黒田 一美議員が代表質問を実施

質 問 日:令和4年12月6日(火)

質 問 者:黒田 一美 議員

質問方式:一問一答

1 ネット社会の対応について

(1)ネット社会における人権侵害への対応について(県民生活)

新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークやリモート会議を始めとするネット社会が急速に拡大しました。

インターネットはとても便利なものですが、一方で他人への誹謗中傷や侮辱、プライバシーの侵害やSNSによるいじめ、特定の民族や国籍の人々を排斥するような差別的言動や、部落差別に関して差別を助長するような投稿など、人権に関わる様々な問題が急速に発生しています。

インターネット上の悪質な書き込みは、その容易さや匿名性から、誰でも簡単に出来るものの、何気なく投稿したものがいったんアップされ拡散されてしまうと削除が非常に困難であることから、重大な結果を招くこともあります。

例えば、全国的に問題となっているブログ名「鳥取ループ」が、全国の被差別部落の地名リストや、全国各地において各分野で活躍している被差別部落関係者の名前と住所、電話番号、職業等をネットで流しており、その中には兵庫県民も多く含まれています。現在、東京で裁判となっており、原告は234人に及びます。

また、昨年2021年6月に、兵庫県丹波篠山市の特定の地区を撮影した動画が投稿され、丹波篠山市と地元自治会長が「被差別部落と流布するなど差別的視点から拡散され、名誉やプライバシーを侵害された」として動画投稿サイト運営会社に動画の削除を求める仮処分を申し立てました。神戸地方法裁判所柏原支部が削除を命じる決定を出し、現在、動画は削除されています。

これらは、被害の一部に過ぎず、さらに多くの差別、人権侵害がネット上で繰り広げられており、どんどん拡大しています。

兵庫県では、インターネット上の悪質な書き込み等による人権侵害の防止のため、インターネット・モニタリング事業を行っています。インターネットの掲示板等の書き込みに対し、一定のキーワードで検索し、該当した内容については、法務局やプロバイダへ削除要請するなど日々取り組んでいただいておりますが、県内においても、まだ実施していない市町もあります。また、モニタリングにより削除要請するだけで効果があるのでしょうか。その後の処理は、どのように進められているのでしょうか。

来年には、5年に一回の「人権に関する県民意識調査」が行われる予定ですが、調査を行うごとに、県民一人ひとりの人権意識の向上が見られることから、次回の調査では、より多くの県民が人権を身近な問題と捉え、様々な人権問題の解決に向けた取組に繋がることを期待するところです。

インターネットでの差別、人権侵害をなくすための対策強化に向けた事業展開について当局の所見をお伺いします。

 

(2)県警察でのネットにおける人権侵害から発展する名誉毀損や侮辱等への対応について(警 察)

日本の法律では、人権侵害が罪としている法律はありません。

しかし、令和4年7月7日、侮辱罪の法定刑が引き上げられ、侮辱罪厳罰化が実施されました。インターネットが普及し、インターネットでの誹謗中傷は、被害者を傷つけるものであります。

ある女性から相談を受けた事例を紹介します。

女性は、差別的なメールを受信するようになり、それがエスカレートし、勤めている会社へのメールが届くようになり困り果てていました。

しかし、ある警察署へ相談すると、悪質なメールは止まり、大変感謝されたとのことです。

2020年5月には、テレビのリアリティー番組に出演していたプロレスラーの女性がSNSで誹謗中傷をうけた後、自殺されました。また、同年11月には、小学6年の女子児童が、同級生からのいじめを訴える遺書を残して自殺しました。児童の両親は、学校で配布されているタブレット端末にあるチャット機能がいじめに悪用されたと訴えておられます。

今回の改正法は、こういった被害者を出さないためにも、誹謗中傷は犯罪だと多くの人に認識されることで、予防につながると期待しております。

インターネット上の人権侵害から発展する名誉毀損や侮辱などの犯罪から県民の命と安心、安全を守る兵庫県警察として、どのように対応されているのかご所見をお伺いします。

 

