中田 英一 議員が代表質問を実施

質 問 日:令和5年6月12日(月)

質 問 者:中田 英一 議員

質問方式:分割【1(1)(2)、2~3、4、5~6】

 

1 観光政策としてのひょうごフィールドパビリオンの推進について

(1)プログラム内容の充実について

ひょうごフィールドパビリオンは、大阪・関西万博に向けて、ここ数年における兵庫県観光政策の目玉と理解している。日本各地から2470万人、海外から350万人と予測されている観光客を取り込み、多くのファンを作ることによって、万博以降の観光を大きく盛り上げていくことが期待されている。

一方で、他府県においても同様の狙いがたてられ厳しい競争が予測される。すなわち、この失敗は大きく今後の観光にビハインドをもたらす危険もある。2025年4月13日の開幕まで2年を切ったこの負けられない戦いに臨む覚悟はできているか。

この政策が成功と言えるためには、①多くの来場者を前提として②彼らが高い満足度を得ることと③地域への経済効果がしっかりともたらされることが重要であると考える。

初期に多くの来場者(①)を呼び込むためには確かに広報も重要だが、内容の充実が伴わなければ満足度(②)が低くなり、多くの観光客が参考にする「口コミ」、すなわち経験者等による評価が得られず、中長期的に見て多くの来場者(①)やファンを獲得することも難しくなる。

(株)JTB総合研究所は、「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019)」の調査研究において、「国内旅行を計画する段階で参考にした情報源」で1位、32.7%が「家族・友人・知人」と回答し、さらに増加傾向にあるとしている。

また、観光庁による訪日外国人消費動向調査の2022年データでも、「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」の回答で、1位が「日本在住の親族・知人」で22.8%、2位が「SNS」で21.9%、3位が「動画サイト」で21.4%、4位が「個人ブログ」で18.7%と、上位4つをいわゆる「口コミ」に関連するものが独占している。

つまり継続的に観光客を呼び込むためには口コミに直結する体験者個々の満足度が非常に重要で、プログラム個々の内容の充実が不可欠といえる。

しかし、先月26日に新たに17のプログラムが認定され、合計130のプログラムとなっているが、ホームページに掲載されている情報以外の内容は公表されていない。いくつかのプログラムについて聞き取りを行ったが、あるプログラムではタイトルや方向性を提出しただけで中身はほとんど決まっていないというものもあった。

また、第二次認定で城崎温泉やスキー等を満喫できる神鍋高原がやっと追加されたが、他にも姫路城、有馬温泉、竹田城、甲子園球場などは兵庫県のなかでも既に人気の集客スポットとなっているにもかかわらず、ノミネートされていないものが目につく。

これまで地元団体や市町による手上げ方式(公募)できているが、フィールドパビリオン群を全体として兵庫の魅力を発信する機会だとすれば、事業主体の県として、こうした人気が高く内容の充実したコンテンツに対してしっかりと働きかけを行ってプログラムにしていくという動きも必要ではないか。

本年度予算だけで見れば、情報発信等に要する経費の比重が大きく、来場者の満足度を得るための、ひいては兵庫のファンづくりにつながる内容の充実に不安が残るようにも感じられるが、このような視点に立ったプログラムの検討状況と、今後の展開について、当局の所見を伺う。

 

(2)経済効果をもたらす仕組みの強化について

2023年2月に定められた「2025年大阪・関西万博に向けた兵庫のアクションプラン」では、ひょうごフィールドパビリオンによる観光消費額の目標数値は、フィールドパビリオンプログラム認定後に設定予定とあるが、認定されたプログラムを見ても当該地域に十分な経済効果がもたらされるのかよくわからないものもあるように感じる。

先日、2025年日本国際博覧会協会機運醸成局の堺井局長にお話を聞く機会があったが、万博全体の取り組みで地方に観光客が流れる仕組みとして、ツアーを募集して広報する取り組みが今月にもスタートすると聞いている。堺井氏のイメージでは「プレミアムツアー」として一人100万円といった比較的高額なツアーの参加を募り、地域の素晴らしさを存分に堪能できるようなプログラムを提供して欲しいとのことであった。非常に共感するところである。

