小池 ひろのり議員が一般質問を実施

第343回 定例県議会 一般質問要旨

質 問 日:平成31年2月25日(月)
質 問 者:小池 ひろのり 議員
質問方式:分割方式

1 刑務所出所後の支援について

刑務所出所後の支援がなぜ必要かを考えてみたいと思います。

日本は、治安が大変良い国だと世界的にも評判です。しかし、治安が良い日本であっても、平成29年中の刑法犯検挙者で再犯者の占める割合は、48.7%(本県では50.9%)という異常な高さです。また、65歳以上の満期出所者に限って言えば、5年以内の再犯率は70%と言う専門家の話を聞きました。この再犯を抑制できれば、もっと安全で安心な社会にすることができることは明らかです。

刑務所を出所した時、ほとんどの人は「もうお世話にならないように!」と決意をしますが、出所後の社会はそんなに甘くはありません。住むアパートを見つけることも容易ではなく、前科がある人を受入れてくれる職場も限られています。一旦、刑務所に入ると、行く所も帰る所も、失う人が多くいます。

刑務所出所者の環境整備が進まない状況で犯罪が繰り返され、再犯者率が異常に高いまま推移しているのが現状と思われます。

出所者にとって最も大きな課題は、住居支援と就労支援です。更に、仕事ができない人の中には、福祉支援が必要な場合もあります。しかし、このような人達の中には、支援の受け方すら知らない人も多く、行政の方から積極的に支援の手を差し伸べる必要があると思います。

そこで、以下2点についてお伺いします。

(1)再犯防止に対する取組について

「なぜ出所者に、そんな手厚い支援をするのか?」そんな声が聞こえてきそうですが、皆さん!犯罪者の更生にかける税金は、どのくらいかご存じでしょうか?

犯罪者を逮捕してから刑務所を出所するまでの更生に、犯罪1件に付き投入される税金は平均で約400万円とも言われています。この税金の1割でも犯罪予防に廻せれば、犯罪を激減させることが期待できます。そこで、再犯予防が費用対効果という点で、大変優れた施策になってきます。しかも、犯罪を抑え込めば、被害者も出さずにすみます。治安が良くなり、警察官の増員も必要なくなり、観光客は増えるなど、私達の生活環境の改善にもつながるものと確信しています。

法務省においては、再犯防止推進法に基づく再犯防止推進計画を策定し、平成33年までに2年以内再入率を16%以下にする等の目標を掲げて取り組まれようとされています。また、兵庫県では、平成25年に全国に先駆けて再犯防止対策関係機関連絡会議を立ち上げました。就労支援は国、住宅は県、福祉は市町という縦割り行政がある中で、この連絡会議は行政の横の連携という意味で有意義な取組であると私は高く評価しています。しかしながら、同会議は38機関と大きすぎて、必ずしも縦割りを乗り越え連携して議論するという組織にはなっていません。しかも、この5年間で、殆どの担当者が人事異動で変わっています。もっとしっかり議論ができる組織にする必要があるのではないでしょうか。今後、県が中心となって関係機関の連携を図り、犯罪予防のために刑務所出所者支援を積極的に進めることを望みます。

そこで、これまでの再犯防止の取組の検証と、更なる支援の拡充が必要と考えますが、今後どのように再犯防止に取り組んでいこうとされているのか、当局のご所見をお伺いします。

(2)満期出所者への支援について

刑務所の出所には2種類あります。真面目に勤めていれば、刑の8掛けぐらいで仮出所できる場合と、満期で出所する場合があります。仮出所の場合は、出所から刑の終了までの期間、保護司が対応し寄り添います。

しかし、問題は身元引受人がおらず、更生意欲が乏しい満期出所者の場合です。彼らは満期で刑を終え、出所した途端に一般人になるため、仮出所における保護観察期間のような支援制度がありません。出所者は職も住居も自分で見つけねばなりませんし、社会も出所者を温かく迎えるという状況ではありません。満期出所者にとって、出所後の生活が罪を犯す前の環境と変わらない状況下では再犯に走る場合が多く、実際に満期出所者を含む再入所者のうち7割以上が再犯時に無職という現状があります。

