橋本 成年 議員が代表質問を実施

質問日:2023年9月25日(月)

質問者:橋本 成年(ひょうご県民連合)

発言方式:分割 (1~4、5~8)

 

私が尊敬する医師の中村哲さんは、アフガニスタンにて医師でありながら用水路を拓き、65万人もの人が農業で生計を立てられるよう灌漑を行いました。医療が追い付かず救えなかった命の背景に、清潔な水と食料の不足があったからです。現実を直視して根本原因を探り、解決を模索し、実行する。そのような姿勢を鑑とし、ひょうご県民連合を代表して質問に臨みます。

早速質問に入ります。

本年4月に施行されたこども基本法により、これまでは各法律に基づいて進められてきた、こどもに関する様々な取組みの共通基盤となる基本的な理念などが定められました。これは、子どもの権利条約が定める4つの原則(①生命、生存及び発達に対する権利、②こどもの最善の利益、③こどもの意見の尊重、④差別の禁止)を実現していくためにも重要な転機だと考えます。

こども基本法において「自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会」が確保され、「年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」が規定されていることは、こども政策を質的に転換する可能性があります。

保護者への子育て支援サービスの充実は当然に重要であり、さらに取り組んでいく必要があります。例えば、東京都で実施しているベビーシッター利用支援事業のように、待機児童対策のみならずレスパイトにも利用できる柔軟な制度も検討に値します。その上で、一歩踏み込んでこどもの意見表明権や社会活動への参加を促進する政策を検討していく必要があります。

この観点は、県の全分野の施策推進に必要な視点です。こどもや若者の人権を尊重することはもとより、こどもを始めとした若者の意見を施策に反映し、全てのこどもや若者の将来の可能性を支援していくことが重要という考え方に基づき、代表質問を進めてまいります。

 

1 こどもの生命、生存を守る取り組みについて

冒頭でこども政策の質的転換の可能性を指摘しましたが、現在のこどもを巡る状況では、こどもの人権尊重として最も基本的な部分である、こどもの生命、生存を守る取組みを行う児童相談所の役割を、まず指摘しなければなりません。

先日、昨年度の児童虐待相談対応件数が32年連続増加し、過去最大の21万9千件と報道されました。昨今の深刻な児童虐待事件などを受けて、児童福祉法は頻繁に改正されており、県においては児童相談所に求められる機能、業務の負担はますます増大しています。令和6年度も改正児童福祉法の施行が予定されており、今後とも、必要な取組はさらに増えていくものと考えます。

児童虐待による痛ましい事件を可能な限り減らし、できることならば根絶することを目標にする場合、虐待が疑われる現場へ介入し児童の安全を確保する機能と、保護者へのサポートを通じて家庭への再統合を支援する機能は、それぞれ方向性が異なる役割機能です。現行制度上は児童相談所において一元的、裁量的に役割を担っていますが、本来ならば組織的に介入と支援を分離すべきと考えます。

一方で、増加する相談件数に対応する児童福祉司・児童心理司について、増員に努めているものの法令上の配置基準に届いておらず、人材確保と育成が急務です。

次に、本年7月から実施されている虐待事案に関する県と県警との全件データ共有について、今後、効率的な共有のためのシステム整備が進められていくと承知しているが、情報共有が進むことで、警察が情報をもとに個別ケースの捜査に動く可能性もあり、もし、児童相談所において、継続的な支援が行われているケースに警察の捜査の動きがあると、当該保護者との関係性において現場が混乱するリスクもあると考えます。警察と児童相談所の役割分担を明確にするため、一定のルール化が不可欠です。

また、冒頭で述べた子どもの意見表明権や社会活動への参加を促進する政策の一つとして、昨年4月から一時保護児童に加え、施設や里親家庭で暮らす児童に対しても児童本人の意見を確認、尊重する仕組みが整えられたが、この取組にも期待しています。

そこで、こどもの生命と最善の利益を守るための県の施策展開について、指摘した課題への対応も含めた必要な取組について、見解をお尋ねします。

 

