2011年度当初予算編成に対する申し入れ

2010年11月15日
兵庫県知事 井戸敏三様
兵庫県議会民主党・県民連合議員団
幹事長  中田 香子
政務調査会長  永富 正彦

 

我が国の経済・雇用の動向は、景気回復が足踏み状態にあるとともに、先行きの下押しリスクを示す動きが続いており、企業の先行きの景況感の悪化とともに、デフレの慢性化や、失業率の高水準など、依然として厳しい状況にあります。
一方為替市場は、去る9月に約6年半ぶりの為替介入が行われたものの、企業の採算レートから見れば依然として円は厳しい水準で推移しており、その長期化や海外経済の減速といった外的要因は、我が国景気の先行きを下押しさせる大きな要因にもつながっています。
こうした厳しい経済環境下にあって、雇用の確保、社会保障の充実など、地域のセーフティネットとして県の果たすべき役割は重要であり、産業・雇用政策は勿論、医療・福祉や教育の充実、農業再生や環境対策、防災・危機管理といった多様な行政需要を県政に反映し、県民本意の施策を遂行するとともに、特に経済・雇用の面では、介護・福祉施策、農林水産、グリーンエネルギーの開発といった政策分野を、雇用確保と結び付けて活性化させるといった取り組みも必要となってまいります。
もとより本年は新行革プラン3年目の総点検の年であるとともに、平成21年度決算において、実質公債費比率や将来負担比率が、前年度より悪化した実情を鑑みれば、限られた財源の中で収支のバランスを取りながら、メリハリのある予算編成に努めることはいうまでもなく、これまで以上に施策の優先順位の明確化と「選択と集中」を徹底する姿勢は欠かせません。
こうした考えのもと、兵庫県議会民主党・県民連合議員団では、厳しい財政状況のもとにあっても、県民が将来に希望を持つことができる社会の実現に向けた予算が編成されるよう、ここに県政として優先的に取り組まれるべき8つのテーマ、計85項目からなる申し入れ項目をとりまとめました。
井戸知事におかれましては、2011年度当初予算編成にこれらの項目を適切に反映くださるよう、ここに申し入れを行います。

Ⅰ 真の分権型社会の構築と県民の参画と協働に向けて

1 地域主権の確立

(1) 地域主権の確立

地方の自己決定と自己責任の原則を確立し、地方が自らの権限と責任、財源を持つ分配・自立型の行財政システムを構築するため、義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大、国と地方の協議の場の法制化など、地域主権改革の推進を国に対して強力に働きかけるとともに、県の内発的な取り組みも一層積極的に推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 本格的な税源移譲等による地方税財源の充実強化と、税源移譲に伴う自治体間の財政力格差の拡大を防ぐ新たな制度の導入やセーフティネットとしての機能向上も含めた財政調整制度の強化を、国に対して積極的に働きかけ、その実現を図ること。
  • 国と県の役割について、広域行政に純化されていく県と総合行政体としての国との役割分担の明確化に向けて、さらに検討を進め、国に対して強力に働きかけること。
(2) 県と市町の役割の見直し

市町が適切な行財政運営を行い、それぞれの能力を高めることができるよう、広域・専門的な視点からのきめ細やかな支援や情報提供に努めるとともに、県と市町の役割分担や機能のあり方などについても議論を深め、市町の能力や実情に応じて、県から市町への事務事業の移譲を推進すること。また、定住自立圏構想等を踏まえ、市町間の連携・協力による地域活性化への取り組みへの支援を行うこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 合併による市町規模の拡大や地方分権関連法令の整備等を踏まえ、県と市町との役割分担を明確にした上で、「県から市町への権限移譲等推進計画」の見直しを行い、一層の権限移譲を推進すること。
  • 各市町が円滑な行財政運営を行い、その活力を維持・向上していけるように、広域的、専門的な視点から積極的に助言、支援を行うこと。
  • 県と市町との協議機関を設置し、日頃から連携を密にすること。
  • 市町のまちづくり推進のため、定住自立圏構想の推進など、地域振興対策を強化すること。
(3) 「関西広域連合」の設立

防災体制の強化や観光・地域産業の振興による地域活性化、自然環境の保全、医療連携、空港・道路・港湾の一体的な整備・管理などについて、近隣府県との連携を強化するとともに、国からの権限移譲の受け皿ともなりうる「関西広域連合」の設置に関して、広域連合が実施する事務、参加すべき自治体の範囲、議決機関も含めた組織のあり方などについて、具体化を進めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 防災体制の強化や観光・文化振興による地域活性化、産業振興や広域医療の充実、自然環境の保全等広域的な行政課題として取り組むことが有効な事業については、関西広域連合による取り組みを推進すること。
  • 国から権限移譲を想定している国の地方支分部局の事務については、速やかな権限移譲を求めていくこと。
(4) 防災副首都の関西誘致

わが国全体の危機管理能力を向上させるため、政府機能のバックアップを要する事態の想定や、機能・運用等についての研究をさらに進め、国に対して、関西が首都機能代替(バックアップ)エリアとしての役割を担うことを国土・防災・有事に関する法律や計画等に位置づけるよう求めるなど、防災副首都の関西誘致に積極的に取り組むこと。

2 行財政構造改革の推進

(1) 行財政構造改革の推進

県民の生活と生命に直結する医療・福祉、教育・治安など、改革の対象となった各分野においては、組織の統廃合や原則的な一律削減の対象にはなじまない課題が少なくないと考える。今年度行う条例に基づくプラン策定3年目の総点検等を通じ、限られた財源の中、「選択と集中」により徹底した事務事業等の見直しを行うとともに、県民・市町・関係団体等の声を十分に踏まえたプランの見直しも含め、実効ある県民本位の行財政構造改革に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 国の政策転換や経済情勢など、県を取り巻く環境の変化を踏まえて、新行革プランの総点検と見直しに取り組むこと。
  • 事務事業改革については、簡素で効率的な事務執行体制を整備するとともに、部局間の連携、市町との役割分担という視点をもって実効性の向上に取り組むこと。特に、医療・福祉・教育など県民生活と直結する施策については、現場主義を基本姿勢として取り組こと。
  • 県政全般に関する政策立案を担当する企画県民部総合政策室の実効ある機能強化を図ること。
  • 試験研究機関の運営については、実際に担当する人材の確保を考慮して研究テーマや業務の選定を行うこと。また、企業等との共同研究に関しては中立性の確保に配慮するとともに、外部資金の獲得については、資金獲得自体が自己目的化することのないよう注意すること。
  • 県及び公社等が保有する用途未定地や未処分資産の取り扱いについて、公社等経営評価委員会の報告も踏まえ、期限を設定して具体的な対応を進めること。またその際、県民に対する適切な情報公開を行うこと。
  • 県及び公社等の職員の不祥事根絶に向け、研修を通じ公務員倫理を徹底すること。また、団塊の世代の大量退職や、行財政構造改革により職員の減少が見込まれる中、職員一人ひとりの能力の向上と適切な人員配置等に取り組み、行政サービスの低下を招かない効率的な執行体制を確保すること。
  • 職員のメンタルヘルスの確保については、精神保健専門医の配置による産業医の充実、産業医等による積極的な職員のメンタルヘルス診断の実施や、メンタルヘルス研修の拡充等を通じた管理職の意識の向上を図ること。
(2) 定員・給与について

定員については、財政改革のための一律削減ではなく、毎年の事業量精査による必要な定員数を前提に決定すること。また、給与については、人事委員会勧告制度を尊重するとともに、現在行っている給与削減についても、職員の士気の低下を防ぎ、職員及びその家族の生活設計を守るためにも、一定の方向性を示すなど、見直しの検討を行うこと。

(3) 県民局のあり方の精査

県民局のあり方については、地方分権の進展、合併後の市町の行政体制の整備や政令市・中核市の状況等を踏まえ、再編された県民局や地方機関の状況について必要な検証を実施し、また県と市町との役割をさらに精査し、県民局が果たす役割を十分明確にした上で、再々編も含め、調査・研究を進めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「地域ビジョン推進プログラム」の展開に当たっては、様々な活動団体やグループ等と連携を図り、新たな参加者を増やしながら、県民の主体的な活動をさらに促進し、県民同士の交流の拡大を図ること。
  • 現地解決型の機能を発揮するため、管内市町の様々な行政サービスの課題を的確に把握し、住民サービスの格差解消への調整や、マネジメント能力の向上を図るとともに、本庁から権限や予算を委譲すること。
  • 県民局の再々編に当たっては、10県民局を一律体制とするのではなく、地域の実情に合わせた組織体制とすること。
(4) 公的施設運営の改善

公的施設における指定管理者制度導入については、公共性・安全性、利用の公平性等に十分に配慮しながら、公募制を積極的に推進することとし、指定管理者の選定に当たっては、透明性や公平性を確保するため、評価項目や配点の事前公表等に加え、サービス要求水準の設定根拠の明確化を推進すること。
また、指定期間について現行の標準指定期間を延長することなど、制度運用の改善に努めるとともに、指定管理者制度を導入した施設については、管理者の業務実態の把握に努めるとともに、得られた評価結果が指定管理者の業務改善に反映されるよう万全を期すること。

(5) 投資事業の改革

投資事業改革については、「新行革プラン」で精査されたとはいえ、依然高い水準にある投資事業規模をさらに精査し、真に必要な事業とその優先順位を定めたうえで、推進すること。
また、事業実施においては、トータルコストにおいて最も合理的な整備手法を採用するなど、事業費の削減に努めるとともに、予算の内訳や使途の妥当性、事業の実施過程の透明性を確保するほか、費用対効果の事後検証を行うなど、県民への説明責任を果たし、特に事業費の一部を市町や団体に求めるものについては、費用負担について市町等の十分な理解と協力を得ながら推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 最低制限価格の適正な設定や総合評価落札方式の充実等によるダンピング受注の排除、また技術・社会貢献評価制度の充実など、入札・契約制度のさらなる改善に取り組むこと。
  • ダム建設については、社会情勢の変化を踏まえ、常に必要性や緊急性を客観的に評価し、工事途中での事業廃止も排除せず、事業計画を再検討しながら慎重に進めること。
  • 事業規模を精査し、優先順位を定めて推進するとともに、大型プロジェクト事業を見直し、地域生活関連投資事業を推進すること。
(6) 公社等外郭団体の改革