そこで、保護司と共に更生努力をする仮釈放者もさることながら、満期出所者に対して特に支援が必要と考えます。住宅・就労・福祉支援など総合的にコーチングする専門家が、生活が安定するまでのせめて半年くらい寄り添うことができれば、再犯は半減すると思います。

このような観点から、満期出所者に対する具体的な支援について、当局の考え方をお伺いします。

 

2 がん教育の推進について

一般的に、皆さんは自分が、がんに罹るとは、余り真剣に考えていないと思います。しかし、現実は、万が一がんになったらではなく、二分の一、つまり2人に1人が、がんに罹るのです。そして、がんを宣告された当事者は、がんに対する考えが一変し、死と向き合う生活を送ることになります。

がん対策基本法が平成19年に施行され、それに基づく対策として「①死亡率を10年で2割減らす。②検診率を5年で50%超にする。」が掲げられました。最近では医学も進歩し、乳がん・前立腺がん・胃がんは100%治癒すると言う専門家もいます。先日、ノーベル賞を受賞された本庶佑(たすく)京都大学特別教授は、「21世紀中にがんは撲滅する」と言われており、部位にもよりますが、がんと共生する時代に入ったと言えます。

とは言え、安心してがんと共生するには早期発見が前提で、転移してからでは、完治もかなり難しいのが現実です。がんを克服するためにも、また治療費を抑制するという意味からも、重篤になる前に早期発見をする、そのために、検診率を向上させることが必要です。

しかし、兵庫県のがん検診率は、47都道府県単位で見ると、平成22年で女性特有のがんの受診率は全国最低でした。平成25年で、乳がんが44位、子宮がんは39位、胃がんは46位、平成28年にあっても、乳がんは39位、子宮がんは43位、胃がん・肺がんは共に42位と、未だ最下位あたりを低迷しています。理由をいろいろ言われますが、これまでの本県のがん対策は、弱いと言わざるを得ません。

10数年前、国指定のがん拠点病院の時も、本県は最後まで取り残されていました。また、平成19年に、国に於いてがん対策基本法が制定され、平成30年4月現在で、全国40以上の道府県が、がん対策条例を制定しました。しかし、この条例も兵庫県には、ありませんでした。これまで私は何度もがんに特化した条例を要望し、この度やっと本定例会に「がん対策推進条例」が上程されました。一歩前進したことを、がん患者の一人として本当に嬉しく思います。

更に、平成28年12月改正のがん対策基本法には、がん教育が新たに盛り込まれました。この改正がん対策基本法と兵庫県がん対策推進条例を受けて、兵庫県も積極的にがん教育を進めることが重要となってきています。若い時に学校教育の一環として、がんに対する正確な知識を身に付けることは検診率を高め、がんの早期発見にも結び付いていきます。

県の健康福祉部では、大学生を対象とした出前講座や各種イベントで県民への啓発を進めておられます。しかしながら、より早い時期、すなわち高等学校への出前授業の講師派遣などを行うことが、より重要と考えます。がん教育については、教師自身の理解不足や誤解等も多々あると思います。医師を高校に派遣し、医師の実体験をプロの立場で語りかければ、生徒はがんの知識を身につける他に、医師になる夢を抱く生徒もいるかもしれません。もし、医師となって地元で活躍することになれば、医師の偏在解消にも役立つ可能性も出てきます。

このようにがん教育を推進することで、がんに対する正しい知識を、県民全体が身に付け、より早期の発見と治療が進み、安心して暮らし合える社会作りに繋がると考えます。そこで、条例制定を踏まえたがん教育の推進について、教育委員会等関係機関との連携等、どのように取り組もうとされているのか、ご所見をお伺いします。

 

3 神戸空港の活性化による兵庫の発展について

平成24年に関西国際空港と大阪国際空港が経営統合されました。そして、昨年4月に神戸空港が民営化され、関西3空港の一体運営が開始されました。これからは、3空港それぞれの特色を最大限活用していくことが重要だと考えます。中でも、利便性がよく、更なる需要が見込める神戸空港の活用が、今後の関西経済の浮沈に大きく関わってくるものと確信します。