2 続くコロナ禍を踏まえた医療全体の今後のあり方について(保健医療)

兵庫県をはじめ、全国で徐々にコロナ感染者が増加し始めており、既に第8波に入ったとも言われています。この冬はインフルエンザとの同時流行による医療、病床の逼迫も懸念されますが、我々は、コロナの感染拡大が繰り返された約3年間の経験から、感染をむやみに恐れることなく、基本的な感染症対策を講じながら、社会活動を続けようとしています。

コロナが広がる前、本県では、団塊の世代がすべて後期高齢者となる 2025年に向け、①医療機能の分化・連携、②在宅医療の充実、それを支える、③医療従事者の確保を進め、「地域完結型医療」の構築を目的として、地域医療構想が策定されました。三位一体施策の一角を構成する「地域医療構想」では、主に入院病床の機能転換と在宅医療の推進に取り組まれてきました。将来の入院患者数を二次医療圏ごとに推計した上で、機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)別に必要病床数を試算し、また、入院医療から在宅へとスムーズに移行できるよう、地域医療連携および医療介護連携を推進するとともに、在宅医療提供体制の強化が進められてきました。

そこに、突然、コロナの感染が発生しました。感染者に対しては、無症状・軽症者は宿泊療養施設、自宅での経過観察、入院加療が必要な中・重症者は新型コロナ入院医療機関などへの入院となりました。感染者数は日に日に膨れ上がり、入院加療は感染症指定医療機関だけでは病床が不足、その他の民間病院も受け入れを行う形で対応が行われました。

急激な感染拡大によって保健所に電話相談が集中、電話が繋がらない状態が続き、また、現場医療従事者の感染症対策の努力にも関わらず、院内感染によりクラスターが発生する事態が頻発しました。保健所を始め医療関係者の方々のご尽力には、心から感謝申し上げます。

救急や一般外来にも大きな影響が出、急を要しない手術や診療は延期され、感染を恐れるあまり受診を控える患者も多く見られました。

新しい感染症の拡大という想定外の医療状況を経験する中で、今までの医療システムについて、このままで良いのか、見直すべきか考える必要があるのではないでしょうか。

こうしている間にも、感染者数は日々少しずつ増加しています。コロナを特別なものではなく、どこの病院でも診察することが出来るよう、また、コロナ以外のより重篤な患者を受け入れることが出来るよう、医療体制を確立する必要があるのではないかと考えます。これまでの経験から、基本的な感染対策を含め、医療面において逼迫する受け入れ場所や対処すべき事柄は見えてきたのではないかと思われます。

そこで、地域医療や1次2次3次医療、高度専門特殊医療、救急医療体制など、医療全体の体制の今後のあり方について、当局の所見をお伺いします。

 

3 粒子線医療の保険適用拡大について(病院局)

日本人の死因のトップは「がん」という状況が長く続いています。

厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、死因の第1位は「悪性新生物(がん)」で、日本人の3~4人に1人が、がんが原因で亡くなっています。もはや、がんは、誰がなってもおかしくないほど身近な病気となっています。

兵庫県は、これまで、粒子線医療に力を入れてきました。

私が県議会議員になった一期目の時、光都に粒子線医療センターがオープンし、重粒子線治療、陽子線治療がスタートしました。

従来のX線治療ではがん腫瘍の周りの組織にも傷をつけますが、粒子線治療はがん腫瘍そのものにピンポイントに当てることができ、効果がある、と現地を見て説明を受け、とても感動し期待いたしました。今も、同じ気持ちです。