2 精神科病院への長期入院者の地域移行の推進と権利擁護の取り組みについて

昨年9月、障害者権利条約に基づき、国連障害者権利委員会から政府へ勧告が出されました。その中で、特に精神科病院への非同意入院を含む長期入院の問題にも焦点が当てられ、必要な支援を受けて地域で生活できるように支援する地域移行の取組みが求められています。

歴史的に、精神障碍者については国の施策として隔離・収容が是とされてきた側面があり、治療より監視監督に重きが置かれ、患者の人権を顧みない時代もあったと言えます。現在においても、措置入院や医療保護入院は本人の同意なしで行われるなど、一般の医療とは異なる面もありますが、平成16年に精神保健医療福祉の改革ビジョンが示されて以降、度重なる精神保健福祉法の改正などを通じて、入院中心から地域生活への移行が徐々に進められ、また療養環境の改善や入院者権利擁護、虐待防止について制度改正が続いています。

兵庫県においても、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に向けて取り組みが進められ、精神科病院と行政、地域援助事業者との連携強化を図りながら、長期入院者の地域移行を推進しており、圏域ごとに地域の課題に即して取り組みが進められているものとお聞きしています。

地域移行に向けて地道な取り組みを続けてこられた先進的な医療機関や保健所もあり、一定の成果が出ている一方で、医療機関や地域ごとに取組みの進捗については若干の温度差もあるのではないでしょうか。

これまで県では、関係機関との連携強化に努めながら、病院職員や地域移行関係職員への研修、退院支援プログラムの実施、家族支援の実施、ピアサポーターの養成などに取り組んできましたが、実際に長期入院患者の減少にどの程度むすびついているか十分に分析して、次の取り組みにつなげる必要があります。現在は8団体・事業所に委託して実施している退院支援プログラムについて、全県域をカバーできるよう、仕組みを再構築していくことも望まれます。

また、本県の神出病院等、全国の医療機関で発覚している暴行、虐待事案等を踏まえ、外部人材の定期的な訪問による療養環境の改善や入院者の権利擁護を支援する取り組みも有益と考えます。来年4月から施行される入院者訪問支援事業では、医療保護入院の患者から、家族等の支援が得にくい入院患者への対象拡大も望まれます。

以上の観点も踏まえ、精神科病院への長期入院者の地域移行の推進と権利擁護の取組みについて、今後の施策展開を伺います。

 

3 地域経済を支える人材の育成・確保について

本年7月の「人手不足に対する企業の動向調査」によると、正社員の人手が不足している企業の割合は51.4%と過半数となり過去同時期としては最高水準、非正社員についても30.5%の企業が人手不足と感じているなど約5年ぶりに3割超の水準となっています。

県においては、持続可能な地域経済の確立と雇用の創出・安定を目指し、ひょうご経済・雇用戦略を策定し、その3本柱の一つとして地域経済を支える人材の育成・確保を重要課題として取り組んでいます。兵庫県は20代が大幅な転出傾向となっており、新規高卒者の就職希望者減少とも相まって、県内企業にとって人材の確保が大きな課題となっています。

そこで、就職を考えている人材と県内企業とのマッチングが重要なテーマとなっており、それぞれの特性に応じた就職へのサポート体制整備が求められていると考えます。県においては、人手不足問題対策会議を設置して、来年度以降の施策展開を検討されており、7月31日に開催された第1回会議においては、学卒者雇用と外国人雇用について、意見交換がなされたと聞いています。

一方で、多くの学生が貸与型奨学金の返済を負担に感じていることから、県内企業への就職に繋げるインセンティブとして、奨学金の返済を支援する制度を設けた企業への助成を行う取り組みも有意義だと考えます。本年度から、一定の条件の元、補助を受けることで本人負担なしになるよう支援制度が拡充され、導入企業数、対象者数とも増加傾向が続いています。

ついては、地域経済を支える人材の育成・確保に向け、高校生への就職に向けたサポート体制、外国人材の就職と定着に向けた支援体制について、今後の方向性をお聞きするとともに、今年度から拡充が図られている奨学金返済支援制度についてさらなる拡充が可能か、その検討状況をお聞きします。

