行財政構造改革の取組及び成果の検証に対する意見開陳

●はじめに

ひょうご県民連合議員団を代表し、行財政構造改革の検証にあたり、我が会派としての意見を述べます。

平成20年度に、全国初となる行財政構造改革推進条例を制定し、この11年間、条例に基づいた取組の中で、行革の最終年度である平成30年度当初予算では、収支均衡をはじめとする財政運営の目標を概ね達成する見込みであり、当局の皆様の努力、県民の皆様のご理解とご協力に敬意を表するところであります。しかしながら、約3,600億円残っている震災関連県債や、行革期間中に財源対策として発行した約3,700億円の退職手当債や行革推進債は、今後償還していかなければならないわけであり、依然として本県の財政状況は厳しい状況にあると考えています。

今後必要なのは、財政収支均衡の達成という目標だけでなく、2019年度以降も持続可能な行財政体質を構築することであります。これまで続けてきた「行財政構造改革」を単なる収支均衡のための量的な削減だけで終わらせることなく、無駄のない筋肉質な行財政体質へと転換、定着させなければなりません。その上で、「県民のニーズ」に応え、「豊かさを実感できる新時代の兵庫づくり」を進めなくてはなりません。

ひょうご県民連合は、「スリムで機動力のある行財政体質の構築と県民の豊かさの実現」に重点を置いた取組を今後も求めていきたいと考えています。

 

●改革の基本姿勢

それでは最初に、我々の財政運営に関する基本姿勢について述べます。

行財政構造改革に取り組んできたこれまでの11年は、震災による財政悪化からの復興・再建というステージでありました。今後も人口が減少し、財政状況が好転することが想像しにくい状況にある中、次の2019年度以降の10年は収支均衡の維持と、震災関連県債を解消する10年ではないかと考えています。さらには、震災関連の将来負担が解消されたその後の、例えば10年などという次なる新しいステージを迎えることになりますが、10年~20年という中長期にわたる将来のステージごとに、財政運営はどうあるべきか、私たちは今のこの時点においてもイメージしておかなくてはならないと考えています。

変わりゆく経済環境や社会環境の中で、常に財政収支の見直しを行い、それでも新しい一歩を踏み出していける財政体質・体制をつくっていくことが必要であると考えています。

 

●各分野の取組に対する意見

次に、各分野の取組に対する意見を述べていきます。

 

(1)組織

阪神南県民センターと阪神北県民局の統合についてです。地方機関の今後の取組方向では、地域創生の推進や社会基盤の整備など広域的な課題に対して一体的な取組が推進できることから、具体的に検討を進めるべきと考えています。しかしながら、住民への行政サービス提供の観点から、統合した場合の庁舎の設置場所や県民生活への影響等をよく検討するべきだと考えています。統合による財政面への効果だけではなく、統合によるメリットを県民に具体的に打ち出せるよう検討するべきであると考えていますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 

(2)職員定数

定数に関しては、平成19年度比の定員削減率が全国1位、定員回帰指標でも兵庫県は全国で2番目に少ない水準でありますが、限られた職員で効率的に業務を執行しておられます。一般行政部門及び一般行政類似部門の定数は、平成30年度で平成19年度比3割削減を達成していますが、今後も新たなステージに向けてどのような定数が適正であるか、不断の見直しを続ける必要があると考えます。今後も増えるであろう県への多様な行政課題への対応や、突発的な課題への対応など、県民の行政ニーズに対して、行政サービスの低下につながらないよう、適切な職員数の見極めや柔軟な配置をお願いしたいと思います。

また、派遣職員の見直しについては、公社等への県職員派遣による定数実質削減にならないようにすべきであると考えます。

 

(3)職場環境

次に、働きやすい職場の実現、ワーク・ライフ・バランスについてです。

超過勤務の縮減では、平成29年度は平成28年度に比べ、全体では減少傾向にありますが、3割を超える所属で平成28年度実績を上回っています。「兵庫県庁ワーク・ライフ・バランス取組宣言」に基づく取組を積極的に進める中で、超過勤務の縮減のための思い切った職員配置や、仕事の進め方の見直し、職員の意識改革などについても取り組んでいただきたいと考えています。

また、ワーク・ライフ・バランスを実現して、能力向上に掛ける時間や、生活に潤いを与える休暇・休業制度の取得、子育て・介護と仕事の両立支援など、働きやすい職場の実現についても積極的に取り組んでいただきたいと考えています。

