行財政運営方針の見直しに係る課題と検討方向に対する意見開陳

「行財政運営方針の見直しに係る課題と検討方向」に対する意見開陳

ひょうご県民連合議員団を代表し、「行財政運営方針の見直しにかかる課題と検討方向」に対する、我が会派としての意見を述べます。

●基本姿勢
それでは最初に、我々の財政運営に関する基本姿勢について述べます。
本県の財政状況は、昨年度は収支均衡を保持したものの、今後も社会保障関係費の増加や震災関連県債などの償還、新型コロナウイルス感染症の影響等により、引き続き厳しい状況が見込まれています。そのため、限られた財源の中、より徹底した「選択と集中」を図っていくことが必要です。
また、次のステージに向けて県政を着実に前へと進めていくためには、無駄のない筋肉質な行財政体質へと転換、定着させなければなりません。その上で、「県民のニーズ」に応え、「豊かさを実感できる新時代の兵庫づくり」を進めなくてはなりません。
ひょうご県民連合は、「スリムで機動力のある行財政体質の構築と県民の豊かさの実現」に重点を置いた取組を求めていきたいと考えています。

次に、各分野の取組に対する意見を述べていきます。

●財政フレーム
まず、財政フレームについて意見を述べます。
これまで、税収見込みについては、国の「中長期の経済財政に関する試算」における成長実現ケースの経済成長率を採用し、これに則って県税収入も機械的に上がっていく試算としてこられました。新型コロナウイルス感染症による消費の低迷や企業業績の悪化、回復等、中長期的な影響が見通せない中での将来推計は非常に困難なことは理解しますが、先の委員会での答弁では他府県がどのように見込んでいるかも調査した上で、試算の前提条件も含めた財政フレームのあり方について検討していくと述べられましたが、説得力のある堅実な財政運営の見込みを立てていただきたいと考えます。

●投資事業
次に、投資事業について意見を述べます。
当初予算の通常事業費は地方財政計画の水準を維持している一方で、防災・減災、国土強靭化緊急対策事業や緊急自然災害防止対策事業等の別枠事業の実施により、決算では地方財政計画との乖離幅が拡大傾向となっています。有利な財源のある別枠事業を最大限活用することは、結果的には財政の健全化に資すると考えますが、適切な投資事業の規模について十分に検討すべきと考えます。
また、社会基盤整備プログラムや各種分野別計画に基づき、県民ニーズを的確に捉え、頻発する自然災害や社会基盤を取り巻く課題への対応など、緊急かつ重要な事業への重点化を図り、着実に事業を実施とありますが、特にこれから着工する大型事業、代表的なものを挙げると県庁舎等再整備事業や但馬空港の滑走路延長などに対する的確な判断、あるいは先送りなども必要と考えます。

●但馬空港
特に、但馬空港については、我が会派からは、これまで何度も指摘しておりますが、但馬地域への交通アクセスが格段に改善している中において、空港の存在意義がますます問われています。
そのような中で、羽田からの直行便や各地からの就航に対応することを目的とした滑走路の延長計画に400億程度と推定される多額の投資をこれまで検討されてきましたが、それに見合う経営改善の見通しがたっていないことは、非常に危ういものと考えています。
事業をゼロベースで見直すことを公約に掲げられた知事が、この問題に対して十分に検討され今後の見通しを示されることを期待します。

●事務事業
次に、事務事業について意見を述べます。
「選択と集中」を基本に、令和元年度からの3年間で、539の事業を廃止し、291の事業を新規に創設するなど、スクラップ・アンド・ビルドを進めてこられたことについては一定の評価をしています。
また、一般事業費は、平成30年度に比べて一般財源ベースで約15%削減したと聞いていますが、県民生活に直結する医療・福祉・教育等に関しては慎重に対応するなど、事業費の配分については十分に考慮していただきたいと思います。

●収入の確保
次に、収入の確保について意見を述べます。
まず、ネーミングライツの導入促進については、企業等に対するより積極的なPRはもちろん、更なる魅力向上に向けた取組をお願いしたいと思います。
また、ふるさとひょうご寄附金については、県として寄附金で応援してほしい事業を掲げてプロジェクト方式を導入して、法人からの寄附も受け入れつつ、寄附者の意向もより具体的に反映していることは大いに評価できます。応援したくなるような事業の発案・募集、参画と協働をより一層進めていただきたいと考えます。
さらに、新型コロナウイルス感染症による消費の低迷や企業業績の悪化、回復に対する的確な対応を望みます。

●公営企業
企業庁の所有する事業進度調整地について、「ひょうご情報公園都市」については、事業化に向けた具体的な検討を始めていくと聞いていますが、すでに多額の利子が加算されている土地であり、早期の対応が必要です。
また「播磨科学公園都市」については、平成30年度の行革特別委員会から3年経てもなお事業化の展望がありません。先の決算特別委員会での質疑では、現状の土地利用計画をどうしていくのかを見直す時期に来ており、まずはこの利用計画について検討するとされましたが、処分について検討せざるをえない状況と考えます。
その際、県有環境林としての活用を検討されるのであれば、取得経緯や開発当初の経緯等も検証し、また本来の資産価値を明らかにする必要があると考えます。

