北上 あきひと議員が質問(総括)を実施

令和2年度決算特別委員会 【総括】

質問日:令和3年10月19日(火)

質問者:北上 あきひと 委員

 

1.今後の財政運営について(財政)

今回の決算特別委員会においては、2020年度決算に対する評価をはじめ、新型コロナウイルス感染症対策経費、財政基金、県税収入、内部管理制度等、財政運営について多角的な議論がなされました。

特に、新型コロナウイルス感染症については、昨年3月にはじめて県内で感染者が確認して以降、今もなお県民生活や経済活動に多大な影響を与えています。2020年度の一般会計は、新型コロナウイルス感染症対策の経費増により、歳出総額は2兆5,636億円、歳入総額は2兆5,736億円となり、いずれも過去最大規模となりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績悪化や民間消費低下によって県税収入が当初予算を大きく割り込む一方で、制度拡充された減収補填債等の財源確保、年度途中の歳出削減等の取組を実施した結果、実質収支は前年度並の2千3百万円の黒字、実質単年度収支は1千2百万円の黒字となり、2020年度決算の収支均衡が図られたという点については一定評価したいと考えています。

しかしながら、2022年度から2027年度にかけて総額330億円の要調整額が見込まれ、また、震災関連県債や行革期間中の財源対策債の県債残高も依然高い水準にある中で、本県の財政運営はなお厳しい状況にあると考えられます。

この厳しい財政状況の中、新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、様々な県政課題を解決していくためには、持続可能な行財政構造を確立させることが重要であり、これを実現させるために我が会派から再三申し上げているとおり、税金の使い道を徹底的に見直す「質の改革」が必要と考えます。

これまで以上にスクラップ・アンド・ビルドを徹底し、不要不急または費用対効果の低い事業を中止するとともに、但馬空港の滑走路延長や県庁舎等再整備等の大型プロジェクトの再検討をはじめとした投資的経費の調整を図っていただくなど、齋藤知事が公約に挙げておられる財政調整基金の積み増しや総額330億円の要調整額解消に向けて、より堅実な財政運営に努めていただくことを切に求めるところであります。

齋藤知事にとっては、これから初めての予算編成に向けた検討を実施されるところかと思いますが、2020年度決算をご覧になって率直にどのように感じたのか評価と課題をお伺いするとともに、それを今後の財政運営にどう活かしていこうと考えておられるのか、知事のご所見をお伺いします。

 

2.「誰も取り残さない」県政の推進について(福祉)

知事は今後の県政推進についての所信において、「これから4年間、私の使命は、躍動する兵庫を創り上げること」だとし、そのために大切にする基本姿勢を三つ挙げられました。「第1に開放性を高める、第2に誰も取り残さない、そして第3に県民ボトムアップ型の県政を進めるということ」であります。いずれも共感するものですが、私が最も惹かれたのは「誰も取り残さない」という姿勢です。

私事で恐縮ですが、私はかつて知的障がい者授産施設の職員でした。政治を志したきっかけは、「誰もが人間として大切にされる、ひとり一人の命が輝く社会を作りたい」という思いからであります。「誰も取り残さない」政治をめざして参りました。二元代表制のもと、志を共有する知事とともに県政を推進できることを僭越ながら嬉しく思うところです。

知事は、「多様な地域に暮らす全ての県民の皆様が、安心して育ち、学び、働き、遊び、幸せに生きられる、そんな誰も取り残すことのない、人に温かい兵庫」をめざすとされています。地域が多様であるとともに、県民も多様であります。「全ての県民」が「幸せに生きられる」「人に温かい兵庫」を実現するために、政治が特に光をあてるべきは、社会的に弱い立場、少数の側にある県民ではないでしょうか。弱いが故に少数であるが故に、理不尽な扱いを受けることがあっては決してなりません。

