北上 あきひと議員が質問(教育委員会)を実施

令和2年度決算特別委員会 【教育委員会】

質問日:令和3年10月14日(木)

質問者:北上 あきひと 委員

1.里山の文化的景観保護について

農政環境部局審査では、環境や防災面から里山保全の取組み状況やその重要性について質しましたが、ここでは文化的景観保護の観点から質問をさせて頂きます。

川西市黒川の里山には800年以上の炭焼きの歴史があり、「菊炭」と言われる高級炭の優れた生産地です。その歴史は延宝検地帳にクヌギ林の面積が記される等、古文書による裏づけもあります。千利休が茶道に利用したとも言われる黒川の「菊炭」の生産は、その量は減ったものの現在も続いているのです。炭焼きに使用するためのクヌギの輪伐によってパッチワーク状の里山景観が維持されている地域は、全国的に他にはなく、河井雅雄氏編著中央公論新書「ふしぎの博物誌」には川西市黒川一帯の里山が「日本一」であると紹介され、また兵庫県立大学名誉教授の服部保氏は「日本一の『最高の里山』であるとともに『最後の里山』でもある」と指摘されています。

その地域の人々の生活と生業、風土に根ざして形成されてきた川西市黒川の里山景観は、日本の文化と歴史を理解するうえで極めて重要でありますが、身近で一見するだけではありふれた景色であるがゆえに、持続的な保全を図る策が充分には講じられておらず、乱開発等が危惧される状況です。

県教育委員会におかれては、地元住民や森林ボランティア、市教育委員会等とも連携しながら、文化的景観の本質的価値を評価するとともに、持続的な保全と地域活性化資源としての活用に向けた取組を展開して頂きたいと考えますが、ご所見をお伺いします。

 

2.阪神北地域新設特別支援学校の整備について

川西市丸山台への特別支援学校新設については、川西市猪名川町在住の関係者が、大きな期待を寄せておられます。猪名川町や川西市北部の児童生徒にとって、伊丹市瑞ヶ丘の「こやの里特別支援学校」への日々の通学時間は、片道80分を超える場合もあり、大きな負担であることが課題になっていました。本整備事業は、県立「こやの里特別支援学校」における、児童生徒増加による過密化を解消することが主な目的だと認識するものですが、通学時間の負担解消にも大きく寄与するものです。円滑な整備を、切に願います。

2024年4月開校に向け、鋭意準備を進めておられるところだと存じますが、コロナ禍による影響もあったと推察するところです。新設予定地周辺の住民に特別支援学校新設への充分な理解を得、開校後においても児童生徒との交流や教育活動への参加が図られることが望ましいと考えます。加えて、グランドや体育館をはじめとする学校施設の地域開放も積極的に行って頂きたいと思うところです。周辺住民への説明等について、その進捗状況をお伺いします。

また、障がいのある児童生徒の特性や教育的ニーズを的確に把握し、適切な指導・支援を行っていくためには、施設面での充実と、熱意と優れた技量を兼ね備えた教員が確実に配置されることが必要だと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

 

3.インターネットによるいじめへの対策について

2011年10月に起こった滋賀県の中学校2年生のいじめによる自殺がきっかけになり、2013年6月「いじめ防止対策推進法」が成立し、同年9月に施行されました。「いじめの防止等のための基本的な方針」が策定されるとともに、いじめの防止等に関する基本的施策として「インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進」が定められています。

インターネット等のSNSでの拡散の影響は大きく、いじめに利用された場合においては、被害者に与える苦しみは計り知れず、取り返しのつかない事態に及ぶこともあり得ます。北海道旭川市の中学生がいじめを受けた挙句に凍死したことや、東京都町田市では、学校で一人に一台配布されたタブレット端末が原因で、いじめの被害児童が、自ら命を絶ったことなどが報道されています。また、身近なところでも、インターネットを通じたいじめ問題を見聞するところです。子どもたちがスマートフォン等を使ってインターネット空間(SNS)でどんなことをしているか、認知することすら容易ではありません。保護者の不安は大きく、教職員にとっても解決への取組の困難さに直面されていること聞き及ぶところです。

