中田 英一議員が代表質問を実施

質 問 日:令和2年6月12日(金)

質 問 者:中田 英一 議員

質問方式:一括質問・一括答弁方式

 

 

1 医療・検査体制の整備について

(1)PCR検査体制について

緊急事態宣言が出される少し前頃から、各地で新規感染者が何人出たかという日々のニュースが日本中を席巻し、少しでも熱や咳の症状があれば、新型コロナウイルスに感染したのではないか、と多くの県民が心配する状況が発生した。

しかし、感染の有無を検査するPCR検査は、そうした県民の側から見れば容易には実施されず、「発熱を訴えても4日間は様子を見るようにとのことで検査が受けられなかった」とか、「お見舞いに行った親族が後に感染していたことが発覚して濃厚接触者と認定されたが、それでも症状が出るまでは検査できないと断られ自宅待機せざるを得なかった」、あるいは「迅速に検査を実施しないのは感染者数を少なく見せたいからではないか」など、検査の実施体制に関する声が私のもとにも寄せられた。

確かに、感染が疑われる県民の数がPCR検査の処理能力を上回る状況下では、優先順位の高い順に実施していく必要があるが、検査の精度が高くないこと、つまり一定数の偽陰性判定が出てしまうこと等は検査の実施件数を抑制する理由にはならないと考える。

なぜならば、偽陰性、本当は陽性であるのに陰性と判定されてしまった方が、油断によりかえって感染を拡大させてしまうというリスクについては、陰性が出ても次の日に感染するかもしれないことをしっかりと伝えることで最小限にとどめられるし、陽性判定が出た人は入院など強い行動制限が見込めるため、その分だけ確実に感染拡大を防げるからである。

5月15日に厚生労働省保険局医療課事務連絡において「無症状の患者であっても医師が必要と判断し実施した場合は算定できる」と実質的にPCR検査の対象拡大が示された。

そこで、本県においても1日1,500件とPCR検査の処理能力を増強させる計画となっているが、今後、感染拡大の第2波を早期に探知し、未然に拡大を防ぐためにも、無症状者も含めたより広い検査基準を適用して、増強された検査能力を十分に活かせるよう迅速・大量に検査を実施していく必要があると考えるが、当局の所見を伺う。

あわせて、感染拡大が発生した際の対応としてクラスターの防止と感染経路の解明が重要とされており、感染者への聞き取りなどで経路の解明を担当する保健所の役割に今回大きくスポットライトがあてられたが、感染経路の特定に時間がかかったと感じた県民も多く、ネット上では自ら感染者や経路を探し出そうとする動きも見られるなど不安が広がった。

そこで、本県においては、行革のなかで保健所の統合・人員削減が進められてきたが、今回の対応における検証も踏まえ、今後のポストコロナ社会においても、極力県民に不安を抱かせない保健所の運営体制を構築し、今後維持していくことができるのか、今回増強するPCR検査体制についても併せて、当局の所見を伺う。

 

(2)病床の確保について

新型コロナウイルス感染者が急増し病床が足りなくなる、ひいては他の急性期患者への対応が滞るような医療崩壊にまで至る恐れが生じたため、急遽、病床の追加措置が講じられた。

現在は、新型コロナウイルス感染症に対する医療資源を集約した重点医療機関を設け、感染症病床として、重症対応71床、中軽症対応444床の計515床を確保しており、今後は新規感染者数等の目安をもとにフェーズに応じた病床確保体制をとることとされている。この体制は感染拡大期に迅速に病床を確保できるとする点で優れているが、平成28年に策定された兵庫県地域医療構想において、平成37年、すなわち令和7年までに、高度急性期病床については全県では848床不足するものの、例えば神戸圏域では63床過剰になるとしており、急性期については全県で10,490床過剰になるとして、病床転換が進められていることから、今後もこの体制が継続できるのか、当局の所見を伺う。

さらに、5月18日の日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体発表によれば、とりわけコロナ患者の受入れ病院で4月の医業利益率が対前年比11.8%低下するなど、一般外来の受診控え等が起こり、病院経営にも大きな支障が出ているとのことである。

そこで、このような中、今後とも実際に各医療機関の協力を得るため県としてどのような取組を行っていくのか、当局の所見を伺う。

 

2 教育の環境整備について

新型コロナウイルス感染症拡大は子供たちの日常も破壊した。

約2か月に及んだ休校の間、当初は学校が休みとなって浮かれていた子供達も、友達と会えない、遊び場がない、自宅自習での学力定着への不安やカリキュラムの遅れなど多様なストレスを感じている。