 

(4)再任用職員

正規職員が削減される一方で、行革開始以降、再任用職員の採用が増えています。今後の方向性として、再任用職員のフルタイム勤務化を進めていくとありますが、定年前とほぼ同様の職務を行っているのにも関わらず、定年前に比べてかなり給与面での乖離があるという点が、昨今問題視され始めています。今後も正規職員数を増員することが難しい状況である中で、経験のある再任用職員が果たす役割は大きなものになるのではないでしょうか。再任用職員のモチベーションの低下を招かないよう、また急激に生活の質を低下させないよう、今後の再任用職員の給与面においても検討を加えていただきたいと考えています。

 

(5)投資事業

投資事業費総額については、地方財政計画の水準に見直すことなどにより、今年度、平成19年度比で約70%の水準に削減をし、また喫緊の課題に対応した事業については交付税措置のある有利な県債や国の経済対策補正等を活用するなどで取り組まれています。この投資事業については、近年多発する豪雨災害などの防災対策や、また社会基盤施設等の維持修繕などを早急に行う必要がありますが、一方で普通建設事業費総額は全国で第4位、また類似府県との比較ではその平均を上回る水準にあります。

社会基盤整備プログラムに基づき、南海トラフ巨大地震対策、公共施設の老朽化対策、ミッシングリンクの解消などを推進すると、多額の財源を要することになるのは間違いありませんし、今後人口が減少すれば、県民一人当たりの負担額、返済額が多くなります。将来世代にどの程度の負担が残るかを明らかにし、返済可能能力に応じた投資であることを明確にした上で、事業の実施を検討するべきであると考えます。

また、投資事業の評価について、公共事業等審査会等により事業実施の可否について判定が行われているが、評価そのもののあり方について適宜検証が必要であると考えています。

 

(6)事務事業と一般事業費

行革開始以降、選択と集中により約2,700の事業を廃止し、約1,300の事業を新規に創設するなど、スクラップ・アンド・ビルドを進めてきました。このことについては一定の評価をするものですが、一般事業費のシーリング削減については、今後は適切な見直しが必要ではないかと考えています。

一般事業費は、平成19年度に比べて一般財源ベースで約55%削減したと聞いていますが、今後は削減による行き過ぎた、無理のある状況を生み出すことがないように、すべての県民に潤いのある生活を実現していただきたいと考えています。事業費の配分について濃淡をつけるなど、十分に考慮していただきたいと思います。

 

(7)防災・減災対策

近年、豪雨災害をはじめ、人命に関わる災害が多く発生している状況にあります。ハード面の整備も重要でありますが、先日の平成30年7月豪雨では、土砂災害警戒区域の指定や土砂災害警戒情報等を踏まえた避難指示や勧告等がなされていたにもかかわらず、多数の犠牲者が発生しました。確実に避難行動をしていただけるよう、市町と連携して実効性のある避難訓練等の取組を進める必要があると考えます。

 

(8)但馬空港

これまでも会派として何度も指摘してきましたが、但馬地域への交通アクセスが格段に改善している中においては、空港の存在意義がますます問われています。そのような状況の中で、現在、実現のめどが立たない羽田直行便への働きかけを続けることを前提とする、空港の存続の主張はもはや厳しいと考えていますので、少なくとも羽田空港以外の例えば関西国際空港路線などの開拓にも取り組み、空港利用者数の増加に向けた新たな展開が必要ではないかと考えています。また同時に、存続に向け地元自治体とともに更なる取組を進めることが必要です。

 

(9)県立高校の入試制度

平成27年度の入試から通学区域の再編を行い、複数志願選抜が全県で導入されましたが、高等学校通学区域検証委員会の報告書にもあるように、単独選抜の専門学科から複数志願選抜の高校への第1志望の変更を可能としていることについてはこれまでから指摘してきたところであります。来年度の入学者選抜から、その解消が図られることは一定の前進であると評価していますが、今後ともより適切な進路選択が可能となるよう不断の点検を行っていただきたいと考えています。

また、公立高校の普通科の入試について、普通科の単位制が、実際には普通科の学年制の学習内容とほとんど差がないにも関わらず、推薦入試枠を使って先に生徒を確保することができる制度となっています。公平な入試制度に向け、見直しが必要と考えています。