●職員
次に、職員についてです。
まず、定員については、平成30年4月1日を基本に配置するとしていますが、課題として、新型コロナウイルス感染症対策において保健師の増員が必要と当局も認識されておられます。感染症のみならず災害対応等、県民の命と暮らしを守るために必要となる適切な職員定員を確保していただきたいと考えます。今後も増えるであろう県への多様な行政課題への対応や、今回の新型コロナウイルスのような突発的な課題への対応など、県民の行政ニーズに対して、行政サービスの低下に繋がらないよう、適切な職員数の検討をお願いしたいと思います。
また、人材育成については、先日の決算特別委員会における当会派からの質問にもありましたが、この先の女性副知事の登用に向けて、女性職員の積極的な登用やキャリア形成に対する支援を充実させていただきたいと考えます。

●働きやすい職場の実現
次に、働きやすい職場の実現、ワーク・ライフ・バランスについてです。
超過勤務の縮減では、職員一人1月当たりの平均超過勤務時間は減少傾向にあるとされています。しかし、これは新型コロナウイルス感染症や災害対応分を除いた実績であり、新型コロナウイルス感染症や災害対応分も含めた超過勤務の実態がどうなっているかは大変気がかりです。
新型コロナウイルス感染症は初めて県内で確認されてから既に1年半以上が経過し、今後も暫くは対応が必要と考えられることから、対応する職員に過度な業務量が長期にわたって集中することのないよう十分な配慮が必要です。またこれらの対応の相当数を応援職員で行っている状況では、応援を出した職場での超過勤務の状況を十分把握する必要があります。長く続いた行革の厳しい定員削減による余裕のない人員配置の影響が、コロナ禍での職員の超過勤務に表れるのではないかと考えることから、コロナ対応のための超過勤務の直近の実績も併せて明らかにした上で、適正な定員や人員配置、災害への応援体制の見直しも含めて、超過勤務の削減を検討されるべきと考えます。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年度急速に広がりをみせた在宅勤務については、これまで未経験であった職員が経験することでテレワークへの理解促進に大いに寄与しました。コロナ収束後においても、引き続き柔軟で多様な働き方を推進していただき、生活に潤いを与える休暇・休業制度の取得、子育て・介護と仕事の両立など、働きやすい職場の実現についても積極的に取り組んでいただきたいと考えています。
一方で、在宅勤務の普及は、職員の時間外労働の実態把握を困難にしているのではないかとも考えられます。いつでもどこでも仕事できるという便利で使いやすいテレワークシステムは、柔軟な働き方を可能にする一方で、公私の別を曖昧にし、数字に表れる超過勤務時間以上に、職員に時間外労働を強いる可能性もあるため、その点に十分配慮した上で在宅勤務の更なる推進に取り組むことが必要と考えます。

●地方分権への取組
コロナの感染防止対応のなかで、地方自治体の存在感が増大し、地方自治体が自らの判断と権限、財源で取り組む分権型社会の必要性が認識されました。
今後、兵庫県として国へ、更なる事務・権限の移譲を提案していくと同時に、県と市の関係においては、役割分担を明確にし、市町で実施するほうが効果的であるものについては、財源と共に移行を積極的に行うべきと考えます。
質疑では、国に対してはあらゆるチャネルを駆使して国に権限移譲を求めていくとした一方で、市町への移譲については慎重に検討していく、と答えておられますが、これまでの都道府県としての権限に固執せず、県民にとって何が最善かを市町と十分に協議し、財源と共に権限の移譲を進めていただきたいと考えます。

最後に、まとめの意見を述べます。
我が会派の平成30年度の行革の検証の際には、11年にわたる行革により収支均衡を達成し、財政面で次のステージに向けた新たなスタートラインに立てたと述べています。
さあ、これから、という時期に、誰も予想できない新型コロナウイルス感染症の影響により、本県の財政状況は、収支では将来的に再び330億もの要調整額が発生する見込みで、非常に厳しい状況が続いていくものと予想されています。
このような中で、県民の理解を得ながら、この行財政運営方針を進めていくためには、何よりもまず、財政の透明性を高め、県民に分かりやすく説明することだと思います。
一般会計と企業庁との間での賃借関係、外郭団体等の基金の集約と預託、さらに、企業庁の進度調整地の評価等、県の財政の全体像の把握を困難としている様々な要因について整理すべきものは整理し、県の財政の姿を見える化する取組を進めていただきたいと考えています。
今回の意見開陳での提案が、今後の行財政運営方針の見直し案で十分に反映されることを期待し、意見表明を終わります。

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