越田 謙治郎議員が代表質問を実施

質問日:平成29年12月7日(木)

質問者:越田 謙治郎 政調会長

質問方式:分割方式

(1~4:一括、5~6:一括、7:一問一答)

 

1 ひょうご地域創生交付金について

「今、人口の減少と少子高齢化という大きな構造変化が進んでいます。人口減少は今後数十年続くでしょう。人口と経済の右肩上がりの成長を前提とした社会のあり方を変える必要があります。その挑戦は始まったばかりです。」

井戸知事は7月の知事選挙に向けて、人口減少社会を迎える中、5期目の決意を述べられました。人口減少という課題は、従来の発想の延長線上では解決できません。過去の成功体験にとらわれることなく、議会の場において新しい発想での議論を行いたいと考えています。

まず、「ひょうご地域創生交付金」について、お聞きします。

現在行われている地方創生は、地方自治体が地域の特性を活かして人口減少に対して独自の解決策を求めるという理念を掲げております。ただ、国の地方創生推進交付金などの具体の事業においては、自治体の提案に対し国が審査し交付決定するというプロセスになっています。午前中の小西議員の質問に対する答弁でもありましたが、必ずしも地域の自主性が発揮できる枠組みとは言えません。

実際に、兵庫県が議会の議決を経て予算化し、国に提案した事業でさえも国の審査が通らなかったという事例もありました。地域の自主性を発揮できる体制整備は、党派に限らず地方自治に関わるもの全ての願いでありますが、この点に関してはまだ不十分だと言えます。

そのような中、井戸知事は、今議会の提案説明において「地域創生戦略に基づく県と市町の多彩な取り組みと連携が不可欠です」と述べられ、40億円の対象事業総枠を確保した「ひょうご地域創生交付金」を提唱されました。市町の負担を1/2としてハード整備も可能とする枠組みとなっており、兵庫県の地域創生がこれにより大きく前進することを期待しています。

私は、ひょうご地域創生交付金について大いに期待をしながらも、この制度が単に交付金を出すという制度ではなく、改めて従来の県と市町の関係を大きく変えていく必要性を感じています。この制度が従来の延長線上ではない制度になるため、以下具体的な提案をさせていただきながら、質問をいたします。

1点目は、県と市町やそれぞれの地域との関係において、既存の事業との整合性をどうとるかということです。県は、過去から「スポーツクラブ21ひょうご事業」や「県民交流広場事業」、さらに「地域再生大作戦」や「防犯カメラの設置補助」のように、地域の活動を支援する仕組みを様々行ってきました。

これらの政策は、それぞれ効果があったとは思いますが、地域創生がまさに地域の自主性を重んじているという発想に基づくのであれば、ひょうご地域創生交付金の導入にあわせ、既存の制度の見直しが必要だと考えています。

次に、制度設計のあり方についても新たな発想が必要だと考えています。県が制度を考え、市町がその制度に従うという制度設計であれば、従来の発想と何ら変わりません。兵庫県はいち早く市町との連携を進めており、2012年には、過去から実施している県・市町懇話会を「県と市町の政策協議の場」と要綱で明文化しました。まさに、上からの地方創生ではなく、地域に根差した地域創生を標榜する本県が、全国に先駆けて実施する制度であるならば、その制度設計においても従来の発想にとらわれずに取り組んでいただきたいと考えています。

三つ目は、県の本来の役割である市町を応援する立場をさらに明確にするということです。単に市町が提案した事業を審査するという形ではなく、それぞれの市町が抱えている課題を共有し、必要に応じてアイディア段階から応援していくという発想が重要です。県民局・県民センターの役割も現地解決型から現地解決を支援する伴走型への変更が必要かもしれません。

以上、ひょうご地域創生交付金が従来の発想の延長線上ではない形でスタートを切ることを期待し、3点提案させていただきました。

地域創生の主役である市町の地域創生を応援する立場として、井戸知事の決意をお伺いいたします。

 

 

2 保育の安全の確保について

本県では、待機児童が1年のうちで最も少ないと考えられる本年4月1日現在で、待機児童は1500人を超えており、待機児童が深刻な課題となっています。さらに、年度末に向けて、待機児童の数は増加しているのではないかと推察します。