県では、フィールドパビリオンとは別に観光政策として「兵庫デスティネイションキャンペーン・テロワール旅」を先行実施しているが、これとフィールドパビリオンや、まだプログラムとして認定されていない人気コンテンツと組み合わせてツアー化を進めていくような動きも必要ではないか。プログラム自体は団体や地域が個別に提案してきているので、この点と点をつなぐ役割が必要で、まさに県の担うべきポジションではないか。

万博を通じて、県へ来訪者を呼び込み、周遊してもらって、それぞれの地域にさらなる経済効果をもたらす工夫が必要だと考えるが、当局の所見を伺う。

 

2 企業誘致戦略について

新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などを背景に、海外からの原材料・商品等の調達難および価格の高騰が続くなか、企業の生産拠点や調達先などの国内回帰のほか、国産品への切り替えの動きが出ている。

帝国データバンクが2022年12月~2023年1月に実施した調査において、「海外調達等を行っている企業の約4社に1社が「国内回帰」または「国産回帰」を実施/検討」していると回答している。

また、日本の賃金水準が過去20年間でほとんど上昇しなかったため、経済発展に伴い賃金が上昇してきた海外の途上国と比較してもさほど高いとはいえない水準になっている。国内外を問わず、企業にとって、安くて優秀な労働力、安全性や税制優遇措置などをふくめて国内への拠点設立にメリットが出てきた。

新たな企業の立地は、厳しい経済状況の中で人口減少の課題を抱えるわが県にとって、コロナで疲弊した県内産業界に活力をもたらす拠点として期待されている。

こうした背景をもとに、兵庫県でも令和5年4月1日付けで産業立地条例の改正を行い、支援の拡充等により企業誘致を促進する方針としている。

これを進める体制としては、企業庁が産業団地を開発し企業を誘致する方法と、広く県内に設備投資を行う企業に対して条例に基づき補助金を出す産業労働部所管の動き、そしてこれをサポートする外郭団体のひょうご産業活性化センターと3つあるが、これらの体制がどのような役割分担ないし連携をとり、どのような企業に対してどのように参入を働きかけていこうと考えているのか。

改正された産業立地条例では「次世代成長産業」5分野への優遇が最も大きく、設備補助率7%、雇用補助1人あたり60万円、賃料補助は3年間2分の1、不動産取得税2分の1軽減、法人事業税は5年間2分の1軽減となっているが、全国を見渡せば、長野県では法人事業税(3年間)や不動産取得税の一部免除であったり、石川県では設備補助率20%など、優遇幅も種類もより魅力的な自治体がある。

全ては調べ切れていないが、そうしたいわば企業誘致合戦が日本中(世界中)で沸き起こる中で、兵庫県が埋没しないためには明確な戦略をもち発信することが必要である。

例えば①圧倒的に有利な条件を示し広く世界中から申し出を待ち受け選定していくという方法。②あるいは優遇条件以外の立地的な優位性をアピールした誘致、例えば我が会派からも提案した、研究拠点が集積する神戸への医療産業の集積や、関連企業が立地する防衛産業などにターゲットを絞る方法。③さらには、そもそもそうした情報を既に持っていて親近感を有している近隣に立地する企業の拡大・立て直しにともなう移転や、県出身者などゆかりのある起業家のスタートアップを狙う方法などが考えられる。

そこで、アフターコロナと呼ばれる時代における企業誘致の促進に向けた戦略と、それをどのような体制で進めていくのか、当局の所見を伺う。

 

3 次世代に向けた農畜産業の振興について

日本農業はこれまでも狭い耕作面積のなかで安価な海外農産物との価格競争を強いられ、耕作放棄地や担い手不足等の問題に直面してきたが、少しでも生産コストを抑えようと海外に依存していた燃油・飼料・肥料・薬剤などの資材調達において、新型コロナおよびロシアのウクライナ侵攻に伴い巻き起こった世界の物価高騰に巻き込まれ、さらに深刻な状況に追い込まれている。

この間の物価高騰については、緊急対策として政府から支援策が出ているものの、一時的なものにとどまることが予測されるうえに、そもそもの苦しい状況が打開されるものではない。