これからの教育をどのようにつくりあげていくのかを議論するうえでは、このコロナ禍を過ごしている今の子供たちに寄り添った対応というものを念頭に置かなければならない。

学校現場においては、今月よりやっと登校が始まり様々な課題が出てくることが想定されるが、一つには、カリキュラムの遅れを取り戻すためとして夏休みの短縮がほとんどの市町で決定され、クーラー設置が遅れている学校においてはその前倒し等の対策が求められるほか、真夏の開校となる上にマスク着用もあり、教室内であっても熱中症のリスクが高まる。

また、登下校時や少人数学習時にはソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保できたとしても、教室の大きさは変わらないことから、クラス全員が着席すれば密な状態が発生することは避けられない。本県の指針では2メートル間隔、最低1メートル間隔は空けることを示しているが、当然、全員着席した状態でこの条件を達成することはできない。

コロナ以前より、現場の人員不足が指摘されてきたうえに、教職員が新しい環境でさまざまな対応に追われている状況で、子供たちへの十分なケアを求めるのが困難なことは明白である。

学校再開にあたっては、子どもたちに寄り添い、細やかな目配り・配慮を実施するために、教員、学習指導員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの現場における人員の充足が必要であると考える。なかでも、少人数学級が実施できていない小学5・6年生、そして進路に直接関わる中学3年生について特に手厚いケアが必要となる。

そこで、上程された補正予算案によれば、小学6年および中学3年生を重点に教員、学習指導員等の追加配置が掲げられているが、単に学習進度の遅れを取り戻すという観点だけでなく、子供達に寄り添った教育環境の整備が実施できるものと考えていいのか、また、次年度以降も含めて、この機会に少人数学級の進展に踏み込むべきと考えるが、当局の所見を伺う。

 

3 事業者支援の充実について

新型コロナウイルス感染症は県下経済にも甚大な被害をもたらしており、本県も4月以降に補正予算を組むなど事業者支援に動き出している。国も含めて、このような有事の際の初期支援については、急激な変化を受けた生活や事業を下支えするためにスピード感を重視した制度設計で正しかったと考えている。

しかし、スピードを重視したために事業者の収入状況や事業規模、業種などについての分類や調整のない給付制度となっており、支援対象から漏れてしまった事業者や、支援内容が実情からかけ離れてしまっている事業者が存在するなど、公平性の面で十分とは言えず、支援からこぼれた多くの事業者から悲痛な声が届いている。

例えば、国の持続化給付金制度では、売上減少率が50%以上という基準があるため、49%減少していても1円も受け取ることができないという、大きな格差ができている。

また、本県の休業要請支援金制度における100㎡以下の事業者については、議会からの要請を受けて新たに追加されたもので、決定から実施まで期間が限られており難しい側面もあったと思うが、それでも事業者からすれば、急な追加だったにもかかわらず他の事業者区分には設定されている休業開始日の段階設定がされておらず、休業開始が遅れれば1円も支援金がもらえないという格差が生じている。

さらに、そもそも休業要請を出した、すなわち支援金の対象業種と非対象業種との間に公平な区別が存在するのだろうか。

休業要請をしていない業種のお店は通常通り利用していい、というのではなく、全県民に外出の自粛要請を出している以上、来客すなわち客の外出を前提とした全ての事業の売上減少に大きな影響を及ぼしている。

あるイベント企画の事業者は、集客するという事業内容自体が完全に禁止され、さらにイベントの実施には数か月の準備期間が必要となるが3月までの準備が全て水の泡となり、今から再開できたとしても早くて秋以降にしか実施できない、半年以上収入が見込めない、と悲痛な声をあげている。

そこで、第2弾となる今回の補正予算および今後の支援制度については、このような第1弾での不公平感の解消を図っていくことが重要だと考えるが、今後、事業者に対してどのような支援をしていくのか、当局の所見を伺う。

 

4 地域公共交通への支援と今後の在り方について

新型コロナウイルス感染症拡大による活動自粛の影響は公共交通機関にも大きな影響を与えた。通勤・通学をはじめ、人の移動そのものが自粛され、移動する際も他人と空間を共有しない自家用車での移動に切り替えるなど、利用者が大幅に減少したが、県は、県民の生活、特に自家用車等の自力交通手段を持たない交通弱者を守るため、乗客及び従業員に対する感染防止措置を徹底した上で地域公共交通を担う各事業者に事業の継続を要請した。先に述べた休業要請とは反対の事業継続要請である。

その結果として、交通事業者は収入が大幅に減少する中でも運行を続け、感染リスクの徹底排除を目指す職員の努力もあって、コロナ禍においてもクラスターを発生させることなく県民生活の足は守られることとなった。今回のことで改めて地域公共交通のありがたみを痛感した県民も多い。

