中田 英一議員が一般質問を実施

質 問 日:令和4年6月7日(火)

質 問 者:中田 英一 議員

質問方式:一括答弁方式

1 有機・減農薬米の利用拡大について

コロナ禍やウクライナへのロシア侵攻により世界の流通は不安定さを露呈し、気候変動に伴う農産物の不作や途上国での人口爆発も予測される中で、食料安全保障すなわち食を海外に依存することの危うさが益々現実味を帯びてきた。かねてから日本農業は、地球温暖化や頻発する自然災害、化学肥料や飼料の海外依存、生産者の減少・高齢化の進行などによる生産基盤の脆弱化などが課題となっている。
こうした課題を克服し、生産力向上と持続性の両立を実現する食料システムを構築するため、昨年5月、農林水産省はみどりの食料システム戦略を策定した。その中では、2050年までに農林水産分野でのCO2ゼロエミッション化を目指すことや、化学農薬使用量の低減、化学肥料使用量の低減、有機農業の取組面積拡大、食品製造業の労働生産性の向上などの目標が掲げられている。このうち有機農業の具体的な取組目標数値は、2018年で国内の耕地面積の0.5%しかない有機農業の取組面積を25%に拡大すると高く設定されており、この達成には力強く後押しするイノベーションが必要である。
県では、1973年に有機農業生産者や食や環境に関心のある有志による有機農業研究会が発足し、有機農業の全国大会・国際大会を開催されるなど、早くから取り組みが進められた。1993年には県独自で有機農産物認証制度を創設し、2002年には環境負荷を低減させるコウノトリ育む農法の確立・普及を図っている。2009年には環境創造型農業を計画的に推進するため兵庫県環境創造型農業推進計画を策定、2019年から第2期計画を策定し推進しており、全国的に見ても先進的な状況と言えるが、それでも2021年の有機農業取組面積は目標面積に届いていない。
地元で比較的大規模で耕作される農業者に話を聞くと、付加価値が高く、環境にも身体にも良い有機や減農薬に転換したいが、手間に見合った価格で消費者がついてくるか不安が残り、社運をかけて設備投資を伴う大々的な転換を決断するには躊躇してしまうとのことである。こういった意欲的な農業者の背中を押すことができれば、有機・減農薬農産物の生産者数・生産数量・耕作面積が増加し、それによって有機・減農薬農法における技術向上・スマート農業機器の開発・市場の活性化が促進され、ひいてはかかる農法の生産コストの低減や県農産物全体のブランド化・価格向上につながっていくと考えられる。
そこで、県として有機・減農薬農産物の安定した購入先をつくり出し、農業者が生産に取り組みやすく、設備投資にも踏み切れるようにするため、学校給食に採用することを提案する。
学校給食での有機農産物の利用拡大については、令和3年度予算特別委員会で北上委員が質問されたが、調達量やルートの確保が困難であること、コストがかかることから恒常的に実施するのは課題が多いとの答弁があった。近年県下各市町議会においても同様の質問が取り上げられているが、同様の理由により実現に至っていない状況にあるように思われる。
しかし、野菜については数量やルートの確保が難しいというのも理解できるが、米であればより計画的な生産、長期保存も可能であり、ルートについても県の外郭団体である学校給食・食育支援センターでの一括調達が可能であることから十分に確保できると考える。また、コスト面での課題に対しては、小さな取組みからはじめてもいいのではないか。例えば、年間で1人1食分の場合、私の試算によれば県内の小学校で約21t、中学校で約11tが必要量となる。この場合の慣行米との価格差を先進的に全量を有機米に切り替えた千葉県いすみ市の事例(㎏あたり187円)から計算すると、1回分の価格差はおよそ600万円となる。コウノトリ育むお米にもある減農薬米であればさらに価格差は縮まり、低予算で導入できると考えられる。
全国的に見ればいすみ市のように取り組みを始めている自治体はあるが、都道府県単位で一体となって取り組んでいるところはまだないようである。豊かな農地と大消費地を抱える兵庫県ならではの取り組みであり、次世代を担う子ども達を大切にする、知事の姿勢にもマッチしていると感じている。
そこで、環境創造型農業の推進を担う農林水産部として、学校給食を活用した有機・減農薬米の利用拡大についての現状認識と今後の方針について、当局の所見を伺う。

