中田 英一議員が質問(総括審査)を実施

令和元年度決算特別委員会 【総括審査】

質問日:令和2年10月19日(月)

質問者:中田 英一 委員

 

本年初頭から広がった新型コロナウイルス感染症による脅威は、今月14日に、ヨーロッパ全体での1日の感染者が約10万5千人に上り、17日からフランスではパリやマルセイユ、リヨンなど9つの都市圏で夜間の外出禁止、イギリスでは首都ロンドンで一緒に暮らす家族以外と屋内で会うことが禁止されるという新たな措置がとられるなど、今なお世界的に予断を許さない状況にあります。

本委員会での審査対象である令和元年度決算については、そこまで大きな影響は出ておりませんが、本年度以降における本県経済や財政に与える影響はどこまで膨らむか計り知れません。

現状ですでに、令和2年度の税収は当初予算に比べ、約1000億円の減収、令和3年度に至っては、現在の財政フレーム上の税収見込から、約2000億円の減収とも言われています。

ポストコロナ社会における新たな兵庫を作り上げていくには、スタートとなる令和元年度をしっかりと振り返ると同時に、コロナによって引き起こされるであろう「パラダイムシフト」後の新しい価値やニーズを柔軟にキャッチして対応することが重要だと考えます。

そこで、これらの視点を軸に以下質問させて頂きます。

 

1.財政運営について

本県は、阪神淡路大震災からの厳しい行財政運営の立て直しに挑み、リーマンショックをはじめ激動の時代を乗り越えて、一定の成果をあげてきたところにこのコロナの衝撃を受けることとなりました。一説には、どう頑張ってもコロナ  以前の7割までしか経済は回復しないとも言われています。

このコロナ禍は全国、全世界を巻き込んだ一種の災害でありますので、財政についても国に頼らざるを得ないという側面はありますが、それですべてをカバーできるわけではないと考えます。

もちろん、コロナが一過性のものに終わり、完全に元の経済状態に戻るということもあり得ますから、どのように進んでいくのか注視する必要はありますが、言われているように「7割経済」と「パラダイムシフト」が現実のものとなるのであれば、本件財政の立て直しに向けた更なる「選択と集中」が必要となるうえに、その選択と集中を行う「基準」を新たに作らなければなりません。

そのような場合を想定したとき、本県としてどのような「基準」や「方向性」を打ち出し、ポストコロナ社会の財政運営を行っていかれるおつもりかご所見をお伺いします。

 

2.妊娠・出産・子育て環境の整備について

令和元年10月より幼児教育・保育の無償化が一部スタートをしました。これにより、入園希望者数および待機児童数が増加することが懸念され、本県においても保育所整備の補助制度を用意されましたが、執行率は20%程度にとどまったということで、限られた貴重な予算がニーズに対応できなかった原因の追究をしなければならないというのは部局別審査でも当会派委員が指摘した通りであります。

加えて、ポストコロナにおいては、生産拠点の国内回帰による工場や本社機能の移転、あるいはテレワーク中心の働き方による地方移住、ワーケーションの促進など、労働力世代の県内移住が活発化するという動きが予測され、淡路で話題となっているようにまとまった移住が見込まれる場合や誘致をしていく場合には、それに合わせて不妊治療を含めた周産期医療や保育所など子育て環境の整備に対するニーズが高まってくるものと考えます。

そこで、部局内ではありますが、課をまたぐこととなる「妊娠・出産・子育て環境の整備」という横串の視点から、県として取り組みを行っていくことは考えられないでしょうか、ご所見をお伺いします。

 

3.介護人材の確保について

2025年にはすべての「団塊の世代」が後期高齢者となり、介護職員は37万人が不足すると推計されています。

人材不足の要因の一つとして、介護職員の賃金の低さが挙げられています。平成30年の介護報酬改定により6年ぶりの増加となりましたが、それでも同年のケアマネージャーの平均年収は約385万円、ホームヘルパーは約330万円。医療系の看護師や准看護師の400万円台と比較すると、介護の際などに身体を痛めるケースも多いなど重労働であるわりに介護士の評価は低いと言えます。

こうした背景から、介護職の人気は低迷を続け、大学では福祉系の学部がなくなったり、学部を卒業しても多くの学生が他の一般企業へ就職したりする現状があるということです。

平成29年11月から外国人技能実習制度に介護職が追加されましたが、語学の壁などで定着が難しかったり、今回のコロナによる渡航制限で、この制度に依存することのリスクが露呈しました。加えて、県内福祉施設でクラスターが発生する等危険だというイメージも出てしまいました。