しかし、交通事業者には休業要請支援金のような制度は創設されておらず、利用者の減少による減収分は事業者の負担となる。

本県にも数多く存在する利用者の少ない地方路線は、バス、鉄道に関わらず、通常から事業採算の取れていない路線も多く、バスでは国や自治体から補助金を受け取りながら何とか運行している路線も多数あり、それらは当然のことながら経営難などの際には真っ先に縮小・打ち切りが検討されると考えられる。

先日発表された日本モビリティ・マネジメント会議の試算によると、4月時点のバス・鉄道・タクシー・船舶・航空の公共交通全体における利用者は6割から9割減少し、全国の交通事業者の総収入は年間最低でも3.5兆円減少するとされている。

今回のコロナによる収益悪化に加えて、さらに新しい生活様式の導入により、通勤などの人の移動が少ない社会が定着すれば、多数の路線での減便や休止・撤退が進み、公共交通の運行がない地域が一気に拡大するおそれもある。

本県では、以前より地域公共交通の再編に向けた取組を促進してきたが、その土台にはほとんど現行のバスや鉄道を前提に検討されている。多くの地域で再編の議論が立ち上がっているものの、再編が達成できた地域はごく一部にとどまっており、今の状況で土台となっているバスや鉄道が無くなってしまってはこれまで積み上げた議論は足元を失い、再編にはさらに多くの時間と労力が割かれることとなるため、課題解決は遥か先に遠のくことになってしまいかねない。

くらしの足をみんなで考える全国フォーラムが5月29日に開催した、続・くらしの足をなくさない!緊急フォーラムにおいて、国土交通省から、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の説明があり、広く柔軟に地域公共交通の運行支援に活用して欲しいとの見解が示された。この他、水戸市で路線バス事業者に対して1路線単位で支援を策定し好評を博しているという事例や、青森県が広域路線バスや民間鉄道にも補助制度を創設した事例も紹介された。

そこで、交通事業者のコロナ対応について今後も県民生活の足を守り抜くために、利用者の減少状況の聞き取りなども含めて、地域公共交通の再編の要ともなる交通事業者へどのように対応していくのか、また、多自然地域が多い兵庫県として今後どう対応するのか、当局の所見を伺う。

 

5 在宅勤務の促進について

緊急事態宣言の発令にともない外出の自粛が強化され、人との接触の機会を7~8割削減するよう求められるなか、県職員についても7割を目標に出勤者数を削減するよう努められた。

近年、ITを活用した働き方改革が注目されてきたが、その中核要素ながらなかなか普及が進まなかったテレワーク等による在宅勤務が、出勤者数の削減という数字に限れば概ね目標値で実施されたこととなる。

これまで在宅勤務を体験したことのなかった多くの職員が半ば強制的に在宅勤務に触れたことで、頭では理解していたメリットを実際に体験し、在宅勤務に対する意識が大きく変わったのではないだろうか。

日経BizGateが全国の会員を対象に4月20~29日までに実施したアンケートでは、新型コロナが収束した後にどんな働き方をしたいかという問いに、「テレワーク中心にオフィスでも働く」が35.1%、「テレワークだけで働く」が3.9%とテレワーク中心の働き方をしたいとの回答が39.0%に達し、従来主流だった「オフィスだけ」の回答は全体の7.5%にとどまった。

県職員についてもこれと同様の結果になるとは断定できないが、少なくとも、これを在宅勤務、働き方改革の推進の機会と捉えて、取り組んでいく必要があると考える。

その際、解決しなければならない大きな問題は生産性の問題である。働き方改革とは、そもそも多様な働き方を可能とすることで働き手を増やすとともに労働生産性も高まることを目的としている。

今回は緊急に実施されたこと、コロナの影響で業務内容も大幅に変わった部署も多いと考えられることから、出勤時と在宅時とにおける生産性の正確な比較は困難とも思えるが、この機会での検証は不可欠と考える。

全員の出勤を前提として設定されてきた様々な職務手順は、在宅勤務の足かせとなったのではないだろうか。ペーパーレス化、印鑑レス化、決裁フロー、会議の在り方など、課題を広く抽出し解決することで、ポストコロナ社会の新しい働き方として在宅勤務を加速度的に進めてもらいたいと考えている。

そこで、今回実施された在宅勤務について、どのように振り返りを行い、希望した職員が希望通り在宅勤務ができるよう、今後どのように推進していくのか、当局の所見を伺う。

 