2 県内農産物の輸出促進について

コロナ禍によりインバウンド需要は一気に立ち消えたが、その裏で食材・農産物の輸出額は増加した。観光客として来日できない分、現地で日本食材を求めるニーズが高まったものと考えられる。
国は農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円にする目標を掲げている。その中で米・加工品の輸出については目標額を52億円(2019年)から125億円(2025年)に設定し、中食・外食を中心とした需要開拓の他、パックご飯や米粉といった加工品の市場開拓も挙げているが、この数値は需要調査に基づいており、日本米への期待が高いことを示している。
2021年の農産物輸出先を見ると、1位の中国と2位の香港で輸出金額の約40%を占め、4位の台湾を含めると約50%を占める。これらの地域へは、りんごなどの果物の輸出が中心だが、米の需要が増加傾向にあり、健康志向の高まりから有機農産物への関心と購買力も高まっている。1問目で取り上げた有機・減農薬米の付加価値は海外にも通用するものであり、需要の増加にともない輸出に向けた好機であると考える。
また、中国の海関(税関)総署は、2001年のBSE発症を受けた日本産牛肉の輸入禁止措置について、2019年12月に生後30ヶ月以下の骨なし牛肉に対して解除すると発表した。その後の具体的な開始日程や手続き等については公式発表に至っていないが、引き続き再開に向けた2国間での協議の場は継続されており、近く再開される可能性もあるなど、県が世界に誇る但馬牛・神戸ビーフも合わせて輸出促進の準備を進める必要がある。
そこで、有機・減農薬米や神戸ビーフといった付加価値の高い県産農産物の、海外への輸出拡大の戦略をどのように考えるか、また、中国では、友好提携先でもある海南省が2025年に関税を撤廃し自由貿易港となる計画が進んでいる。これまで県は県産農産物等の販路開拓について、事務所がある香港を中心に進めてきたが、海南省が第二の香港として輸出戦略上大きな拠点になる可能性も考えられることに対する方針について、当局の所見を伺う。

3 教員不足に対する取り組みについて

文部科学省が昨年度初めて行った全国調査では、4月の始業日の時点で公立の小中学校や高校などで合わせて2,558人の教員不足が明らかになり、今年度も厳しい状況が報告されているとして、文部科学省が特別免許や臨時免許制度の緩和および活用を緊急で通知したとの報道があった。
昨年注目を集めた♯(ハッシュタグ)教師のバトンプロジェクトは、文部科学省が現職の教員に、教職の魅力等についてSNSを通じて発信してもらおうと始めたが、現場の声としては、ただでさえ児童生徒が学校にいる時間帯は給食時間も含めて休憩が取りにくく、児童生徒の下校後に会議や部活指導、明日の授業準備を行うといった長時間残業が常態化するなかで、小学校の英語教科化やプログラミング教育の必修化で負担が増え、さらにはコロナ禍におけるICT活用のための研修や準備、消毒作業も付け足され、教員の負担はさらに重くなっているというものであった。
こうした状況が報道などで一般に知られるようになり教員を目指す人数が減少したこと、団塊世代の大量退職にともなって若手教員志望者が大量に採用され、正規の教員を目指す非常勤講師が減少したこと等が教員不足の要因と考えられる。
県でも令和3年5月時点で中学校57人、小学校22人の教員が不足していたことが確認されている。また、年度途中に体調不良や産休・育休などで教員が休職することが当然想定される。欠員分の業務負担は同じ学校の教員にのしかかり、多忙化が進むなど、さらなる教員志望者の減少や未来を担う子供達の教育環境の悪化につながるなど、悪循環に陥ってしまう可能性がある。この悪循環を断ち切るには、まず教師不足を生じさせない取組みが必要である。
教育委員会では、令和3年度の採用試験から、かねてより要望のあった非常勤講師としての勤務経験を加点事由として明記するなど、正規採用には及ばずとも非常勤講師として県で働くことの魅力増進に努めている。さらに、非常勤講師が充分に集まらなかった場合にも県下自治体の教員確保がスムーズに進むよう、講師登録制度を全県で統一し、情報共有しやすい環境を整えて学校と登録者のマッチングや登録者募集の強化に取り組んでいる。
しかし、現状、講師登録制度に登録されている方だけでは欠員を埋めることができず、埋まらない分は各市町教委や学校長などが退職者などに頼み込むなどしてかき集め、それでも足りない場合がある。非常に厳しい状況であるが、それでも未来を担う子ども達のために充実した教育環境を提供することが我々大人の責任である。
そこで、県で教員を目指す者をさらに増やすため、兵庫の教育の魅力や取り組みを十分に発信するとともに、文部科学省が示した特別免許や臨時免許制度の活用も一つの手段と考えるが、教員不足に対する取り組みについて、当局の所見を伺う。