また、保育に関しては、多様な保育サービスを確保することへのニーズが強いのも事実です。2015年9月定例会の代表質問では、わが会派の栗山雅史議員が問題提起をさせていただきましたが、病児保育や病後児保育のほか、多様な働き方が進む中で、日曜日や祝日には預け先がないということも大きな課題となっています。

単に、保育の問題は現在の国で議論されている無償化の問題や待機児童の解消だけでは十分ではないということです。

このように多様な課題をもつ保育ですが、こうした従来の課題と同時に、今回の質問では「保育の質」の問題をどう担保するのかということに対して問題提起をさせていただきます。

さて、昨年の保育施設等における事故は、全国で875件発生したと報告されています。兵庫県では死亡事故は発生していないものの、9件の重大な事故が報告されています。昨年4月に大阪市内の認可外保育所で起きた死亡事故では、安全対策が不十分であったため、経営者が書類送検されるという事態も起きています。

もちろん、事故をゼロにすることはできませんが、重大な事故がより深刻な事故、死亡事故に発展しないような県の取り組みが必要です。

厚生労働省では、保育事故に関して監査の強化、とりわけ抜き打ちの監査の強化を求めていますが、残念ながら人手不足の中では、十分に機能するわけではありません。ただ、私は単に監査機能を強化するだけでは不十分で、県として増えていく保育施設に対しどのような安全対策を確保していくのかということが問われていると考えています。質の担保は市町で実施する事業でもありますが、監査権限を有する県だからこそ、県に報告のあった事例を分析し、県内の保育施設へフィードバックするような取り組みが必要だと考えます。県としての保育の安全性への取り組みについて、お伺いします。

 

 

3 ひょうごツーリズム戦略について

本年、兵庫県は「ひょうごツーリズム戦略」を策定し、ツーリズム人口を1億5千万人とすることを目標として掲げ、各施策に取り組んでいます。また、外国人旅行者の誘致(いわゆる)インバウンド対策については、昨年の約150万人から倍となる300万人という目標を掲げています。交流人口の増加を求める取り組みは、人口減少社会において低迷する県内消費に大きな影響を与える取り組みだと考えています。しかし、この点においても従来の発想の延長線上ではない取り組みが必要だと考えます。

県内の外国人旅行者は、2012年以降大きく増加しているものの、お隣の大阪府や京都府に大きく差をあけられているのが実情です。とりわけ、宿泊客に関しては、兵庫県は約110万泊にとどまっており、こちらも水をあけられている状況です。

ただ、世界的な知名度をもつ「京都」や国際線をもつ「大阪」と隣接している本県が、同じ発想で旅行者の数、宿泊客の数を競うべきではありません。私は、観光政策においても量を競う政策から質にこだわる政策へと転換を求めたいと考えています。

そもそも、観光誘客を求める理由は、来ていただくという数そのものが目的ではなく、県内における経済波及効果がどのくらいあるのかという点が重要なわけです。旅行者の消費額は、「来客数」×「単価」で計算するわけですから、単に旅行客を増やすだけではなく、一人当たりの単価を上げる仕組みを考えていかなければならないはずです。

私は、10月に開催された産業労働常任委員会において、同様の指摘をさせていただき、ターゲットの絞り込みを提案したところ、①アジアを中心としたリピーター対策 ②欧米の富裕層対策 ③ハラールへの対応を行う旨を答弁として述べられました。それぞれの分析は間違っていませんが、戦略的にターゲットの絞り込みができているとは言えません。

とりわけ、客単価を上げるための取り組みとしては、欧米の富裕層の対策が重要であると考えますが、それには欧米の富裕層が宿泊するラグジュアリーホテルがないという弱みもあり、ターゲットを絞るというからには、それらを誘致していくという取り組みも必要です。

さらに、新たな視点として必要なのは、観光客の消費をいかに域内の経済循環につなげていくのかということです。たとえ旅行客が県内で消費したとしても、その消費が県内の食材や県内の生産物の消費へとつながっていなければ、県として観光政策に積極的に取り組む意味がなくなります。域内循環を高める仕掛けに取り組む必要があります。

今後、人口減少による内需の縮小が避けて通れない中、より経済波及効果を高めるため、県の観光戦略の重点化を求めますが、見解をお伺いします。

 

 