例えば、兵庫県は全国に先駆けて(1998年4月)、無年金外国籍障害者・高齢者等福祉給付金事業を、県内市町との共同事業としてスタートされました。その趣旨は、国民年金法の一部改正により国籍条項が撤廃されてなお、制度の間に置かれ国民年金が受給できない在日外国籍障害者・高齢者に給付金を支給し、生活の安定と福祉の向上を図ることであります。この制度の創設と運用の改善によって、老齢基礎年金と障害基礎年金1級に相当する無年金外国籍県民への救済措置は講じられており、高く評価するものです。加えて知事は、「兵庫在日外国人人権協会」等から寄せられた、未だ解決には至っていない障害基礎年金2級に相当する無年金外国籍県民への救済措置に関する公開質問状において、「知事就任後、財政状況を早急に点検した上で、改善に努力していきます」と回答されておられ、今後の前向きな取組を大いに期待します。

このような事例を含め、「誰も取り残さない」県政を推進していくにあたっては、障がい者など社会的に弱い立場、少数の立場にある県民の小さな声に心を寄せることこそが重要だと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

 

3.コロナ禍における事業者等への支援について(産業労働)

昨年の自殺者は全国で21,081人、その内県内は888人であります。コロナという病から、県民の命と健康を守らなくてはなりません。加えて、コロナ禍による社会経済的な影響によって奪われる命があってはならないと、強く感じるものです。県民が不安や困難を抱えておられる今こそ、政治・行政がその役割をしっかり果たさなければなりません。昨年春以降、私自身も県民の方々から多くのご相談やご要望を受けてきました。相談内容は、コロナ禍によってもたらされたであろうドメスティックバイオレンスや不当解雇等、そして最も多いのが県民の生活苦、事業者の経営難です。

事業者の経営難への対応として、例えば、飲食店向けの支援については、「感染拡大防止協力金」の取組が、今月21日迄分までは継続されることが明らかになっているものの、以降についてはどのような支援が図られるのかどうかは現時点で定かではありません。コロナウイルスの感染拡大が抑制されたとしても、飲食業が俄かに活況を取り戻すかどうかは見通せない状況にあります。地域に根差した飲食店は、県民の暮らしを支える大切なインフラであり、その経営者や従業員の多くはこれまで真面目な納税者として社会を支えてこられた方々です。

様々な職種・業種において、コロナ禍の影響が及んでおり、その影響は長引くものと予想します。今後、新たな内閣のもとに、実情に即した効果的な政策が打ち出されることを願うところであり、政府の支援策の着実な履行を県に求めるものです。加えて、政府の支援策だけでは補いきれない面については、県として事業者の経営等を支えるためによりきめ細やかな支援策や相談業務を独自に展開して頂きたいと考えますが、知事の決意をお伺いします。

 

4.芸術文化施策の振興について(県民生活)

芸術文化施策については、竹内英明委員が「芸術文化の多面的な価値の可視化」等を質すとともに、私からは「里山の文化的景観保護について」の質問をさせて頂きました。

「芸術文化は人間にとっての生命維持装置だ」とは、芸術文化までもが新型コロナウイルスに蝕まれるなかにあって、アーティストへの大規模支援を打ち出した、ドイツのメルケル首相(当時)の言葉であります。本県では芸術文化が、阪神・淡路大震災において傷ついた人々の心を癒し元気づけ、また復興への原動力にもなりました。その経験をふまえ、2004年に「芸術文化振興ビジョン」が策定され、その後もビジョンの検証を重ね、昨年度においては「第3期ビジョン」が策定されたものと認識するところです。芸術文化がライフラインの一つであるとの認識は、県民に徐々に広がりつつあるように感じます。

神戸大学大学院国際文化学研究科藤野一夫研究室の調査によると、兵庫県内における、昨年2月から12月の文化芸術関係者、個人・団体の損失は、少なくとも590億円が見込まれることが明らかになりました。コロナ禍を生き抜き、そしてコロナ禍が去ったとして、私たちが人間らしく生きていくために、また平和でゆたかな未来を拓くために、芸術文化の支えは必要不可欠であります。感染症拡大防止のために活動の制約はやむを得ない面があるものの、芸術文化の光を消してはなりません。

