2011年基本活動方針

 少子高齢の本格的な人口減少社会を目前にし、成熟の時代への大きな変革期を迎えた今、我々兵庫県議会民主党・県民連合議員団は、多くの県民からいただいた思いを心に刻み、とりわけ、自己決定・自己責任のもと、自立的な運営が求められる地域社会において、議会の果たすべき役割が大きくなっていることを自覚し、引き続き、積極的な議会活動に取り組んでいかなければならない。
 私たちを取り巻く状況を見ると、急速な少子高齢化の進展には依然として歯止めが掛からず、それに伴う医療・年金などの社会保障制度に係る諸問題についても確かな将来展望が見えにくくなっている。
 そのため将来に対する県民の不安感は払拭されない状態が続いていることから、県民生活の安定を図る実効ある施策が求められている。
 また、3月11に発生した東日本大震災に対しては、阪神・淡路大震災を経験し、さらに関西広域連合で広域防災を担う本県として、被災地に対する最大限の支援を続けることが必要である。
 一方、近い将来に発生が予想される東南海・南海地震への備えに、本県としても万全を期する必要がある。
 加えて、頻発する集中豪雨、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫などによるリスクも高まる中、くらしの安全・安心の確保や危機管理の確立は喫緊の課題であり、環境や資源、エネルギー問題といった地球規模での解決が求められる課題も山積している。
 もとより、本県財政は厳しい状況に直面しており、平成20年度に策定された「新行革プラン」の総点検を踏まえた「第2次行革プラン」の着実な実行に取り組んでいるところであるが、県として、施策の「選択と集中」を一層徹底しつつ、これまで以上に県民の意思に応えるよう、県民の生命と生活を第一とする施策への重点的な予算配分や、将来に希望を持つことのできる政策を示す必要がある。
 こうしたことを踏まえつつ、「県民誰もが安全で安心な社会」の実現に向け、兵庫県議会民主党・県民連合議員団の2011年度基本活動方針を以下のとおり定める。

Ⅰ 真の分権型社会の構築と県民の参画と協働に向けて

1 地域の自主性及び自立性の向上

(1) 地域の自主性及び自立性の向上

 地方自治体の自己決定と自己責任の原則を確立し、自治体が自らの権限と責任、財源を持つ「分配・自立型の行財政システム」を構築するため、関係法制度の着実な実施を含めた速やかな取り組みを、国に対して引き続き強力に働きかけるとともに、県として、持続可能な社会基盤を作り上げるための政策強化を進めるなど、内発的な取り組みも一層積極的に推進する。

(2) 県と市町の役割の見直し

 市町が自律的な行財政運営を行い、それぞれの能力を高めることができるよう、広域・専門的な視点からのきめ細かな支援や情報提供に努めるとともに、県と市町の役割分担や機能のあり方などについても議論を深め、市町の能力や実情に応じて、県から市町への事務事業に関する権限と財源を移譲していくよう求める。
 また、定住自立圏構想等を踏まえ、市町間の連携・協力による地域活性化への取り組みに対する支援を進める。

(3) 「関西広域連合」による取り組みの強化

 「関西広域連合」の設立を踏まえ、国に対し権限移譲を積極的に求めていく。
 また、関西における防災体制の強化や観光・地域産業の振興による地域活性化、自然環境の保全、医療連携、空港・道路・港湾の一体的な整備・管理などについて、「関西広域連合」を中心とした近隣府県との連携強化により、国からの権限移譲の受け皿となりうる成果を着実に示す。
 一方、東日本大震災による被災地への支援を継続・強化するとともに、被災地への広域支援の実情等を踏まえた「関西広域防災計画」の策定を進める。

(4) 防災副首都の関西誘致

 東日本大震災を踏まえ、わが国全体の危機管理能力を向上させるため、関西広域連合を中心とした、政府機能のバックアップを要する事態の想定や、機能・運用等についての研究をさらに進め、国に対して、関西が首都機能代替(バックアップ)エリアとしての役割を担うことを国土・防災・有事に関する法律や計画等に位置づけるよう求めるなど、防災副首都の関西誘致に積極的に取り組む。

2 行財政構造改革の推進

(1) 行財政構造改革の推進

 持続可能な行財政基盤の確立と元気で安全安心な兵庫づくりを目指し、限られた財源の中「選択と集中」による行政サービスを行うという基本原則のもと、本年3月に策定された第2次行革プランに沿って、徹底した事務事業等の見直しを行うとともに、県民・市町・関係団体等の声を十分に踏まえ、実効ある県民本位の行財政構造改革に取り組む。
 しかし、県民の生活と生命に直結する医療・福祉・教育・治安などの分野においては、組織の統廃合や一律削減の対象にはなじまないことも多く、あくまで県民本意の改革が必要であることから、県民・市町・関係団体等の声に対する充分な説明責任を果たすよう求める。

(2) 定員・給与について

 定員については、財政改革のための一律削減ではなく、毎年の事業量精査による必要な定員数を前提に決定するよう求める。
 また、給与については、職員の実態を考慮した人事委員会勧告を行うとともに、現在行っている給与削減についても、職員の士気の低下を防ぎ、職員及びその家族の生活設計を守るためにも、検討課題とするとともに、人事制度のあり方などについて総合的な研究を行う。

(3) 県民局のあり方の精査

 県民局のあり方については、地方分権の進展、合併後の市町の行政体制の整備や政令市・中核市の状況等を踏まえ、再編された県民局や地方機関の状況について必要な検証を実施する。
 また、県と市町との役割をさらに精査し、県民局が果たす役割を十分明確にした上で、再々編も含め、調査・研究を進める。

(4) 公的施設・県有施設運営の改善

 公的施設における指定管理者制度導入については、公共性・安全性、利用の公平性等に十分に配慮しながら、公募制を積極的に推進する。
 また、指定管理者の選定に当たっては、民間のノウハウを積極的に導入する視点から、選定対象が公社等外郭団体に偏りすぎることのないよう配慮するとともに、透明性や公平性を確保するため、評価項目や配点の事前公表等に加え、サービス要求水準の設定根拠の明確化を推進する。
 一方、指定期間について現行の標準指定期間を延長することなど、制度運用の改善に努めるとともに、指定管理者制度を導入した施設については、管理者の業務実態の把握に努め、得られた評価結果が指定管理者の業務改善に反映されるよう万全を期する。
 さらに、廃止を検討する公的施設については、市町への移譲が円滑に進むよう、地元住民へも十分な説明、協議を行うよう求める。
 一方、県有施設の利活用に関しては、その基本的な考え方や具体的な取り組み方策を定めるとともに、全庁的な利用調整・保有総量の見直しなど計画的な管理を図る。