公社等外郭団体については、公社等の経費、契約、職員給与等の実態が明らかにされているとはいい難い状況にあり、監査委員の監査対象とならない団体についても、監査体制の強化や、十分な情報開示を行い、透明性の確保と効率的な運営を図ること。
また、県からの派遣職員や県OB職員は、在職期間が短く、運営に対して長期的な展望や責任が持ちにくいことなどから、一律の基準で派遣職員をOB化するのではなく、配置に当たっては、各団体の実態を踏まえた対応を行うこと。
また改革にあっては、公社等経営評価委員会の審議のみならず、財政面・政策面からの議会の提案も十分に斟酌すること。

(7) 企業庁事業の改革

特に地域整備事業については、企業債残高が1千億円を超える中、民間ノウハウの積極的な導入などにより分譲促進を図るとともに、社会経済情勢の変化に応じて、事業の廃止等も視野に入れた事業戦略の見直しを図ること。
また、水道用水供給事業についても、今後、生活・経済の規模が縮小し、水需要の増加が期待できず、老朽化施設の更新に多額の支出が見込まれる中、総合経営計画(後期6カ年)で示した黒字経営の継続、企業債残高の削減に向けた経営改善を着実に実行すること。

3 参画と協働の推進と共生社会の実現

(1) 県民の参画と協働の推進

分権型社会の本格化や公民協働の潮流に対応するため、「県民の参画と協働の推進に関する条例」に基づき、県民と県民のパートナーシップによる地域づくり活動や県民と県行政のパートナーシップによる県行政のさらなる推進を図ること。
特に、いわゆる団塊の世代をはじめ、若い世代など多様な主体の参画による地域づくり活動を支援すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県民と行政が協働して地域課題に取り組んでいくため、情報提供の充実やボランタリー基金等を活用した活動への助成など、多様な活動への支援を一層充実すること。
  • 高齢者が第二の人生を生き生きと充実して暮らせるよう、人材バンクやシルバー人材センターの有効活用など、培ってきた知識や経験、ノウハウを社会に還元し、活用できる仕組みづくりを進めること。
(2) 人権尊重とDV・家庭内暴力対策の推進

人権尊重を基本理念として県政を展開することにより、人権の尊重が社会の規範として定着し、県民すべてがお互いを認めながら共に生きる「共生社会」の実現をめざすこと。
配偶者や恋人に対する暴力、児童虐待、高齢者虐待については、各地域において、警察も含めた全庁的に取り組む体制を構築したうえで、関係機関の密接な連携の下に、相談体制の強化やサポート体制の確立、加害者への教育の充実等により、効果的な抑止及び被害者の救済・支援に取り組むこと。
特に、DV対策については、民間施設も含めた被害者保護施設の整備促進を図るとともに、県と市町との協調が不可欠であることから、各市町におけるDV対策基本計画策定、支援センター設置への働きかけを強化すること。
また、児童虐待については、親からの虐待などにより家庭で生活できない子どもたちの受け皿の充実に向け、人材の確保・育成など専門的なケア体制の整備や児童養護施設の小規模化など、きめ細かな支援が行える環境整備に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • デートDVへの対策については、中高生対象の研修会を計画的に実施するとともに、民生委員、児童委員及び関係団体等との連携により地域ぐるみの取り組みを推進すること。
  • 高齢者への虐待防止については、市町との緊密な連携を図りながら、虐待防止ネットワークの構築や老人福祉施設職員への研修機会の充実など、有効な対策を講じること。
  • こども家庭センターを県民局単位に設置するとともに、児童福祉司等専門職員の増員など児童福祉機能の強化や相談拠点機関として実施事業のさらなるPRを図るほか、地域、学校、行政、警察、専門機関、関係団体等の連携の強化に努めること。
  • 児童養護施設においては、心のケアのための専門的対応や小規模な個別ケアの導入、学業支援などきめ細かな対応ができる体制づくりなどの充実を図ること。
  • 虐待等により、離婚した両親の影響を受ける子どもたちの健全な育成の場として、安全に安心して親子が面会できる「面会交流支援センター」の設置に取り組むこと。
(3) 男女共同参画社会の実現

男女共同参画社会を実現するため、今年度策定予定の「新ひょうご男女共同参画プラン21」について、現プランの進捗状況の十分な検証を行った上で、県民意見を十分に踏まえた計画とするとともに、同プランの実効性を担保するため、積極的な意識改革を進め、県民、企業、市町等への浸透を図ること。
特に、ワークライフバランスの確立が少子化対策の根幹的視点であることを踏まえつつ、女性の就業率向上のための支援の充実など、女性と男性がともに仕事と家庭の両立を図ることができるよう、ワークライフバランス確立のための施策推進に努めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「新ひょうご男女共同参画プラン21」の策定にあたっては、県民意見を十分に踏まえた計画となるよう工夫すること。
  • 女性の就業率向上の支援や、女性と男性がともに仕事と家庭の両立を図れるよう、ワークライフバランス確立のための施策を推進すること。また、地域の協力を得ながら、家庭の力の向上に努めること。
(4) 自殺対策の推進

自殺者の増加に歯止めをかけるため、新たに設置された「いのち対策室」を中心に、マスコミとの協力体制の構築も含め、職域、学校、地域等とも連携し、相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備等を推進し、精神保健的な視点だけではなく社会・経済的な視点をも含め、また県民運動としての取り組みも視野に入れた総合的かつ有効な対策を推進すること。
特に、自殺者の多い30歳代から50歳代の世代については働き方との関連もあることを認識し、全庁横断的な取り組みとして、関係団体との連携のもとに対策を進めること。
また、自殺につながるケースが多く、その急増が社会的にも大きな問題となっている引きこもり問題についても、学校、地域、関係機関等との連携により、総合的な対策に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 新たに設置された「いのち対策室」を中心に、職場、学校、地域等において心の健康を守る体制を整備し、具体的な削減目標を設定して全庁横断的な取り組みや関係団体との連携による総合的な対策を早急に推進すること。
  • 実践モデル市町の設定や、マスコミ対策を含めた具体的・効果的な施策を実行すること。
(5) 国際性豊かな共生社会の実現

外国人県民が日本人と同様に住みやすく活動しやすい環境整備を図るため、国際理解・人権、交流、生活一般、保健・医療、住宅、教育、行政への参画等の分野で、外国人県民が抱える課題解決に向けた取り組みを進め、国際性豊かな共生社会を実現すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 国際性豊かで外国人県民が生活しやすい地域づくりを推進するため、保健・医療、福祉、教育、人権などあらゆる分野での国際交流の機会を増やすとともに、利用者の視点に立って外国人県民インフォメーションセンターのさらなる充実を図ること。
  • 在日外国人無年金者への給付金額を引き上げるとともに、市町との一体的な制度となるよう改善すること。
  • 公立学校で日本語指導が必要な外国人児童・生徒が増加している中、小学校段階から将来の進路を見据えた指導体制を地域やNPO等も交えて構築すること。

Ⅱ 健康福祉社会の実現に向けて

1 健康づくり対策の推進・医療体制の充実

(1) 県民の健康づくりの推進

食生活の改善や運動不足・ストレスの解消など、県民一人ひとりによる生活習慣の改善や社会全体での健康づくりを支援し、県民の健康づくり運動の定着を図るとともに、歯の健康づくりや受動喫煙の防止、化学物質過敏症、心の健康づくりの体系的な取り組みを行うこと。
また、特定健康診査(メタボリックシンドローム健診)・特定保健指導のより円滑な実施に向けては、医療保険者や市町等と連携し、健診受診率及び保健指導実施率の向上を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 歯の健康づくりについては、歯周疾患の予防を基本に、各健康福祉事務所等を窓口として歯科衛生士の能力が十分に発揮される体制の整備に努めること。
  • 生活習慣病対策については、医療・保健・福祉の各分野が、情報を共有し、さらなる連携強化を図りながら施策を展開すること。特に特定健康診査については、健診従事者の養成や医師会との連携など、実施体制を整備するとともに、市町や国保組合への指導を充実すること。
(2) 地域医療の確保

地域の医療連携を推進するため、二次保健医療圏域を単位とした医療機関の適切な役割分担、相互連携を進めるとともに、かかりつけ医の普及定着を基本に、医療機関が効率的に機能するシステムの構築に取り組むこと。
特に、小児科、産科、麻酔科などの診療科偏在及び地域偏在の解消を図るため、就労環境の整備やへき地医の養成などに積極的に取り組むとともに、産科医の負担を軽減するため、助産師の確保対策の充実を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県内医療機関における小児科医確保への支援や地域医療体制における輪番制の確立、小児救急医療電話相談体制の充実等により、小児救急医療をはじめ小児医療の充実を図ること。特に阪神北地域で実施され、効果を上げている小児急病センターの全県的な拡大を図るため、より一層市町や医師会との協議を進めること。
(3) 疾病対策の推進

がん対策については、「がん診療連携拠点病院」の機能を強化し、地域医療機関等との医療連携を図り、がん医療の質の均てん化を推進するとともに、早期発見に向けた診断力の向上をはじめ、情報提供と相談支援体制の充実など、患者の立場に立った総合的な対策に取り組むこと。
また、SARS、新型インフルエンザ等の感染症やアレルギー性疾患への対策については、その充実を図るとともに、難病患者対策についても、課題と対応策等を調査・検討し、対策の充実強化を引き続き国への働きかけに取り組むこと。
さらに、社会環境の変化に伴って急増している各種精神疾患に対しても、その未然防止のための引きこもり対策も含め、十分な対策に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 肝がん対策については、肝炎ウイルス検診の受診率向上を図るとともに、肝疾患診療連携拠点病院と専門医療機関・協力医療機関、地域のかかりつけ医との連携による治療体制の強化を推進すること。
  • 新型インフルエンザ対策については、ワクチンの円滑な接種や抗インフルエンザウイルス薬等の適切な備蓄、発熱外来の運営、パンデミック時の病床・医療機能の確保に向けて医療機関との調整を一層進めるなど、万全の対策を講じること。
  • 音楽療法・園芸療法については、療法の効果に関する研究への支援の拡充や統一的な認定制度確立に向けた国への働きかけ等により、技術水準の向上と療法の普及促進を図ること。
  • 各精神疾患については、ひきこもり家族教室の拡充など実効ある対策を図ること。
(4) 県立病院の円滑な運営