一方で、この危機から「食料安全保障」の問題がさらに大きく注目を集め、農林水産省も食料自給率の向上(=海外依存の低減)に向け方針を打ち出している。

厳しい状況の中にあっても、食料確保・環境保全に重要な役割を担う農業は今後も将来にわたって維持されるべき産業といえるが、この分野でも次世代に向けて改善していかなければならない点がある。これまでのように、ただ「安くて美味しいものを作ればよい」と言うのではなく、それは環境に配慮した持続可能なものでなければならないし、多様な価値観に適応したものでなければ、買われない=市場から見放される時代になっていくと考えられる。

例えば、農業における温暖化対策の促進である。温暖化対策の重要性に関する認識が社会的に高まる一方で、あまり知られていないが、本県耕地面積の90% 以上を占める水田(66,900ha)にはメタン生成菌が潜んでおり、稲作により発生するメタンは国内の人間活動により排出されるメタンの45%を占めている。

メタンについては、中干し期間を1週間延長させることで発生を3割抑制できることが確認され、この方法がJクレジット制度における新たな方法論として本年3月1日に認められた。

こうした温暖化対策を進め、農作物自体に環境配慮という付加価値をつけたうえで、Jクレジット制度を活用することで、農業者が新たな収入を得られる機会が生じる。

その他にも、例えば動物福祉(アニマルウェルフェア)への対応である。我が国も加盟する、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告で「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されており、世界的にはこれに則った家畜生産が望ましいとの潮流になってきている。

我が県が世界に誇る神戸ビーフの素牛となる但馬牛を育てる畜産分野では、畜舎などの家畜の飼養管理施設における換気不足がアンモニア等の有害物質により家畜の健康に影響を与えかねないことが指摘されており、現在好調な神戸ビーフの海外での売れ行きも、こうした潮流に対応できなければ将来的に市場から締め出されてしまうかもしれない。

兵庫県はSDGs未来都市の認定をうけたが、農業に付加価値をつけ、国際的な動向や消費者の多様なニーズに対応していくためには、苦しい時であってもこうした次世代に向けて魅力を高める取り組みを進めるための検討、支援を行っていくことが必要ではないかと考えるが、当局の所見を伺う。

 

4 障害者の社会進出と自立に向けた取り組みについて

障害のある人が障害のない人と同じように社会参加することを表す”障害者の自立”という考え方は、第二次世界大戦後の北欧から始まったノーマライゼーションの思想の普及とともに進んできた。

厚生労働省による障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針の基本的理念の1つめに「障害者等の自己決定の尊重と意思決定の支援」と定められているように、この自立とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」ではなく、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」を意味し、誰も一人では生きていくことのできないこの世界で、支え合い・誰ひとり取り残さない社会を目指すことを示している。

東京都江東区が令和4年に実施した障害者実態調査の結果によれば、「希望する暮らしをするために必要なこと」において、家賃が低額な住宅21.9%、医療やリハビリテーションの充実17%に次いで、14.4%の方が「働く場所の確保」と回答している。

障害者の就労については、兵庫県でも進めるSDGs8番目の開発目標においても、「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性および女性の、完全かつ生産的な雇用およびディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する」という一文が記されており、先日SDGs未来都市に選定され、ひょうご産業SDGs認証事業を展開する兵庫県では率先して取り組まなければならない課題である。

また、世界人口における障害者の割合は15%、約10億人で、その家族や友人など、近しいところに障害者がいる人は約50%おり、その購買力は8兆ドルとも言われているが、その大きな労働力やマーケットはあまり顧みられておらずここには大きな可能性があるとも考えられる。

多様性に富んだ豊かな兵庫県の実現に向けて、障害者の就労の拡大によるさらなる障害者の社会進出と自立に向けた取り組みや支援策について、当局の所見を伺う。

 

5 持続可能な道路・河川の管理について

兵庫県における県管理道路の総延長は4,840km、県管轄河川は3,311kmとなっており、2022年の国交省データによれば道路総延長、河川総延長ともに全国第5位と国内トップクラスの規模を誇る。それだけ豊かで広大な県土があるということであり、私たちは多くの利益を享受しているが、県民の生活や自然環境に欠かせない機能を保全するため、道路の舗装や、河川堤防などの維持管理に加えて、道路・河川わきの除草など多岐にわたる行政負担を負っており、その維持管理にかかる県単独予算は年間約150億円に及ぶ。