当時は動く部位には適用できず、動かない部位だけでしたが、今では、肺等の動く部位の腫瘍にも瞬時で照射、治療できるように進捗してきました。

また、小児の高度専門特殊医療を担う兵庫県立こども病院の横に、小児にも対応した神戸陽子線センターが2017年12月にオープンし、重要な治療を担っています。しかし、保険が適用されないため治療費だけで300万円前後かかることから、当時から保険適用が課題でありました。県では独自に無利子の貸付も行っておられますが、やはり高額な治療費になることには、変わりはありません。

本年4月の診療報酬改定により、肝細胞がんや胆管がん、膵がんや大腸がん、子宮頸部線がんの5つのがんが保険適用となりました。

しかし、これら以外のがんでは従来と変わらず、300万円前後の治療費自己負担が必要となります。2016年度に初めて保険適用され、順次適用拡大され、現在は陽子線で8種類、重粒子線でも8種類、保険適用されています。

一方、肺がんや食道がんへの保険適用は見送られており、2024年度の診療報酬改定に向け、引き続き議論されるとのことです。手術ができない高齢者の治療に最適という粒子線治療。がん患者の高齢化が進む現在、保険適応が多くのがんに広がることが期待されます。

全国に粒子線治療施設が増え、粒子線治療の普及拡大に伴い、国、厚労省は保険適用を徐々にですが認めていると聞いておりますが、本県の粒子線治療の現状と課題、さらなる保険適用拡大に向けた県の対応方針についてお伺いします。

 

4 公共交通の維持、確保について(土 木)

人口減少が進む中、移動需要の縮小などにより、公共交通の維持・確保は依然として厳しい状況にあります。一方、高齢者の運転免許の返納等により、日常生活における移動手段の確保の重要性は、ますます高まっています。改正された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が令和2年11月に施行され、地域の公共交通に関するマスタープランである「地域公共交通計画」の策定が地方公共団体の努力義務となるなど、公共交通とまちづくり等の施策の連携が一層求められています。

県では、このような公共交通をめぐる社会情勢の変化を踏まえ、「ひょうご公共交通10カ年計画」を見直し、2021年3月に改定しました。この計画では、「豊かで活力ある県民生活を支える持続可能で安全・安心な公共交通」という理念のもと、将来にわたり持続可能な公共交通ネットワークを形成するため、国、県、市町、交通事業者、県民等の関係者が連携・協働し、一体となって取り組むための、公共交通政策の指針として計画を策定しています。

本年4月、JR西日本が管内の赤字ローカル線を公表し、該当地区を含む自治体や地元住民の間で波紋が広がりました。兵庫県内では加古川、山陰、播但、姫新線の4路線、6区間において、利用者が少なく運営が厳しいとの状況が明らかにされました。

県においては、これらの路線を維持・活性化するための利用促進策の検討にあたり、関係市町、事業者、有識者等の意見を幅広く聴取する「JRローカル線維持・利用促進検討協議会」を設置されました。協議会で検討の方向性を示し、路線毎に設置するワーキングチームで利用促進策を検討され、今月には検討結果を集約し、県としての取組方策を検討、来年1月には検討結果をまとめられると聞いております。

初会合の冒頭で、知事は、いかに今の路線を活性化するかを強調されているものの、JR西日本側からは利用減少に対する経営努力は限界に達しており、鉄道にこだわらない多様な交通サービスを考える必要があること、またこれまで様々な利用促進策が展開されたが、抜本的な問題解決には至っていないことが述べられました。利用者の増加、駅周辺の活性化という利用促進策に加えて、将来を見据えた方策についても考える必要があると思われます。

滋賀県において、人口減で存続が危ぶまれる県内の鉄道やバスなどの公共交通を支える財源に充てるため、新たな県税「交通税」の導入が検討されています。赤字路線の利用者や沿線住民だけでなく、広く県民全体で地域の足を守ろうとする交通関連の税制度は、フランスなど欧州では導入例もあり、実現すれば、国内で初となる試みです。この税には、公共交通を利用しない県民への課税に対する理解という課題があります。しかし、この議論において、公共交通の存続を、すべての県民の課題であると提起している点は、大事な視点ではないかと考えます。

