迎山 志保議員が質問(総括)を実施

令和3年度決算特別委員会 【総括】

質問日:令和4年10月19日(水)

質問者:迎山 志保 委員(ひょうご県民連合)

 

1 県財政改善に向けた「将来負担比率」相対目標の設定について

財政状況の審査の中で2021年度決算の実質収支が218億円の黒字となったことについて質問した。答弁では記録の残る中で実質収支が100億円を超えるのもはじめてで一見桁違いの規模に見えるがコロナ禍での特殊事情が大きく反映されたものである、との確認をさせていただいたところであるが、つい先日、財務大臣の諮問機関である国の財政制度等審議会が、新型コロナウイルスへの対応として地方自治体に交付した臨時交付金が使われずに自治体の基金に回っている、として今後の規模縮小を求めた報道があった。確かに、兵庫県だけではなく、他の都道府県も昨年度決算で基金残高をはじめ財政状況が急回復している。例えば東京都では21億円(2021年6月)まで枯渇した財政基金残高が2021年度決算時点では7,272億円まで回復している。兵庫県でも昨年度、県債管理基金の積立不足解消に向けた残高回復分として340億円を積み立てた。が、こうした資金が国の交付金によるものではないかという財政審議会の指摘でこれから国が検証していくかもしれない。

また、先日の財政状況の審査時、決算剰余金の取り扱いについても質問したが、年間収支をみながら基金に積み立てるか収支対策に活用するかを予算編成の過程で判断されるという答弁であった。知事の財政基金100億円という公約実現も見据えたご判断がなされるかと思う。が、後年度精算等を除いた実質収支全額でも34億円。兵庫県の財政基金が33億円、人口が兵庫県の2.6倍の東京都が7,272億円という規模からするとインパクトは限定的。

そこで、知事の新たな挑戦を実現し県民のニーズに応えるために基金の積み立ても必要であるが、県債管理基金と財政基金をトータルで考え、真正面から財政健全化を目指すという意味で財政指標「将来負担比率」の全国ワーストからの脱却を目指すのはどうか。財政悪化の主要因が阪神淡路大震災とはいえ、発災から27年を経過した今も財政指標が制度開始以来ワーストを続けているのを知事はどう考えるか。

今回の決算で兵庫県の将来負担比率は22.2ポイント改善されて315.1となった。ワースト2の北海道もワースト3の新潟県もコロナ交付金の影響か昨年度より数値がかなり改善し兵庫県のワーストは変わらなかった。知事は就任後に策定した「県政改革方針」で2028度までの目標として、将来負担比率を305%程度としているが、今後も毎年度の収支均衡は必達目標なのでこの目標は達成圏内と考える。そこで絶対数値目標よりも、都道府県間の相対順位で中程を目指すなど県民に分かりやすい相対評価を目標数値として併用してはどうかと思うが所見を伺う。

 

2 医療提供体制の確保と次なる波への対応について

中国の武漢市で1例目の感染者が確認されてからまもなく3年が経過する。この間、国をはじめ県においても都度都度に試行錯誤をしながら不断の対策を続けてきた。現在県では、ピーク時には新規陽性者数が一日12,000人を超える日があるなど感染者数でみると過去最大規模の第7波が収束の様相をみせているが、特に強制力をもった対策がなされないまま収束に向かっているこの状況について、集団免疫がついてきたためか、ワクチンの接種が進んでその効果が出てきたためか本当のところははっきりせず、改めてコロナ対策の難しさを痛感している。

これまで、感染防止のための行動制限や飲食店における営業自粛、病床確保など、様々な施策を行ってきたが、長期化した行動制限は雇用情勢の悪化や身体的精神的不健康、教育上の課題などさまざまな損失を生んだ。一方、医療機関においても、感染拡大に伴い発熱外来が機能しない、コロナ病床確保のためにコロナ患者以外の受診すべき患者が適切な時期に受診できない、手術が延期になる等、通常診療にも大きな影響が見られた。

先日の専門家会議では冬に向けて新型コロナとインフルエンザの同時流行で一日75万人の感染者が出ることを想定した対策案が示された。この間、オンライン診療等、さまざまな対応策も進んではきているが、行動制限が解かれ、国内始め海外旅行、そしてインバウンドも戻りつつあり、この流れを止めることは極力避けたい。

この3年、感染拡大防止のための行動制限等により、経済活動にブレーキをかける、ということを繰り返してきた。経済活動を継続するためにも、通常医療を含めて持続可能な医療提供体制が必要と考える。

そこで、医療提供体制のあり方、特に、通常医療とコロナ対応の棲み分けについて、これまでの対応と課題をどう認識しているのか、また、次なる波に向けて自主療養制度の活用なども含めて、今後どのように対応していくのか、当局の所見を伺う。

 

