迎山 志保議員が一般質問を実施

質問日:平成30年2月26日(月)
質問者:迎山 志保 議員
質問方式:一問一答

1 働きやすさと働きがいの実現に向けた取組について

(1)わが県における働き方改革について

国では多様な人材による多様な働き方を推進しようと、長時間労働の是正、同一労働同一賃金、生産性向上などに取り組むとされ、県においても来年度の産業労働施策・「人材力の強化」の中に働き方改革の推進が柱として据えられている。
この方向性には大賛成である。そこでこれまでの現場の推進状況をみてみると、兵庫県商工会議所連合会労働環境対策事業の一環で調査された昨年10月の女性活躍推進及び働き方改革に関する報告によると「働き方改革」の取組を進めていると回答した事業所は26.2%、4社に1社の割合。規模別でみると、301名以上の規模がそれ以下の規模よりも改革が進んでいるという結果が出ている。社会全体で機運が盛り上がっているとは言い難い状況であり、このままでは働く環境格差が広がるばかりである。
また、働き方改革を進めている現場では改善疲れに陥っている状況も見られる。仕事量はそのままで時短を進めた結果、帳尻合わせに苦心したり、残業を減らすこと自体が最重要課題になって現場の士気が下がったり。また結果的に残業代が減り収入がダウンする状況でこの改革の目的でもある生産性向上が望めるのか不安視する声も聴く。働き方改革が働きがい、意欲を奪い、企業の多様性や強みを失うことになってはいけない。
働き方改革は目的ではない。原点は、働く一人一人がしっかりとキャリアを見つめ、どんな生き方、生活をしたいのかというところから発想されるものであり、その先に企業や組織の活性化、社会の持続発展がある。
義務感にかられて納得のないままあの手この手を繰り出しても、達成感は得られない。受け身で他律的な改革でなく、働く一人一人の意識改革が必要で、主体的な目標設定をするところから働き方改革は始まるのだと考える。
県は来年度長時間労働是正の周知啓発など新規事業を予定しているが、一律に号令をかけて説得するのではなく、労使ともに納得感を持って進めていけるような取組が求められる。そしてその先にどのような社会が望めるのか、ロードマップのようなものを示していくべきであると考えるがいかがか。
わが県の働き方改革の現状認識と課題、今後の進め方について問う。

(2)仕事と介護の両立支援について

平成22年に始まった中小企業育児介護代替要員確保支援事業は当初に比べ随分活用されるようになってきた。事業開始当初、1年に5件にすぎなかった利用件数はここ数年100件をゆうに超え、昨年の助成金は9000万円近くにのぼっている。しかし、これまで助成してきた533件のうち、介護については過去8年でわずか1件の採択ということである。
その背景には、そもそも、介護休業自体が介護をしている人のうち3%しか利用されていないという実態がある。
介護従事者は職場に平均2割はいるとされているが、隠れ介護状態のまま有給休暇や家族のやりくりで何とかしのいだり、挙げ句に限界を感じて介護離職を決断するケースも多い。離職者の8割近くは女性であるが、役員や管理職など重要ポストに就いている男性のケースも確認されている。
通算93日取れる介護休業は、平均5年と言われる介護期間の入り口である初期準備、ケアプランの相談や今後の体制作りに集中するために利用されることを想定している。
しかし、介護は心の準備も知識もないまま急にその状態に放り込まれる場合も多く、企業も労働者も介護と仕事の両立ということへの心構えが不足しており、この制度を活用するということに至らない現状である。
平成24年の就業構造基本調査によれば、全国で年間10万人、本県では5000人を超える人が介護離職をしいられている。5年に1度の調査であるので直近の結果がまもなく公表されるが、この数字はさらに増えていることが予想される。離職後は急な環境変化や経済的な不安、先の見えない孤独な介護による精神的疲労の蓄積なども大きな負担となる。また、いざ再就職となっても一旦離職するとなかなか難しく、就職できても男性で53%、女性に至っては74%が離職前の正規から非正規へと雇用形態の変更を余儀なくされている。
介護に関わらないという人の方が少ない今後、隠れ介護、介護離職ともに大きな社会問題となることは必至である。
中小企業育児介護代替要員確保支援助成金についても、その周知の過程において、介護と仕事の両立に関する啓発につとめ、介護休業や短時間勤務の制度充実、利用拡大にも繋げる動きが必要かと思う。
仕事と介護の両立に向けて、県として今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