医療ニーズの高度化・多様化、医療技術の進歩に対応し、県立病院の役割である高度専門・特殊医療を中心とした政策医療の提供等、より良質な医療を提供できるよう、診療機能の高度化・効率化に努めるとともに、適切な公的負担の下で、自立した経営が確保できるよう、医療資源の有効活用や職員の経営意識の高揚を図り、計画的な経営改善に取り組むこと。
また、各病院における経営改善への取り組み状況を積極的に開示し、そして医療サービスの見直しを行う場合は、県民への説明責任を適切に果たすこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 患者の治療方針を複数診療科の医師等が決定するなど、複数の医師が診療に協力するグループ診療等のチーム医療体制を充実すること。
  • 医療事故ゼロをめざし、事故防止に向けた取り組みを強化すること。
  • 不育症(妊娠しても流産、早産してしまうケース)の専門外来を設置するなど、成育医療に対応する診療機能を充実すること。
  • 県立がんセンターについては、存命率の向上をはじめ、診療機能のさらなる高度化を図るとともに、全県のがん診療連携拠点病院として、高度専門医療、研修事業、相談事業等の運営機能を充実すること。
  • 粒子線によるがん治療については、早期の保険適用を強く国へ働きかけること。
  • ターミナルケアへの注目が高まる中、看護師養成課程で学んだ「看取りケア」が県立病院での実践に生かされるよう県立大学看護学部との連携を図ること。
  • 給与の改善、女性医師の働きやすい職場環境づくりや臨床研修制度の内容充実など、医師確保対策を強化すること。
  • 尼崎病院と塚口病院の統合再編については、県立病院本来の役割を再確認し、地元尼崎市との役割分担を明確にした上で、外部委員会による検討報告も踏まえ、関係者や地域住民の理解を得て進めること。
(5) 食の安全確保と食育の推進

「食の安全安心と食育に関する条例」に基づく食の安全安心推進計画や食育推進計画に沿って、食の安全安心の確保と食育に関する諸施策を総合的かつ計画的に展開する。また、県下各自治体における食育推進計画が県計画の期間内(~平成23年度)に策定されるよう指導を強化すること。
特に、食の安全・安心の確保に向けた生産者・事業者の自主的な取り組みなど、食の品質管理の強化を推進するとともに、食品表示並びに輸入食材に対する管理・検査体制の充実を図り、また食品情報に関する理解を促進すること。
また、食を通じ健康な生活、豊かな人間性を養う「食育」を推進するため、「スローフード」運動を実施するなど、地域の伝統的な食文化や農業への理解を深め、守り、継承する取り組みを進めるとともに、生涯にわたって健全な食習慣が維持されるよう、若い世代の食生活改善対策の一層の推進を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • HACCP手法やトレーサビリティシステムの導入促進、ポジティブリスト制の施行に対応した残留農薬等への検査体制の強化、食品営業施設等への監視の強化、未審査の遺伝子組み換え食品の流通防止体制の強化等を推進すること。
  • すべての遺伝子組み換え食品や、クローン動物由来食品の表示の義務化について、国へ働きかけること。
  • 食と農の関わりについての認識の向上を図りつつ、地域に根ざした「食育」を進めるとともに、学校、保育所、家庭、地域などあらゆる場の活用による総合的・計画的な取り組みを推進すること。
  • 食育推進計画が未策定の市町に対しては、県計画の期間内に策定されるよう指導を強化すること。
  • 「スローフード」運動については、特に若い世代を対象に、いずみ会や地域の中で活動している市民団体などの協力を得ながら、多様な機会を通じて展開すること。

2 介護・高齢者福祉の充実

(1) 充実した高齢者医療制度の確立

本格的な高齢社会の到来に備え、老後における健康の保持と適切な医療の確保のための施策充実を図ること。特に、後期高齢者医療制度については、現行制度の廃止・新制度への移行においては、被保険者の利用に支障を来さないよう、地方自治体として適切な対応を行うこと。

(2) 介護サービス基盤の充実

地域包括ケアの中核的機能を担う地域包括支援センターの機能強化や地域医療と介護事業の連携の強化などにより、地域ケアの総合的な推進を図るとともに、介護予防サービスについては、地域やサービス受給者に最も効果的に提供できるよう、市町への支援を強化すること。
また、介護職員の処遇改善やキャリアアップへの支援等により、介護人材を確保するとともに、また多様なニーズに対応した介護施設の整備を進めることによって、介護サービス提供体制の充実を推進すること。
特に、要介護者が地域に住み続けられるよう、地域密着型の小規模介護施設の整備を積極的に推進するとともに、実際に介護にあたっている家族などへの支援に取り組むこと。さらに、介護サービスの質的向上を図るため、事業者への適切な指導とともに、介護サービス情報が利用者にとって必要かつ有効な情報として利用しやすくなるよう公表制度のあり方を検討すること。

(具体的申し入れ事項)

  • いわゆる「介護難民」や「医療難民」の発生を防止するため、療養型病床の廃止等に際しては、地域介護・福祉空間整備等交付金などを活用して老人保健施設等への転換等を支援すること。
  • 介護予防サービスについては、地域間格差の発生を防止するとともに、サービス受給者にとって最も効果的な制度となるよう、職員への研修の充実等により、市町への支援、事業者への指導等を強化すること。
  • 介護にあたっている家族などを支援するため、在宅生活を支える施策の推進や相談体制の充実・強化に取り組むこと。
  • 介護保険に伴う住宅改修トラブルについては、福祉、建築、消費者行政等関連部局との連携による情報の共有や、市町職員や訪問介護員の研修の充実等を図り、発生防止に努めること。
  • 公営住宅等の空き部屋等の小規模・多機能ホームとしての活用などを検討するとともに、専門的なノウハウを持つ民間企業やNPOと協働し、公営住宅や民間住宅におけるグループホーム等の設置や、自治体保有の土地を利用したPFI方式によるケアハウスの整備に取り組むこと。
  • 介護保険サービスの内容を効率的・効果的にチェックできるシステムが、サービスの利用者や家族にとって利用しやすいものとなるよう引き続き国に働きかけること。
  • 研修等の実施によって生活援助員(LSA)の資質の向上に努めるとともに、その増員に向け市町を支援すること。
  • 市町による成年後見制度利用支援事業や社会福祉協議会による福祉サービス利用援助事業の積極的な展開を図ること。
(3) 認知症対策の推進

認知症高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、介護サービスの充実を図るとともに、地域住民の認知症に対する理解促進に努め、認知症サポーターの要請を推進するなど、認知症高齢者やその家族に対する地域ぐるみの見守り体制の整備を支援するほか、認知症疾患医療センターの充実、認知症サポート医の養成、かかりつけ医の対応能力向上など地域医療体制に早急に構築すること。
また、現行の医療・福祉サービスでは十分な対応が困難な若年認知症についても、認知症者を支援するため、課題の検証や職場や地域社会における理解促進を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「認知症疾患医療センター」を老人福祉圏域ごとに速やかに配置するとともに、「認知症サポート医」の増員や、かかりつけ医や診療機関の多くに「物忘れ外来」を設置すること。

3 障がい者福祉の充実

(1) 障がい者福祉サービス基盤の確保

障がい者自立支援サービスの提供主体である市町の体制整備を支援し、人材養成や相談支援体制の整備等、サービス基盤の確保に取り組むとともに、障がい者福祉制度の抜本的な見直しにおいては、サービス利用に支障を来さないよう、地方自治体として適切な対応を行うこと。

(具体的申し入れ事項)

    • 障害者自立支援法の廃止・新法制定も見据え、市町との連携のもと、低所得者の負担低減に取り組むとともに、障がい者サービスの基盤充実、人材育成、就労支援などの環境整備を一層推進すること。とりわけ手話通訳派遣事業については、手話通訳者の養成に努めるとともに、派遣事業の拡充を市町に働きかけること。
    • 障がい者の居宅生活の推進に向け、障がい者に創作的活動及び生産活動の機会や社会との交流の場を提供する地域活動支援センター並びに10人未満の小規模作業所の運営を支援するとともに、小規模作業所等から地域活動支援センターに円滑に移行できるよう各種支援を充実すること。また、障がい者ヘルパーを積極的に養成すること。
    • 訪問型歩行訓練士の派遣事業については、視覚障がい者の社会参加と精神的自立をさらに促進するため、事業の拡充に努めること。

県立聴覚障害者情報センターについては、聴覚障がい者への周知や運営について、十分に配慮すること。

(2) 就労・社会参加支援の充実

障がい者の自立に向けて、就労、またスポーツや芸術文化を通じた社会参加を支援すること。特に、就労については、福祉的就労から一般就労への移行に対応するため、多様な就業形態の実現と就業の場の拡大等、企業等との連携を通じた取り組みを推進するとともに、県の物品調達等における障がい者就労事業所への優先発注等により、障がい者の就労の場の拡大を図ること。

4 生活困窮者支援の充実

(1) ホームレス自立支援の推進

ホームレスの自立の支援等については、ホームレスへの巡回相談の結果等も踏まえ、進捗状況や効果を的確に検証しながら、兵庫労働局や市町、民間支援団体等とも連携し、保健・医療の確保、安定した居住場所の確保、就労支援の充実など自立に向けた総合的な支援を展開し、実効性の高い取り組みとすること。

5 少子化対策・子育て支援の充実

(1) 少子化対策の総合的な推進

ワークライフバランス社会づくりの視点から、女性も男性も働きながら子育てすることが評価される社会構造への変革を図り、21世紀の成熟社会における子育て・子どもの教育を担う家庭像を構築するなど、総合的に少子化対策を展開すること。
特に、少子化対策は企業等におけるワークライフバランスの取り組みに左右されるため、連合兵庫・兵庫県経営者協会・兵庫県による「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」、兵庫労働局も加えた四者による「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」が充分機能するよう、ひょうご仕事と生活センターとの連携のもと、ワークライフバランスの実効ある施策展開に力点を置き、労働施策と連携して推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 女性の就業に関する総合相談窓口の拡充や、就業の能力を向上する機会の提供に努めるほか、中小企業等の次世代育成支援行動計画の策定促進や女性の再就職制度の充実、仕事と子育ての両立をめざす企業へのアドバイザー派遣などを通じて、企業の子育て力アップを積極的に支援し、女性が意欲と能力に応じて働き続けられる社会構造への変革を図ること。
(2) 子育て支援の充実・青少年健全育成の推進

保育所の待機児童解消・保育所サービスの地域格差解消等に向けた取り組みを進めるとともに、「認定こども園」の設置促進、病児保育、24時間保育などの保育所機能の強化や学童保育の充実等、保育の質の確保・向上に努めるほか、教育や医療も含めた子育て全般に係る経済的支援を拡充するなど、福祉対策から少子化対策への転換を図りつつ、子育て環境の充実を図ること。
また、保育ママ制度の導入・充実等、地域全体で親子の「学び」や「育ち」を支える環境づくりを進めるとともに、青少年を守り育てる県民スクラム運動を充実し、青少年の健全育成を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