4 中小企業の事業承継について

本県の経済状況は個人消費の持ち直しや輸出の増加基調に支えられ、緩やかに回復していると分析されています。また、雇用状況も10月の有効求人倍率が1.31倍となり、県内企業では人手不足感が強まっていると言われています。

ただ、このような状況だからこそ、あえて将来を展望した課題に取り組んでいかなければならないと考えています。それは、兵庫県経済において重要な役割を担っている、県内雇用の約8割を占める中小企業が抱える事業承継の問題です。

景気回復の基調が見えるにもかかわらず、昨今中小企業は減少傾向にあり、県内では2009年に234,123あった事業所が、2014年には221,441となっています。とりわけ、大きな問題は倒産よりも多いとされる休廃業・解散です。

東京商工リサーチの調べによると、驚くべきことに、2013年から2015年に休廃業・解散した企業のうち、廃業直前の売上高経常利益率が0%以上、つまり黒字状態で廃業した企業の割合は50.5%であり、さらに利益率10%以上の企業が13.6%、20%以上の企業が6.1%と廃業前でも高い利益率である企業も少なからず存在をしているのです。休廃業した理由は様々ではありますが、2016年に休廃業した経営者の8割以上が60歳以上の経営者であり、過去最高となったことから、小規模企業を中心に事業の担い手である後継者がおらず、黒字のまま休廃業となったと分析されています。

私の所属する産業労働常任委員会では、9月に川西市商工会・猪名川町商工会の方々と意見交換会を行いました。その中で「私がいなくなれば次に継ぐものがいない」という経営者の声、「後継者が決まっていないから先行投資ができず、先行投資ができないから競争に勝てず、競争に勝てないから後継者を探すことができない」という負のスパイラルに陥っているケースも報告をされました。

当然のことながら、企業経営をどのように継続していくのかは、一義的には経営者の自主的な努力によるものでありますが、この後継者不足は現在の中小企業が共通して持つ課題であり、その課題に目を向けて対策をとることも行政の果たすべき大きな役割の一つだと考えています。

実際に、経済産業省・中小企業庁は、事業承継問題をこのまま放置すると、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があると試算をいたしました。中小企業の事業承継の問題は、県内経済を考えるうえで重要な課題だと言えます。

県として、後継者不足による廃業等の影響をどのようにとらえているのか。また、事業承継が進まない原因をどのように分析しているのか。県の中小企業の事業承継に関する現状と県としての対策についてお伺いします。

 

 

5 インクルーシブ教育の推進について

昨今、LD、ADHD、自閉症スペクトラム等、いわゆる発達障害と呼ばれる児童生徒は増加傾向にあります。2012年に文部科学省が行った調査によると通常の学級に発達障害の可能性のある児童生徒が約6.5%在籍するとされています。この在籍率からすると、現在、兵庫県内の小中学校には、約29,000人が在籍していることになります。これらの児童生徒の多くは、適切なサポートがあれば円滑な学校生活を送ることができます。

しかし、指導の場となる通級指導教室の設置数も増加傾向にありながら、その専門性の確保は、喫緊の課題となっています。

課題は2つあると考えています。

1つ目は、現場の指導者の確保です。兵庫県では、LD、ADHD等の通級指導担当教員を「学校生活支援教員」として、支援地域拠点校に配置していますが、現在の配置状況では必ずしも十分に児童生徒へ行き届いているとはいえません。阪神間の市町からは「学校生活支援教員」の増員を求める声があがっています。

2つ目は、専門性の確保です。通級による指導を行う担当者への研修の充実が欠かせません。担当する教員の専門的な資質として、障害についての知識や発達段階に応じた指導等が必要です。現在、文部科学省では2020年度をめどに、特別支援学校の教員に特別支援学校の免許取得100%を義務付けようと取り組んでいますが、通級指導担当教員にも同様の専門性が必要であることは言うまでもありません。しかし、現状はどうでしょうか。

私は、昨年の決算特別委員会において、教員への研修が形骸化しているのではないかとの問題提起をさせていただきました。校内の代表者の研修を行い、その代表者が学校に戻り研修を実施するという制度でありましたが、職員会議等で実施しても研修としてカウントしているというのが現状でした。それが、本年度予算では、インターネットによる動画配信による研修など、わざわざ研修所に足を運ばなくても、研修を実施できる体制になっており、小さな一歩かもしれませんが、一定の評価をしているところです。

