 

(2) オールドニュータウンの再生

「兵庫県ニュータウン再生ガイドライン」や明舞団地再生に取り組んだ経験を生かしながら、住宅の高付加価値化や大学、企業と連携した再生に向けた取り組みを、同様の悩みを抱える県内団地に拡大すること。

 

(3) 都市緑化・緑地保全の推進

防火や水害低減など、防災能力の強化という観点からも、都市緑化を促進し、緑あふれる美しいまちづくりを推進すること。

また、県民緑税の使途について、花粉症対策や市町が行う緑化事業への支援など、対象事業の範囲を拡充すること。

 

4  安心して暮らせるまちづくりの推進

(1) バリアフリー・ユニバーサルデザインのまちづくり

本県が先駆的に進めてきた「福祉のまちづくり」を推進し、すべての県民の社会参加を促進する視点から、バリアフリー新法に基づき、公共交通、公共施設等の社会基盤の整備・リニューアルを進めること。

また、民間施設の整備・リニューアルについても、同様の協力を求め、高齢者や障がい者が安心できる公共空間のバリアフリー化を一層強力に推進し、すべての人が社会参加できるユニバーサルデザインのまちづくりを推進すること。

 

(2) 生活安心住宅の確保

安全かつ安心できる持続可能な住生活が確保されるよう、長期優良住宅の普及促進をはじめ、「省エネ化」「バリアフリー化」「耐震化」を目的とした既存住宅の活用・改修を促進すること。

その際、高齢者、障がい者、子育て世帯も住みやすい、優良な賃貸住宅の整備を推進すること。

さらに、公営住宅についても「長く大切に使用する」ことが求められているため、リノベーションも積極的に推進すること。

また、人口減少社会にあっては、効率的、効果的な県営住宅の整備を進める一方、生活・住宅困窮者にとって、公営住宅は重要な「セーフティネット」であることを踏まえ、低所得者、高齢者への支援などの観点から、県民のニーズに対応した管理運営を行うこと。

 

(3) 民間集客施設等の耐震化の推進

ホテル・旅館等の多くの人が利用する民間集客施設等について、大規模地震発生時等における避難所としての活用の観点等から、耐震診断の義務付けに至らない規模の施設も含めて耐震改修の実施に支援を行うなど、耐震化の推進を図ること。

 

Ⅸ 「こころ豊かな共生社会」の実現に向けて

1  人権尊重の行政と教育の推進

「部落差別の解消の推進に関する法律」に基づき部落差別の解決に向けた取り組みの一層の推進を図るとともに、「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」に基づき、障がい者、在日外国人等に加え、性的マイノリティやインターネットによる人権侵害など新たな人権課題についても、積極的に人権尊重の普及高揚を進める教育や、企業や地域における研修・啓発活動を推進すること。

 

2  男女共同参画社会の推進

「ひょうご男女いきいきプラン2020」に基づく諸施策を進めるとともに、県民、企業等のさらなる意識改革、風土づくりを進めるなど、その浸透を図ること。

 

3 国際交流の推進

(1) 外国人県民が暮らしやすい地域づくりの推進

友好・文化・経済等の各分野において多彩な国際交流を展開するとともに、外国人県民との相互理解を深め、外国人人材の活用を視野に入れた地域の活性化を図ること。

 

(2) 多文化共生社会の実現

多文化共生社会の実現に向け、「ひょうご多文化共生社会推進指針」に基づき、社会情勢の変化に対応しながら、これまで以上に日本人県民と外国人県民が共に地域の構成員として支え合い、協働して地域づくりを進めること。

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