(5) 投資事業の改革投資事業の改革

 投資事業については、「第2次行革プラン」で精査されたとはいえ、依然高い水準にある投資事業規模をさらに精査して、真に必要な事業とその優先順位を定めたうえで、実施するよう求める。
 また、事業実施においては、費用対効果の高い整備手法の採用や、事業費の削減を進める。
 あわせて、予算の内訳や使途の妥当性、事業の実施過程の透明性を確保するほか、費用対効果の事後検証を行うなど、県民への説明責任を果たし、特に事業費の一部を市町や団体に求めるものについては、費用負担について市町等の十分な理解と協力を得ながら推進する。

(6) 公社等外郭団体の改革

 公社等外郭団体については、公社等の経費、契約、職員給与等の実態が明らかにされているとはいい難い状況にあり、監査委員の監査対象とならない団体についても、監査体制の強化や、十分な情報開示の実施、透明性の確保と効率的な運営を図る。
 また、県からの派遣職員や県OB職員は、在職期間が短く、運営に対して長期的な展望や責任が持ちにくいことなどから、一律の基準でOB職員を派遣するのではなく、配置に当たっては、各団体の実態を踏まえた対応を図る。
 また、財政面や政策面から具体的な公社改革を検討したうえ、適切な提案を行う。

(7) 企業庁事業の改革

 特に地域整備事業については、企業債残高が1千億円を超える中、民間ノウハウの積極的な導入などにより分譲促進を図るとともに、社会経済情勢の変化に応じて、事業の廃止等も視野に入れた事業戦略の見直しを図る。
 また、水道用水供給事業についても、今後、生活・経済の規模が縮小し、水需要の増加が期待できず、老朽化施設の更新に多額の支出が見込まれる中、総合経営計画(後期6カ年)で示した黒字経営の継続、企業債残高の削減に向けた経営改善を着実に推進する。

3 参画と協働の推進と共生社会の実現

(1) 県民の参画と協働・個性を生かす地域づくりの推進

 分権型社会の本格化や公民協働の潮流に対応するため、「県民の参画と協働の推進に関する条例」に基づき、県民同士のパートナーシップによる地域づくり活動や県民と県行政のパートナーシップによる県行政のさらなる推進を図るとともに、地域社会の担い手となるNPO法人の設立について支援するよう求める。
 特に、いわゆる団塊の世代や若い世代をはじめ、障がい者や外国人など多様な主体の参画による地域づくり活動への支援を図る。
 また、国が進める総合特区の仕組みを活用しながら、地域住民やNPO、企業等と協働した、「あわじ環境未来島構想」の実現をはじめ、持続可能な地域づくりを目指す。

(2) 人権尊重とDV・家庭内暴力対策の推進

 人権尊重を基本理念として県政を展開することにより、人権の尊重が社会の規範として定着し、県民すべてがお互いを認め合いながら共に生きる「共生社会」の実現を目指す。
 配偶者や恋人に対する暴力、児童虐待、高齢者虐待及び障がい者虐待については、各地域において、警察も含めた全庁的に取り組む体制を構築したうえで、関係機関の密接な連携の下に、相談体制の強化やサポート体制の確立、加害者への教育の充実等により、効果的な抑止及び被害者の救済・支援に取り組む。
 特に、DV対策については、民間施設も含めた被害者保護施設の整備促進を図るとともに、県と市町との協調が不可欠であることから、各市町におけるDV対策基本計画策定、支援センター設置への働きかけの強化を図る。
 また、児童虐待については、親からの虐待などにより家庭で生活できない子どもたちの受け皿の充実に向け、人材の確保・育成など専門的なケア体制の整備や児童養護施設の小規模化など、きめ細かな支援が行える環境整備を推進する。

(3) 男女共同参画社会の実現

 男女共同参画社会を実現するため、「新ひょうご男女共同参画プラン21」に基づく諸施策を進めるとともに、その実効性を担保するため、積極的な意識改革を進め、県民、企業、市町等への浸透を図る。
 特に、ワークライフバランスの確立が少子化対策の根幹的視点であることを踏まえつつ、女性の就業率向上と第一次産業に従事しやすい支援の充実など、女性と男性がともに仕事と家庭の両立を図ることができるよう、ワークライフバランス確立のための施策を推進する。

(4) 自殺対策の推進

 自殺者の増加に歯止めをかけるため、「いのち対策室」を中心に、マスコミとの協力体制の構築も含め、職域、学校、地域等とも連携し、相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備等を推進する。
 また、精神保健的な視点だけではなく社会・経済的な視点をも含め、また県民運動としての取り組みも視野に入れた有効な対策を進める。
 特に、自殺者の多い30歳代から50歳代の世代については働き方との関連もあることを認識し、関係団体との連携のもと、全庁横断的な課題として、取り組みの強化を求める。
 また、自殺につながるケースが多く、その急増が社会的にも大きな問題となっている、うつや引きこもり問題についても、学校、地域、関係機関等との連携による、総合的な対策を図る。

Ⅱ 健康福祉社会の実現に向けて

1 健康づくり対策の推進・医療体制の充実

(1) 県民の健康づくりの推進

 食生活の改善や運動不足・ストレスの解消など、県民一人ひとりによる生活習慣の改善や社会全体での健康づくりを支援し、県民の健康づくり運動の定着を図るとともに、歯の健康づくりや受動喫煙の防止、朝食摂取の推進、化学物質過敏症、心の健康づくりの体系的な取り組みを進める。
 また、特定健康診査(メタボリックシンドローム健診)・特定保健指導のより円滑な実施に向けては、医療保険者や市町等と連携し、健診受診率及び保健指導実施率の向上を図る。