6 財源確保のための予算組換えおよび事業見直しについて

新型コロナウイルス感染症拡大により、企業業績が大きく沈んでいるとの報道がなされている。

東京証券取引所1部の金融を除く1,340社のうち、12日までに決算発表した526社をSMBC日興証券が集計した情報によると、上場企業のコロナの影響が出だした今年1~3月に限定した純利益は78%減と急落しているとのことである。

県内企業および県民にも大きな経済的被害が出ており、今後の税収の落ち込みは、過去に発生したリーマンショック等の状況を鑑みても明白であると言える。

そして、このコロナ危機について、アメリカ科学誌サイエンスはハーバード大学の研究者が複数のコンピューターでシミュレーションした結果、現在の医療の力では感染の流行が2022年まで続く可能性がある、と結論付けていると掲載しており、長期的に税収が落ち込むことも想定しなければならない。

本県予算は、法人関係税こそ前年度当初より108億円減と見込んでいるものの、消費税増税に伴う増収分を見越して県税収入は過去最多となる8,566億円を見込んでいる。

もちろん、これから県内経済を立て直すという前向きな姿勢は重要だが、世界的にこれだけ大きなインパクトを与えているコロナの事情が前提とされていない予算を元に、ポストコロナ社会を目指した県政を進めていくことに大きな違和感を覚える。

ましてや、これまで述べてきたように、県民に対する支援等についてもまだまだ十分とは言えない状況であり、国の第2次補正予算において増額される交付金とは別に、第2波への備えやコロナからの復興に向けた財源をしっかりと確保しておく必要があるものと考える。

そこで、この未曾有の危機に際して、事務事業および当初予算の抜本的な見直しを実施すべきではないか、少なくとも、但馬空港の滑走路延長や2万人規模のアリーナ設置など数百億円規模の新規大型投資事業については、着手前に慎重に再検討を要すると考えるが、当局の所見を伺う。

 

7 差別の防止および啓発について

医療従事者が乗車拒否を受けたり、あるいはその家族が会社への出勤や子供の登園を拒否されたりするという衝撃的な差別事案が全国で発生している。

我が会派にも、県内の感染症指定医療機関職員から、勤め先を理由に子供がいじめられる、という悲痛な声が寄せられている。

歴史的に、ハンセン病、エイズなどの際にも起こってきた未知の病気に対する恐怖を原因とする、患者やその周囲へのいわれもない差別や偏見がまた繰り返されてしまった。さらに、これに便乗して、新型コロナウイルス感染症とは全く関係のない、外国人差別や部落差別を煽る行為も発生している。

言うまでもないが、新型コロナウイルスに感染することは悪ではなく災害であって、個人に責任のないことを理由に不当な差別を行うことは、例えどのような状況下でも決して正当化されるものではない。

このことに関して日本赤十字社は、ホームページ上で、新型コロナウイルスには3つの顔がある、という示唆に富んだ広報を出しているので紹介する。

1つ目の顔はウイルスによる病気そのもの。2つ目は、目に見えないこと・正体がわからないという不安と恐れ。そして3つ目の顔が嫌悪・偏見・差別である。

1つ目の生命を脅かす病気への恐れが2つ目の不安を生み出し、不安を排除しようとする心理が3つ目の嫌悪や偏見・差別を生み、その差別や阻害に対する恐れが感染を隠すことにつながり、1つ目の病気、すなわち感染症の拡大につながり、負のスパイラルをどんどん大きくしていると説明されている。

このスパイラルを断ち切ることは、差別を防いで心を傷める県民を少なくするだけでなく、差別を恐れてできなかった診察や治療を適時適切に受けられるようになることで感染症拡大を防ぐことにもつながっていく。

本県では、死亡者の居住市町、性別や年代などについて、4月の会見ではじめて、遺族の意向により非公表という発表がなされ、差別等を恐れて公表を拒んだことが、あたかも本人や家族の意思で感染経路の解明に協力しないような伝わり方をして、インターネット上で当事者に対する批判的な論調が起こり、感染者の個人情報を晒す事象も散見される事態となってしまった。

一方、イギリスでは重症患者以外は自宅での自主隔離を基本としており、隔離中の社会的弱者や何らかのケアを必要としている人々をサポートしようと、SNSプラットフォームから自然発生的にボランティア・グループが形成されるなど助け合いの精神が高まっていると4月15日のハーバービジネスオンラインで紹介されている。

そこで、新しい生活様式として、ソーシャルディスタンスなど人と人との物理的な距離が求められる新しいポストコロナ社会を構築するにあたり、いま一度今回の差別事案を振りかえるとともに、差別を防止し県民相互の助け合いの精神を醸成する取組を全庁的に進める必要があると考えるが、当局の所見を伺う。

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