    • 駅前や商店街等への保育所の新増設、定員の増や弾力化、分園の設置、認定こども園の設置の促進などに関して市町を積極的に支援し、保育所待機児童の解消に努めるとともに、医師会と連携した病児保育の仕組みづくり、24時間保育の確立、さらには「ひょうご放課後プラン事業」の充実等を通じて、保育の質の向上にも努めること。加えて、事業所内に保育施設を設置する事業主に対し、設置経費だけでなく運営経費への助成も行うこと。
    • 保育料及び乳幼児医療に係る自己負担については、受益と負担のバランスに考慮しつつも、少子化対策の観点から支援策の充実に努めること。
    • 認定こども園については、保護者の就業の有無に関わらず、すべての子どもが受け入れられ、また職員配置をはじめ認定基準に基づき適正に運営されるよう、施設等への指導を徹底するとともに、十分な情報提供等により保護者が的確に選択できる仕組みを構築するほか、真の幼保一元化の実現に向けて国に対して制度改革・改善を働きかけること。
    • 家庭や地域における教育力を高めるため、「まちの子育てひろば」や「子育て応援ネット」など一体的な子育てや実践的な家庭応援活動等を引き続き積極的に支援すること。
    • 不登校やひきこもり、いじめなど、青少年をとりまく課題の深刻化に適切に対応し、家族を含め、青少年各個に応じた課題解決への支援体制を強化すること。また、青少年愛護活動推進協力員等を中心に、地域住民、学校、事業者、行政が連携し、良好な社会環境づくりを推進するとともに、犯罪等から青少年を守る取り組みを積極的に展開すること。

安心子ども基金の有効活用により、市町と連携した子育て環境の充実を進めること。

6 消費者保護の推進

(1) 消費者行政推進体制の整備

関係部局間の連絡調整が確実に行われるよう庁内の体制整備を行うとともに、全市町での消費生活センター設置をめざし、県として主導的な役割を果たし、消費生活相談員の養成や、市町のセンター共同設置への支援を行うこと。

(2) 消費者への情報提供・相談対応の充実

訪問販売等に関する消費者トラブルや、架空・不当請求等の不法行為による消費者被害の未然防止や被害拡大防止のため、消費者トラブル・消費者被害情報の収集と迅速な情報提供等に努めるとともに、生活科学センターにおける相談能力、相談体制の充実を図ること。

Ⅲ 新たな兵庫教育の推進に向けて

1 基礎学力の定着と個性を生かす教育の推進

(1) 発達段階に応じた教育環境づくりの推進

少人数学級の着実な拡充などにより、基礎・基本の学力の確実な定着や一人ひとりの個性・能力を伸ばすなど、児童生徒の発達段階に応じた教育環境づくりを推進すること。特別支援教育についても、増加傾向にあるLD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒一人ひとりのニーズに応じた教育・対策を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 義務教育段階における基本的な生活習慣の定着や基礎学力の着実な習得を図るため、教職員等の定員増を図り、35人学級編制を推進するとともに、小学校高学年における「兵庫型教科担任制」を検証し、より効果的な展開を図ること。
  • 県単独教職員については、行財政改革のための定員減ではなく、むしろ増員を図ること。
  • 子どもたちの学ぶ環境について検証し、基礎的、基本的な学力向上や探求心を育て、創造性、個性を伸ばす教育環境づくりを推進すること。
  • 障害の重度化や多様化、後期中等教育の充実に対応するため、規模過大校への対応の優先など地域の実情に配慮し、計画的に特別支援学校の整備を推進すること。
  • 特別支援学校の生徒の卒業後の自立に向けては、職業教育の充実をはじめ、生徒の障害の状態に応じた適切な指導を行うこと。
  • 子どもの活字離れを防ぎ、また豊かな心や想像力を育むため、学校や地域、家庭が協力して読書活動を推進するとともに、図書館活用教育については、県内すべての小・中学校の現状把握・検証を進め、専任の司書教諭の配置などにより充実を図ること。
(2) 特色ある高等学校教育の展開

個性を尊重する多様で柔軟な高等学校教育を推進するため、学校の創意工夫を生かした特色ある取り組みや、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりのための施策を積極的に展開し、特に、近年、生徒が急増している定時制・通信制高校については、多様化する生徒に対応するため、現状に即した高校づくりを進めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県立高等学校教育改革第二次実施計画に基づき、魅力ある高校づくりを推進するため、単位制の導入、総合学科や特色ある専門学科の設置などが十分に効果を発揮するよう、これまでの取り組みを検証し、適切な教職員や外部講師の配置、施設等整備の充実を図ること。
  • 高校生地域貢献事業「トライやる・ワーク」については、これまでの評価を踏まえ、地域安全活動や社会教育推進活動などへ一層幅広い展開を図るとともに、持続的なボランティア活動につながるように配意すること。
  • 学区内において学校相互の交流を図り、地域と一体となった特色ある普通科高校の構築を支援するとともに、必要に応じて専門学科と職業高等学校との単位互換を可能とすること。
(3) 県立大学の自律的かつ効率的な運営

県立大学については、全庁的な行革への取り組みや、少子化という時代背景の中で、地域社会への還元、社会貢献、県政への連携といった視点に立ち、県立大学のあるべき姿を確認しながら自律的かつ効率的な運営に努めること。
また、学生や地域にとってより魅力ある大学とするため、環境防災学科の創設など、学部・研究科等のさらなる個性化・特色化を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 専門性の高い管理栄養士の養成、地域ケア開発研究所を拠点としたネットワークの早期構築による看護と介護の連携、中型放射光施設ニュースバルの産業利用など、広い分野で地域への貢献に積極的に取り組むこと。
  • 社会ニーズに対応した特色ある教育研究を一層進めるため、阪神・淡路大震災の教訓に学ぶ防災と環境をテーマとする学科・コースの設置を進めること。

2 豊かな人間性を育む教育の推進

(1) 「生きる力」を育む教育の充実

子どもたち一人ひとりの豊かな心を育み、主体的に生きる力を育成するため、これまで取り組んできた「自然学校」や「トライやる・ウィーク」等の成果を踏まえ、引き続き、一貫した児童生徒の発達段階に応じた体験教育を推進、充実させること。
また、いじめや不登校などの問題行動等に適切に対応できるよう、県立但馬やまびこの郷での取り組みをはじめ、心のケアが必要な子どもたちに対する支援システム並びに教職員の資質向上に向けた各種研修の実施等、人的支援の充実を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 復興担当(心のケア担当)教員制度で培った人的資源とそのノウハウを生かし、カウンセリングマインドを持った生徒指導体制づくりなど、子どもたちの心を支える取り組みを充実・強化するとともに、小学校へのカウンセラーの配置を拡充すること。
  • 「兵庫県環境学習環境教育基本方針」に基づき、幼児期、学齢期などライフステージに応じた環境学習・教育を推進すること。
(2) 学校における総合的な食育の推進

食育に係る学校の指導体制や子どもへの指導内容の充実強化に努めるとともに、関係部局とも連携して米飯給食の拡大や日本型食生活・地元産農林水産物の積極的な導入を進めるほか、公立中学校への学校給食の導入推進について調査・検討を行うなど、学校給食の充実を図り、学校での総合的な食育を推進すること。

3 家庭・地域社会教育の充実

(1) 学校・家庭・地域が一体となった教育の推進

子どもたちを健やかにたくましく育むため、地域や家庭との協働のもと、自然体験、社会体験、芸術体験、ボランティア活動などの体験学習の機会を充実するとともに、情報・環境・福祉・人権・多文化共生など、時代の要請に対応した教育を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 学校施設の整備・活用等により、小・中学生が放課後安全に過ごせる子どもの居場所づくりをより一層推進するとともに、学童保育の充実にも努めること。
  • オープンスクールを推進する中で、地域住民との連携を深めるとともに、学校の安全確保に努めること。さらに、防犯の専門家、警察OB等の地域学校安全指導員を配置するほか、学校安全ボランティアをスクールガードとして活用するなど、学校の安全体制の整備を進めること。
  • 「ひょうごっ子いじめ相談24時間ホットライン」での相談事業と子ども家庭センターとの連携を強化し、いじめ対策の向上に努めること。またインターネット等を利用した、いじめへの適切な対応策を講じること。
  • 不登校児童・生徒の解消については、相談・指導体制、児童生徒・保護者支援、体験活動の充実などを含む再登校プログラムを策定し、総合的な取り組みを着実に推進すること。また、中学卒業者や高校中退者等に対する進路等の相談体制を充実すること。
  • 緊密化・複雑化が進む国際社会の状況を踏まえ、相互に信頼・尊重しあえる児童生徒の育成を図るため、国際理解教育をより積極的に推進すること。

4 学校教育の環境の整備

(1) 教育を受ける機会均等の保障

家庭の経済力で子供の教育格差が生じることを防ぐため、高校授業料無償化の導入も踏まえて、私立学校を含めた公教育における公費負担を確保することによって教育を受ける機会の平等を図ること。
また、現下の厳しい経済雇用情勢を踏まえ、勤労青年への教育機会確保を図るため、定時制高校の募集定員の弾力的運用に努めるとともに、統合再編に当たっては、通学の利便性等を十分に考慮し、教育を受ける機会が損なわれることのないよう対応すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 定時制高校については、公立学校である定時制高校が受け持つ意義・役割を十分に踏まえ、占有スペースの確保に向けた施設の拡充などを実施するとともに、多様化する生徒のニーズに対応した魅力ある高校づくりを進め、あわせて募集定員の弾力的運用に努めること。
  • 阪神地域において新たな多部制単位制高校とともに設置される2つの分教室の取り扱いついては、今後の社会情勢や現場実態を勘案し、柔軟に対応すること。
  • 児童養護施設に入所している児童の進路については、教育・福祉の両面から支援すること。
(2) 安全・安心な学校づくりの推進

県立学校施設における老朽化対策や耐震化の推進と合わせて、市町立学校施設の耐震化促進を支援するとともに、各学校独自の危機管理マニュアルを活用した防犯訓練・防犯教室や学校、家庭、地域が連携した安全マップづくりなど、安全・安心な学校づくりに地域全体で取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 学校の施設・設備については、災害発生時の児童生徒の安全を確保するとともに、応急的な避難所としての役割を果たすため、計画的に耐震化や老朽化対策を進めること。
(3) 教職員の勤務環境の改善

子どもたちに対する学習指導や生活指導をはじめ、研修、保護者や地域住民との関係づくりなど、多忙化している教職員の勤務実態を踏まえ、業務や研修のあり方を見直すなど勤務環境の改善を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 国による40人学級の見直しなど、教育環境の変化を踏まえ、教育現場での正規雇用・非正規雇用それぞれの待遇改善を進めること。
  • 学校で教員の研修が行えるよう、教育現場における人員配置の充実を図ること。
  • モンスターペアレントへの対応策を強化し、現場の教職員に負担をかけないよう、教育委員会が責任を持って対応すること。