2019年には、ラグビーワールドカップ、2020年に東京オリンピック・パラリンピック、2021年にワールドマスターズゲームズ、2025年に大阪・関西万博等の国際的なイベントが目白押しです。これらのイベントで、国内外からの観光客の大幅な増加が見込まれるチャンスを的確に捉え、兵庫の発展につなげるべきと考えます。

そのためには、神戸空港を核とした県内への誘客促進が欠かせません。神戸には世界に名を馳せる神戸ビーフをはじめ、全国最大の清酒生産地の「灘の酒」など、世界的にも知名度の高い食文化も擁しています。そして、いろんな国の食を提供するハイカラなレストランがあります。六甲山では、素敵な夜景を楽しめスキーもできます。また、近くには姫路城もあります。外国人旅行者のリピーターを取り込む魅力が十分に備わっています。体験型観光を中心とした神戸への誘客を積極的に打ち出すことで、国際観光都市神戸を元気づけ、確実に兵庫の発展を導くものと考えます。

更に、神戸独自の先端医療を活用した医療ツーリズム等にもつなげることも可能です。神戸空港を取り巻く環境は、ノーベル賞を受賞された本庶京大特別教授が理事長を務める神戸医療産業都市推進機構や、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」などの世界有数の科学技術基盤があります。また、ポートアイランドには、神戸学院大学、兵庫医療大学の他に、小児医療の全県拠点病院と位置づけられている県立こども病院等の高度専門医療機関や、350社を超える関連企業の進出もあり、日本最大の医療クラスターを形成しています。

このように、神戸空港は特色のある環境を近隣に有しているのに加えて、JR神戸線や山陽新幹線等へも20分程度で移動可能であり、県内外へのアクセスにも優れていることから、インバウンドやビジネスを始めとした利用者の潜在的なニーズは十分あるものと考えています。発着枠や運用時間等の規制緩和を図ると同時に、神戸空港のポテンシャルを活かした積極的な活用策についても忘れてはなりません。

平成29年度の空港別乗降客数は、全国97空港中14位で、国内の主要な都市型空港としての地位を確立し、旅客数は開港以来の過去最高を更新するなど、堅調な推移を示しております。また、昨年末には、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の規制緩和に向けた議論がスタートしました。

そこで、是非、神戸市ともしっかりと連携し、神戸空港の活用促進を図ることで、兵庫の発展に結びつけて頂きたいと考えますが、当局の所見をお伺いします。

 

4 県独自の給付型奨学金制度の創設について

昨今、家庭の経済格差が教育格差にまで広がってきています。その結果、経済的困窮者や児童養護施設の高校生に、経済的理由で大学進学等を諦めざるを得ない生徒が増えています。

私は、誰に対しても大学進学を促すものではありません。しかし、経済的理由で進学を諦めざるを得ない子供がいれば、行政が支援の手を伸ばすべきではないでしょうか!

このような現実に対し、文部科学省は平成30年度からローンの貸与型ではない給付型奨学金制度を本格実施しました。この制度は、目の前に経済的理由で悩んでいる高校生に、進学する夢や希望を与えるものとして私達は歓迎しました。

しかし、まだまだ内容は不十分です。例えば、国のこの給付型奨学金で、私立大・下宿型で最高の月額4万円を受給出来ても、授業料だけでなお年間100万円ほど不足します。大学進学の十分な費用を準備できない者にとっては非常に大きな負担となっています。その結果、一般家庭の大学等進学率が73.0%に対し、生活保護世帯では35.3%、児童養護施設の子供は、27.1%という低水準で、大きな開きがあります。

教育現場では、高校3年生の進路指導が最大の課題です。目の前の高校生が、進学したくても、経済的な理由で進学を諦めかけている現状を、このまま見過ごしていて良いものでしょうか!教育委員会は、国の動向を見守るとも言われました。しかし、私が初めて、給付型奨学金制度を要望したのは6年前です。以来、国の動向を見守るだけで手立てをしなかったために、その間に施設の何百人と言う生徒たちが切り捨てられてきたのです。

