竹内 英明議員が質問(企業庁)を実施

令和2年度決算特別委員会 【企業庁】

質問日:令和3年10月15日(金)

質問者:竹内 英明 委員

 

1.企業庁・地域整備事業会計の土地を時価評価していないことについて

(1)売却前の土地資産である「未成事業資産783億円」の65%にもあたる506億円の進度調整地について低価法を適用せず、原価法を適用して簿価で計上しているのに、そのことを注記しないことについて

原価法と低価法とは、棚卸しの資産金額の評価方法で、原価法とは購入した際の取得原価を元に計算する方法、低価法とは、取得原価と時価を比較してどちらか低い方を元に計算する方法である。低価法では資産の実際の価値が著しく変化した際に、資産の実態を正確に捉えるための評価方法である。

地域整備事業会計の課題としては、企業庁の土地造成事業は基本的には企業債を発行し借金して開発し、それを売却していく事業モデルだ。土地の価格は、土地の取得費に企業債の利息や土地の管理費といった費用が加えられ簿価が構成されていくので、すぐに売れないと簿価があがってしまう。いわゆる長期保有土地の問題だ。

地域整備事業会計が保有している土地、貸借対照上の未成事業資産は、資料1の貸借対照表に記載の通り783億円であるが、その内訳は、①のとおり、分譲用地277億円と進度調整地506億円である。進度調整地はまだ造成せず、販売していない土地で造成の計画を調整している土地のことである。事実として、分譲用地は時価評価つまり低価法で、進度調整池は簿価つまり原価法で評価されている。

ところが、地域整備事業会計の決算附属書類、これは資料2の①に写しを掲載記載しているが、注記事項として「たな卸資産の評価基準及び評価方法」は「低価法」とのみ記載されている。

未成事業資産783億円の65%にもあたる506億円の進度調整地について、低価法ではなく、原価法により簿価で記載しているのに、注記には低価法だけである。これだと土地全部を低価法で時価評価していると読めてしまう。

ある公認会計士に確認したところ、未成事業資産に、低価法を適用している分譲地の価額と簿価を適用している進度調整地の価額があり、評価方法が異なり、しかも、原価法での評価が過半を占めるのであるから、少なくとも決算書には、原価法と低価法を、重要事項として注記すべきだと指摘された。

公認会計士の言葉をかりることなく、未成事業資産の評価方法は、「低価法と原価法」の二つを併記することが正しい記載だろう。いや「原価法と低価法」かもしれない。まず2020年度の決算附属書類には、原価法を追加注記すべきだと考えるがどうか。

 

(2) 基準見直し決定から10年、なぜまだ時価評価により低価法の適用逃れを続けているのか。

なぜ来年度決算では「低価法」だけでよいのか。それは法令では土地といったたな卸資産は時価評価による『低価法』が義務付けられているから。時価評価しない簿価による原価法は認められていない。

資料2の②地方公営企業会計制度の見直し、③地方公営企業法施行規則に記されている。これは、2011年度に地方公営企業法施行令等が改正され、民間の企業会計制度との整合性を図る観点等から1966年以来、企業会計制度の全面的な見直しを行うものであった。大きな制度改正だけにその施行は3年猶予期間をへて、2014年度から適用されることとなった。

私は最初にこの法令改正があったときに総務省の公営企業課に確認した。→県が進度調整地も含まれるという未売出地がたな卸資産に含まれること、重要性の乏しいものには入らないことであった。

そして制度改正のあった2014年度、兵庫県ではどうしたか。分譲用地(貸付用含む)を時価評価して、簿価との差である196億円を特別損失として計上した。しかし、進度調整地はなぜか時価評価せず簿価のまま残した。それが今も続いている。

時価による低価法に加えて、簿価による原価法も残っているのに、決算附属書類には、低価法だけが記載されてきた。先の公認会計士は、上場企業が敢えてやっていたら監査人も資格を失いかねない行為だと言っていた。

では、進度調整地の帳簿価格はどうなのか。資料1の③の進度調整地の簿価の内訳を見てほしい。土地取得費が426億円、支払利息が74億円、管理費が6億円含まれ合計で506億円。取得価格と簿価は80億円も乖離している。利息が簿価に加えられるので土地を長期保有すればするほど簿価と乖離するということ。人口減少などで地価が下落するリスクもある。時価評価しなければ実態は全くわからない。