しかしながら、これではまだ十分とは言えず、更に、来年度からは、高等学校における通級による指導の制度が導入されることからも、県として通級を担当する教員の専門性の確保について、更なる対策が必要と考えます。

これらの課題に対する県の見解及び今後の対策について、お伺いします。

 

 

6 中長期的な視野にたった高齢運転者への対応について

近年増えつつある高齢運転者に対する対応は、超高齢化社会となる日本が抱える問題のひとつとなっています。本年3月に改正道路交通法が施行され、高齢者の運転に関しては、更新時の高齢者講習が見直されるなどしました。交通事故全体で占める割合が増加傾向にある高齢運転者に対し、認知機能検査を強化するなどの取り組みは、事故を未然に防いでいく中で、重要な取り組みだと言えます。また、高齢者事故防止に関しては、免許返納の促進といったソフト支援、ドライブレコーダーの設置等、ハードソフト両面での対策が必要です。

また、各市町での施策にはなりますが、運転をしなくなった方への移動支援なども重要です。高齢者の運転による事故という不幸な出来事をなくすという使命と同時に、高齢者を排除するのではなく、自主的に運転を卒業しても生活の質が著しく低下しない方法を模索していかなければなりません。

さて、そのような中、高齢者講習の対象となった方からは、高齢者講習を受講するハガキが届き、すぐに予約を入れようとしても数カ月先まで予約が取れないという声が聞こえてきています。実際に、県内において11月末現在では、待ち日数が平均で85日になっているのが現状です。「法律で受講を義務付けておきながら、その体制が整備されていない」ことから、高齢運転者は排除されているという印象をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

過去にも一般質問等で取り上げられてきた課題であり、県警本部としても運転免許センターでの講習の実施や自動車教習所への委託料の増額など努力も頂きましたが、高齢者講習の実施を委託されているのが民間の自動車教習所であるため必ずしも十分に対応できているとはいえません。

県内の70歳以上の高齢運転者数は、2026年には現在の約41万人から約1.3倍になることが予想されることから、現在の体制で今後十分に対応が可能なのか不安になります。

そこで、今後、高齢運転者が増えていく状況の中、中長期的な視野にたって高齢運転者への対応に取り組むべきだと思いますが、県警本部の見解をお伺いします。

 

 

7 公共交通の持続可能性確保について

人口減少によって、地方部では利用者が減少し、公共交通の持続可能性が大きな課題となっています。バス・鉄道それぞれの業界にいえることではありますが、交通事業者のみの力では、維持が困難となる路線もでてきています。

一方、自ら車等を運転することができない高齢者は今後増加していくのも現状です。移動に制約のある県民にとっては、公共交通の必要性は高まっています。移動手段の一つとしての位置づけではなく、生活を維持するための必要不可欠な存在となっているのです。

このような公共交通はいくつかの点で大きな課題を抱えていますが、その一つは現場から切実な声があがってきている人材の確保です。

高齢化が進む中、各産業において人手不足が顕著になってきていますが、公共交通の要の一つであるバス運転者は、全産業平均と比べ高い有効求人倍率となっており、深刻な状況にあります。

運転手不足の背景には、バス運転手に必要な大型2種免許の取得に時間と費用が掛かること、他の職種に比べて拘束時間が長くなる傾向があること、そのうえ、相対的に賃金が安いことなどが挙げられています。特に、現在大型2種の免許保有者は60代が一番多く、現在の60代以上がリタイアすると、運転手の確保が困難になる危険性があります。

このような現状は、路線バスの維持に大きな影響を与えるとともに、多くの自治体で委託しているコミュニティバス等の運行にも影響を与えます。

もう一つの課題は、生産性の向上です。利用者が減少するなかでも、生活交通バスを維持していくためには、経費の節減と同時に貨客混載など収入を生む新たな取り組みを進め、生産性を向上していく必要があります。

まずはバス事業者自身が職場環境の整備や処遇改善によって人材を確保するとともに、生産性向上に努めることが重要ですが、人口減少社会にあっても最も身近な公共交通である生活交通バスを維持するため、県としてどのように取り組むのか、所見をお伺いします。

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