北上 あきひと議員が一般質問を実施

第345回9月定例会 一般質問要旨

日 程   2019年9月30日(月)

議員名   北上あきひと 議員

質問方式  一括

 

1 児童虐待防止について

最初の質問は、「児童虐待防止について」であります。

昨年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、速報値によりますと前年度比2万6072件増の15万9850件で過去最多を更新しました。対策の拡充が益々求められていると認識するものです。そこで、児童虐待を防止するために以下2点伺うこととします。

 

(1)助産師等による産前・出産・産後の一貫した寄り添いケアについて

1点目は「助産師等による、産前・出産・産後の一貫した寄り添いケアについて」であります。

地域社会の変容や核家族化、情報化の中で、「今ほど孤独で不安な子育てを強いられる時代はない」と言われ、孤独や不安が産後うつや児童虐待の一因であると指摘されています。

ニュージーランドやドイツ、カナダ等では、助産師等が「かかりつけ専門家」として、妊娠初期から出産、産後にかけて一貫して親と子に寄り添い支援を提供する仕組みが制度化されているところです。日本でもフィンランドのネウボラを参考にし「子育て世代包括支援センター」が全国展開されていますが、より一貫性のある取組が求められると考えます。

また、世界保健機構は、ポジティブな出産体験を推奨しています。出産時に「母子が命を落とさないようにするだけではなく、母子が強く成長し健康に生きるための潜在能力を発揮させること」を目指すようになったのです。ポジティブな出産体験とは、女性自身の個人的・社会文化的信念や期待を満たす体験であり、女性自身が出産に関する意思決定に参加し達成感やコントロール感を得ることであり、安全な環境で技術的に優れ思いやりのあるスタッフから臨床的・心理的な支援を継続的に受け出産することを含むと、世界保健機構は指摘しています。全人的で人権を重視したポジティブな出産体験によって、穏やかで逞しく肯定的な育児に繋がることが期待されるところです。

兵庫県保健医療計画第4部第4章周産期医療「助産師の資質向上と活用促進」の項には、「産科医との連携のもと、助産師がより専門性を発揮するとともに、妊産婦の多様なニーズに応えるため、専門的かつ質の高い助産師の確保及び資質の向上を図るとともに、助産師が正常産を担う院内助産、助産師外来の設置を促進する」と記されています。

助産師等によって、産前・出産・産後にかけて一貫して親と子を支えることは、児童虐待を防止することに有効であると考えます。県内市町において、妊娠初期から出産、産後にかけて一貫して同じ助産師のケアを受けられる「マイ助産師制度」のモデル実施をする等、助産師等による「産前・出産・産後の一貫した寄り添いケア」実現に向けた研究を進める必要があると考えますが、見解をお伺いします。

 

(2)子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置について

2点目は「子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置について」であります。

2016年3月10日付社会保障審議会「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告」、4「子どもの権利擁護に関する仕組み」において、「自分から声をあげられない子どもの権利が確かに保障されているかを監視するため、第三者性を有する機関の設置が求められ」ており、「当座、現存する都道府県児童福祉審議会を活用し、子どもの権利擁護」を図るとされました。また同年6月に成立した「改正児童福祉法」において、子どもの意見表明権と子どもの最善の利益の原則が盛り込まれ、その付帯決議(参議院厚生労働委員会)で「自分から声を上げられない子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討すること」とされています。

本年1月、千葉県野田市で「ひみつはまもりますから、しょうじきにかいてください」と促されたアンケートに、「お父さんにぼう力を受けています」、「先生、どうにかなりませんか」と訴えた小4女児の命は、残念ながら救われることはありませんでした。

虐待や体罰は、本来ならば最も信頼できるはずの大人から受ける人権侵害です。また、教育委員会や児童相談所が所謂「大人の都合」によって「子どもの最善の利益」を見失うことは皆無とは言えない現状です。施設や里親に養育を委託する子どもたちはもちろんのこと、すべての子どもが自ら意見を表明する主体として尊重される制度、子どもの最善の利益にのみ関心を払う第三者機関の設置が求められています。

そこで、社会保障審議会報告の提案にあるように、本県においても「社会福祉審議会児童福祉専門分科会」の活用を含め、子どもの権利擁護に関する第三者機関の設置に向け、前向きに研究を進めるべきだと考えますが、如何でしょうか。

 

2 LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立について

2つ目の質問は「LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立について」であります。

心と体の性が一致しない性同一性障害や同性愛などのセクシュアルマイノリティーとされる人は、さまざまな調査から人口の約5%~8%と言われます。しかし、本人が告白しない限り、その姿は見えづらく、これまで正しい情報が伝わらず、制度や政策の対応は十分ではありませんでした。