5 芸術文化・スポーツの振興

(1) 芸術・文化の振興

地域の特色を生かしつつ、地域ぐるみで伝統文化や伝統芸能などを継承するとともに、若手芸術家をはじめとした芸術・文化の担い手を育成し、兵庫の芸術・文化の創造・発信に努める。
また、県立芸術文化センター、県立美術館、兵庫陶芸美術館、県立考古博物館、県立歴史博物館、県立人と自然の博物館等での多彩な公演や展示などを通じて、県民が芸術・文化に触れる機会の拡充に努めるほか、地域での多様な活動の場づくりを進め、兵庫ならではの豊かな文化の広がりと定着に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 芸術文化センター事業で地元人材の活用、芸術文化センター管弦楽団によるアマチュア指導、兵庫陶芸美術館における若手陶芸作家や陶芸作家志望者等の人材養成事業などを積極的に展開すること。
  • 県立尼崎青少年創造劇場は、関西演劇発展上重要な役割を担っていることから、人材育成を含めた、将来のあり方を示して事業を展開すること。
(2) スポーツの振興

のじぎく兵庫国体・のじぎく兵庫大会の開催成果を継承・発展させ、地域スポーツの定着、生涯スポーツの振興などスポーツ活動のすそ野の拡大と定着に努めるとともに、総合型地域スポーツクラブの永続的な運営のための支援策を国に働きかけるなど、生涯スポーツ社会の実現に向けた取り組みを進めること。

Ⅳ 県民が安全で安心して暮らせる治安体制の充実と危機管理に向けて

1 治安の向上

(1) 総合的な地域安全対策の推進

「地域安全まちづくり条例」の普及を図り、県民、団体及び事業者相互の連携による「地域安全まちづくり活動」を促進するため、まちづくり防犯グループの活動を支援するとともに、交番機能の強化などを通じて、地域の防犯体制を充実・強化を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 住民が必要とする地域の犯罪情報や被害防止に役立つ防犯情報については、犯罪捜査の妨げにならない限り、迅速かつ具体的に情報提供し、これらの情報を地域で共有できるネットワークづくりを推進すること。
  • ボランティア団体、自治体など関係機関・団体、事業所等との連携や、住民が中心となって取り組む地域安全まちづくり活動への支援を通じて、地域の犯罪や交通事故の抑止力の強化に努めること。
  • 地域社会全体が一体となって、少年の健全育成に携わる「地域のこどもは地域で守り育てる」活動をより活性化させるとともに、関係機関・団体等と緊密に連携し、少年の非行防止と健全育成に向けた総合対策を展開すること。
(2) 犯罪の抑止と徹底検挙

犯罪のハイテク化や国際化など社会の変化、犯罪の性質の変化に柔軟に対応するため、警察組織・人員の効率的な運用や初動捜査体制の整備など、捜査力・執行力の充実・強化を図ること。
特に、暴力団等による組織犯罪への対策を強化し、銃器や薬物の密輸・密売の防止を推進するとともに、経済事犯やサイバー犯罪など県民の身近で発生する生活経済事犯の予防に向け、取締りの強化や関係機関との密接な連携による普及啓発活動を実施すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 地域安全活動の充実、強化を図り、犯罪検挙率のより一層の向上に取り組むとともに、特に県民の不安感を増大させる街頭犯罪・侵入犯罪や悪質、巧妙化する重要凶悪犯罪や重要知能犯の早期検挙に努めること。
  • 暴力団対策については、組織や資金源等の実態解明の徹底、中止命令等行政命令の積極的な発出等に取り組むとともに、特に準構成員については、新たな把握手法を確立すること。
  • 国際機関や税関など関係機関との連携を強化し、銃器の密輸・密売の取締りを徹底するとともに、銃器の潜在化傾向に対処するため、警察に積極的に情報提供がされるよう県民の意識啓発を図ること。
  • 高齢者団体・福祉関係団体、学校等に対する振り込め詐欺や悪徳商法、携帯電話の契約トラブル情報の啓発・情報提供に努めるなど、被害の未然防止対策をより一層強化すること。
  • 薬物の乱用を防止するため、取締りの徹底、啓発活動の充実、再乱用防止対策の推進等、一層効果的・積極的な取り組みを推進すること。
  • 警察官現員の維持確保、警察官OBや民間人の活用、育休中警察官等の定数外措置の検討などに取り組むこと。また、人口急増地域や新興住宅街等地域では実情に応じて交番を設置すること。
  • サイバー犯罪や犯罪の国際化等に対応するため、専門的知識を有する国際捜査官やハイテク犯罪捜査官等の採用や積極的な養成に努めること。
  • 科学捜査活動や交通取締り等に係る各種装備や資機材については、各警察署の状況を十分に把握し、充実を図るほか、特に車両装備については、効率的な運用により機動力の向上に努めること。
(3) 総合的な交通安全対策の推進

悲惨な交通事故を防止するため、交通実態の的確な把握・分析を積極的に進め、総合的な交通安全対策を推進すること。特に、県民参加型の交通安全活動など一層推進するとともに、飲酒運転や悪質な駐停車違反の取締り、暴走族の検挙、自転車による事故の防止などを重点的に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 飲酒運転の取締りをさらに強化するとともに、悪質な駐停車、無理な追い越しや車線変更、運転中の携帯電話使用禁止等、交通規則、マナーの遵守について、さらなる啓発に努めること。
  • 暴走族の集団暴走の徹底した取締りはもとより、暴走行為をさせない・暴走族を許さない環境づくりを推進すること。
  • 交通事故多発地点の原因分析や通学路の安全点検を実施し、その結果に基づき必要な交通安全施設の設置を進めること。
  • 違法駐車の確認事務の民間委託については、受託した法人や駐車監視員に対して、駐車監視員の遵守事項や具体的活動要領等の教養訓練を実施すること。
  • 警察と県土整備部が連携し、構造上、渋滞・事故を起こしやすい形状の道路などを的確に把握・分析し、交通安全対策に活かすこと。
(4) 信頼される警察行政の推進

生活者の視点に立った警察活動を展開するため、警察署協議会の適切な運営等を通じ、県民の要望・意見の的確な把握と適切な対応に努め、また、積極的な情報公開により、警察行政の透明性の確保を図るとともに、警察における厳正な監察の実施など、自浄機能の強化を図り、信頼される警察行政の推進に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 警察署協議会については、効果的に機能するよう一層の活性化に努めるほか、委員の委嘱対象者や委嘱期間の再考、協議内容についても交番など地域の意見を取り入れるなどの工夫を行い、協議内容を積極的に開示するとともに、委員の意見が警察署の業務運営に広く反映されるよう署間の情報の共有化を一層推進すること。
  • 冤罪を生むことのないよう、被疑者取調べの可視化も含めて捜査における取調べの適正化に取り組むこと。
  • 警察職員の職務執行に関する苦情については、的確に処理するとともに、警察活動の改善に適切にフィードバックさせること。
  • 不祥事案が発生した際には、県民が再発防止などに向けた県警察全体での取り組み内容を十分に知ることができるように、広報体制を充実し的確な情報発信を行うこと。
(5) 犯罪被害者対策の充実

犯罪被害者等の精神的負担を軽減するとともに、再び平穏な生活を営むことができるよう、犯罪被害者等早期援助団体への運営支援等を強化するなど、犯罪被害者等への支援の充実に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 県内市町のうち、犯罪被害者支援に関する条例を制定している市町は8市町に止まっていることから、全ての市町で条例化がなされるよう支援すること。
  • 犯罪被害者のために設置されている県内市町の窓口は、専門性の観点から、規模の小さな市町の対応が困難であることから、早期支援団体である犯罪被害者支援センターの充実を図るため、支援の仕組みについて整備すること。

2 防災・危機管理の推進

(1) 防災・危機管理体制の充実

自然災害や感染症、テロ等の危機管理事案、さらには大規模事故災害などに迅速かつ的確に対応するため、全庁的な連携を図るとともに、行政、警察、消防、保健・医療機関などの県域を越えた広域的なネットワークの構築など、危機管理体制を充実するとともに、県民の生命・身体及び財産を保護するために必要な措置を図ること。
特に、新型インフルエンザの発生に対しては、県が策定した「新型インフルエンザ対策計画」に基づき、公共交通や学校、福祉施設等、社会的影響の大きい事業者をはじめ、多くの企業等に対して適切な行動計画、業務継続計画を策定するよう指導・助言を行うなど、発生時においても社会機能が維持されるよう必要な対策を講じること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県国民保護計画の実効性が高まるよう、県民参加型の取り組みに配慮しながら、県民の生命・身体及び財産を保護する措置を的確に実施すること。
  • 消防団活動については、県民及び事業所等の理解を促しながら、地域の結束力を強め質量ともに充実を図ること。
(2) 自然災害への対応

発生が確実視される東南海・南海地震や山崎断層帯地震等の地震、洪水・土砂崩れ・高潮等の自然災害に備える基盤整備や、システムの構築、災害対応にかかる広域での連携などを進め、「減災」の観点から、ハード整備・ソフト対策が一体となった防災体制の確立に取り組むこと。
特に、平成16年台風第23号、平成21年台風第9号災害等の教訓を踏まえ、山の管理の徹底や治山事業の推進等も含めた総合的な治山・治水対策を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 住民の防災意識の高揚、円滑な避難の確保や地域の被災特性に応じた地域防災力の向上、広域での連携、応援態勢の確立などに一層取り組むこと。また、防災訓練は、企画段階から住民と一体となって取り組むなど、効果的・実戦的な訓練とすること。
  • 台風や局地的な集中豪雨等異常気象を踏まえ、避難勧告や避難指示の基準など、危機管理のマニュアル等の見直しを進めるとともに、水害対策としてハザードマップの普及啓発に努めるほか、市町の洪水ハザードマップ作成を支援すること。さらに、高齢者や障がい者などが避難できる災害時要援護者の避難システムづくりを早急に進めること。
  • 河川整備については、昨今の集中豪雨、ゲリラ豪雨の頻度が増している中で、調整池などの貯留施設や浸透施設による流域対策を含め、雨水貯留施設の整備を含めた、流域全体での総合的な治水対策を講じること。
  • 県住宅再建共済制度については、引き続き制度及び運用の改善に努め、一層の加入促進を図るとともに、全国制度創設に向けて、国や都道府県に強力に働きかけること。
  • 台風第23号、台風第9号災害等の教訓に、被災渓流の復旧対策に加え、県下全域での治山ダムの重点整備を推進するなど、森、山、川、海の流域全体にわたり、ハード・ソフト両面からの対策を講じること。
(3) 震災復興のフォローアップ