高齢化が止まらないなかで介護職員の確保は待ったなしの状況です。部局別審査で当会派委員より指摘のあった総合衛生学院介護福祉学科での外国人留学生の受け入れおよび就業支援等も重要ですが、あわせて介護職自体の魅力を増加させ、周知することで、全体のイメージアップを図ることが重要だと考えます。

私も介護職員をしておりましたが、誤解を恐れずに言えば「現場はやりがいを感じ意欲の高い職員が物理的な人手不足のなかを、踏ん張り何とか持ちこたえている状況」という風に感じています。逆に言えば、介護職員は困っている人に直接向き合って支援を行い、利用者の苦労の緩和やときには成長を目の当たりにし、心からの感謝を受けるなど、やりがいを感じる場面の多い職業だと思います。

先ほど紹介した低い賃金体系や、身体への重い負荷、さらにコロナでのクラスター感染の恐れなど、現存する不利な状況を1つずつ改善し、適切な発信をすることができれば、この2025年問題は解決可能だと感じています。

そこで、収入面への支援、介護支援機器や感染防止設備などの導入で職場での不安を取り除きつつ、職業としての魅力をいっそう高め、人材が集まってくるような取り組みはできないかと考えるが、当局のご所見をお伺します。

 

4.パラダイムシフトを見据えた産業活性化策について

(1)企業における人材確保について

コロナの影響で働き方の多様化が目覚ましく推進され、テレワークやワーケーションなども当たり前になりつつあります。一方で、海外からは渡航制限がかかり、増加傾向にあった外国人技能実習生が入国できないなど、頼りにしていた事業者にとっては大きな痛手ともなりました。機械化やAIの導入も進んでいるとはいえ、少子化の折、まだまだ多くの企業においては人材の確保は重要なカギとなっており、ワークライフバランスに直結する、「労働者のニーズに合わせた働き方の提供」は企業の魅力としてさらに重要度を増しています。

同様の内容は部局審査でも多くの委員から出されたところでありますが、私からはUJIターンなど移住者を含む求職者からの視点で伺いたいと思います。

ポストコロナ社会に向けて、ワークライフバランスを進める県内企業の魅力をどの他府県にも負けず、しっかりと求職者に伝えるためにどのような工夫をもって取り組みを行われるおつもりでしょうか。県が先導的にこのような取り組みを行うことの強みを活かし、県内における人材をいかに確保していくつもりかご所見をお伺いします。

(2)新しい事業への支援について

コロナの影響を受け、県内観光・飲食業をはじめ多くの企業に甚大な被害が発生し、倒産や廃業も数多く出てしまいました。事態はまだ予断を許さず、そうした事業者への支援は当会派委員より部局別審査において質問した通りでありますが、その一方で、部品の供給などについて海外に依存していた事業者はコロナを教訓とし、サプライチェーンの国内回帰を目指すという機運が高まっています。

本県では、従前より産業団地の整備・誘致にも取り組んでおり、この需要を適時的確に取り込んで頂きたいところであります。また、大きなパラダイムシフトが起きた後には、新しい事業やサービスが沸き起こる可能性も十分に考えられます。これまでも本県では起業支援・発掘する取り組みに力を入れてきておりその土壌も十分に整っているのではないかと期待しているところであります。

そこで、これからの製造業などの企業誘致の在り方および、既に実施されている制度について、例えば「ポストコロナスタートアップ支援事業」については今年度事業の募集が終了しておりますが、非常に素晴らしい制度と考えられるため、こうした取り組みの拡大や継続されるお考えがあるかにつきまして当局のご所見をお伺いします。

 

5.環境優先社会の実現に向けて

世界経済フォーラム(WEF)が「ダボス会議」に先立って公表した「グローバルリスク調査報告書2020年版」では、起きうるリスクとして指摘した上位5項目が初めて、すべて環境関連で占められ、政治家や経営者が気候変動や環境破壊を最も重大な長期リスクと認識していることが明らかになりました。

コロナとの直接の因果関係は明確にされていませんが、環境省においても気候変動が感染症のリスクを高めることを警告しています。

さらに、各地で頻発する異常気象の猛威に目を向ければ、本県も気候変動による危機に直面していると言えます。そして、ポストコロナ社会では、県民の環境への意識も客観的な重要性も飛躍的に高まるのではないでしょうか。“環境を優先する社会”とも自称する、豊かな自然に恵まれた本県の魅力のひとつは「環境」ではないかと考えます。