基準見直し決定から10年たつ、なぜ進度調整地を含む未成事業資産全体を時価評価を行って低価法を適用しないのか。これは低価法の適用逃れといえるがなぜこんなことを続けているのか。

 

(3)地方財政健全化法に基づく土地の時価評価とそれをもとに算定した2020年度の貸借対照表について

これは私が個人で時価で評価しなさいと言っているわけではなく、法令遵守を指摘しているだけである。

資料1の④をみてほしい。貸借対照表では783億円の未成事業資産が時価評価では467億円となっていることを記載している。差し引き316億円、含み損を抱えているということがわかる。

なぜ時価評価の価格がわかったのか。実は企業庁は土地の時価評価をしていないようにみせて実際は毎年行っている。しかも2014年度の新しい企業会計基準策定よりも5年前の2009年度に施行された地方財政健全化法の規定によって。12年も前から。

資料2の④をみてほしい。「未売出土地収入見込額」についての金額や根拠法令を記載している。本県では未成事業資産の土地の時価評価そのもので、467億円ということだ。

なぜこの数値を公表するなどして、県民や県議会に地域整備事業会計の実態を明らかにしないのか。

それより、私は、467億円とちゃんと時価評価していことが驚いた。

実は、かつて財政担当部局のある人が私に、『将来負担比率では不正はしていない』と強調した。裏を返せば、実質公債費比率ではそうではないということでその事実は財政状況で指摘したが、将来負担比率の算定においては、企業庁も全ての土地をルール通り時価評価して報告していたということだ。これはいいことだ。

しかし、316億円もの含み損があるということを公表したいか。しかし、法を守る立場から決算において、たな卸資産は低価法で評価するというのは私が決めたことではなくて、国が決めた法治国家の義務である。選択の余地はない。

広島県や明石市などでは2014年度に債務超過を公表、当時大きく報道もされている。兵庫県は債務超過ではないのに、当時、時価評価をしなかった。またそのことを公表もしなかった。しかし、もう実態は明らかだ。

これだけ指摘しても今すぐ適正化に踏み込めないと頑ななので、企業庁に企業債の引受を通じてお金を貸している金融機関との取引の面から取り上げていきたい。

 

(4) 企業庁(地域整備事業会計)が東京証券取引所に上場していると仮定すれば、株価はストップ安、価格は4分の1、監理銘柄指定となってもおかしくないこと。

決算では法令に基づかない簿価を用いて、地方財政健全化法に基づく将来負担比率の算定では時価評価で県の監査や総務省に報告している。これを民間ではなんというか。「二重帳簿」状態だと。

こういうのが発覚すると、東京証券取引所に上場していたら株価はストップ安、この時価評価回避といった行為は結構重いことだと考えられるので、上場廃止基準に該当する恐れがある銘柄として監理銘柄に指定されるだろう。

資本が411→95億円くらいになると株価は4分の1になってもおかしくない。しかし、債務超過ではない。きちんと時価評価をすれば、上場は維持されるだろう。

しかし、今の御時世、こうしたコンプライアンスについては、金融庁は特に厳しい。企業庁は、企業債の引受先である金融機関等に対してこうした会計処理(二重帳簿状態)、低価法の不適用は法令違反であることの説明を金融機関に説明しているのか。公表されている貸借対照表が実態を表していないという事実はおそらく金融機関も知っていて、気づいていないフリをしているだけだと思う。

念のため、企業債を引き受けている金融機関に土地、たな卸資産の評価が低価法によらず原価法を用いていること、その結果、資本は300億円程度が棄損される見込みだということくらいは説明しているのか確認したい。

 

(5)時価評価回避による資本の過大算定についての斎藤知事の受け止め

企業庁にも人事異動がある。事務引き継ぎのときにこうした法令違反の話を聞いたら結構怖い話だと思う。本来は2014年度で時価評価を適用して特別損失を計上していたら管理者もこんな質問を受ける必要もなかった。

こうした話については、斎藤知事も中身を聞けば驚かれるのではないか。斎藤知事の最初の企業庁の事業レクチャーの際に、管理者が一般会計との資金のやりとりのほか、この「時価評価問題」についても説明するといわれていたが、300億円以上も時価評価だけで資本が消えることとなる話だ。「オープン」を施策運営の第一に掲げられている知事はどんな反応であったのか、何か指示があったのか。

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