 

4 若者・Z世代応援パッケージと県立大学の授業料等無償化について

今般、若者・Z世代応援パッケージの一環として、6年間300億円を投資する県立学校の環境整備の実施内容が公表されています。また高等教育の負担軽減策を検討される中で、県立大学の授業料等無償化が立案、公表されたものと伺っています。

県立高校の環境整備に当たっては、高校生の意見を聞いて具体的な使い道や購入する備品の検討が行われたとお聞きしました。そのような取り組みは、子どもの意見表明と社会参加の実現としてとても有意義であり、学校現場からも「部活動の部長さんなど生徒から直接意見を聞いて計画に反映できたのは良かった」との声も届いています。できれば、今回単発にとどめず、生徒の意見が目に見える形で学校運営に反映できるプロセスを、制度的に整備することが望ましいと考えます。

一方で、大学生への支援として、国からの高等教育無償化の動きはまだ十分とは言えません。令和2年度から成績基準を要しない給付型奨学金が新設されるなど改善の動きはあるものの、約半数の学生が奨学金を利用し、うち約7割が貸与型の奨学金を利用していると見込まれる中、平均借入額も約310万円に及ぶなど、支援が必要な状況であることは論を待ちません。

しかし、県立大学に在学する県内在住者は大学院を含めても約4,000人であり、昨年3月に県内高校を卒業した42,454人中、県立大学への進学者は1.7%にとどまります。県立大学の授業料等無償化は、県内で高等教育まで無償で受けられる可能性を開くものですが、若者・Z世代全体から見るとごく一部の対象者へ集中的に支援を行う施策ともいえます。

県立大学への進学希望者が限られる中で、制度完成時には毎年22.4億円を支出する見込みの新制度を導入するにあたり、冒頭でも述べたように当事者である若者たちにも意見を聞く必要があると感じます。また、この施策が功を奏し県立大学へ県内からの進学者が増えれば、必要とする予算もさらに高額となると思われます。

今後、若者・Z世代へのより幅広いバランスのとれた支援を行うためには、日本学生支援機構のみならず自治体や企業など公民をあげての給付型奨学金の拡充策や、奨学金返済支援制度の拡充など様々な施策を重層的に整備し、最終的には国全体での高等教育無償化につなげていく必要があると考えます。県立大学の授業料等無償化が、若者・Z世代を応援していくという県の取組みの中で、どのような戦略的位置づけを持つのか、知事のご見解を伺います。

 

5 県職員の人材マネジメント方針と組織全体の活性化のための課題について

本年3月に策定された「人材マネジメント方針」においては「県民本位」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、「リ・チャレンジ」、「ネットワーク」そして「成長」の5つの価値観を掲げ、求められる職員像をHYOGO’s WAYと表現して、採用・育成・配置・評価処遇など人事施策全般の基本的方向性を定めています。重点施策として、職員の挑戦と成長を促す人事評価制度の導入、職員のキャリアビジョンを踏まえた人事異動、民間企業等とのネットワーク形成、新しい働き方に対応した業務運営スキルの習得などに取り組むと承知しています。

新しい人事評価制度について、人が人を評価する以上、100%の客観性を望むことは出来ませんが、面談を通して職員の良い部分を評価する姿勢を忘れず、強みを発揮できる環境を整えてほしい、そのためにも評価者への研修や、公平性や納得性を担保できる仕組みづくりも重要な取組だと考えます。このほか、超過勤務の削減や風通しの良い職場づくりにも引き続き取り組んでいただき、組織力の底上げを期待しています。

また、各職場では正規職員のみならず会計年度任用職員も重要な役割を果たしており、専門職の資格を持つ会計年度任用職員も多く在籍し、組織全体のモチベーションを向上させる取組みも求められています。民間企業の人手不足を背景に、会計年度任用職員の募集に対して応募がない状況も見受けられます。必要な人材の確保のためにも、処遇改善が求められます。一方で、恒常的に必要な業務であれば、本来は正規職員を当てるべきと考えます。

