前田 ともき 議員が一般質問を実施

質 問 日:令和5年9月26日(火)

質 問 者:前田 ともき 議員

質問方式:一問一答

 

1 インフレ時代の予算編成、資産管理・運用の在り方

(1)予算編成

数年前、「Cash is kingから_Cash is trash」の大転換が来ると申し上げた。インフレは、単なる供給制約や円安による一時的な物ものではなく、デフレ30年からの大転換。今はまだ初動である。デフレ時代は購買・投資は後になるほど有利だが、インフレは今が最安値。財政制約から投資を抑制すると、インフレ時代は後悔することになる。

例えばエアコン設置が進む校舎。予算が厳しいからといって気密性・樹脂窓などの省エネ投資を抑制すると、後々高騰する光熱費に悩まされる。企業誘致・工業団地も国内生産回帰が進む今こそ積極投資をすれば、税収リターンがインフレで膨らんで長期で返ってくる。したがって、投資・財政出動は今がチャンス。これが質問のポイントである。

政府は、本年の経済財政運営の指針で多年度財政中立を明記し、予算の単年度主義の弊害是正に取り組み、税制の将来にわたる効果を見据えた動的思考を活用するなど、歳出拡大の先行を認める閣議決定をした。アメリカが10年、欧米でも3-5年の多年度中立としている中で、兵庫県も同様に財政規律重視からの転換が必要ではないだろうか。

枕詞のように語られる阪神大震災の借金約2,200億円と厳しい財政。短期的な財政悪化に躊躇し投資が遅れた結果、インフレ負け・成長鈍化・他府県に劣後するリスクを感じている。また、財政基金100億の公約は一旦達成したので、さっさと全部利用するのが吉ではないか。一方で、低金利のうちに前倒し調達も必要ではないか。欧米ではわずか1年で政策金利が4%も上昇した。日銀もインフレ時代を迎えて金融緩和を維持することは困難であり、政策金利の上昇、すなわち自治体には調達コストの上昇を招く。従って、財政フレームもインフレ・金利上昇を見据えて、調整すべきではと考える。

インフレ時代を見据えた県の予算編成について、当局の所見を伺う。

(2)資産運用

また、インフレ時代には資産管理についても意識の転換が必要である。株や債券と違い現金は会計上損失にはならないが、現金の実質価値は目減りする。物価上昇率3%とした場合、20年後には1,000万円の現金は553万円の価値となり、現金イコール安全な資産ではない。県基金は現金4,904億円で約70%、債券1,676億円で24%、公社も保有金融資産の5割近くが現金であり、インフレ負けする資産構成で危険だ。フェニックス共済では、保険ビジネスの根幹ともいえる保険掛け金運用がほとんどされておらず不健全な状態だ。安全に運用すべき年金のGPIFですら、国内債券・国内株式・海外債券・海外株式の25%均等ポートフォリオで市場運用開始以降の年率リターンは3.97%、127.4兆円の収益。兵庫県の資金運用実績は2022年度の平均利回りは0.3%だが、消費者物価2.3%の上昇に対して実質的な損失だ。運用利益による交付税の減額は無いので、真水で収入増となるため、改革による収支改善効果は大きい。

市町や外郭団体も個別で運用しているが、高度化を図るためにも県が基本ポートフォリオや有利な商品を金融機関と一括交渉、情報提供すべきではないか。

兵庫県資金管理委員会の委員は6名中で運用・市場の実務経験がある人物は2名しかいない。運用・調達両面で具体的・専門的な議論、助言をもらえる人選に変更すべきでないのか。資金運用指針は既に公社の運用対象商品も社債残存期間の緩和などされているが、より柔軟かつ有利な運用ができるよう改正すべきでないか。基本ポートフォリオや期待リターンの設定など定量的な目標設定が必要だと考えるがどうか。

資金運用指針では、取引金融機関の選定基準に、地域密着度も含めて総合判断としている。しかし、高度・大規模な資金運用を担う上で不要な基準だ。運用対象とする金融商品も実質国内円建て債券・現預金に制限しており、運用の手枷・足枷が多い。インフレを見据え、リスクを取った、実質リターンが期待できるポートフォリオに変更すべきであり、これまでの指摘も踏まえた資金運用指針の大幅な改定が必要と考える。これら指摘を踏まえた資産運用の改革案について、当局の所見を伺う。

 

2 保有株式のコーポレートガバナンスや株主還元、売却方針

個人投資家として上場企業9社に株主提案をしてきた。今年は百五銀行や九州FGなど地銀3行へ実施。東証や経産省などが上場企業に株主還元の強化やCG強化を指導したことは異例であり、上場経営者としては本来恥ずべきこと。

私の経験上、経営陣との対話や対応から、CGや株主還元に対する理解の欠如を実感している。配当性向の低さや経営陣の私的流用などの事例も散見される中、上場企業でこのレベルなら未上場なら尚更チェックが必要だ。県が保有する企業、例えば関空土地保有125億円や神戸国際会館7.5億円などに対して、CGや株主還元を株主としてどのように要請しているのか。政策的意義から出資したが、その後は放置ではいけない。株式資本の調達コストはざっと7~8%。自治体の出資だからゼロリターンという考えではいけない。県の出資株式も相応の金銭的・社会的リターンを求める必要がある。