阪神・淡路大震災より財政が逼迫する中で、その膨大なインフラを維持すべく懸命な努力をされてきたが、予算は十分といえず、各所で草刈り回数の減少、舗装修繕の遅れ、河川の土砂堆積箇所が増加する傾向など地元からの心配や要望の声を聞く。

今後さらに人口減少が進み、県内の人口は2050年には400万人強、すなわち現状の75%程度になると予測されているが、単純に予算が75%になるとした場合に道路・河川が大きな支障の無い範囲で維持できるのか疑問である。

令和4年に改訂された兵庫県公共施設等総合管理計画の中でも、土木インフラについて「総ストック量を減量して維持管理費の削減を図るため、社会情勢や周辺土地利用の変化などから必要性が低下した施設や、機能集約により維持管理を効率化できる施設は「整理・統廃合」を検討し、利用者と合意形成を図った上で実施」するとあるが、道路に関しては県民生活を支え、生活の質の向上、県内産業の振興や県内外の交流を促す重要な基盤であることや、これまでも一部の歩道橋の削減にとどまっていることからも、実際に整理・統廃合することは困難であると感じるし、河川に関しては物理的には不可能であると考える。

また、知事も期待される「空飛ぶ車」が普及すれば、そもそも地面にアスファルトを敷いたような道路は不要になるという未来も十分あり得るかもしれないが、少なくとも20年30年では到底できないだろうし、新たに空の道路を整備する費用が必要になることも予想される。

そうだとすれば、管理コストの削減について、ありとあらゆる手法を検討し、ダイナミックに進めていかなければ到底追いつかないのではないか。

これまでも、県民のボランティア参加によるアドプト制度や河川クリーン作戦として、市町が協力してくれる場合に共同事業で河川の除草・美化を行っているが、さらに踏み込んで、現在は公共事業として登録事業者に委託している草刈り業務を、地域の団体等に有償で委託することで費用を抑えたりする方法なども検討する余地があるのではないか。

重要な社会基盤である県管理道路・河川の未来を見据えて、持続可能な維持管理を目指していく必要があると考えるが、当局の所見を伺う。

 

6 部活動の地域移行について

スポーツ庁と文化庁は、2022年12月に策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」において、2023年度から25年度の3年間を「改革推進期間」と位置づけ、部活動改革を進めるとし、これを受け本県でも本年度から南あわじ市と播磨町で部活動地域移行の取り組みを開始された。

この取り組みは、近年の少子化により想定されている学校部活動の維持困難性を回避するための手立ての一面があり、多忙を極める教員の働き方改革にも資するという点で異論はないが、教育の減退につながるのではないかとの観点から質問する。

そもそもこの「地域移行」とは、正確には「部活動を廃止して地域の民間クラブに移行させる」というものである。

部活動は、これまで公立の中学校・高校では教員が実質的に無償で担い、全ての生徒がスポーツや文化活動に触れる機会を得ることのできた活動であり、中学校・高等学校の学習指導要領には「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資する」ものと、その教育的意義が示されている。

部活動が廃止され民間クラブということになると、練習場所への移動や月謝・交通費の負担が生徒・保護者に生じ、通えない・通わない、すなわちスポーツや文化活動に携われない生徒が出てくる恐れがある。

2017年の全国学力・学習状況調査によれば、兵庫県の中学生部活参加率は88.7%。仮に地域移行によってこれが大きく低下することとなれば、生徒の成長に大きな影響が出ることが懸念される。

さらに、地域間格差が拡大する懸念もある。都市部ではボランティア指導員が豊富に集まったり、財政力のある市町の負担により無償に近い形で地域移行後の部活動が展開されたり、まとまった生徒数が見込めることから民間クラブの運営も比較的低価格で実施できたりということも想定される一方、地方部ではそうした形態が成立しないケースが多くなることも考えられる。

部活動改革は、2022年当時の末松文部科学大臣が次期学習指導要領の改訂に合わせて、部活動規定の削除を含めて見直していく考えを表明したのみで、部活動規定が残ったまま廃止を進めるような状況にあるなど、不確定要素の多い問題であるが、県として部活動の果たしてきた教育的意義をどのように評価しているのか。また、地域移行による地域間格差や負担増加による参加率の低下が起こればその意義が損なわれることから、県として手立てを講じるべきではないかと考えるが、当局の認識と対応方針について所見を伺う。

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