(3)長期休暇中の子育て支援について

出産、子育てで仕事を離れた女性で、いずれは仕事に就きたいと考えている人は約8割という調査結果がある。私の肌感覚とも大きくずれていない。
そんな子育てに専念していた女性がもう一度働こうかなと思うタイミングの一つは、子供が小学校に上がる時である。まずは時短勤務やパートタイムで、というリスタートも多い。
その場合、大体は子供が学校に行っている時間帯での勤務となる。入学直後は新生活のリズムを把握し、5月、6月頃から働き始めると、いきなり目の前に大きな壁が立ち塞がる。夏休みの壁である。働き始めて早々に、子供をどこかに預けるか、仕事を断念するかの選択が迫られる。
そもそも放課後児童クラブに待機児童が発生している状況である。普段、クラブを利用していないのに、長期休暇中だけ預かってくれるというケースはほぼ見られない。
そこで、長期休暇だけのために普段から月謝を払い籍だけ確保しておいたり、民間に頼ることになる。この場合かなりの出費で、給料との逆転現象に就業はやはり無理なのだと諦める場合も少なくない。また、一ヶ月以上孫の世話を任されて疲れ切っている祖父母の声もよく聞く。
知事は以前より、小学校低学年対策は少子化対策の重要ポイントだと述べられている。先ほどの質問で触れた中小企業育児介護代替要員確保支援事業も来年度は子供の対象年齢をこれまでの3歳から小学校3年生まで引き上げるとしていることに加え、小1の壁解消策として放課後児童クラブの開所時間延長支援に乗り出す。実態に沿った拡充であり大いに評価している。
こうした拡充とあわせて、長期休暇中の子育て支援についても、実態を踏まえて検討すべきである。
そんな中、長期休暇中だけ従業員の子供、地域の子供を預かろうという企業や社会福祉法人も出てきた。状況を伺うと、人材確保の面から取組に乗り出した側面が大きい。このような動きへの何らかの支援や、放課後児童クラブの期間限定利用枠の創設、もしくは幼稚園の空き教室を活用できないかなど検討ができないだろうか。
長期休暇中の子供に安全で豊かな居場所を確保することへの支援について伺う。

2 県花のじぎくについて

昨年12月の議長主催の政調懇話会で、講師の園田学園女子大学名誉教授の田辺眞人さんがまず冒頭仰ったのが『兵庫県はシンボルがありません』ということ。広い旧五国が一緒になった兵庫県。イメージを一括りにできない贅沢な悩みと言える。
県の公式なシンボルとして県樹クスノキ、県鳥コウノトリ、マスコットはばタンなどがあるが、最も古くに選定された歴史あるシンボルがのじぎくである。セルリアンブルーの兵庫県旗よりも10年古い昭和29年にNHKや全日本観光連盟が音頭をとって公募され選定されたものである。
のじぎくの名は現在、のじぎく会館、のじぎく賞、のじぎくクラブや県立学校の名前など県下で多用されている。今や世界のブランドである神戸牛もその証は刻印されたのじぎく判である。
しかし、実はこののじぎく、準絶滅危惧相当に指定されている。のじぎくの生育には雑草の少ない手入れされた土地が最適なのだが、環境変化で人の手が入らなくなった結果、雑草に駆逐されている状況なのだという。県下では姫路市大塩に希少な一大群生地があるが、淡路の水仙郷や朝来の藤棚などの方が有名であり集客力もある。兵庫ツーリズムガイドで旬の花を数多く紹介しているが、掲載もされていない、という扱いである。
県では県民や市町などが一体となって、県花のじぎくを守り育て県民への普及を図ることを目的に、昭和62年から毎年自治会や学校など約300団体にのじぎくの苗を配布する事業を行っている。緑化活動を通じて地域コミュニティの形成にも寄与しているとのことだが、効果は限定的だ。
そんな中、ぜひこの県のシンボルを大切にしたいと動き出したのが県立農業高校だ。バイオ関係のハード整備を機に、県立高校なのだから県のための研究をしようと「のじぎくプロジェクト」が立ち上がった。彼らの目標は多色展開が難しいのじぎくを品種改良して5つの色に染め、開花期間も大幅に伸ばして五国をそれぞれの色で彩りたいというものだ。
この50年の環境変化で激減したのじぎくだが、これから50年かけて県立高校発信の5色ののじぎくの彩りが兵庫県の年の瀬の風物詩になる、夢のある取組だと思う。
その時期になれば遠方から観光客が集まるくらいの群生地を作り上げるもよし、五国のそれぞれのシンボルカラーを定着させるもよし。
古くから兵庫県のシンボルとして掲げられ、名称にも多用されているのじぎくだが、県民の意識に十分根付いていると言い難い。せっかくの五国共通シンボルが生かされていないのは少々もったいなく感じている。のじぎくを上手にブランディングし、広報戦略として活用することはできないだろうか。
県政150年を迎えるこの機に、シンボルとして「のじぎく」を大切に守り育て花開くよう、何か打ち出す仕掛けを検討してはいかがか。