(2) 地域医療の確保

 地域の医療連携を推進するため、二次保健医療圏域を単位とした医療機関の適切な役割分担、相互連携を進めるとともに、かかりつけ医の普及定着を基本に、医療機関が効率的に機能するシステムの構築に取り組む。
 特に、小児科、産科、麻酔科などの診療科偏在及び地域偏在の解消を図るため、就労環境の整備やへき地医の養成などに積極的に取り組むとともに、産科医の負担を軽減するため、助産師の確保対策の充実と助産院の設置支援を進める。
 また、地域の公立病院等、不採算部門を抱える地域医療機関への支援を行うよう取り組む。

(3) 疾病対策の推進

 がん対策については、「がん診療連携拠点病院」の機能を強化し、地域医療機関等との医療連携を図り、がん医療の質の均てん化を推進するとともに、早期発見に向けた診断力の向上をはじめ、情報提供と相談支援体制の充実など、患者の立場に立った総合的な対策に取り組む。
 また、新型インフルエンザ等の感染症やアレルギー性疾患への対策については、その充実を図るとともに、難病患者対策についても、国の認定を受けていない疾病も含め、課題と対応策等を調査・検討し、対策の充実強化を引き続き国へ働きかける。
 さらに、社会環境の変化に伴って急増している各種精神疾患に対しても、その未然防止のための引きこもり対策も含め、十分な対策に取り組む。

(4) 県立病院の円滑な運営

 医療ニーズの高度化・多様化、医療技術の進歩に対応し、県立病院の役割である高度専門・特殊医療を中心とした政策医療の提供等、より良質な医療を提供できるよう、診療機能の高度化・効率化に努めるとともに、適切な公的負担の下で、自立した経営が確保できるよう、医療資源の有効活用や職員の経営意識の向上を図り、計画的な経営改善に取り組む。
 また、各病院における経営改善への取り組み状況を積極的に開示し、そして医療サービスの見直しを行う場合は、県民への説明責任を適切に果たすよう求める。

(5) 食の安全確保と食育の推進

 「食の安全安心と食育に関する条例」に基づく食の安全安心推進計画や食育推進計画に沿って、食の安全安心の確保と食育に関する諸施策の総合的かつ計画的な展開を図る。
 また、県下各自治体における食育推進計画が県計画の期間内(~平成23年度)に策定されるよう支援する事を求める。
 特に、富山県等における生肉の喫食を原因とする中毒の発生を踏まえ、県内の食肉事業者や飲食店に対する防止対策について周知徹底を図るなど、食の安全・安心の確保に向けた生産者・事業者の自主的な取り組み、食の品質管理の強化を推進するとともに、食品表示並びに輸入食材に対する管理・検査体制の充実や、また食品情報に関する理解を促進する。
 また、食を通じ健康な生活、豊かな人間性を養う「食育」を推進するため、「スローフード」運動を実施するなど、地域の伝統的な食文化や農業への理解を深め、守り、継承する取り組みを進めるとともに、生涯にわたって健全な食習慣が維持されるよう、若い世代の食生活改善対策の一層の推進を図る。

2 介護・高齢者福祉の充実

(1) 充実した高齢者医療制度の確立

 本格的な高齢社会の到来に備え、老後における健康の保持と適切な医療の確保のための施策充実を図る。特に、後期高齢者医療制度については、現行制度の廃止・新制度への移行においては、被保険者の利用に支障を来さないよう、適切な対応を図る。

(2) 介護サービス基盤の充実

 地域包括ケアの中核的機能を担う地域包括支援センターの機能強化や地域医療と介護事業の連携の強化などにより、地域ケアの総合的な推進を図るとともに、介護予防サービスについては、地域やサービス受給者に最も効果的に提供できるよう、市町への支援強化を図る。
 また、介護職員の処遇改善やキャリアアップへの支援等により、介護人材を確保するとともに、また多様なニーズに対応した介護施設の整備を進めることによって、介護サービス提供体制の充実を推進する。特に、要介護者が地域に住み続けられるよう、地域密着型の小規模介護施設の整備を積極的に推進するとともに、実際に介護にあたっている家族などへの支援に取り組む。
 さらに、介護サービスの質的向上を図るため、事業者への適切な指導とともに、介護サービス情報が利用者にとって必要かつ有効な情報として利用しやすくなるよう公表制度のあり方を検討する。

(3) 認知症対策の推進

 認知症高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、介護サービスの充実を図るとともに、地域住民の認知症に対する理解促進に努め、認知症サポーターの養成を推進するなど、認知症高齢者やその家族に対する地域ぐるみの見守り体制の整備を支援するほか、認知症疾患医療センターの充実、認知症サポート医の養成、かかりつけ医の対応能力向上など地域医療体制の早急な構築を図る。
 また、現行の医療・福祉サービスでは十分な対応が困難な若年認知症についても、認知症者を支援するため、課題の検証や職場や地域社会における理解促進を図る。

3 障がい者福祉の充実

(1) 障がい者福祉サービス基盤の確保

 障がい者自立支援サービスの提供主体である市町の体制整備を支援し、人材養成や相談支援体制の整備等、サービス基盤の確保に取り組むとともに、障がい者福祉制度の抜本的な見直しにおいては、サービス利用に支障を来さないよう、適切な対応を図る。

(2) 就労・社会参加支援の充実

 障がい者の自立に向けて、就労、またスポーツや芸術文化を通じた社会参加を支援する。特に、就労については、福祉的就労から一般就労への移行に対応するため、農業分野を含む多様な就業形態の実現と就業の場の拡大等、企業等との連携を通じた取り組みを推進するとともに、県の物品調達等における障がい者就労事業所への優先発注等により、障がい者の就労の場の拡大を図る。

4 生活困窮者支援の充実

(1) ホームレス自立支援の推進

 ホームレスの自立の支援等については、ホームレスへの巡回相談の結果等も踏まえ、進捗状況や効果を的確に検証しながら、兵庫労働局や市町、民間支援団体等とも連携し、保健・医療の確保、安定した居住場所の確保、就労支援や生活支援の充実など自立に向けた総合的な支援を展開し、実効性の高い取り組みとするよう図る。