(10)クラブ活動のあり方と教職員の多忙化対策

教員が経験のない競技を指導していることがあることから、外部指導者の派遣等の取組が行われております。今後も積極的な外部人材の活用や、地域団体との連携を進めながら、教職員の多忙化の解消に繋げていただきたいと考えています。

 

(11)公舎・待機宿舎

業務上の必要性等を勘案し、計画的に廃止を進めていますが、危機管理上、必要な住宅や緊急時へのニーズに対応するための最低限の施設以外は、空室が多く存在しないよう、入居率の向上を図りながら適正な維持管理を行うべきであると考えています。

 

(12)公営企業

これまでも意見してきましたが、事業進度調整地の解消が進まない中で、当該自治体の協力や採算性の確保が前提とはいえ、新たな開発に進む方針には不安を感じています。採算性を検討するにあたっては、現実性のある具体的な収支計画を明確にするべきであると考えています。

 

(13)病院局

従来から県立病院の配置に関して地域間のアンバランスを指摘してきましたが、例えば阪神北圏域においては大規模な公立病院がなく、高度急性期医療に対する問題について不安視する地元の声があります。公立病院の経営面が厳しい中、県立病院をそれぞれの地域の医療機関の中核と位置づけ、将来的には県下の自治体病院の再編、ネットワーク化に取り組むべきであると考えていますので、中長期的な視野での取り組みについてご検討いただきたいと思います。

 

(14)公社等

公社・外郭団体においては、収益性が求められる事業については運営を民間に任せ、県の関与を薄くするべきであると考えています。新西宮ヨットハーバー株式会社については、県がいつまでも経営に関与すべきではなく、大幅な見直しが必要と考えます。

 

(15)自主財源の確保

収入未済額のさらなる縮減に向け、引き続き市町との連携や個人住民税等整理回収チームの強化を進めるべきです。また、従来から、企業への超過課税や県民緑税などで自主財源を確保していますが、課税の必要性や課税を活用した事業の効果・必要性等を検証し、不断の見直しを行うべきだと考えています。

 

(16)地方分権の推進

県と市町の役割を十分に踏まえた上で、市町で実施する方が効果的であるものについては、今後も引き続き財源とともに移行を積極的に検討すべきと考えます。

 

(17)長期保有土地

地元市町とも連携し、売却等の処理を進めるとともに、その利活用についても検討を行い、縮減に努めるべきです。また、県有環境林についても、適正な維持管理や利活用の検討を求めます。

 

●まとめ

この11年間の行革の取組の中で、財政運営では収支均衡が達成できる見込みであるなど着実な成果をあげてきました。しかし、少子高齢化・人口減少による社会保障関係経費の増といった日本の地方自治体に共通した課題に加え、未だに震災からの復旧・復興に関する県債償還が残るなど、今後も引き続き不断の見直しを行う必要があります。

しかしながら、人口減少の中にあっては、今後も財政状況が急激に改善するような事態は想像できないものの、行革の取組の結果、財政面では次のステージに向けたスタートラインに立てたのではないかと感じています。今後は様々な県民ニーズに対応し、行政サービスの低下につながらないように、財政運営の体質強化・定着を図ることが重要であります。

そのためには、次の行財政運営方針を策定するにあたり、現実的な県税収入等の歳入と歳出を設定していくべきであると考えます。庁舎の建替えや、周辺整備の検討のような、多額の支出の話もあります。金利についてですが、先の我が会派の質問で指摘したように、国会でも金融緩和政策の出口についての質問がでるような状況ですし、既に徐々に上昇する気配もあり、いずれ金利は上がっていくのではないかと考えています。県では総額4兆円もの県債がありますので、この金利の上昇だけでも歳出の変動要因となる可能性が十分想定されます。

毎年度財政フレームを見直すことは必要でありますが、世界経済等の影響など変動要素があるとはいえ、ベースとなる部分が大きく変動することのないよう、堅実な財政運営の見込みを立てていただきたいと考えています。

今年、兵庫県は県政150周年という記念すべき年を迎えました。先人から受け継いだ私たちの故郷「兵庫県」を、次世代に自信を持って引継ぎ、また安心して次世代に引き継いでもらうために、我々が今出来ることを背一杯やり、そしてこれからのより良い兵庫県をともにつくっていきたいと考えています。

この行革委員会での我が会派の意見開陳が、次の行財政運営方針の策定等にあたって十分に考慮されることを期待し、意見開陳とします。

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