4 県営住宅駐車場の外部開放について

2012年に同内容の質問をしたがその進捗について確認する。
外部開放は、県営住宅に整備された駐車場区画について、住人の高齢化や車離れ等により契約されず空いたスペースを有効活用するため、時間貸しや月極駐車場として住人以外の外部利用者に貸し出す取り組みであるが、当時の貸出実績が136区画だったのに対して、令和4年3月末時点で661区画と、この10年で525区画増加している。その陰には外部開放を進めるために指定管理者にインセンティブを付与する制度を確立するなどがあったと聞いている。
県民の資産である土地の有効な利用の推進であって非常に喜ばしい。しかし、まだまだ全体の利用率は約60%にとどまり更なる推進が求められる。
県の方針では、空き区画のうち20%は住民用の区画として確保する、つまり空き区画の80%を上限に外部開放を進めるとのことである。そうであれば、2台以上空き区画のある住宅に関しては全て外部開放を行い広く募集をかけていくべきであるが、10年が経過してもなお297住宅中47住宅の駐車場しか外部開放に至っていない。中には、郊外に立地しており、そもそも需要がないという場合も考えられるが、市街地で近隣に駐車場があるような住宅、すなわち需要が見込まれる事例も見受けられる。
伸びない原因の一つには、自治会等の承諾が得られないという場合が考えられる。県営住宅の設置目的は県民生活の安定と福祉の増進であり、住民生活を阻害することは避けなければならないが、現にこれだけの外部開放が広がっており、外部開放を実施しても住民の生活を阻害しない事例が多く積みあがっている。にもかかわらず、自治会等の反対を理由として外部開放にできていないとすれば、既に開放している住宅住民との不公平も生じてくる。
別の原因として、例えば指定管理者のホームページを見ても駐車場が外部に貸し出されていることを見つけることはできないといった告知不足もあるように思う。
新知事のもと、県営住宅駐車場については公平性の観点からも原則として外部開放を実施するというルールを徹底する方針を出し、広くPRを行うことで、県有資産の有効活用をさらに強く進めていくべきと考える。また、外部開放を実施している住宅に関しても、この間、外部開放の区画数があまり伸びていない。当初は需要予測の範囲で開放台数を決定したと考えられるが、実績に応じて増加させていくため、価格交渉を含め駐車場管理事業者等に積極的な働きかけを行っていくべきであると考える。
以上を踏まえ、県営住宅駐車場の開放区画を拡大していく取り組みについてどのように対応していくか、当局の所見を伺う。

5 医療圏をまたぐ病院統合について

今年3月に厚生労働省から示された第7回の第8次医療計画に関する検討会資料では、コロナへの対応が明記されつつも、従来のとおり人口減少に向けて地域医療構想を引き続き着実に推進するとされている。
県内でもこれまでにいくつかの医療機関の再編統合等が実現・進行しているが、全て同じ2次保健医療圏域内で行われてきた。神戸市北区の北神地域と三田市域の急性期医療確保に向け、両市が設置した検討委員会は、現在の済生会兵庫県病院(神戸市北区)と三田市民病院について、再編統合が最も望ましい、場所は両病院の中間地点が望ましいとする報告書を3月25日に両市長に提出した。
この内容が実現することになれば、三田市民病院が有していた病床が、三田市が属する阪神圏域から神戸市北区の属する神戸圏域に移転することになり、阪神北準圏域で不足している高度急性期病床について、若干数担っていた三田市民病院分のさらなる減少という圏域県民の命に直結する決定が、三田市と神戸市の2市のみによって行われるという不合理が生じるのではないかと考える。
そこで、圏域をまたぐこの統合の進み方について県としてどのように対応するつもりか。また、主に県中部地域以北では阪神北準圏域のように高度急性期病床の数が不足気味であり、これに対応するのは広域医療行政を担う県の役割であるが、命に直結する高度急性期病床の計画に沿った充足についてどのように進めて行くのか、当局の所見を伺う。