5 少子化対策・子育て支援の充実

(1) 少子化対策の総合的な推進

 ワークライフバランスの視点から、女性も男性も働きながら子育てすることが評価される社会構造への変革を図り、21世紀の成熟社会において、子育て・子どもの教育を男女が共に担う家庭像を構築するなど、総合的な少子化対策の展開を求める。
 特に、少子化対策は企業等におけるワークライフバランスの取り組みに左右されるため、連合兵庫・兵庫県経営者協会・兵庫県による「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」、兵庫労働局も加えた四者による「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」が充分機能するよう、ひょうご仕事と生活センターとの連携のもと、ワークライフバランスの実効ある施策展開に力点を置き、労働施策と連携して推進する。
 また、未来の親への支援として、不妊治療に対する支援体制の更なる充実を図る。

(2) 子育て支援の充実・青少年健全育成の推進

 保育所の待機児童解消・保育所サービスの地域格差解消等に向けた取り組みを進めるとともに、「認定こども園」の設置促進、病児・病後児保育、24時間保育などの保育所機能の強化や学童保育の充実等、保育の質の確保・向上に努めるほか、教育や医療も含めた子育て全般に係る経済的支援を拡充するなど、福祉対策から少子化対策への転換を図りつつ、子育て環境の充実を図る。
 また、保育ママ制度の導入・充実等、地域全体で親子の「学び」や「育ち」を支える環境づくりを進めるとともに、青少年を守り育てる県民スクラム運動を充実し、青少年の健全育成を推進する。

6 消費者保護の推進

(1) 消費者行政推進体制の整備

 関係部局間の連絡調整が確実に行われるよう庁内の体制整備を行うとともに、全市町に設置された消費生活センターにおける消費生活相談員等の一層の充実など、必要な支援を図る。

(2) 消費者への情報提供・相談対応の充実

 訪問販売等に関する消費者トラブルや、架空・不当請求等の不法行為による消費者被害の未然防止や被害拡大防止のため、消費者トラブル・消費者被害情報の収集と迅速な情報提供等に努めるとともに、消費生活センターにおける相談能力、相談体制の充実を図る。

Ⅲ 新たな兵庫教育の推進に向けて

1 基礎学力の定着と個性を生かす教育の推進

(1) 発達段階に応じた教育環境づくりの推進

 少人数学級の着実な拡充などにより、読み・書き・計算をはじめとする基礎・基本の学力の確実な定着や、一人ひとりの個性・能力を伸ばすなど、児童生徒の発達段階に応じた教育環境づくりを推進する。
 特別支援教育についても、増加傾向にあるLD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障がいのある児童生徒一人ひとりのニーズに応じた教育・対策を推進するとともに、市町の特別支援教育の支援に取り組む。

(2) 特色ある高等学校教育の展開

 個性を尊重する多様で柔軟な高等学校教育を推進するため、学校の創意工夫を生かした特色ある取り組みや、学びたいことが学べる魅力ある学校づくりのための施策を積極的に展開し、特に、近年、生徒が急増している定時制・通信制高校については、多様化する生徒に対応するため、現状に即した高校づくりを進める。

(3) 県立大学の自律的かつ効率的な運営

 県立大学については、全庁的な行革への取り組みや、少子化という時代背景の中で、地域社会への還元、社会貢献、県政への連携といった視点に立ち、県立大学のあるべき姿を確認しながら自律的かつ効率的な運営を図る。
 また、学生や地域にとってより魅力ある大学とするため、環境防災学科の創設など、学部・研究科等のさらなる個性化・特色化を推進する。

2 豊かな人間性を育む教育の推進

(1) 「生きる力」を育む教育の充実

 子どもたち一人ひとりの豊かな心を育み、主体的に生きる力を育成するため、これまで取り組んできた「自然学校」や「トライやる・ウィーク」等の成果の検証を行い、引き続き、児童生徒の発達段階に応じて、一貫した体験教育や、金銭・ITなど実生活に直結した教育の充実化を図る。
 また、いじめや不登校などの問題行動等に適切に対応できるよう、県立但馬やまびこの郷での取り組みをはじめ、心のケアが必要な子どもたちに対する支援システム並びに教職員の資質向上に向けた各種研修の実施等、人的支援の充実を図る。

(2) 学校における総合的な食育の推進

 食育に係る学校の指導体制や子どもへの指導内容の充実強化に努めるとともに、関係部局とも連携して米飯給食の拡大や日本型食生活・地元産農林水産物の積極的な導入を進めるほか、公立中学校への学校給食の導入推進について調査・検討を行うとともに、栄養教諭を県内全校に配置するなど、学校給食の充実を図り、学校での総合的な食育を推進する。

3 家庭・地域社会教育の充実

(1) 学校・家庭・地域が一体となった教育の推進

 子どもたちを健やかにたくましく育むため、学校・家庭・地域の協働のもと、自然体験、社会体験、芸術体験、ボランティア活動などの体験学習の機会を充実するとともに、情報・環境・福祉・人権・多文化共生など、時代の要請に対応した教育を推進する。

4 学校教育の環境の整備

(1) 教育を受ける機会均等の保障

 家庭の経済力で子供の教育格差が生じることを防ぐため、高校授業料無償化の導入も踏まえて、私立学校を含めた公教育における公費負担を確保することによって教育を受ける機会の平等を図る。
 また、現下の厳しい経済雇用情勢を踏まえ、勤労青年への教育機会確保を図るため、定時制高校の募集定員の弾力的運用に努めるとともに、統合再編に当たっては、通学の利便性等を十分に考慮し、教育を受ける機会が損なわれることのないよう適切な対応を図る。
 一方、通学区域の検討にあっては、地域の実情に合わせて、保護者をはじめとする県民の理解を充分に得ながら進める。

(2) 安全・安心な学校づくりの推進

 県立学校施設における老朽化対策や耐震化の推進と合わせて、市町立学校施設の耐震化促進を支援するとともに、各学校独自の危機管理マニュアルを活用した防犯訓練・防犯教室や学校、家庭、地域が連携した安全マップづくりなど、安全・安心な学校づくりに地域全体で取り組むよう求める。

(3) 教職員の勤務環境の改善

 子どもたちに対する学習指導や生活指導をはじめ、研修、保護者や地域住民との関係づくりなど、多忙化している教職員の勤務実態を踏まえ、勤務時間の適正化やメンタルヘルスケアをはじめとする教職員への支援体制を充実するとともに、業務・研修のあり方を見直すなど勤務環境の改善を図る。