芸術文化関係者の生存と活動を支え、あまねく県民が芸術文化に親しみ自ら活動する機会を確保して頂きたいと考えます。芸術文化立県ひょうごに相応しい芸術文化施策の今後一層の展開を期待するものですが、知事のご所見をお伺いします。

 

5.医療・公衆衛生の基盤である保健所の体制強化について(福祉)

新型コロナウイルス感染症への対応については、石井健一郎委員が防災部局にその体制の拡充を質す等、我が会派から幾つもの質問や提案をさせて頂きました。予想されていなかった感染症のパンデミックは、防災、医療、保健のみならず、県政の様々な分野に緊急的な措置を迫り、限られた人員と資源を駆使しながら、種々の工夫と努力で対応されていることを理解し、職員のご奮闘に心から敬意を表するものです。

我々は、保健所業務の円滑化にも繫がる、コロナウイルス感染症入院医療費一部自己負担の廃止を求めましたが、当局においてはその必要性を認め、全国知事会を通じて要望するほか、改善に向けて鋭意努力するとのことであり、大いに期待を致します。積極的疫学調査の一時的な弾力的重点化の判断は、保健所の現状に鑑みて妥当であると考えるものの、その際における無症状濃厚接触者だと自ら判断した県民のPCR検査は促進するべきです。第6波に備えて当該費用への助成検討を、改めて強く求めます。

さて、昨年6月、兵庫県医師会は「現在、地域医療構想により合理化された医療提供体制が全国的に構築されつつある。さらに、保健所の統廃合や人員整理等で公衆衛生業務が集約された。この体制は不測の新興感染症に対して、柔軟な対応が困難であることが今認識されつつある」との見解を明らかにされました。本県においても、県立保健所はかつて26ありましたが、現在は12まで削減されています。1994年に従来の保健所法が廃止され、保健所の数や人員を縮小し、その機能を弱体化してきたものと認識するところです。

差し迫るであろう第6波に備え、必要な対策を機能的に実施するとともに、長期的な視座で、県民の命と健康を守る体制を構築して行く必要があるのではないでしょうか。知事は先の本会議において、「100年前のスペイン風邪では、公衆衛生に関する基盤整備の重要性が認識され、貧困問題改善のための雇用環境整備や生活協同組合設立への気運が高まった」と述べられました。コロナパンデミックを経験し、私は医療や福祉、保健衛生の分野にまで過度の市場原理を持ち込んだことを省みて、住民の命と健康を支える土台をしっかり整備することこそ、政治行政の使命だと改めて痛感しています。

そこで、本県の医療・公衆衛生の基盤である保健所の今後の体制について、どのように考えているのか、基本的なお考えをお伺いします。

 

6.人権尊重理念が貫かれる組織のあり方について(企画県民)

本決算委員会において「LGBTQ等セクシャルマイノリティの相談窓口設置について」質問をしたところ、大変前向きな答弁を頂きました。タイムスケジュールは示されなかったものの、相談窓口設置に向けた取組が力強く進展するものと大いに期待をします。

さて、私はこれまで、人権の尊重は行政運営の土台であり、県の人権行政は、単に人権啓発事業を展開することのみにとどまらず、全ての施策展開において、人権尊重の理念が貫かれるよう促す役割を担うべきだと訴え、そのための組織体制の改革を提案してきました。

人権課題は、同和問題、障がい者、女性、子ども、高齢者、外国人、アイヌ、ヘイトスピーチ、拉致問題等々、多岐にわたります。加えて、インターネット上の人権侵害やコロナウイルス感染症にまつわる差別など、事態の複雑化・深刻化は増しているのではないでしょうか。