ついては、会計年度任用職員の処遇改善について伺うとともに、職員一人一人の人生設計やキャリアを支え、組織全体の活性化に資する取組み状況を伺います。

 

6 出勤率4割モデルオフィスの実施を受けた職員の働き方と県庁舎のあり方について

県庁舎の再整備について、令和7年度に1・2号館等の移転を開始し、移転後に建物を撤去、その後は暫定利用として市民緑地や憩いの場、イベント広場、災害対応拠点としての活用する方針が示され、今般の補正予算案にも計上されています。報道によれば、「4割出勤を目指し庁舎はなるべく建てない方向」とのことです。これは「新しい働き方モデルオフィス」の取組みを経て、4割出勤が実施可能との前提かと思われますが、試行中に出ている課題はどのように把握されているでしょうか。

知事は今年度のモデルオフィスの取り組みに対し、ワークライフバランスの推進や、フリーアドレスによる他部署の職員とのコミュニケーションができるようになった、との職員の好意的な意見を紹介されています。しかし、職員からの意見はそれだけではないと思います。

特に業務効率性についての意見はどうでしょう。例えば、神戸市西区の児童死亡事案や台風第7号被害への対応中など、担当の福祉部、土木部がモデルオフィス勤務期間にあたっていた場合、業務上どのような課題があったのか。また有事でなくとも、日々の業務記録票や職員アンケートにはどのような意見があるのか。知事はその内容をご存じでしょうか。ポジティブな意見もネガティブな意見も虚心坦懐に受け止める必要があると考えます。現時点での中間集計を公表し、分析すべきと考えます。

私は、県庁舎の解体がもたらす職員への影響を危惧しています。県民ボトムアップ型の県政を目指す以上、職員が現場で抱える課題についても率直に向き合う必要があります。そうでなければ、職員は、何を言っても無駄であるとの無力感で、率直な意見が上がってくることはなくなるでしょう。ワークライフバランスの推進はもちろん望ましいが、初めに4割出勤の数字ありきで、それによって肝心の業務効率性が損なわれることは県民本位と言えるでしょうか。また、新人を含む若手職員にとって、上司や先輩の対面指導や、「見て学ぶ」機会の損失が長きにわたって続くリスクがあります。

そもそも、3号館・公館・生田庁舎などで庁舎としての機能は十分に確保できるのでしょうか。例えば図面など資料を扱う土木部門であったり、県以外が所管するシステムを扱う部署、個人情報や窓口業務の取り扱い部署などは、在宅勤務が難しいと考えます。また、モデルオフィスの実施時期が繁忙期以外であれば、繁忙期を想定した勤務体制を想定しなければいけません。さらには、災害時にはテレワークのためのシステムが稼働しない場合の想定など、災害対応と通常業務の並行稼働を想定した業務継続計画(BCP)の見直しも必要です。

一方で、長期の保存資料も含めて、過去の資料をどこまでデジタルアーカイブ化するか、それらを管理活用できる状況にするシステム対応、またデジタル化できない資料の保管と活用方法についても、現実的な対応策が必要です。

上記の観点も踏まえながら、県庁舎のあり方を検討するにあたっては、4割出勤の目標に固執することなく、職員の経験や体験からくる集合知を活かすためにも、県政を現場で支える職員の多様な意見に耳を傾け、特に県民サービスへの影響や業務効率性の低下を懸念する意見も十分ふまえて、対話すべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

 

7 不登校対策のさらなる充実について

不登校児童生徒数は、新型コロナの影響もあり令和3年度で公立小学校では3,643人(全児童に対して1.32%)、公立中学校においては7,679人(全生徒に対して5.82%)と増加傾向が続いています。これは全国的にも同様の傾向で、中でも「不登校の要因」についての調査項目において、「本人の無気力・不安」とする回答が、小中学校共に半数近くに及んでいることには、大きな課題が潜んでいるように感じています。