これまで、本県では地球温暖化対策推進計画に基づき、温室効果ガスの排出を2030年度には2013年度比26.5%という国を上回る削減目標を設定し、再生可能エネルギーの創出や省エネの取り組みを推進してきました。

その進捗状況は、温室効果ガス削減目標の達成率がH29年度で2013年度比マイナス8.7%と、2020年度中間目標のマイナス5%を上回っているということですが、ポストコロナ社会を意識するのであれば、これまでの取り組みに加えてさらに踏み込んだ改善策を打ち出し、「環境立県」を目指すべきではないかと考えますがご所見をお伺いします。

 

6.今後の防災・減災、国土強靱化対策について

先にも述べたように、令和元年度も多くの自然災害が日本各地を襲いました。異常気象が常態化し、南海トラフ地震の想定もされるなか、安心な兵庫を実現するためには、長期にわたる環境対策と合わせて、短期的な、災害による被害の予防、低減および復旧の迅速化を実現する必要もあると考えます。

本年度まで実施されている国の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」は、河川内の樹木伐採や堆積土砂の撤去など、短期間で効果を発揮する防災・減災対策として、これまで予算の面からあまり進まず蓄積していた県内各地の課題箇所の解消に大きな効果を発揮しました。

しかし、本年度で終了することに対して、各地から期間が足りないという声があがっているのは、本委員会部局審査でも出てきているところであります。

言うまでもなく、国も本県でも人口減少、またコロナ禍という大打撃を受けた今、財源は限られており将来を見通し真に必要なものに的を絞るという視点は抜かしてなりませんが、近年の豪雨災害の激甚化、頻発化、広域化している状況や、南海トラフ地震の発生リスクが高まっている状況を考えると、これらの河川、砂防、海岸等の直接的な事前防災とあわせて被災後の救命救急活動、支援物資の輸送、迅速な復旧・復興活動、日常的な経済活動の維持など早期の社会生活の復旧を支える交通基盤の強化も重要になって参ります。

そこで、県では、3か年緊急対策の後も中長期的な視点に立ち5か年計画の策定等を国に要望するとのことですが、その新たな強靭化計画にさらに強靱で信頼性の高い道路ネットワークの構築と言った視点も加える必要があると考えますが当局のご所見をお伺いします。

 

7.教育現場におけるゆとりの確保について

コロナの影響によりICT化の遅れや、教職員の多忙さ、さらなる児童生徒への目配り・ケアの必要性など、問題点が改めて顕在化しました。こうした課題への対応については、臨時的な人員配置を含め本年度の補正予算等で措置をしていただいているところであり、一日も早い対応が期待されております。

しかし、コロナ対応は本年度限りの時限的な対応に過ぎず、次年度以降は基本的に元の体制に戻ってしまいます。現在、教員業務を補助的にサポートするスクールサポートスタッフは、モデル的に各市町に1名を配置しており非常に効果を発揮していると聞きますが、予算面で市町にゆとりがなく、今後市町での独自採用となると実績はそこまで増えないのではないかと感じます。

その一方で、コロナによって増加したICT化の促進や消毒・清掃の徹底などの新たなタスクは教育現場に積みあがり、さらなる教育現場の多忙化が現実のものとなってしまいます。

ただでさえ英語、プログラミング教育等どんどんと「やること」が増える現場において、少人数学級の実現や市町独自のスクールサポートスタッフ配置など恒久的な人員増加・配置ができないのであれば、学校あるいは教職員が「やらないこと」を明確にリスト化し、具体的かつ積極的に市町教育委員会に周知・促進していくことが、教育現場における多忙化の解消、ひいては児童生徒が手厚い配慮・教育を受けることにつながる最短のルートであると考えます。

多忙化解消については、中教審が一定の指針を示しておりますが、抽象的ですぐに実践できるというものではないため、もう一歩踏み込んだ具体的な手法を明示し、各手法における実際の効果についての共有ができるなどの仕組みがなければなかなか進まないのではないかと感じます。

また、現状では市町教委に予算的なゆとりがないため厳しいと見解を示しましたが、他の部分で支出を抑えることができれば、独自の人的配置に予算を回すことのできる市町教委もあるかもしれません。例えば、今後導入や更新されるシステムや備品等について県教委がとりまとめ役となり、有利に調達・交渉することができれば、各市町教委の支出の節約につなげることも可能と考えます。

以上のように、教育現場の多忙化解消に向けて、市町教委を先導するような役割を果たしてもらいたいと考えますがご所見をお伺いします。

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