5 芸術文化・スポーツの振興

(1) 芸術・文化の振興

 地域の特色を生かしつつ、地域ぐるみで伝統文化や伝統芸能などを継承するとともに、若手芸術家をはじめとした芸術・文化の担い手を育成し、兵庫の芸術・文化の創造・発信を進める。
 また、県立芸術文化センター、県立美術館、兵庫陶芸美術館、県立考古博物館、県立歴史博物館、県立人と自然の博物館等での多彩な公演や展示などを通じて、県民が芸術・文化に触れる機会の拡充に努めるほか、地域での多様な活動の場づくりを進め、兵庫ならではの豊かな文化の広がりと定着に取り組む。

(2) スポーツの振興

 のじぎく兵庫国体・のじぎく兵庫大会の開催成果を継承・発展させ、地域スポーツの定着、生涯スポーツの振興などスポーツ活動のすそ野の拡大と定着に努めるとともに、総合型地域スポーツクラブの永続的な運営のための支援策を国に働きかけるなど、生涯スポーツ社会の実現に向けた取り組みを進める。

Ⅳ 県民が安全で安心して暮らせる治安体制の充実と危機管理に向けて

1 治安の向上

(1) 総合的な地域安全対策の推進

 「地域安全まちづくり条例」の普及を図り、県民、団体及び事業者相互の連携による「地域安全まちづくり活動」を促進するため、犯罪情報の積極的な公開等を通じてまちづくり防犯グループの活動を支援するとともに、警察OBの有効活用等をより一層進めることによる交番機能の強化などを通じて、地域の防犯体制の充実・強化を推進する。

(2) 犯罪の抑止と徹底検挙

 犯罪のハイテク化や国際化など社会の変化、犯罪の性質の変化に柔軟に対応するため、警察組織・人員の効率的な運用や初動捜査体制の整備など、捜査力・執行力の充実・強化を図る。
 特に、「暴力団排除条例」の適切な運用による暴力団等による組織犯罪への対策を強化し、銃器や薬物の密輸・密売の防止を推進するとともに、経済事犯やサイバー犯罪など県民の身近で発生する生活経済事犯の予防に向け、取締りの強化や関係機関との密接な連携による普及啓発活動の実施に取り組む。

(3) 総合的な交通安全対策の推進

 悲惨な交通事故を防止するため、交通実態の的確な把握・分析を積極的に進め、総合的な交通安全対策を推進する。特に、県民参加型の交通安全活動などを一層推進するとともに、飲酒運転や悪質な駐停車違反の取締り、暴走族の検挙、自転車による事故の防止などに重点的に取り組む。

(4) 信頼される警察行政の推進

 生活者の視点に立った警察活動を展開するため、警察署協議会の適切な運営等を通じ、県民の要望・意見の的確な把握と適切な対応に努め、また、積極的な情報公開により、警察行政の透明性の確保を図るとともに、警察における厳正な監察の実施など、自浄機能の強化を図り、信頼される警察行政の推進に取り組む。

(5) 犯罪被害者対策の充実

 犯罪被害者等の精神的負担を軽減するとともに、再び平穏な生活を営むことができるよう、犯罪被害者等早期援助団体への運営支援等を強化するなど、犯罪被害者等への支援の充実に取り組む。

2 災害対策の推進

(1) 東日本大震災の被災者・被災地に対する支援の強化

 東日本大震災で被害を受けた被災地の早期復旧・復興に向け、被災地・被災自治体への支援を強化するとともに、各種相談体制等の充実を図る。

(2) 防災・危機管理体制の充実

 東日本大震災を踏まえ、地域防災計画を見直すとともに、近い将来に発生が予想されている東南海・南海地震などの自然災害や、感染症、テロ等の危機管理事案、さらには大規模事故災害などに迅速かつ的確に対応するため、全庁的な連携を図る。
 また、被災直後に支援を行うNPOやボランティア団体等の育成を促すほか、県立大学と「人と防災未来センター」の連携を通じた人材育成を進めるとともに、被災支援のノウハウの蓄積及び支援システムの研究を行うよう求める。
 あわせて、行政、警察、消防、保健・医療機関などの県域を越えた広域的なネットワークの構築など、危機管理体制を充実するとともに、県民の生命・身体及び財産を保護するために必要な措置を図る。
 一方、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫などへの対応を徹底するとともに、新型インフルエンザの発生に対しては、県が策定した「新型インフルエンザ対策計画」に基づき、公共交通や学校、福祉施設等、社会的影響の大きい事業者をはじめ、多くの企業等に対して適切な行動計画、業務継続計画を策定するよう指導・助言を行うなど、発生時においても社会機能が維持されるよう必要な対策を図る。

(3) 自然災害への対応

 発生が懸念される東南海・南海地震や山崎断層帯地震等の地震、津波、洪水、土砂崩れ、高潮等の自然災害に備える基盤整備や、システムの構築、災害対応にかかる広域での連携などを進め、「減災」の観点から、ハード整備・ソフト対策が一体となった防災体制の確立に取り組む。
 特に、東日本大震災や、平成16年の台風第23号、平成21年の台風第9号災害等の教訓を踏まえ、山の管理の徹底や治山事業の推進等も含めた総合的な治山・治水対策を推進する。

(4) 阪神・淡路大震災からの復興のフォローアップ

 被災高齢者等の生活復興やまちのにぎわいづくりなど、震災復興における残された課題に対応するとともに、復興の過程で生まれた先導的な取り組みの定着・発展に努めるほか、「ひょうご安全の日」の普及などにより、阪神・淡路大震災の経験と教訓を災害文化として継承・発信するよう求める。

Ⅴ 産業の活性化、雇用対策の充実及び国際化の推進に向けて

1 産業活性化対策の推進

(1) 活力ある兵庫の産業の構築

 ものづくり産業を支える中小製造業や基幹産業、大学、大型放射光施設、京速コンピュータ「京」等の知的資源を有機的に結合することにより、ナノ、情報通信・エレクトロニクス、健康・医療、環境・エネルギー、ロボット(人工知能)などの技術分野を重点として産業の活性化を図るとともに、産業集積条例の活用等により、国内外の優れた企業、研究所の誘致に取り組むなど、産官学連携や地域活性化総合特区の活用を図りながら、地場産業の活性化、雇用創出を推進する。
 また、但馬・丹波地域をはじめ、中山間地域等への企業誘致へのサポートの充実など、企業立地の推進には関係部局が連携して取り組むよう求める。