被災高齢者等の生活復興やまちのにぎわいづくりなど、震災復興における残された課題に対応するとともに、復興の過程で生まれた先導的な取り組みの定着・発展に努めるほか、「ひょうご安全の日」の普及などにより、阪神・淡路大震災の経験と教訓を災害文化として継承・発信すること。

Ⅴ 産業の活性化、雇用対策の充実及び国際化の推進に向けて

1 産業活性化対策の推進

(1) 活力ある兵庫の産業の構築

ものづくり産業を支える中小製造業や基幹産業、大学、大型放射光施設、次世代スーパーコンピュータなどの知的資源を結合することにより、ナノ、情報通信・エレクトロニクス、健康・医療、環境・エネルギー、ロボット(人工知能)などの技術分野を重点として産業の活性化を図るとともに、産業集積条例の活用等により、国内外の優れた企業、研究所の誘致に取り組むこと。
また、但馬・丹波地域を初め、中山間地域等への企業誘致へのサポートの充実など、企業立地の推進には関係部局が連携して取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 本県の優れた産業基盤や立地優遇制度等をアピールし、地域バランスも考慮して国内外からの企業・研究所の誘致や県内企業の域内投資を促進すること。
  • 環境と経済を統合する産業活動スタイルを創造するため、エコテクノロジー関連企業に対する経営支援策を充実させること。
  • 新産業の創出に係る助成等について、国、県のメニューが効率的に利用されているかを検証し、新企業として設立、存続するための助成、助言の仕組みなどについて整備すること。
  • 「産業集積条例」を効果的に機能させ、産学官の連携のもと、ものづくり基盤を支える中小製造業者や基幹産業、大学、大型放射光施設スプリング8など知的資源の結合により、地域の特性に応じた産業の集積・活性化を進め、新たな雇用の創出につなげること。
  • 次世代スーパーコンピュータの神戸市への立地を契機とした研究機関や大学の集積と、それらを核とした産学連携による技術開発や新産業創出を通じ、地域産業の振興を図ること。
  • 「兵庫県放射光ナノテク研究所」を有効に活用し、企業等への研究支援を効果的に行うとともに、放射光を活用した多様な共同研究を推進するほか、研究成果を積極的に公表し、企業等からのオファーなど集積力を一層高めること。
  • 産学集積群の基盤を強固にするため、金融機関や投資ファンド等のノウハウ、資金面での協力を得ながら、中小企業や大学研究室、若者などの先端性、成長性の高いベンチャー企業を積極的に育成すること。
  • 企業誘致の促進地域である但馬、丹波、淡路地域において、設備投資補助に対するインセンティブ強化を図るなど、バランスのとれた企業立地に向けて戦略的に取り組むこと。
(2) 中小企業の自立と地域経済・雇用の活性化の推進

(財)ひょうご産業活性化センターや工業技術センターの機能強化・充実を図り、中小企業における開発力・技術力を高めるとともに、知的財産の創造・蓄積・活用を支援し、情報通信や防災など次代の兵庫経済を担う多様な成長産業の創出を図ること。
さらに、県内の事業所の大部分を占める中小企業へのサポートが必要不可欠であることから、中小企業の人材確保・経営支援・技術支援などについて、新たな施策の構築を図り、中小企業の自立と地域経済・雇用の活性化を推進すること。
また、新行革プランに基づく投資事業費総額の削減を着実に実行する中で、公共事業依存型の地域経済からの脱却を進めていくとともに、省エネルギー等、新しいライフスタイルや価値観に対応した実需要の創出など、切れ目のない経済・雇用対策を実施し、地域経済・雇用の活性化を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 中小企業の開発力、技術力を高め、経営の安定化や活性化、第二創業・新分野進出を図るための支援及び人材確保策を検証し、重点的、効率的、効果的な施策を確かな数値目標を定めて取り組むこと。
(3) ものづくりブランド戦略等の推進

産地の個性や蓄積を生かした魅力あるブランドの創出支援や多様な地場産業、ものづくりの情報発信の強化など、ものづくりブランド戦略を推進すること。特に、アピール力を高めインパクトある商品名、洗練されたラベル・パッケージなど、顧客・市場志向の商品開発や販売戦略の支援、売り込み商品を顧客ニーズに対応して改良する取り組みの支援を行うなど「売れるものづくり」を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 産地企業が有力セレクトショップと連携し、大都市で行う情報発信や販売活動などの取り組みを支援するアンテナショップ開設支援事業を首都圏において一層拡充すること。
(4) ものづくりを支える人材の育成

ものづくりの優れた技術・技能を有する匠や企業内人材の育成、技術の産業化を担うプロ人材の育成など、ものづくりを支える技術・技能、特に、科学技術人材の厚みと資質の向上を図るとともに、「ものづくり大学校(仮称)」の活用やソフト先行事業(未来の匠、ひょうごの技体験講座等)を確実に実施し、学校教育段階から職業生活の各段階に応じた総合的・体系的な人材育成の仕組みを構築すること。

(5) 地域とともに成長する商店街づくりの推進と中心市街地の活性化

商業者、NPOなどによる商店街を活用した地域の活力、コミュニティ機能の再生を図る取り組みを進めるとともに、地域資源を活用した魅力あるオンリーワン商店街や、農商工の連携等による地域とともに成長する商店街づくりを推進するほか、空き店舗の活用や空きビルの再生などにより、中心市街地の活性化を進めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 生産者団体等と一体となって取り組む特産品の開発など農商工連携の強化や流通改善、販売ルート開設等商店街の主体的な活性化に向けた取り組みを支援すること。
  • 地域商業の活性化を図るため、都市計画の視点からの商業活性化対策や、中心市街地活性化法に基づく「中心市街地活性化基本計画」の認定に向けての支援を行うこと。

2 雇用就業対策の推進

(1) セーフティネットの構築

雇用維持や労働法令の遵守などについて、企業に対して積極的に働きかけるとともに、製造業現場への派遣の見直しや安易な解雇の禁止などについて、適切な措置を講じるよう国へ求めること。
また、厳しい雇用情勢に的確かつ迅速に対応していくため、離職に伴って住む場所を失った人たちの住宅確保や生活資金・能力開発資金の貸し付け等の離職者支援制度について、その拡充に積極的に取り組むとともに、緊急対策として実施している雇用創出事業については、真の雇用就業につながるよう、農林水産、福祉等の能力開発事業等と密接な連携を図るとともに、適切なフォローアップを行いつつ、尊厳をもって働くことのできる雇用の場の創出を図ること。

(2) ワークライフバランスの推進

「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」、「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」を尊重し、大企業だけでなく、中小企業も含めた取り組みの中で、働き方の見直しによる仕事と生活の調和、地域における子育て支援、若者の自立支援を推進すること。
特に、保育所機能の強化、学童保育の充実などはもとより、女性も男性も、互いに人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、その個性と能力を発揮することができる男女共同参画社会づくりを進め、女性が働きつづけられる社会構造への変革を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」に基づき、男女が働き、生活できるシステムをより推進するため、中小企業も取り組みやすい、仕事と家事・育児・介護との両立する支援制度を拡充し、県内企業への持続的なシステムをモデル事業化し、促進させること。
  • ワークライフバランスの達成に向け、先進的な取り組みを進めている企業等の事例を県下に広く発信し、啓発についても積極的に推進すること。
(3) 雇用対策の充実

中高年者、若年者、障がい者などのそれぞれのニーズに対応し、かつ企業ニーズ、社会ニーズに沿った機動的・効果的な職業訓練の実施を進め、就業力の向上を図るとともに、求人・求職の適切なマッチングの推進やワークシェアリングによる雇用機会の拡大等により、雇用の創出・確保を図ること。
特に、若年者の雇用の安定については、少子化対策の観点からも積極的に対策を進めることとし、就業体験等による職業意識の涵養や、若者しごと倶楽部等におけるキャリアカウンセリングなど、行政・労使一体となって、若年者の安定雇用のための環境づくりを進めること。
また、障がい者の雇用については、障害者雇用率制度を中心として一層の雇用拡大を図ることとし、企業に対する制度の普及・啓発や特例子会社設立への支援等を推進するとともに、福祉関係機関やハローワークとの連携を図りながら、障がい者の特性や希望に応じた職業訓練、職業指導に積極的に取り組むこと。
なお、高齢者の活力と経験・知恵を積極的に地域づくりに活かせるよう、雇用対策の一環として取り組みを進めること。

(具体的申し入れ事項)

  • 雇用のミスマッチ解消のため、「兵庫しごとカレッジシステム」等で把握した個別企業ニーズに対応したオーダーメイド型の訓練や地域産業に係る人材育成のための訓練をより充実するとともに、就業待遇の改善に向けた取り組みを進めること。
  • 常用雇用と労働条件の時間比例を原則とする「短時間正社員制度」について、労働者の希望に応じて選択できる制度として導入が促進されるように支援を行うこと。
  • 中高年齢失業者の早期再就職を支援するため、個別カウンセリングや就職活動実践プログラムなどを充実するとともに、兵庫労働局をはじめ関係機関と密接な連携を図り、高齢者のニーズに応じた就業機会を拡充するとともに、高齢者の生きがいづくりや社会参画の推進につながるよう、一貫性があり、実効性の高い支援策を推進すること。
  • 若者しごと倶楽部のサテライト展開等による若者の職業的自立の支援や、再チャレンジを可能とする募集・採用制度の普及などを行政、労使団体とともに推進すること。また正社員になれず不安定な雇用を余儀なくされている者について、しごと能力の向上への支援や企業への正社員としての雇用促進の働きかけなど、積極的に対策を講じること。
  • 障がい者の能力等に応じた多様な就業形態の実現と就業の場の拡大、さらにはジョブコーチをはじめとする専門人材の拡充等により、障害者の自立を促進すること。
  • 緊急雇用就業機会創出基金等を有効活用した、就業機会の提供を進めること。
(4) 非正規雇用の待遇改善

勤労者の生活の安定・充実、社会保険の空洞化の防止等の観点も踏まえ、非正規雇用から正規雇用への転換を促進するとともに、正規雇用と非正規雇用の均等待遇・均衡処遇の実現に向け、賃金のみならず、教育訓練機会の均等についても、公的教育訓練機関と企業内教育訓練との連携により取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 非正規雇用の待遇改善を率先して推進するため、ワークシェアリングなど雇用政策に係る新たな「兵庫方式」を構築すること。