また、出資時には必要性があったが、今は保有意義のない株式もあるのでは。上場企業は持ち合い・政策保有株式の削減をしている。兵庫県は時価で関電52億円、三井住友FG 10億円などを保有するが、売却すべきでないか。

また、株主総会の決議事項は、会社提案には一律賛成、株主提案には一律反対という時代ではない。議決権行使をどのような考え・基準で行っているのか教えていただきたい。

株式保有率が高い企業に対しては取締役を積極的に派遣して、経営改善も必要ではないか。サンテレビは簿価で1.8億で株式シェアは2位の18.5%だ。

テレビ視聴率が低下し、ネットフリックスやTverが台頭する中で、地方局の意義・存続をどのように考えているのか。地域では圧倒的に知名度・ネットワーク・情報力があるサンテレビと信金がタッグを組んで、放送・融資外の地方創生ビジネスに参入すべきと考えるが、株主として、県民の資金を出資している責任として今後の経営戦略をどう考えるのか。

県が株式を保有する妥当性、株主提案や取締役派遣を通じたコーポレートガバナンス強化、配当などの株主還元について、当局の見解を伺う。

 

3 縮小都市への転換

積極的な財政出動を求めたが、何でもかんでもではない。

選択と集中という言葉は誰でも知っているが、実践できる人はほとんどいない。都市は縮小と集約が必要だ。

11年前の本会議で、人口減少と都市への集中は不可避であり、縮小都市への転換をすべきであると述べた。国連調査では、1950年に都市人口が約3割から2050年には約7割に達する。日本の人口は現状から更に約2割減となり、都市部への集中は構造的に不可避。従って、集落や郡部など人口密度が薄い地域は緩やかな移転、消滅、統合に軸足を置いた施策を提言した。井戸知事には何度と問題提起したが、具体的・実現可能な答弁はなかった。結果として、世帯数50戸以下、高齢化率40%以上の小規模集落数は、2008年の247から2022年には918へと増加し、多自然地域の約3割に達している。

小規模な町・集落の維持は、水道・警察・医療・学校・道路・防災など膨大なコストがかかる。高齢化による医療・介護費用が右肩上がりの状況でどのように賄うのか。防災・減災工事は、国庫要件に満たない小規模集積地域に、県単で数億ロットの工事が幾つも実行されている。あるJRローカル線の収支では運賃100円に対して1,745円の支出。

ノスタルジーではなく現実直視という考えは鉄道だけでなく、警察署の再編・高校の廃校などに共通する。現状維持とおらがなんとか。私がかねてより申し上げている点は今後も噴出する。過疎地に住みたい人は住めばいい。住居の選択は自由。しかし、過疎地の維持で発生する膨大な超過コストや不自由さ・リスクは、そこに住む住民ができるだけ負担すべきだと考えている。

都市部の住民は利便性と引き換えに高いコストを払っている。県の持続可能な多自然地域づくりプロジェクトは、今なお維持ありきの事業ばかりである。集約・廃村への支援も行うべきではないか。県道などのインフラ整備も更に濃淡をつけて、維持管理レベルを落とすことも選択肢ではないのか。斎藤知事の所見を伺う。

 

4 県による市町業務の補完・共同事業

先ほどは物理的な集約について述べた。次の質問では行政機能の集約化、業務の共同処理について問う。たかだか百数十年程度前に出来た、ヒトが考えた切り分け。それが現在の都道府県や市町村。

これに拘泥して、住民サービスの劣化や行政の効率性が阻害されることがあってはならない。平成の大合併に続き、令和の大合併が必要と考えるが進まないだろう。そこで今回は業務・機能の大合併。

地方制度調査会における小規模市町村の補完に関する議論や自治体戦略2040では、行政のフルセット主義からの脱却、小規模自治体への柔軟な支援が示され、奈良モデルや西尾私案の垂直補完も注目を浴びる。

合併せず、分権の担い手になりえなかった小規模な市町村は窓口サービス等の限定的な事務のみを処理し、主要な事務は都道府県という西尾私案。実質的な市・県合併のような垂直補完はハードルが高い。県はこれまで広域調整による市町村間の水平補完や県民センターの活用を行ってきたが、更に進化させるべきではないか。3類型と垂直補完の中間、第三の道が必要ではないか。全国でみると市職員数は最小106 人から最大38,394 人まで多様で、市を一律に考えることは困難。特に小規模市町・条件不利地域における都道府県の役割は高まっている。

具体的には、国保の都道府県化や後期高齢者医療広域連合などの事例を増加させ、税務・ICT・土木・広報等は、共同事業や市町からの有償受託など多様な仕組みで補完を進めていくべきだ。議決が必要でより強力な連携協約は播磨以外にも進めていくべきではないか。事務の代替執行はなぜ進まないのか。人材リソースが弱くなる県だけでなく、政令市・中核市を含んだ補完。京都府や大阪府のように、地方税機構で本格的な共同事業としてすべきではないのか。包括発注でスケールメリットができる業務、システムの要件定義、土木や建設の発注などは有償受託も含めて行う、ある種の官官ビジネスは行政人材の偏在、効率化、高度化に寄与すると考える。しかし、これまでの役所の文化では無償奉仕が多かった。これではインセンティブ不足で進まない。