インターネットを禁止することは現実的ではなく、必要な規制を十分に施すとともに適切なルールのもとでの活用が求められ、その環境整備を果たすことが大人の責任だと考えます。インターネットを通じたいじめ対策について、その取組の現状と課題について、お伺いいたします。

 

4.コロナ禍における子どもと教職員の課題について

(1) 子どもの心のケアについて

厚生労働省の統計によると、本年7月までに自殺した小中高校生は270人(小学生7人、中学生75人、高校生188人)であり、年間で過去最多となった去年の同じ時期を29人上回りました。心が痛みます。

教育委員会におかれては、アンケート調査を昨年度に3回、今年度に1回実施されました。その結果から、本県においてもストレスを抱えている子どもが一定程度存在いると分析され、子どもたちの状況を踏まえた継続的な支援に取組んでおられるものと認識するところです。

コロナ禍が長期化するなか、先の見えない不安がストレスとして蓄積され、これまで深刻な問題を抱えていなかった子どもも含め、生きづらさを抱えているのではないかと、危惧します。子どもたちの変化を見逃さずに子どもたちに寄り添った対応に努めて頂くとともに、子どもたちが自ら「SOS」を発する術を身に着けられるよう支援していくことが求められるのではないでしょうか。コロナ禍における子どもの心のケアについて、これまでの取組と今後の課題をお伺いします。

(2)コロナ禍における教職員のサポート体制について

昨年度、新型コロナウイルス感染拡大の影響で精神疾患になり、学校を休んで90日以上長期療養した県内公立学校(神戸市立学校等を除く)の教職員は25人に上ることが、教育委員会の発表で明らかになりました。感染不安や感染対策に伴う業務増が主な原因とみられるとのことです。

かねてより、教職員の業務が多忙であることは大きな課題となり「働き方改革」が迫られていました。加えて、コロナウイルス感染拡大によって、学校現場は、突然の長期休校、感染対策の徹底、オンライン授業、子どもたちの心ケア等々、めまぐるしく異例の対応に追われて来たのではないでしょうか。長引くコロナ禍が、教職員の疲弊を大きくしていることは明らかです。教職員が心身の健康を保持し、意欲的に教育活動に取組める環境を整備することは極めて重要であり、今一層の手立てを講じることが求められていると考えます。

教育委員会は、学校教職員の労働環境の現状をどのように分析されるのか、またコロナ禍において業務負担が増えている教職員へのサポート体制は、どのように行なっていくのか当局の所見を伺う。

 

5.校則と生徒指導の在り方について

県内公立高校に在籍する生徒の保護者から「学校からの指導で、そもそも茶系の地毛である頭髪を黒く染めを続けているが、負担だ」との相談や、公立中学校に在籍する生徒の保護者からは「寒い時期にも関わらず、防寒着の着用が制限されている。体調が心配だ」との相談を受けました。いずれも、校則に基づく指導だと推察します。

かつて私たちが子どもの頃に使用したクレパスや絵の具には「肌色」がありましたが、現在はありません。絵の具やクレヨンなどの販売をしている「ぺんてる」は1999年9月の生産分から「肌色」の表記を止め、「サクラクレパス」は2000年に「肌色」の表記を「うすだいだい色」に改めました。名称変更の理由は、肌の色を「この色だ」決めてしまうことへの疑問が寄せられたことを契機に検討重ね、肌の色を限定的に決めてしまうことは、肌の色が異なる人のことを否定してしまう恐れあるとの認識に及んだからだそうです。

各学校において校則を策定し、それを遵守することは、子どもの成長にとって意義があるものだと考えます。しかし、校則の内容に合理性があるのか、社会通念に適うのか、健康への影響は及ばないのか、またその策定や運用が真に教育的になされているのかを、常に問い見直すことが必要ではないでしょうか。先に述べた「肌色」を巡る対応のように、です。

教育委員会におかれては各校に校則の検証を求められ、2019年度には全ての県立高等学校が見直し作業を行い、6割で改定があったと聞き及ぶところですが、未だ解決するべき課題は大きいと認識するものです。特に、主権者教育の観点や、「子どもの権利条約」に定める「意見表明権」尊重の観点から、子どもたち自身が校則の策定や運用に主体的な関与をすることが望ましいと考えます。

校則と生徒指導の在り方について、当局のご所見をお伺いします。

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