3  交流の拡大

(1) ひょうごのツーリズムの振興

多彩な地域資源を生かした交流人口の拡大による地域活性化に向け、関係団体や市町等と連携し、全国からの観光客誘致を図る大型観光交流キャンペーンや地域ぐるみの交流の仕組みづくりへの支援等を推進し、さらには広域連携の一層の推進などにより、ひょうごのツーリズムの振興を図ること。
また、誘客促進が県内経済の活性化や雇用創出につながっていく取り組みを強化すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 産業ツーリズムを推進するため、県内の産業遺産の認知に努め、コース設定等の企画・開発に取り組むこと。
  • ひょうご・神戸マラソン(仮称)の開催について、競技力の向上や普及振興だけでなく、国内外からの誘客や、地域の人々の参加によって地域活性化の観点から、積極的に検討を進めること。
  • 交流人口の拡大による地域活性化に向け、観光地の包括的活性化支援や効果的なプロモーションを推進すること。
(2) 国際交流の推進

海外事務所を現地に密着した事務所として最大限活用することなどにより、友好・姉妹州省都市である中国広東省などアジアを中心に経済・観光交流を促進し、友好親善に止めるのではなく、本県が強みを有する環境ビジネス面での交流を促進するなど、経済的なつながりに発展するような取り組みを推進すること。
また、中国からの訪日観光旅行に関する個人観光査証の要件緩和等に伴い、増大することが予想される訪日外国人について、本県への誘客を促進する取り組みを推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 海外資本・企業等の県内誘致による経済交流を推進すること。また、県内企業が地球温暖化対策への取り組みが急がれる中国等の国々に対して展開する環境ビジネスを積極的に支援すること。
  • 海外事務所を活用したネットワークの形成、アジアとの観光交流の推進や、海外における観光PRの実施など、国際ツーリズムを推進すること。

Ⅵ 環境適合型社会の実現に向けて

1  総合的な環境施策の推進

(1) 環境適合型社会の形成

環境適合型社会の実現に向けた意識の醸成に努め、県民・事業者・行政の自発的・継続的な環境配慮行動の実践に向けた取り組みを支援・促進するとともに、県自身も、すべての施策の企画立案段階から環境に配慮した事業展開を図り、環境適合型社会の形成に取り組むこと。

(具体的申し入れ事項)

  • 環境学習については、庁内連携を十分に図りつつ、民間団体や環境関係団体など多様な主体の参画のもと、県内の豊かな自然や野外施設などの豊富な資源を活用しながら体験型の学習・教育を推進すること。
(2) 地球温暖化対策等の推進

国が示した温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて、エネルギー多量消費事業者等の温室効果ガス排出抑制の自主的な取り組みを促進し、また取り組みが十分でない企業に対する指導を強化するなど、産業部門における排出削減を積極的に進めるとともに、県自らの環境率先行動の実践をはじめ、家庭や企業での省エネルギー行動などを推進し、さらに太陽光、風力、バイオマス、小水力発電等のグリーンエネルギーの導入への取り組みを拡大すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 地球温暖化防止対策やヒートアイランド現象対策として、建築物等への屋上緑化や太陽光発電などグリーンエネルギー導入に対する支援の充実を図ること。
  • 実効性ある「環境率先行動計画・ステップ4(仮称)」を策定し、それに基づく施策を着実に推進するとともに、民間施設における適正温度設定の取り組みを促進すること。
  • 電気自動車を「環境・資源問題」の有望な切り札の一つと位置づけ、普及を推進すること。
  • オフセット・クレジット(J-VER)制度を活用し、CO2の削減と森林整備などへの投資によるカーボン・オフセットの取り組みを企業等と協力して推進すること。

2 循環型社会の構築・地域環境負荷の低減

(1) 循環型社会の構築

廃棄物の発生量増加に伴う最終処分場の不足や、不法投棄による環境の悪化に対応するため、市町のごみ有料化の促進等によるごみの排出削減や、地域の特性に応じたリサイクル・システムの構築を推進するとともに、地域住民と連携した不法投棄の未然防止・早期解決などに努めること。

(具体的申し入れ事項)

  • ごみ排出削減については、一人ひとりの意識改革と実践を基本に、実践モデル市町の指定等による意識啓発や、レジ袋削減の県民運動としての展開を図ること。
  • 自動車リサイクル法のさらなる推進に向け、新産業としてのリサイクル事業への支援、適正な流通の確保、処理業者による適正な処理の徹底等を進めること。
(2) 地域環境負荷の低減

大気や騒音の環境基準を達成していない地域を中心とした交通公害対策をはじめ、地域的な環境問題の解決を図るとともに、有害化学物質対策として、特に法規制の対象となっていない物質について調査研究を進め、県内における環境中の実態把握と排出削減に向けた事業者等の自主的な取り組みを促進すること。

3 生物多様性の保全

(1)森林・里地・川・海等の自然再生の推進

県民総参加による森づくり、様々な主体の参画と協働による里地・里山の管理・再生、瀬戸内海の豊かで美しい「里海」としての再生など、自然環境の保護と再生をめざす取り組みを一層推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「生物多様性ひょうご戦略」に基づき、瀬戸内海の保全と再生等、具体的な取り組みを進めること。
  • 「新ひょうごの森づくり」と「災害に強い森づくり」を着実に推進するとともに、里山の管理・再生のための薪ストーブ導入助成など、地域と直接つながる施策に取り組むこと。また、まちなみ緑化事業については、都市部と郡部への予算配分に十分留意するとともに、長期的計画を明示し、計画の達成度及び効果について県民に積極的に開示すること。
  • 森林を共有の財産として、企業、団体、市民など社会全体で参画・協働し、保全していく活動を推進すること。
(2) 野生動植物の保全と共生

中山間地域を中心にシカ等の野生動物による農林業被害等が大きな問題となっている中、農林業者が安心して生産活動を営めるよう、人と野生動物の豊かな共存をめざす一方、シカ、イノシシ等の適切な捕獲・管理を進めるとともに、人間生活や生態系への悪影響を与える外来生物の駆除対策を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 森林動物研究センターの研究成果を有効に活用した森林動物専門員や指導員の普及指導活動によって、農林業被害や生活被害の軽減を図ること。
  • シカの年間捕獲目標の拡大や野生動物防護策の設置支援、アライグマ・ヌートリアの外来生物等の捕獲を拡大すること。

Ⅶ 食料自給率の向上と活力ある農山漁村づくりの推進に向けて

1 食料政策の総合的な推進

(1) 戸別所得補償制度による農業政策の転換

平成23年度から本格導入される戸別所得補償制度の円滑な実施に向け、モデル対策の結果を十分検証するとともに、生産力向上と農地の有効利用を図るには、県民一体となった農政推進が重要なことから、農業従事者のみならず県民全体への同制度に対する理解促進を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 戸別所得補償制度を最大限に活用して、本県農地の有効利用と、食料供給基地としての生産力を高めるため、市町・JA等関係機関と連携して制度への理解促進を図るとともに、農家経営の安定、担い手育成、県産農産物の作付拡大を進めること。
(2) 安全・安心・良質な農林水産物の安定供給の実現

消費者が安心して農林水産物を選択できるよう、農薬等の適正使用管理の徹底を図るとともに、人と環境にやさしい栽培技術等の導入などを促進すること。
また、生産者に対する食品表示適正化の指導や、安全で衛生的な処理加工の管理手法の導入を推進するとともに、生産履歴の記帳やトレーサビリティシステム、農業生産工程管理手法(GAP)の導入に向けた取り組みを展開すること。

(3) 食と農への理解促進と食品リサイクルの推進

地域住民・消費者等を対象とした農業体験活動・食体験活動や、生産者と消費者の交流活動を通じて、食と農への理解の促進を図り、地産地消を推進するとともに、特に、次世代に対する「食育」の観点から、また日本型食生活実践の観点から、米をはじめとした県産農林水産物の学校、老人福祉施設、病院などの給食への100%導入に向け取り組むこと。
また、食料自給率向上の観点から、フードバンク運動やドギーバッグ運動などの取り組みへの支援を通じて、食品廃棄物を抑制するとともに、食品残さの飼料化など、食資源の有効利用を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 地産地消の推進については、農産物直売所の拡大とともに「旬産旬消」の取り組みもさらに充実させること。また、県産県消の拡大をめざし、都市部でも県内の農林水産物が容易に購入できる仕組みづくりを推進すること。
  • 兵庫楽農生活センターの学習・交流機能を十分に活用し、市民農園利用の一層の推進や、幅広い世代の楽農生活実践への支援に努めること。
  • 学校給食への米、野菜、大豆など地元生産物の導入については、具体的な目標数値を設定して着実に推進するとともに、地域内での生産から流通、消費までのシステム化を図ること。また米飯学校給食の実施回数の維持・向上に努めること。
  • 食資源の利活用については、県民に十分な意識啓発を行うとともに、民間事業者、行政等と連携し、兵庫県バイオマス総合利用計画に定める目標達成に向けて、一層推進すること。

2 農林水産業の活性化

(1) 6次産業化の推進

農林漁業者による2次・3次産業分野への働き掛けを促進するため、地域の農林水産物の特徴を利用した商品の開発・生産、市場の開拓、人材育成など、生産から加工・流通・販売までの取り組みに対する支援を行うこと。
また、環境やエネルギーなど新分野への取り組みとして、遊休農地等を活用した資源作物の栽培や、また稲わらや間伐材等の未利用資源を含むバイオマス資源を活用した燃料や製品の生産を支援するなど、農山漁村をバイオマス活用の先進地域とするための施策を推進すること。

(2) 農水産物ブランド戦略の推進

消費者や実需者のニーズを把握し、ブランドとしてふさわしい品目の選定や品質の改善、新品種の開発などを通じて、他県産よりも優れた商品の生産に努めるとともに、地域団体商標の活用など、効果的な宣伝活動を実施することにより、全国の主要都市や中国をはじめとする海外への販路拡大を積極的に推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「兵庫県認証食品」については、関係者との連携のもと、生産、流通、消費の拡大を進めるための仕組みを構築するとともに、PRの強化に努めること。とりわけ付加価値の高い「ひょうご安心ブランド」の効果的なPRと消費の拡大を図ること。
(3) 担い手対策の推進