県のあらゆる施策遂行の過程においては、法令や財政面についての精査がなされると考えますが、人権尊重の理念についても、あらゆる施策展開において貫かれるべきであります。そのため、県庁組織の改革や充実を求めるものです。例えば人権担当を企画・総務部局に配置する等であります。

本年3月の予算委員会における同趣旨の質問に井戸前知事は、人権の理念と「福祉の理念と共通するところが強いので福祉部局に置いている」が「ご指摘いただいたように、企画部局に置いたほうがいいのかどうか」、「今後十分検討させていただければと思っている」と答弁されました。

改めて、人権尊重理念が貫かれる組織となるよう、県庁組織の改革・充実を求めますが、当局のご所見をお伺いします。

 

7.教員確保に向けた取組について(教委)

本決算委員会では、コロナ禍における「教職員のサポート体制」等について質問いたしましたが、「教員不足」や教員の「多忙化」「長時間労働」は、教育現場における長年の課題であり、その解決に向けた取組の必要性は、コロナ禍にあって益々高まっていると考えます。その問題意識を当局と共有していることは、委員会での議論を通じて確認したところです。

先日も現場から、「年度当初から必要な教員数に対して欠員があり、年度途中での産休、育休、病休等の代替教員の確保は、一層難しい」との声を聞きました。また、免許を持たない教科の授業を受け持つ「免許外教科担任制度」については、「当該教員の負担や子どもと保護者の心情からすると、何とか解消したいのだが、特に実技系教科の教員が不足しており困っている」との声も、聞き及ぶところです。

県教育委員会は先日、新年度の教員採用試験の結果を公表されました。報道によると、4740人が受験し1029人が合格。倍率は前年度より0.8ポイント低い4.6倍であり、過去31年間で最も低く、受験者数はピークだった2012年度の7673人から約4割減少しました。優秀で熱意や誠意に溢れる教員の確保は、子どもや保護者はもちろん、多くの県民の願いだと思います。「教員離れ」の傾向が指摘されるなか、現行の「教員採用試験」の在り方に改善するべき点はないのでしょうか。

また今後、休日の部活動地域移行や法改正に伴う定年延長(2023年~)等、教員の「働き方改革」に関わる大きな動きがあるなかで、如何に教員を確保し、より子どもたちひとり一人の学びや育ちを的確に支える学校を構築していけるのかどうか、教育委員会の手腕が問われるのではないでしょうか。

教員確保に向けた取組について、現場の実態に即した対応を切に願うところでありますが、当局のご所見をお伺いします。

 

8.動物愛護担当部局と県警察との連携強化について(健康福祉)

警察と他の行政機関との連携を深め、実態に即したより柔軟かつ効果的なものとすることによって、例えば、児童虐待、ドメスティックバイオレンス、依存症対策、廃棄物の適正処理等において、一層の県民サービス向上を果たすとともに、県民の安心安全を確保して頂きたいと考えます。

その中でも、特に、公安委員会部局審査において、犬猫等の拾得状況と課題について質しました。

警察署に届けられた財布等、金品の拾得物は、遺失物法に基づいて適切な処理がなされます。犬猫や小鳥等、生き物の拾得物については、遺失物法に加えて動物愛護管理法等の法令の遵守も求められるのです。現在、警察と県動物愛護センターや市町等との連携によって対応がなされておりますが、拾得物の警察への届出については、365日24時間の対応が求められるものの、他の行政機関の執務時間とは異なるために課題が生じています。加えて、犬猫等の拾得物について、民間団体が預かって怪我の治療を施したり、里親探しに取組まれている事例を紹介しましたが、その取組は所轄警察署からの保管委託に基づくものであり、動物愛護の観点から素晴らしい内容であるものの、全く無償であり安定的に継続していくには課題があると認識するものです。警察と動物愛護担当部局とにおける、より丁寧な連携が求められるのではないでしょうか。

そこで、行政機関、特に動物愛護担当部局と県警察との連携強化によってより効果的な取組になるものと考えますが、県警察との連携強化に対する当局のご所見を伺います。

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