新潟県が独自の給付型奨学金制度を創設しました。兵庫県も是非、このような子供たちに夢を与える政策を進めてもらいたいものです。

そこで、県は独自の給付型奨学金制度を創設し、国の不十分な給付型に上積みし、 “やる気”があっても家庭が苦しく経済的な理由で進学を諦めている高校生を救って頂きたいと思います。是非、この県独自の給付型奨学金制度の創設を実現させて頂きたいと思いますが、当局のお考えをお伺いします。

 

5 県立夜間中学創設について

戦後の混乱期、引揚者の問題、焦土化した街、食料さえ不足する状態で、生きていくのに精一杯の時代にあっても、日本は教育に力を入れました。

1947(昭和22)年、神戸で、長期欠席児童の救済措置として“夜間訪問”の活動が始まり、制度的に補強され大阪で『夜間中学』が創設されました。現在、公立の夜間中学は全国に31校(うち県内は、神戸市2、尼崎市1)が存在します。その他に、自主夜間中学が21校あり、文科省がここ数年、中学校のいわゆる形式卒業生に学び直す場の提供を奨励したことにより、今、全国的に、急速に公立夜間中学の創設に向けた取組が広がっています。

昨今の夜間中学は、創設当初の目的から大きく変化し、いじめ・虐待・不登校等の理由で義務教育を十分に受けられなかった児童・生徒や外国人に、就学の機会を提供するという重要な役割を果たしています。

昨年度、義務教育での30日以上の長期欠席者は21万7千人に達し、そのうち不登校においては3カ月以上の欠席者が6割を占めていたそうです。こうした学校で殆ど勉強が出来ていない未就学者であっても、卒業の時期になると卒業証書を出し、形だけ卒業したことにしているという現状があります。今の学校の体制に馴染めず、いじめ、或いは家庭の事情で不登校になっている長期欠席児童の対策が十分に取られることなく、卒業証書を与えることで免責のようにしている現状は、決して日本の誇るべき義務教育が遂行されているとは言えません。このようなやり方が、義務教育学校でなされているという実態に、元教師として大きな疑問を感じざるを得ません。

また、この中学校の形式卒業生の他に、親の事情で無戸籍のまま小学校にも行けず、親に捨てられ社会からもネグレクトされた児童が、全国に潜在的に1万人いると言われています。更に小学校で不登校になり、中学校に入学していない生徒を考えると、兵庫県内でも推定で約500人が、毎年、先程の未就学生に加わることになります。

しかし、現実に行政のこの手の調査に対し、未就学者が自らの負い目をさらし、「私は小学校も、ろくに出ていない」と名乗り出ることには大きな抵抗があり、結果的に行政も把握出来にくいという現実があります。未就学者はいないのではなく、見えない、聞こえないだけで、潜在的に何処の地域にもいるのです。

現在、兵庫県北部や中西部には、夜間中学がありません。やり直すべき学校が無い状況で、入学希望者・ニーズの声が届くはずがありません。潜在的入学希望者は必ずおり、夜間中学の充実を図り、広報などで積極的に再チャレンジを希望する人を掘り起していくことが行政の責務だと考えます。

昨年度、岡山県で自主夜間中学が創設されました。県がニーズ調査のためチラシ2万7千枚を配布し、その上で入学生を募集したのですが、開校当時、生徒はわずか3名でした。しかし、ボランティア教師の踏ん張りと口コミの評判が広がり、1年後に生徒が40名に膨れました。夜間中学への潜在的入学希望者はいるのです。

日本国憲法には、勤労・教育・納税が国民の3大義務として記されています。第26条に学習権が定められており、更に、それを補強するために、2016(平成28)年、“義務教育機会確保法”が施行されました。同法の基本理念には、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍等に関わりなく教育を受ける機会を確保する」と記されています。更に、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、教育機会の確保などに関する施策について、国と協力しつつ、施策を実施する責務を有する」と規定されています。

今後、県の役割として、中核市姫路や近隣の市町と連携し、広域から通える県立夜間中学を西播磨地区に設立し、潜在的入学希望者に応えることが必要だと考えます。

そこで、県の夜間中学創設に対してのご所見をお伺いします。

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