農林漁業・農山漁村の担い手対策として、家族経営、集落営農、法人経営等の多様な主体による規模拡大や効率化を積極的に支援するとともに、加えて、Uターン・Iターン希望者や地元企業の農林漁業への新規参入に対する技術研修や財政的支援など、意欲と能力のある者の参入を促進するための施策の充実を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 認定農業者及び集落営農組織の育成を目標達成に向けて着実に推進しつつも、各地域の特性・条件を十分に考慮し、多様な主体を前提として担い手育成への取り組みを行うこと。
  • 新規就農対策については、課題を的確に把握して、現行の施策を検証しつつ、さらに実効ある支援策を立案し、実施すること。
  • 一般企業の農業参入については、農地貸付期間を法人の事業計画に応じて長期に設定するなど、弾力的に対応することをはじめ、市町を通じて参入を促すとともに、適切な技術指導に努めること。
(4) 林業の振興

作業路網の整備、高性能林業機械の導入を促進するとともに、拠点的な加工・流通施設、乾燥施設等の計画的な整備を通じて、素材生産から加工・流通までの効率化を図り、林業を通じた森林管理のサイクルが機能し、木材の安定した供給が行われる体制を構築すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県産木材の加工・流通体制の整備や原木の安定供給を推進するとともに、企業や市町に積極的に働きかけ、県産木材の活用を促進すること。また県民に対し、地球温暖化防止の観点からの県産木材活用への意識の醸成に努めること。
  • 森林が有する多様な公益的機能を高める「新ひょうごの森づくり」と、県民緑税を活用した「災害に強い森づくり」を確実に推進するとともに、内容を県民に開示すること。
(5) 水産業の振興

資源管理型漁業を基本とする豊かな漁場づくりを推進するため、水質の保全を中心とした環境保全施策だけではなく、生物多様性の確保と水産資源の回復のための環境保全施策を強化するとともに、藻場・干潟等の浅場の再生などの環境再生施策を推進するほか、アサリ等の二枚貝を食害するナルトビエイなどの有害生物への対策を推進すること。
また、産地の販売力強化と流通の効率化により、漁業経営の安定化を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 第2の鹿ノ瀬構想等漁場の整備やマダイ等種苗の放流を推進することにより、水産資源の維持・培養を図ること。
  • ノリの色落ち被害の軽減を図るため、河川やダム等から供給される栄養塩を有効利用する方策を検討し、実施すること。
  • 移動販売など漁業者による直接販売、新規販路の開拓、新商品の開発などの取り組みを積極的に支援すること。
  • ナルトビエイ等の有害生物による漁業被害を防止・軽減するため、漁業協同組合等が行う取組に対して助成する、「有害生物漁業被害防止総合対策事業」を拡充すること。
(6) 畜産業の振興

口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の発生、まん延を防止するため、職員の資質向上も含めた家畜防疫体制の強化を図るとともに、伝染病対策という観点から、近隣府県等との広域連携により対策に取り組むこと。

3 総合的な農山漁村振興対策の推進

(1) 農地・農業用水の保全

農地や農業用水は、農業生産の基盤としてだけでなく、水源涵養等の公益的機能を有しており、これらの機能を維持する観点から、農地、農業用の水路、井堰、ため池等の整備・保全等の取り組みに対して支援を行うこと。
また、整備した優良農地を適切に確保するため、土地利用関係制度を適切に実施するとともに、公共事業実施に当たって、優良農地を安易に転用することのないよう取り組むこと。

(2) 総合的な活性化対策の推進

農林漁業体験や自然体験など、農林漁業・農山漁村が有する教育、保健・休養等の多面的機能に着目した体験活動の促進を支援すること。
また、農山漁村における就業機会の拡大に努めるとともに、生活道路や情報通信基盤の整備等を図り、都市から地方への移住・交流の促進、集落の維持・活性化を推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 集落の活性化につながるよう、農作業等を支援する農村ボランティアの活動を促進する取り組みを充実すること。
  • 警戒ため池の改修など、農山村の防災対策を着実に進めること。
  • グリーン・ツーリズムについては、農林水産業と保養・治療・教育・福祉などを組み合わせ、農が持つ多面的機能を発揮し、多彩な交流を展開すること。
  • いわゆる限界集落については、その存続が県土保全にも大きな影響を与えることから、市町と連携し、地域コミュニティの再構築をめざし、集落活性化組織やリーダー人材の育成、生活交通システムの構築などについて、人的、財政的に支援すること。

Ⅷ 快適に暮らす社会環境づくりの推進に向けて

1 社会基盤の整備・保全

(1) 社会資本ストックの有効活用

生活者の視点に立って生活の質を高めるという観点で、ものやサービスが提供される社会構造への変革を促すとともに、環境に配慮した新しいふるさとづくりを進めるため、土地をはじめとする県保有資産や、これまで蓄積してきた道路などの社会資本ストックを有効に活用し、地域の魅力アップを図ること。
施設の耐久度を把握・評価し、将来の劣化を予測して維持管理・更新を計画的に行うアセットマネジメントの導入を進めるなど、「つくる」から「つかう」プログラムを推進すること。
なお、維持・更新に当たっては、着実かつ戦略的に進めていくため、民間の資金、経営能力、技術能力を活用した仕組み・手法を積極的に取り入れること。

(具体的申し入れ事項)

  • 多くの橋梁老朽化に対応するため、長寿命化計画を策定し、適切な維持修繕を進めること。
  • 河川整備・改修における多自然型工法については、地域住民の意見を十分に反映させるとともに、河川の親水性や景観を保つため、整備後の維持管理も十分に実施すること。
  • 企業庁所有の水道施設については、老朽化に伴う大規模な漏水事故を防止するため、計画的な施設の修繕、更新を進めること。
  • 民間企業等で開発されたコスト縮減・環境対策等に資する優秀な新技術・新工法を公共工事で活用する「新技術・新工法活用システム」の拡充を図ること。
(2) 総合的な交通施策の推進

地域交通を確保する公共交通優先システムが推進されつつある中で、「ひょうご21世紀交通ビジョン」を実現するため、交通政策を専門に担当する庁内横断的なセクションを設置し、交通量の削減、公共交通の利用促進、交通安全対策など、総合的な交通政策を推進すること。
特に、県民の社会参加の機会確保や、地球温暖化防止と低炭素社会実現に向けた公共交通のあり方が重要であることを踏まえ、CO2削減に配慮した新たな視点で交通政策を展開すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 「ひょうご交通10カ年計画」については、新行革プランの推進状況を踏まえて適切なフォローアップを行い、行政、交通事業者、地域住民が一体となって推進すること。
  • 地域住民の日常生活に欠くことのできない地方バス路線の維持を図りつつ、廃止されたバス路線については代替バス等の交通手段の確保に努めること。
  • 交通渋滞の原因となる「開かずの踏切」や「危険な踏切」等の問題踏切については、整備計画に基づき、着実に対策を推進すること。
  • 環境に優しい交通手段である自転車の利用促進と自転車利用者の安全確保を図るため、自転車道の整備を促進すること。
  • 低公害車の導入支援、パークアンドライドによる公共交通機関への誘導など、環境に配慮した交通体系の確立を図ること。
(3) 情報基盤の整備

高速インターネット通信や携帯電話など、県域全体における情報通信基盤の整備を推進する。特に地上デジタル放送については、デジタル放送への完全移行期限が近づく中、すべての県民が放送を受信できるよう、県としても対策を積極的に推進すること。

2 都市の再生

(1) 都市機能の適正立地の推進

コンパクトでにぎわいのあるまちづくりをはじめ、地域の実情にあった最適なまちづくりを進めるため、市街地への都市機能の集積やニュータウンの再生など、広域的な視点を取り入れた都市計画のマスタープランを再整備すること。
また、「大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例」に基づく大規模集客施設の適正な立地を効率的に推進し、地域社会の健全な発展を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 各地域で広域土地利用プログラムの策定を進め、ゾーニングを県都市計画区域マスタープランや市町都市計画マスタープランに位置づけることを通じて、大規模店舗等の立地を適切に規制・誘導すること。
  • 市町合併の進捗や社会経済情勢の変化を踏まえ、地域の実情に応じた魅力あるまちづくりを進めるため、行政区域に限定せず、広域的な視点を取り入れた都市計画区域マスタープランを再整備すること。
  • 明舞団地での住宅地再生の取り組みを生かし、県内各地のオールドニュータウン化したまちの再生に積極的に取り組むこと。
(2) 都市緑化・緑地保全の推進

全県での県民まちなみ緑化事業の展開や、県立都市公園をはじめとする県民の憩いの場の整備・運営を通じて、緑あふれる美しいまちづくりを推進すること。
また、防火や水害低減など、防災能力の強化という観点からも、都市の緑化促進を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 県民緑税を活用した県民まちなみ緑化事業については、県民の積極的な参画と協働が得られるように事業展開を工夫し、学校・公園・道路・河川・住宅密集区域内・駐車場などの緑化を通じた都市の防災性向上や、ヒートアイランド現象の緩和に向けた屋上緑化等が促進されるよう取り組みを進めること。

3 安心して暮らせるまちづくりの推進

(1) ユニバーサルデザインのまちづくり

本県が先駆的に進めてきた「福祉のまちづくり」を推進し、すべての県民の社会参加を促進する視点から、バリアフリー新法に基づき、公共交通、公共施設等の社会基盤の整備・リニューアルを進めるとともに、民間施設の整備・リニューアルについても、同様の協力を求め、高齢者や障がい者が安心できる公共空間のバリアフリー化を一層強力に推進すること。

(具体的申し入れ事項)

  • 幅広歩道の整備、歩道の段差解消、ノンステップバスの導入や、鉄道駅舎へのエレベーター設置など、公共交通のバリアフリー化に着実に進めること。
(2) 生活安心住宅の確保

持続可能な安全かつ安心できる住生活が確保されるよう、長期優良住宅の普及促進はじめ、「省エネ化」「バリアフリー化」「耐震化」を目的とした既存住宅の活用・改修を促進するとともに、特に、高齢者、障がい者、子育て世帯も住みやすい、優良な賃貸住宅の整備を推進すること。
また、生活・住宅困窮者にとって、公営住宅は重要な「セーフティネット」であり、効率的、効果的な県営住宅の整備を進め、新婚・子育て世帯の優先入居や、低所得者、高齢者への支援など、県民のニーズに対応した管理運営を図ること。

(具体的申し入れ事項)

  • 介護サービス等を提供している高齢者専用賃貸住宅等について、入居者保護の観点から事業者への適切な指導を実施すること。
  • 県営住宅の耐震化やバリアフリー化等の推進による安全安心の確保に努めるとともに、特に中層住宅へのエレベーター設置を進めること。
  • 県営住宅の管理については、新婚・子育て世帯の優先入居枠の拡大など、少子高齢社会に対応した取り組みを進めること。

NEWS

一覧を見る