兵庫県においても、公共交通機関を利用している、利用していないにかかわらず、その存続を県民が自らの課題、関心事として捉え、地域でまもり育てていく持続可能な公共交通のあり方をともに考えていく必要があると考えますが、当局の所見をお伺いします。

 

5 非正規雇用労働者の待遇改善の取組について(産業労働)

兵庫県内には、非正規雇用労働者が約919,000人いるとされおり、全雇用労働者の39.5%です。

国税庁の2019年民間給与実態調査では、正規雇用の平均給与は503万円に対し、非正規雇用は175万円であり、平均給与の差は328万円にもなります。

2021年4月から、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」が中小企業にも適用されました。これは、正社員とパート労働者・有期雇用労働者との間で給与や手当等、待遇の差を設けることを禁止するもので、働き方改革における「同一労働同一賃金」の実現に向けた取組です。不合理な待遇差は違法となり、正社員との待遇差の内容や理由等を説明する義務が生じるようになったことから、適切な対処が必要となりました。

現在、本格的な人口減少社会に突入しており、労働力人口の減少が懸念されています。とりわけ、中小企業においては、人手不足や後継者問題に悩まされています。大手企業の工場においても、半数以上がパートや派遣職員というところもあるようです。しかし、労働者側においても、個々の事情により、正社員ではなくパートを選ぶ方もいらっしゃることから、柔軟で多様な働き方と、それに対応出来る労務管理も求められています。

県では、このような状況下、非正規労働者の正社員転換や、処遇改善により、優秀な人材を発掘・登用し、定着させることを目的に、多様な働き方と処遇改善の推進に向けたセミナーと相談会を実施されています。

また、非正規雇用労働者のキャリアアップの仕組みや処遇改善の実施方法など、労務管理上のさまざまな悩みをお持ちの企業に対し、社会保険労務士などの相談員が該当企業を訪問し、課題解決に向けアドバイスも実施されています。

しかし、企業によっては、わかってはいるけれど実際対応が難しい、また、まだまだ知らないという企業もあるようです。

勤労者の生活の安定、充実、社会保険の空洞化防止等の観点を踏まえ、非正規雇用から正規雇用への転換を促進することが重要であり、公的教育訓練機関や企業内教育訓練などとの連携による取組も必要であると考えます。

そこで、正規雇用と非正規雇用の同一労働同一賃金の実現に向け、どのように取り組んでいこうとされているのか、当局の所見をお伺いします。

 

6 コロナ禍におけるスクール・サポート・スタッフの配置について(教 委)

これまでから、私自身をはじめ多くの議員の方々が幾度となく、教職員の多忙化対策について質問してきました。私は、教員の本分は子どもと一緒に歩むことだと思っておりますが、その時間がなかなか確保できない現在の状況は教員だけでなく、児童生徒にとってもよいわけがありません。また、小中学校でコロナ感染が繰り返し拡がる中で、感染対策等、教職員の業務の増加、多忙化がますます進んでいます。

県では、平成30年度からスクール・サポート・スタッフを各市町に1名ずつモデル的に配置しています。そのような中、急拡大したコロナウイルス感染症の緊急対策として、令和2年度に限っては、国の補正予算を活用し6クラス以上の小中学校に各1名を配置されましたが、残念ながら、その増員は継続されませんでした。

しかしながら、未だコロナ感染は治まっておらず、徐々に増加の傾向が見られるなど第8波にさしかかっています。今後もコロナ感染が繰り返されることも予想され、そのため、様々な感染対策は、今後も引き続き義務教育現場で必要になると思われます。

教職員や事務職員の定数については、国の配置基準により増員が難しいため、少しでも教職員の負担を軽減し、児童生徒としっかりかかわる時間を確保するためにも、今後、スクール・サポート・スタッフの増員や、市町独自配置への支援措置が必要であると考えますが、当局の所見をお伺いします。

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