2015年4月に文科省から、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の文書が全国の教育委員会に通知され、性同一性障がいをはじめとするセクシュアルマイノリティーの児童生徒への対応が求められました。また全国の自治体では、同性カップルへのパートナーシップ証明書発行や公営住宅入居要件の緩和など、さまざまに前向きな取組が始まっています。

県民一人一人の多様性を認め合い、誰もが人間として尊重され、自己肯定できる社会を築くために必要な手だてを講じていかなくてはならないと考えるものです。

そこで、以下3点伺うこととします。

 

(1)LGBTなどセクシュアルマイノリティへの理解の推進について

1点目は、「LGBTなどセクシュアルマイノリティへの理解の推進について」であります。

2012年9月定例会における我が会派の前田ともき議員の「性的マイノリティーへの理解推進について」の質問に対し、当時の健康福祉部長は「根強く残ります差別、偏見を解消いたしますために」、「継続的な人権啓発に努め必要な対策を講じてまいりたい」とご答弁されました。さらに、2015年6月定例会における前田議員の「性的マイノリティへの理解促進について」の質問に対し、知事は「性的マイノリティの方々を含む、あらゆる人権が尊重される社会の実現を図る」とご答弁されました。それから4年以上経過しましたが、人権啓発の現状と成果、また今後の課題を明らかにしてください。

 

(2)当事者に対応する「職員対応ガイドライン」の策定について

2点目は「当事者に対応する「職員対応ガイドライン」の策定について」であります。

2015年8月、一橋大学法科大学院生の男性が、同性愛者だと同級生に暴露されたことをきっかけに大学内の建物から転落死し、遺族が同級生と大学を裁判に訴えたことで、公にしていない性的指向を本人の同意なしに暴露した同級生の「アウティング」や、大学の対応の在り方などについて、社会的な議論が起こりました。

ある新聞記事によりますと、専門家は「性的少数者への差別や偏見が根強く存在する中、アウティングは当事者の生活を破壊しかねない行為だ。行政が率先して対応する必要がある」と指摘し、都道府県や政令市が危機感をもって対応を整備するよう求めています。

本年2月、三重県は「多様な性のあり方を知り、行動するための職員ガイドライン~LGBTをはじめ多様な性的指向・性自認について理解を深め、行動する~」を策定しました。「職員が多様な性的指向・性自認に関してより理解を深め、適切に行動していくため、また、職員自身がLGBT等の当事者である場合においても安心して働ける職場としていくため、職員や職場がどのような姿勢で、どう行動すべきかについての基本的な考え方をまとめたもの」であります。ガイドラインには、カミングアウトや相談は真摯に受け止める、多様な性のあり方に配慮した言動をするなど、多様な性のあり方について知って行動するための「六か条」が記されています。三重県の他、東京都、大阪府、熊本県、さいたま市、千葉市、大阪市、京都市などでも、職員や教職員を対象にしたLGBT当事者に対する対応指針を策定しており、今後更に多くの自治体や民間企業でも同様の取組が広がることを願うところです。

先程の新聞記事で、共同通信社が今年4月から6月に全ての都道府県と政令市に対して行った調査によりますと、「アウテイング行為」の禁止を定める職員向けのマニュアルなどを作成している自治体は1割にとどまり、残念ながら「兵庫県」は策定していません。

そこで、本県においても、LGBTなどセクシュアルマイノリティの人権確立を目指す一環として「職員対応ガイドライン」の策定を検討するべきだと考えますが、見解をお伺いします。

 

(3)社会生活上の制約による苦痛の解消について

3点目は「社会生活上の制約による苦痛の解消について」であります。

LGBTなどセクシュアルマイノリティの方々は、社会生活上の制約による苦痛が多くあると認識します。同性のカップルであれば、賃貸住宅への入居を拒まれたり、また病院での手術同意書にサインする権利者になれないなどです。

茨城県では、本年7月より同性同士など性的少数者のカップルに証明書類を発行する「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。同様の制度を都道府県で導入するのは初めてとのこと。この制度を利用すれば、県営住宅への入居申請の受付や、県立病院などでの面会・手術同意などで家族同等の扱いが認められます。

水戸市は、市営住宅への入居申請を8月1日から認めることとしました。市によりますと、市営住宅の入居は親族以外に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」と規定されており、県の同性パートナーシップ宣誓制度で受領証を交付されたカップルにも同様に対応することとしています。

また笠間市も、市営住宅の入居申請や市立病院での手術同意について8月以降、市内13ヵ所計353戸の市営住宅と市立病院を対象に、県の施設と同様の対応を取ることとしました。