フルセット主義からの脱却、新しい補完を見据えた、包括発注・共同事業・有償受託などの推進について、当局の所見を伺う。

 

5 消防広域化推進計画と県消防庁創設の必要性

警察署の再編やコンパクトシティばかり問題提起していると、郡部に冷たい人と思われかねないので、地域の命を守る消防・救急業務について、県の役割強化という観点で質問する。消防が市町村の責務という消防組織法は古いと考える。

県内の消防職員の充足率は80.4%、消防団員数も右肩下がりで減少しており、消防力は郡部を中心に脆弱であり、広域化による効率化・合理化が求められる。

高齢化により救急出動件数は顕著に増加しており、在宅医療の推進も相まって今後更に増加する。県下では救急隊員のうち約半数が救急救命士だが、救命率を向上させるため、更なる救急救命士の養成や、最適配車を実現する指令業務の共同化はもとより高度化が必要ではないか。

国民保護計画上のリスク上昇や救急出動が増加するなかで、平時の火事97%に対応するという消防力で算出した、管轄人口30万人が最適だとは思わない。

求められる業務は消防から救急に移行しており、それに合わせた最適な管轄や資源配分が必要であり、現行計画では不十分ではないのか。

また、コロナで発生した救急不足、有事発生時の対応など突発・高負荷がかかる事態発生時に、現行の緩い連携で迅速に対応できるか疑問である。

消防・救急は警察と同様に規模の利益が効く事業であり、大規模・広域化を追求すべきである。東京消防庁のように兵庫県が消防庁を設置し、市町と共同運営することも検討すべきではないか。市町村は消防団を担当すればよい。管理部門や通信指令部の統合、めったに使わない四十メーター級はしご車など特殊車両の再編、管轄区域の見直し、予防・救急業務の高度化・専門化など改善すべき点は山積している。

現行の消防広域化推進計画は2度の延長を経て、来年4月までの実現を目指している。広域化が進まない要因はなんなのか、既に広域化された消防は想定通り、初動体制や現場到着時間の短縮、予防・救急業務の高度化・専門化、高度な資機材の計画的な整備にどの程度つながったのか。

民間でも合併は買収して終わりではなく、PMIが重要。つまり、広域化されて終わりではなく組織・文化の統合作業も重要である。統合に関する経費の一部を国が支援する期限が来春に迫るなか、これら指摘を踏まえた消防広域化推進計画の進捗と、兵庫県消防庁の必要性について当局の所見を伺う。

 

6 ICT部門の広域化・外部化・共同化~GovTech関西の設置~

9年前の本会議からICT戦略の策定とCIO設置、そしてICT部門の強化、市町との連携・支援、さらにはオープンデータの推進などを提言してきた。その時も申し上げたが、それっぽい戦略文書は書けるが、実行力が足りない。県議として、県民としてICT施策の成果が実感できない。タブレットが議会で使えるようになったくらい。

電子自治体推進協議会は4業務のシステムを共同運用しているが、更に対象を拡大すべきでないか。ツールやシステムの共同調達や、市町のICT施策を県が有償受託したり、システム人材の身分相互併任があっていいはずだ。各自治体がバラバラに考え、バラバラに調達・運用するのはもうおしまいにすべき。

スマート兵庫戦略の取り組み事例は期待したいが、問題は実現可能性だ。

ICT部門の職員数はニューヨーク1,500名で職員のうち1.2%、シンガポールは2,600名で7%に対して、兵庫県は39名で0.65%と圧倒的に不足しており、市町はより顕著。企画からエンジニアまで質的・量的に拡充は困難であり、硬直的な採用や低い報酬を考えると、現状の延長線上に成果は期待できない。

これまで、県のICT部門の強化を提言してきたが、県単独では期待値に届かないと判断した。そこで、他府県連携。GovTech東京に参画しませんかという問題提起。

ヤフー元社長を副知事に据えた東京都は 都が100%出資するGovTech東京を今年設置。ツールや端末等の調達、校務支援や図書館管理システムの開発など各区市町村と共同化し、役所外の組織とすることで高給取りのデジタル人材を柔軟に採用、各区市町村に派遣し、DXを後押しする体制を整備した。大阪も同じような仕掛けをしているが、東京GovTechは人材が抜けている。県や市町が単独で、人材が質的・量的に不足する中で、一からうんうん唸って60点ぐらいの事業をするくらいなら、先行する東京都に参画、コピペで80点取りに行くほうが期待値が高いのではないか。

本来は、このレベルの組織を関西広域連合で作るべきとも考えるが、調整に時間をかけている場合ではない。GovTech東京へ参画し、GovTech関西を兵庫県が設置し、ICT施策を非連続かつ爆速で進める体制を整備すべきと考えるが、当局の見解を伺う。

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