(2) 中小企業の自立と地域経済・雇用の活性化の推進

 (財)ひょうご産業活性化センターや工業技術センターの機能強化・充実を図り、中小企業における開発力・技術力を高めるとともに、知的財産の創造・蓄積・活用を支援し、情報通信や防災など次代の兵庫経済を担う多様な成長産業の創出を図る。
 さらに、県内の事業所の大部分を占める中小企業へのサポートが必要不可欠であることから、中小企業の人材確保・経営支援・技術支援・海外展開支援などについて、新たな施策の構築を図り、中小企業の自立と地域経済・雇用の活性化を推進する。
 また、第2次行革プランに基づく投資事業費総額の削減を着実に実行する中で、公共事業依存型の地域経済からの脱却を進めていくとともに、省エネルギー等、新しいライフスタイルや価値観に対応した実需要の創出など、切れ目のない経済・雇用対策を実施し、地域経済・雇用の活性化を推進する。

(3) ものづくりブランド戦略等の推進

 産地の個性や蓄積を生かした魅力あるブランドの創出支援や多様な地場産業、ものづくりの情報発信の強化など、ものづくりブランド戦略を推進する。特に、アピール力を高めインパクトある商品名、洗練されたラベル・パッケージなど、顧客・市場志向の商品開発や販売戦略の支援、売り込み商品を顧客ニーズに対応して改良する取り組みの支援を行うなど「売れるものづくり」を推進する。

(4) ものづくりを支える人材の育成

 ものづくりの優れた技術・技能を有する匠や企業内人材の育成、技術の産業化を担うプロ人材の育成など、ものづくりを支える技術・技能、特に、科学技術人材の厚みと資質の向上を図るとともに、「ものづくり大学校」の活用やソフト事業(未来の匠、ひょうごの技体験講座等)を確実に実施し、学校教育段階から職業生活の各段階に応じた総合的・体系的な人材育成の仕組みの構築に取り組む。

(5) 地域とともに成長する商店街づくりの推進と中心市街地の活性化

 商業者、NPOなどによる商店街を活用した地域の活力、コミュニティ機能の再生を図る取り組みを進めるとともに、地域資源を活用した魅力あるオンリーワン商店街や、農商工の連携等による地域とともに成長する商店街づくりを支援するほか、空き店舗の活用や空きビルの再生などによる中心市街地の活性化を進める。

2 雇用就業対策の推進

(1) セーフティネットの構築

 雇用維持や労働法令の遵守などについて、企業に対して積極的に働きかけるとともに、製造業現場への派遣の見直しや安易な解雇の禁止などについて、適切な措置を講じるよう国への要望を進める。
 また、厳しい雇用情勢に的確かつ迅速に対応していくため、離職に伴って住む場所を失った人たちの住宅確保や生活資金・能力開発資金の貸し付け等の離職者支援制度について、その拡充に積極的に取り組むとともに、緊急対策として実施している雇用創出事業については、真の雇用就業につながるよう、農林水産、福祉等との密接な連携を図るとともに、適切なフォローアップを行いつつ、尊厳をもって働くことのできる雇用の場の創出を図る。

(2) ワークライフバランスの推進

 「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意」、「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」を尊重し、大企業だけでなく、中小企業も含めた取り組みの中で、働き方の見直しによる仕事と生活の調和、地域における子育て支援、若者の自立支援、介護世代への支援を推進する。
 特に、保育所機能の強化、学童保育の充実などはもとより、女性も男性も、互いに人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、その個性と能力を発揮することができる男女共同参画社会づくりを進め、女性が働きつづけられる社会構造への変革を図る。

(3) 雇用対策の充実

 中高年者、若年者、障がい者などのそれぞれのニーズに対応し、かつ企業ニーズ、社会ニーズに沿った機動的・効果的な職業訓練の実施を進め、就業力の向上を図るとともに、求人・求職の適切なマッチングの推進やワークシェアリングによる雇用機会の拡大等により、雇用の創出・確保を図る。
 特に、若年者の雇用の安定については、少子化対策の観点からも積極的に対策を進めることとし、就業体験等による職業意識の涵養や、若者しごと倶楽部等におけるキャリアカウンセリングなど、福祉・教育・雇用分野の担当が課題解決に取り組む体制を構築し、推進する。
 また、障がい者の雇用については、障害者雇用率制度を中心として一層の雇用拡大を図ることとし、企業に対する制度の普及・啓発、採用後のサポートや特例子会社設立への支援等を推進するとともに、福祉関係機関やハローワークとの連携を図りながら、障がい者の特性や希望に応じた職業訓練、職業指導に積極的に取り組む。
 更に、高齢者の活力と経験・知恵を積極的に地域づくりに活かせるよう、雇用対策の一環として取り組みを進める。

(4) 非正規雇用の待遇改善

 勤労者の生活の安定・充実、社会保険の空洞化の防止等の観点も踏まえ、非正規雇用から正規雇用への転換を促進するとともに、正規雇用と非正規雇用の均等待遇・均衡処遇の実現に向け、賃金のみならず、教育訓練機会の均等についても、公的教育訓練機関と企業内教育訓練との連携により取り組む。

3 東日本大震災による影響への対応

 東日本大震災による経済・雇用情勢への影響に対しては、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、本県の産業活動と雇用促進の持続・発展に向けた取り組みを進めるとともに、被災地に対する積極的な支援を図る。

4 交流の拡大

(1) ひょうごのツーリズムの振興

 多彩な地域資源を生かした交流人口の拡大による地域活性化に向け、関係団体や市町等と連携し、全国からの観光客誘致を図る大型観光交流キャンペーンや地域ぐるみの交流の仕組みづくりへの支援等を推進し、さらには広域連携の一層の推進などにより、ひょうごのツーリズムの振興を図る。
 また、県内経済の活性化や雇用創出につながる誘客促進に向けた取り組みの強化を進める。