3 兵庫県を支える職員の確保について

昨年の県職員採用試験の倍率は4.9倍であり、下降傾向にあると聞いている。県ではこれまでも優秀で多様な人材を採用するために多面的、積極的な広報活動を展開したり、要件を見直して採用の門戸を広げるなど人材確保に注力されてきた。特に人材不足が深刻な技術職、専門職においては、採用時の年齢等の要件を緩和し、中途採用を積極的に進めており着実に採用実績を積まれている。一方で中途採用者は、採用前の職歴のすべてが処遇に加味されているわけではないとのことで、会派からは善処を求めているところでもある。

県では、震災による厳しい財政状況を理由にこれまで一般職も含めた職員の給与の減額を行い、行革終了後の今もなお管理職手当の減額を実に22年も続けている。知事は就任後のインタビューで「県庁内の働き方改革を進め前向きな仕事をしていくという流れをつくり兵庫県庁で働いていきたいという空気を生み出したい」とコメントされ、また別の機会には「知事と職員はワンチームであり、ボトムアップを実現し、業務の効率化を進めて職員にはクリエイティブな仕事を求める」と述べておられる。

今後の齋藤県政を支え、活力ある兵庫県を実現するには、優秀な職員の確保が求められる。そのためには、職員の働き方改革を進めて魅力ある職場風土を作り上げるとともに職員の処遇を適切に行う必要があると考える。兵庫県の要諦である県職員の確保の現状と取り組みについて伺う。

 

4 女性活躍の推進について

今年7月女性活躍推進法が改正され、企業における賃金格差や採用状況、管理職比率など一層の「見える化」が進められることとなった。また岸田首相は先月出席したニューヨークでの会合で自らの看板政策である新しい資本主義の中核は女性の経済的自立であり、官民挙げて女性をとりまく構造的な問題を解決していくという考えを示した。今後どのような具体的アプローチがなされるのか注目している。

翻って兵庫県の令和2年度の男女共同参画に関するさまざまな目標達成状況をみてみると随分取り組みが進んでいる一方、まだまだ女性が少ない分野も多い。

兵庫県では20歳代前半の女性の転出超過が年々拡大しており(平成26年778人→令和2年2406人)、特に女性の流出を課題と捉えてきたが、女性が自分の望む生き方を実現できる県であると示すことを知事には期待したい。またかねてより女性副知事の登用を考えておられるが、知事はどのような思い、狙いで取り組まれるのか。女性の活躍は、企業、地域、行政等あらゆる現場に多様な視点や価値観、創意工夫をもたらすことから、経済成長を支える潜在力という面に止まらず、レジリエンスな社会を目指す上で極めて重要であると考える。女性がより力を発揮できる環境づくりや風土の醸成は男性にとっての生きやすさにもつながることを認識し、さらに推進していく必要があると考える。現時点でのわが県における課題分析とこれからの取組について伺う。

 

5 子どもと家庭を支援する取組について

福祉部の部局審査でこども家庭センターの環境整備について質問した。困難な福祉人材の確保にも鋭意取り組まれ、また過去からの大きな懸案であった一時保護施設の拡充についても川西の施設整備を着実に進めておられるとの答弁を頂いた。ただ知事も過去の提案説明でその必要性に触れておられる中央こども家庭センターに併置されている一時保護所の建替、移転については、当局も課題に直面していることを認識されつつも、財政状況や令和6年施行の国の基準を踏まえての検討ということで難しい課題との見解が示された。しかしながら、建替移転は一時保護所だけの問題ではなく、中央こども家庭センター自体の老朽化が著しく、加えて立地する明石市はすでに市の児童相談所を運営しており、利用者の利便性を考えても適地に移転するほうがよいのではないかと考える。

現在、子どもをとりまく状況は複雑多様化しており、その意味においてもこども家庭センターが果たす役割は大きいのだが、児童虐待などこども家庭センターが現在対応している事案は、DVなど夫婦関係不和、シングル家庭、ステップファミリー、障害や経済的困難、また知事が今回思いを持って対策強化に取り組まれるヤングケアラーや困難を抱えた妊婦など、本当に様々な状況が複雑に絡み合っている。そこで子どもをとりまく困難は家族の課題でもあることから、こども家庭センターと県女性家庭センターといった支援を要する家族に関わる県の関係機関を発展的統合させることで総合支援の拠点を整備することを提案したい。京都府では児童相談所、婦人相談所、障害者更生相談所を統合して家庭支援総合センターを設置し家庭をとりまく様々な相談に専門スタッフがワンストップ対応している。実際私も本センターを訪問したことがあるが、広く府民に開かれた敷居の低い支援センターという印象で、相談所という本来の適切な支援につなぐという機能を果たすにふさわしい施設だと感じた。