データは、学校の見立てによるもののようですが、私はその意味するところは「明確な理由がなく、なんとなくやる気が出ない」、または「理由はあるが言語化して伝えることができない」、あるいは「学校や教員と生徒や家族のコミュニケーションがうまくいっていない」といった現象が複合的に表出しているのではないかと考えます。

教育機会確保法の施行以降、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、本人が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要がある、と指摘されており、登校を絶対的な目標とすることで生じる不要な軋轢を回避する意味は大きかったと思われます。一方で不登校対策の取組みがどこを目指すのか、明確なゴールを立てづらくなっているようにも感じます。

そもそも「本人が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立すること」を目指す教育は、不登校対策に限らず本来すべての児童生徒に対して目標とすべきテーマと考えます。

県としても、これまで「魅力ある学校づくり」による未然防止、不登校傾向にある児童生徒の「早期発見・早期対応」、「関係機関と連携した支援」を3つの柱に取組み、今年度から全県一丸となって進める「ひょうご不登校対策プロジェクト」において「ひょうご不登校対策推進委員会」や同「推進協議会」で意見交換しつつ学校、支援関係機関、地域、教育行政での取組みを進めているとお聞きしています。

しかし、不登校という現象を全体的にとらえ直し、その課題を個々のケースごとに把握して一人一人の児童生徒の学びと育ちを豊かにしていくためには、学校内外のリソースや専門家とのネットワークをさらに充実させる必要があると考えます。

そこで、まず、冒頭でも述べたように当事者である子どもの意見・言葉を十分に聞いて欲しい。そのため、文科省が全国的に進めている学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置促進をはじめ、学校内では、対策の中心を担う不登校対策担当の加配教員の充実や、対策を支援するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの更なる増員が重要です。また、学校外では民間のフリースクールとの連携、教員経験者などが個人として不登校児童生徒を指導するケースも想定した指導要録上「出席扱い」も望まれます。

このような論点がある中、総合的に不登校対策の現状と今後の取組み方策について、お伺いします。

 

8 天神川氾濫災害の再発防止、被害補償の取り組みについて

本年5月7日深夜から8日未明にかけて発生した天神川氾濫災害について、応急復旧工事を5月中に完成させるとともに、天神川氾濫災害調査委員会および同補償委員会を設置して、原因の調査と補償に向けた基準作りなどの作業にあたってきたと承知しています。不幸中の幸いで、住民や対応した従事者にも命に係わる被害はなかったものの、けがをされた方、住宅被害にあわれた方、営業に支障が生じた方など、被害にあわれた方へは早期の適切な補償が望まれます。現在までの調査委員会や補償委員会での議論を踏まえて、再発防止、被害補償の取組み状況を確認します。

まず、発災現場はいわゆる天井川であり河道下を道路トンネルが貫通する特殊な構造でした。工事は平成15年に堤防からの漏水が確認されたことをうけて、老朽化した河床張コンクリートや護岸の改修を行うことを目的としていますが、トンネルの拡幅改修も併せて実施することとなり、今回の工事は新トンネルを設置する本体工事の準備工として、トンネル周辺の土砂を支えるための土留工や、工事期間中に流水を受ける仮設鋼板水路の設置が目的だったと認識しています。

全体として非常に複雑な工事だという印象を受けますが、調査委員会での議論を踏まえた再現シミュレーションなどによって、氾濫要因が特定されました。様々な施工管理上の反省点や設計段階での不備、想定雨量など、考えられる要因について、専門家の知見を基に解析され、厳密に氾濫災害の原因究明が行われたと感じています。

一方で、被災された方については補償対象として現在58件が確認されているとお聞きしていますが、それぞれの立場や受け止め方も異なると思われます。それぞれと真摯に向き合いながら対応していくためにも、人員配置も含めて組織的な体制整備をお願いしたい。

以上の点を踏まえ、原因究明を踏まえた再発防止に向けた取り組みをお聞きするとともに、これから本格化する補償交渉に向けた県としての対応方針と決意をお聞きします。

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