3 教育機会確保法の理念の浸透について

いじめや不登校が減らない。昨年度のいじめ認知件数は9,415件で前年度の1.47倍に増えている。積極的な認知により顕在化した数値であるというが、実際にこれだけの数の事案が県下で確認されているという厳然たる事実を重く受け止めている。このうち9件はいじめ防止対策推進法が定める重大事態とされ、うち3件は自殺事案である。そこに至るまでの本人の苦しみ、もがきを思うとき、死を選ぶ他に逃げ場はなかったのだろうかと無念でならない。
また近年、不登校の児童生徒も増えている。この数年、不登校の小中学生の数は12万人前後で推移しており、文部科学省の調査によると、そのうちの6割近くが90日以上の欠席となっており、長期化の状況も明らかになっている。兵庫県では平成28年度5,531名が不登校とされ、前年度より小学生で175名、中学生にいたっては355名増えている。
いじめや不登校で悩む児童生徒や保護者へはきめ細かな対応が求められ、現場の教職員が奮闘されている現状も伺っている。
このような中、教育機会確保法が今からちょうど1年前の2017年2月に完全施行された。不登校の児童生徒数が減らないどころか増え続ける中で、児童生徒が学校を休むことの必要性、学校外の学びの重要性を認めた法律である。これまで兵庫県では但馬やまびこの郷や神出学園などを全国に先駆けて設置している。不登校を重く捉えていないとは思わないが、県下の現状を見た時、また、教育機会確保法が制定された意義を考えた時、不十分と言わざるを得ない。現場では早期の学校復帰を目指す不登校児童生徒にとって性急すぎる対応がなされていないだろうか。また、兵庫県には多くのフリースクールがあるが、公的支援がない中、スタッフの熱意で運営されているケースも多い。そして、自治体によって、学校長によっても支援の踏み込み方はまちまちである。通学定期の取り扱い一つをとっても同じ場所に通っているにもかかわらず、居住自治体によって支援が違う。学校外の学びの重要性という観点はどこまで認識されているだろうか。
様々な関係者と話をするが、学校へ行きづらくなった児童生徒を学校へ戻すということにとらわれすぎているように感じる。この道しかない、というような対応は学校特有の閉鎖環境の中で人間関係がこじれたままリセットできず、最悪の場合自ら死を選ぶところまで子供を追い詰めるプレッシャーを生むことにつながりかねないのではないか。教育機会確保法はこのような懸念から生まれた法律でもあると思う。
県はもう少し柔軟に、子供たちの学びの機会を確保する選択肢を広げていく方向に舵を切れないだろうか。
教育機会確保法の附則には施行後3年以内を目処にこの法律の施行の状況について検討を加え、教育機会の確保等の在り方の見直しを含めた必要な措置を講ずるものとしているが、県は学校復帰だけをゴールとした対応ではなく、教育の目的である社会的自立を目指すという大きな目的に向かって、その方向性を県下の教育現場で共有する必要があると思うが、いかがか。

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