そもそも大井川茨城県知事がこの制度の導入を表明した際には、一部に「時期尚早」として慎重な対応を求める声が根強くありましたが、知事の強い説得で導入に漕ぎつけました。同知事は、「スピード感をもって取り組まなければならないのは、この問題が基本的人権に関わるものだからだ」と導入方針を説明しています。

こうした知事の英断により、県内市町村への理解が進み、宣誓制度に基づく支援策を実施する自治体の動きが加速し始めているのです。

同様の証明書の発行は、県内外の20を超える市町や特別区でも導入されているところです。これらに取り組んでいくことは、今や世界の潮流となっています。

本県においても、LGBTなどセクシュアルマイノリティの方々の、社会生活上の制約による苦痛を少しでも解消するために、是非とも知事のリーダーシップを発揮いただき前向きな取組を期待します。諸制度の新設や改善の研究を進め、広く県民の理解を得つつ、その実現を追求するべきだと考えますが、見解をお伺いします。

 

3 ロシア連邦ハバロフスク地方との今後の友好交流について

3つ目の質問は「ロシア連邦ハバロフスク地方との今後の友好交流について」であります。

兵庫県とハバロフスク地方は永年に渡り、友好訪問団や文化・経済・青少年交流団の相互派遣、北東アジア地域自治体連合の取組推進、コウノトリの保護増殖事業の相互支援・協力など、継続的かつ着実な交流を積み重ねてきました。本年は、ハバロフスク地方との友好提携50年の節目の年であります。

先月、県議会として長岡壮壽議長を団長とする日露友好訪問団を組織し、団員の一員として私もハバロフスクを訪問しました。現地では地方議会議員や首長、日本語学習者など多くの方々と交流をする機会を得、現地の人々の「兵庫県との友好交流を更に深めたい」との熱い思いを直に感じることができました。ハバロフスク地方におけるコウノトリの保護増殖や自然環境保全の取組などの調査では、その成果と共に、コウノトリ保護増殖事業の相互支援・協力を通じて、子どもたちを含む多くの人々の交流が図られていることを知りました。また井戸知事とセルゲイ・フルガル知事との共同声明調印式にも立ち会うことができました。両知事による共同声明には、これまでの友好交流事業を継続するとともに、こども病院間の相互支援など医療分野における新たな取組も記されました。関係者のご尽力によって、共同声明が実り多いものとなることを心から願うものです。

今回の訪問を通じ、僭越ながら私も一県会議員として、ハバロフスクとの友好交流の進展に努めたいと思うところであります。

2020年、21年は「日露地域交流年」であります。ハバロフスク地方とのこれまでの友好交流の蓄積を活かし、文化・経済・青少年など幅広い分野での事業展開によって、両県地方のより深い信頼と友好、北東アジアの未来志向の平和と繁栄に資することを期待するところです。

そこで、次の5年後を見据え、両国にとってより素晴らしい交流の節目を迎えられるよう県の決意と取組内容についてお伺いします。

 

4 道路の維持管理について

4つ目の質問は「道路の維持管理について」であります。

1956年8月、米国のラルフ・j・ワトキンス率いる調査団が日本の道路事情について「信じ難い程悪い。工業国にしてこれ程完全にその道路網を無視してきた国は日本の他にない」との報告をまとめています。この「ワトキンスレポート」を契機とし、日本は道路の「量的充足」に邁進してきました。この報告書から60年余を経た今日、道路整備は着実に進展しているものと認識します。もとより、名神湾岸連絡線をはじめとするミッシングリンク解消等の課題は未だ多く残っているものの、今日まで蓄積してきた道路資産の確実な維持修繕は、経済活動を活性化し日常生活を支えるうえでの新たな課題として顕在化しています。「量的充足」に加え「質的充足」が大きく求められる時代になったと言えます。

これら道路資産の維持管理について、本県では「ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画」を策定し、計画的かつ効率的な老朽化対策を推し進めており、これは「質的充足」の一環とも評価でき、その進展に期待するものです。その一方で、地域住民からは、沿道の雑草繁茂対策や植樹の剪定、車道のわだちやひび割れの修繕等、道路利用者の快適性や安全性の確保に繋がる身近な要望が多数寄せられています。

これらの要望に応えていくためには、もちろん必要な予算を確保していくことが重要ですが、例えば、多自然地域などもともと緑豊かな地域の道路に植樹されている街路樹を伐採・撤去するなど、これまで以上に大胆に、予算の選択と集中を推し進めていくことが求められるのではないでしょうか。

道路は経済活動を活性化し、安全で快適な日常生活を支えるうえで極めて重要な社会基盤であり、計画的で効果的な維持管理が必要です。とりわけ除草や街路樹、舗装といった日常的な維持管理について、今後どのように取り組まれて行かれるのか、ご所見をお伺いします。

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