(2) 国際交流の推進

 友好・文化・経済等の各分野において多彩な国際交流を展開するとともに、外国人県民との相互理解を深め、外国人材の活用も視野に入れた地域の活性化を図る。
 特に、海外事務所を現地に密着した事務所として最大限活用することなどにより、友好・姉妹州省都市である中国広東省などアジアを中心に経済・観光交流を促進し、友好親善のみに止めるのではなく、本県が強みを有する環境ビジネス面での交流を促進するなど、経済的なつながりに発展するような取り組みを推進する。
 また、中国からの訪日観光旅行に関する個人観光査証の要件緩和等に伴い、増大することが予想される訪日外国人について、本県への誘客を促進する取り組みを推進する。
 さらに、外国人県民が日本人と同様に能力が発揮できる環境整備を図るため、国際理解・人権、交流、生活、雇用、まちづくり、保健・医療、住宅、教育、行政への参画等の各分野で、外国人県民が抱える課題解決に向けた取り組みを進め、国際性豊かな共生社会の実現を目指す。

Ⅵ 環境適合型社会の実現に向けて

1 総合的な環境施策の推進

(1) 環境適合型社会の形成

 環境適合型社会の実現に向けた意識の醸成に努め、県民・事業者・行政の自発的・継続的な環境配慮行動の実践に向けた取り組みを支援・促進するとともに、県自身も、すべての施策の企画立案段階から環境に配慮した事業展開を図り、環境適合型社会の形成に取り組むよう求める。

(2) 地球温暖化防止対策等の推進

 国が示した温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、またエネルギーの安定供給と持続的な経済成長の実現に向けた省エネルギー対策の推進などの課題に対応するため、エネルギー多量消費事業者等の温室効果ガス排出抑制の自主的な取り組みを促進し、また取り組みが十分でない企業に対する指導を強化するなど、産業部門における排出削減を積極的に進める。
 また、県自らの環境率先行動の実践をはじめ、家庭や企業での省エネルギー行動などを推進し、さらに太陽光、風力、バイオマス、小水力発電等の自然エネルギー導入への取り組みについて拡大を図る。

2 循環型社会の構築・地域環境負荷の低減

(1) 循環型社会の構築

 廃棄物の発生量増加に伴う最終処分場の不足や、不法投棄による環境の悪化に対応するため、市町のごみ有料化の促進等によるごみの排出削減や、地域の特性に応じたリサイクル・システムの構築を推進するとともに、地域住民と連携した不法投棄の未然防止・早期解決などを進める。

(2) 地域環境負荷の低減

 大気や騒音の環境基準を達成していない地域を中心とした交通公害対策をはじめ、地域的な環境問題の解決を図るとともに、有害化学物質対策として、特に法規制の対象となっていない物質について調査研究を進め、県内における環境中の実態把握と排出削減に向けた事業者等の自主的な取り組みを推進する。

3 生物多様性の保全

(1) 森林・里地・川・海等の自然再生の推進

 県民総参加による森づくり、様々な主体の参画と協働による里地・里山の管理・再生、瀬戸内海の豊かで美しい「里海」としての再生など、自然環境の保護と再生をめざす取り組みを一層推進する。

(2) 野生動植物の保全と共生

 中山間地域を中心にシカ等の野生動物による農林業被害等が大きな問題となっている中、農林業者が安心して生産活動を営めるよう、人と野生動物の豊かな共存をめざす一方、シカ、イノシシ等の適切な捕獲・管理を進めるとともに、人間生活や生態系への悪影響を与える外来生物の駆除対策を推進する。

Ⅶ 食料自給率の向上と活力ある農山漁村づくりの推進に向けて

1 食料政策の総合的な推進

(1) 戸別所得補償制度による農業政策の転換

 今年度より本格導入される戸別所得補償制度の円滑な実施に向け、モデル対策の結果を十分検証するとともに、生産力向上と農地の有効利用を図るには、県民一体となった農政推進が重要なことから、農業従事者のみならず県民全体への同制度に対する理解促進を図る。

(2) 安全・安心・良質な農林水産物の安定供給の実現

 消費者が安心して農林水産物を選択できるよう、農薬等の適正使用管理の徹底を図るとともに、人と環境にやさしい栽培技術等の導入などを促進する。
 また、生産者に対する食品表示適正化の指導や、安全で衛生的な処理加工の管理手法の導入を推進するとともに、生産履歴の記帳やトレーサビリティシステム、農業生産工程管理手法(GAP)の導入に向けた取り組みを進める。

(3) 食と農への理解促進と食品リサイクルの推進

 住民・消費者等、特に子どもを対象とした農業体験活動・食体験活動や、生産者と消費者の交流活動を通じて、食と農への理解の促進を図り、地産地消を推進するとともに、特に、次世代に対する「食育」の観点から、また日本型食生活実践の観点から、米をはじめとした県産農林水産物の学校、老人福祉施設、病院などの給食への100%導入に向けて取り組む。
 また、食料自給率向上の観点から、フードバンク運動やドギーバッグ運動などの取り組みへの支援を通じて、食品廃棄物の発生を抑制するとともに、食品残さの飼料化など、食資源の有効利用を推進する。

2 農林水産業の活性化

(1) 6次産業化の推進

 農林漁業者による2次・3次産業分野への働き掛けを促進するため、地域の農林水産物の特徴を生かした商品の開発・生産、市場の開拓、人材育成など、生産から加工・流通・販売までの取り組みに対する支援を図る。
 また、環境やエネルギーなど新分野への取り組みとして、遊休農地等を活用した資源作物の栽培や、また稲わらや間伐材等の未利用資源を含むバイオマス資源を活用した燃料や製品の生産を支援するなど、農山漁村をバイオマス活用の先進地域とするための施策を推進する。

(2) 農水産物ブランド戦略の推進

 消費者や実需者のニーズを把握し、ブランドとしてふさわしい品目の選定や品質の改善、新品種の開発などを通じて、他県産よりも優れた商品の生産を図るとともに、地域団体商標の活用など、効果的な宣伝活動を実施することにより、全国の主要都市や中国をはじめとする海外への販路拡大を積極的に推進する。