増え続ける要保護児童、支援を必要とする家庭に今後きめ細かく対応していくため、市町の子ども家庭総合支援拠点と適切な役割分担、協力連携をしながら、より専門的なワンストップ支援を県の果たすべき役割として、こども家庭センターのあり方を改めて検討し、子どもの利益の最大化に向けた取り組みを進めるべきと考えるが所見を伺う。

 

6 価値観と行動変化を捉えた産業雇用対策について

新型コロナは産業雇用環境にも大きな影響を与えた。柔軟な働き方の実現やデジタル化の推進による生産性向上といったポジティブな側面もあれば、非正規雇用者の解雇、休業による収入減などネガティブな影響を被った県民も少なくない。一方、ポストコロナにおいては、経済活動の回復に伴う人手不足が見込まれる。また、折からの物価高や円安による影響などもこれから顕在化してくるなど不安要素も大いにある。しかしながら、仕事に対する価値観、何を大切にし、どう働くのかという意識の変化をこれからの兵庫県の産業雇用施策に適切に反映することで、反転攻勢がとれるのではないかとも考えられる。

部局別審査では、コロナ禍の影響によるテレワークをはじめとする多様な働き方の進展はワーク・ライフ・バランスへの意識の高まりをもたらし、企業がこの動きにコミットすることは重要な課題との認識が示された。特に若者や女性の意識の変化は顕著であり、これまでも県では政労使が一体となりワーク・ライフ・バランス推進の旗振り役を務めてこられたが、先日の産業労働部への質問において、ワーク・ライフ・バランスも含むSDGsの取組に関する調査では、兵庫県で積極的に取り組む企業は36.6%で全国35位、近畿圏では最下位との答弁があり、予想以上に風土の醸成や具体的取り組みがなされていない状況であることを認識した。

県における産業雇用面でのコロナの影響の検証と今後の情勢、また価値観と行動変化を捉えた新しい働き方の実現に向けて、SDGsの推進をはじめ、本県の産業雇用政策にどのように取り組んでいくのか所見を伺う。

 

7 共生社会の実現に向けた教育の推進について

先月、国連の障害者権利委員会による障害者権利条約に関する日本政府への審査の結果、日本の特別支援学級や特別支援学校を分離教育として懸念し、中止をするよう勧告がなされた。国連は障害のある全ての子どもが全ての教育レベルにおいて合理的配慮や個別化された支援を受けられるよう、質の高いインクルーシブ教育を実現するよう求めており、通常の学校が障害のある子どもの入学を拒否できないようにすること、分離教育の廃止に向けた行動計画策定などを日本政府に要求した。これをうけて文科大臣は特別支援教育の中止は考えていないと勧告に対して慎重な姿勢を示した。これまで進めてきた特別支援教育は当然全てを否定されるものではなく、大きな役割を果たしてきたと認識している。先日の質問でも触れたが、実際、特別支援教育へのニーズは年々高まる一方である。ただこれが通常の学級の受け入れ態勢が整っていないことの裏返しという指摘もある。すべての障害のある子どもを通常の学級で受け入れれば、それがインクルーシブ教育の実現につながるという単純な問題では決してないが、大切なのは通常の学級での受け入れを希望する子供や保護者の意思に寄り添い、その希望が最大限尊重されていることだと考える。そのためには、通級による指導など通常の学級における特別支援教育をさらに充実していく必要があるが、県はインクルーシブ教育をどのように捉え、一人一人の特性や希望に配慮した取り組みをどう進めておられるのか、共生社会の実現に向けた教育の推進について所見を伺う。

 

8 水難事故等防止条例改正の効果について

昨年の夏、水上バイクの走行に関して、明石市の松江海岸での危険走行や淡路島で3名が死亡するという無免許運転での痛ましい衝突事故が立て続けに起きた。知事も事故現場へ視察に行かれるなど対策に乗りだされ、昨年9月の本会議においてわが会派から水上バイクの危険運転対策について質問した際には、啓発の充実、監視体制の強化、関係機関と連携した対策の必要性について知事から答弁があった。

その後、「水上オートバイによる危険行為等の対策検討会議」を設置され、そこでの議論を踏まえ、本年6月、県議会において、水上バイクの危険行為に関する罰則の強化、飲酒操縦に対する罰則の創設を盛り込んだ水難事故等の防止に関する条例改正案を全会一致で可決した。今回の改正で罰金の引き上げ、懲役刑や飲酒運転に関する罰則規定の新設がなされ、都道府県の条例では最も厳しい水準のものとなった。本条例改正について評価するとともに関係者のご尽力に感謝をしている。また県と同様に神戸市や明石市も独自の規制条例を策定し積極的な対策に乗りだしており、県警、国、県市町、および事業者など幅広い関係者が連携しての実効的な取り組みに期待している。

7月1日の改正条例施行後、夏のシーズンを終え、条例改正や啓発・パトロールの強化による効果について県警の所見を伺う。

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