6 地球アトリエ構想について

県立有馬富士公園は有馬富士をはさんで北と南にまたがる広大な公園で、南部に整備された子供向け遊具の充実した公園は家族連れに大人気で、コロナ禍にも多くの来場者があった。
一方で北側の公園は、広い芝生広場が整備され、利用者数は多くないものの、ボール遊びや凧揚げなどのびのびと過ごせる空間として親しまれている。
その広場の端の窪んだところに新宮晋氏の風で動く彫刻がずらりと設置された風のミュージアムがあり、この隣に1.5ha約30億円の予算を投じてアートセンター・アトリエ・カフェレストラン・劇場などを備え、自然と芸術を体験できる施設地球アトリエを建設する計画が平成28年に提唱され、昨年より事業実施されてきた。
しかし、コロナ禍による行動変容等の利用者ニーズの変化や設置後の運営の見通しを見極める必要が生じたこと等を理由として、造成工事への着手がストップしている。
まず、運営に関しては、県が運営を委託する指定管理者が自前で寄付金を毎年2870万円集めることを想定した収支計画となっているうえ、コロナ禍による経済状況の悪化等を勘案しても持続可能性が低いと感じられる。また、コロナ禍を経て、こうしたハコモノといわれる施設整備への投資をより抑制する観点からも一度立ち止まることは妥当な判断であると考えている。
しかし、一方で、2025年の大阪万博やその後も外国人観光客の流れを定着させることを目指し、県下でもさまざまな取り組みを進めるなかで、阪神間からのアクセスも比較的よく開放的な空間に計画される地球アトリエ構想は、その一つになり得ると考える。
そこで、できるだけ早期に決断し進める必要があり、また、構想については、持続可能性の観点から、特定の人や団体ありきの制度・運営ではなく、若手芸術家も含めた幅広い県民や観光客が自然と芸術に触れ、交流が生まれる機会を創出できるような拠点の整備にとどめるような軌道修正を加えるべきと考えるが、当局の所見を伺う。

7 人と自然の博物館コレクショナリウムについて

県立人と自然の博物館は、平成4年にホロンピア88のパビリオンを活用して設立された、人と自然の共生をテーマとした博物館であり、ひとはくの愛称で地元にも親しまれている。開館当初から、本館での展示だけでなく、県内に博物館を届ける活動に取り組み、現在では移動博物館車ゆめはくによって県内外を巡り、本物の魅力を訪問先に伝えるなど、地元三田市民を始め、県内各地域から愛される博物館として運営されてきたと理解している。さらに、多くの研究員を抱える研究機関でもあり、研究活動をベースとして、資料の収集や収蔵管理、展示、セミナーなどの生涯学習、シンクタンク活動など多方面にわたって力を入れている。
開館から30年が経過し、これまで収集してきた貴重な資料やコレクションの収蔵スペースが手狭になる中、開館30周年記念として、展示機能を併せ持つ新たな収蔵庫であるコレクショナリウムが整備され、いよいよ10月にオープンすると聞いている。収蔵機能の確保だけにとどまらず、体験型の展示ギャラリーを備えたセミナーの開催も想定されるなど、さらに県民に開かれた施設となることが望まれている。また、三田市では、周辺ニュータウンの高齢化や人口減少といった課題があるなか、子どもから大人まで多世代が集まり、交流する賑わいある活動拠点としての役割を担うことが期待されていると感じている。
そこで、目玉である展示の運営及び県民の来館戦略について伺う。
本館にも広い展示用のスペースがあったが、膨大な資料展示の入れ替えは人員コスト面の問題もあり、なかなか実施できていなかったように感じる。新たにできるコレクショナリウムの展示スペースと合わせ、タイムリーな展示の入れ替えや見せ方の工夫など来場者を飽きさせない効果的な展示を展開する必要があると考えるが、どのように対応していこうと考えているか。
また、これまでも研究員の努力により、子どもから楽しめて大いに学びのあるような内容の深く幅広いセミナーが開かれ、昨年は146回と年中開催されているような状況であるが、まだまだ県民に広く知れ渡っていないように感じる。30周年の記念イベント等を一つの契機として、セミナー内容等の素晴らしさとともに、ひとはくの魅力を発信するだけにとどめず、着実に届け来館につなげていく必要があると考えるが、どのような戦略をもって望むつもりか、当局の所見を伺う。

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