(3) 担い手対策の推進

 農林漁業・農山漁村の担い手対策として、家族経営、集落営農、法人経営等の多様な主体による規模拡大や効率化を積極的に支援するとともに、加えて、Uターン・Iターン希望者や地元企業の農林漁業への新規参入に対する技術研修や財政的支援など、意欲と能力のある者の参入を促進するための施策の充実を図る。

(4) 林業の振興

 作業路網の整備、高性能林業機械の導入を促進するとともに、拠点的な加工・流通施設、乾燥施設等の計画的な整備を通じて、素材生産から加工・流通までの効率化を図り、林業を通じた森林管理のサイクルが機能し、木材の安定した供給が行われる体制を構築するよう求める。

(5) 水産業の振興

 資源管理型漁業を基本とする豊かな漁場づくりを推進するため、水質の保全を中心とした環境保全施策だけではなく、生物多様性の確保と水産資源の回復のための環境保全施策を強化するとともに、藻場・干潟等の浅場の再生などの環境再生施策を推進するほか、アサリ等の二枚貝を食害するナルトビエイなどの有害生物への対策を推進する。
 また、産地の販売力強化と流通の効率化により、漁業経営の安定化を図る。

(6) 畜産業の振興

 口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の発生、まん延を防止するため、職員の資質向上も含めた家畜防疫体制の強化を図るとともに、伝染病対策という観点から、近隣府県等との広域連携による対策に取り組む。

3 総合的な農山漁村振興対策の推進

(1) 農地・農業用水の保全

 農地や農業用水は、農業生産の基盤としてだけでなく、水源涵養等の公益的機能を有しており、これらの機能を維持する観点から、農地、農業用の水路、井堰、ため池等の整備・保全等の取り組みに対して支援を図る。
 また、整備した優良農地を適切に確保するため、土地利用関係制度を適切に実施するとともに、公共事業実施に当たって、優良農地を安易に転用することのないよう取り組む。

(2) 総合的な活性化対策の推進

 農林漁業体験や自然体験など、農林漁業・農山漁村が有する教育、保健・休養等の多面的機能に着目した体験活動の促進への支援を図る。
 また、農山漁村における就業機会の拡大に努めるとともに、生活道路や情報通信基盤の整備等を図り、都市から地方への移住・交流の促進、集落の維持・活性化を推進する。

Ⅷ 快適に暮らす社会環境づくりの推進に向けて

1 社会基盤の整備・保全

(1) 社会資本ストックの有効活用

 生活者の視点に立って生活の質を高めるという観点でものやサービスが提供される社会構造への変革を促すとともに、環境に配慮した新しいふるさとづくりを進めるため、土地をはじめとする県保有資産や、これまで蓄積してきた道路などの社会資本ストックを有効に活用し、地域の魅力アップを図る。
 施設の耐久度を把握・評価し、将来の劣化を予測して維持管理・更新を計画的に行うアセットマネジメントの導入を進めるなど、「つくる」から「つかう」プログラムを推進する。
 また、維持・更新に当たっては、着実かつ戦略的に進めていくため、民間の資金、経営能力、技術能力を活用した仕組み・手法を積極的に取り入れるよう求める。

(2) 総合的な交通施策の推進

 地域交通を確保する公共交通優先システムが推進されつつある中で、「ひょうご21世紀交通ビジョン」を実現するため、交通政策を専門に担当する庁内横断的なセクションを設置し、交通事故防止、交通量の削減、公共交通の利用促進、交通安全対策、高齢者の移動性確保など、地域の課題や政策と関連づけた総合的な交通政策を推進する。
 特に、県民の社会参加の機会確保や、地球温暖化防止と低炭素社会実現に向けた公共交通のあり方が重要であることを踏まえ、CO2削減に配慮した新たな視点で交通政策の展開を図る。

(3) 情報基盤の整備

 高速インターネット通信や携帯電話など、県域全体における情報通信基盤の整備を推進する。
 特に地上デジタル放送については、デジタル放送への完全移行期限を迎える中、すべての県民が放送を受信できるよう、必要な対策を積極的に推進する。
 また、行政事務の効率化や情報セキュリティの強化、情報格差の解消などを的確に進めつつ、教育・産業・文化・医療・福祉などの各分野で積極的なICT活用を図る。

2 都市の再生

(1) 都市機能の適正立地の推進

 コンパクトでにぎわいのあるまちづくりをはじめ、地域の実情にあった最適なまちづくりを進めるため、市街地への都市機能の集積やニュータウンの再生など、広域的な視点を取り入れた市町の都市計画マスタープランの再整備に対する支援を求める。
 また、「大規模集客施設の立地に係る都市機能の調和に関する条例」に基づく大規模集客施設の適正な立地を効率的に推進し、地域社会の健全な発展を図る。

(2) 都市緑化・緑地保全の推進

 全県での県民まちなみ緑化事業の展開や、県立都市公園をはじめとする県民の憩いの場の整備・運営を通じて、緑あふれる美しいまちづくりを推進する。
 また、防火や水害低減など、防災能力の強化という観点からも、都市の緑化促進を図る。

3 安心して暮らせるまちづくりの推進

(1) ユニバーサルデザインのまちづくり

 本県が先駆的に進めてきた「福祉のまちづくり」を推進し、すべての県民の社会参加を促進する視点から、バリアフリー新法に基づき、公共交通、公共施設等の社会基盤の整備・リニューアルを進めるとともに、民間施設の整備・リニューアルについても、同様の協力を求め、高齢者や障がい者が安心できる公共空間のバリアフリー化を一層強力に推進する。

(2) 生活安心住宅の確保

 持続可能な安全かつ安心できる住生活が確保されるよう、長期優良住宅の普及促進をはじめ、「省エネ化」「バリアフリー化」「耐震化」を目的とした既存住宅の活用・改修を促進するとともに、特に、高齢者、障がい者、子育て世帯も住みやすい、優良な賃貸住宅の整備を推進する。
 また、生活・住宅困窮者にとって、公営住宅は重要な「セーフティネット」であり、効率的、効果的な県営住宅の整備を進め、新婚・子育て世帯の優先入居や、低所得者、高齢者への支援など、県民のニーズに対応した管理運営を図る。

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