北上 あきひと議員が質問(福祉部)を実施

令和4年度決算特別委員会 【福祉部】

質問日:令和5年10月6日(金)

質問者:北上 あきひと 委員(ひょうご県民連合)

 

1 「放課後児童クラブ」の量的拡充と質的向上について

「放課後児童クラブ」は1998年の児童福祉法改正によって「放課後児童健全育成事業」として整備されてきました。保護者が仕事などの理由で昼間家にいない小学生に対して、授業の終了後等に適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものとされています。共働きやひとり親家庭の小学生が通うことのできる「放課後児童クラブ」の入所希望は年々増加しており、2022年度には「放課後児童クラブ」に通う県内の子どもの人数は5万6,957人(22年5月)となり、5年前より約1万人増加しました。同時にクラブへの入所を希望するものの叶わずに待機する子どもの人数も1,023人(22年5月)で、前年よりも約100人増えています。施設整備と人員確保を成し、受け入れ人数を増やすことは喫緊の課題となっているのです。

「放課後児童クラブ」の職員は、子どもに寄り添いながら様々な状況に対応しなくてはならず、また子どもだけでなく学校や保護者との関係も良好に築く必要があり、重責を担っています。加えて、勤務時間は変則的であり、普段の平日は夕方からの仕事で勤務時間が短く、一方で夏休み等の長期休暇中は朝から晩までの勤務が求められます。研修機会の拡充や処遇の改善等、職務に相応しい労働環境を整え、必要な職員の確保に努めなくてはなりません。

全国学童保育連絡協議会によると、小学生が放課後児童クラブで過ごす時間は、長い子どもでは約1,680時間に上り、学校で放課後までに過ごす時間よりも400時間以上も多いとされます。「放課後児童クラブ」の現場からは「子どもたちがすし詰め状態になっている」「スペースが狭く子どもたちが希望する活動を我慢してもらうことがある」等の声を聞くところです。「親のいない間、子どもを預かる」ことに留まることなく、子どもたち自身がどんな放課後を望んでいるのか、子どもの声に心を寄せながら「子どもの最善の利益」に繋がる時間と空間を提供する必要があるのではないでしょうか。

県におかれては、待機児童が発生している市町を中心に、施設の新築や空き教室の改修等に係る支援を実施して頂いているものと認識するところですが、「放課後児童クラブ」の量的拡充と質的向上とが益々求められる現状にあって、県の今後尚一層の取組が期待されます。当局のご所見をお伺いします。

 

2 ヤングケアラー支援について

一般的に本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話を日常的に担う子どもたち「ヤングケアラー」の支援は、大きな社会的課題です。ヤングケアラーの子どもたちは、学業や進路に支障が出る、睡眠や生活リズムが崩れる、交友関係が希薄になり孤独を感じる等の問題点を抱えています。文部科学省と厚生労働省が2021年3月に公表した「ヤングケアラーの実態に関する調査」によれば、中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーであり、その内、自分自身がヤングケアラーであると自覚している子どもは16.3%という結果が示されています。同調査によれば、平日1日あたり7時間以上にわたり家族の世話をしているにも関わらず「特に問題はない」と回答する子どもが3割を超えています。本県の実態調査でも、当事者がヤングケアラーの認識を「持っている」が14.3%、「持っていない」が41.4%との結果であります。ヤングケアラーとしての生活が日常化するなかで、本人や家族の自覚が難しくなっているのです。加えて、家庭内のデリケートな問題でもあり、表面化しにくい面があります。よって、支援のきっかけを把握することが極めて重要だと考えます。きっかけさえあれば、介護保険や生活保護等の福祉制度の活用に繫げることができますし、子どもの心理的ケアや医療的ケアの必要な保護者への受診勧奨等も可能となります。

本県においては「ケアラー・ヤングケアラー支援推進方策」に基づき、専門相談窓口を設置するとともに、配食支援事業を実施したり、シンポジウムの開催等に努めておられるものと認識するところです。県内のヤングケアラーの状況をどのように認識・分析されているのか、また、これまでの取組の成果と今後の課題について、当局のご所見をお伺いします。

 

3 自殺予防策について

兵庫県の自殺者数は1997年から1998年にかけて987人から1,452人へと約1.47倍に急増しました。これは経済状況の変化による倒産やリストラによって、中高年男性の自殺が急増したことが要因だと分析されます。その後も1,300人前後の高い水準で推移してきましたが、職場のメンタルヘルスへの理解も徐々に進み、2006年に成立した自殺対策基本法にそった施策も展開された結果、2010年からは緩やかな減少傾向が続いてきました。しかし、2022年の自殺者数は947人(前年比+31人)に上り、新型コロナウイルス禍が始まった2020年以降、3年連続で増加しているのです。男女別の自殺者数をみると、前年と比較して女性が25人(8.6%)、男性が6人(1%)増加、年齢別の自殺者数でみると、前年と比べ、20歳未満(+5人)、30歳代(+3人)、40歳代(+13人)、50歳代(+28人)、60歳代(+4人)、70歳以上(+17人)と増加しています。新聞等によると、女性の増加率が特に高い要因は、コロナ禍の影響による雇用環境の悪化、育児や介護での孤立、人的交流減少だといわれています。

本年5月、新型コロナは感染症法上の「5類」に移行しました。社会はかつての日常を取り戻しつつある面が見受けられるものの、依然として経済面や精神面でのしんどさを抱えている県民は少なくないと思われます。県のパンフレットに「自殺は個人的な問題ではなく、自殺問題には社会的な取り組みが必要である」と記載されているように、一層の施策展開が求められていると考えます。県においては、自殺予防に係る情報発信、研修会の開催、相談窓口の充実、関係団体の活動支援、ゲートキーパー養成等、自殺対策を総合的に推進されているものと認識するところです。自殺予防についてのこれまでの取組の総括と今後の施策充実について、当局のご所見をお伺いします。

 

4 施設における障がい者への虐待防止について

障がい者の尊厳を否定する虐待を禁止し、虐待の予防および早期発見等に関する行政機関等の責務等を規定した「障害者虐待防止法」は、2012年に施行されました。虐待を①体罰等の身体的虐待、②暴言等の心理的虐待、③性的虐待、④適切な食事を提供しない等のネグレクト、⑤経済的虐待に分類し、市町村には障害者虐待防止センターを、都道府県には障害者権利擁護センターを設置することを義務づけています。福祉施設における虐待については、市町村と都道府県がそれぞれの関係法令上の権限を行使することを基本的な対応スキームとするものです。

法律が制定される一つのきっかけは、2003年に福岡県内で発覚した重度障がい者施設での虐待事件だと認識します。数年間にわたり施設長を含む5人以上の職員が殴る蹴るの暴行をしたり熱湯を飲ませたり、また預金を流用する等、入所者への数々の虐待が明らかになったことを記憶しています。先月、私は県内の重度障がいのある施設入居者の関係者から、施設内での度重なる深刻な虐待についての相談を承りました。その時に相談者が「入所者の家族の多くは、虐待に気がついているが他に行く施設がないので我慢している」とおっしゃったのです。20年前、福岡での事件の際に聞いた言葉と同じ内容であることに、愕然としました。

厚生労働省の発表によると、2021年度に全国の自治体に寄せられた福祉施設での障がい者への虐待に関する相談や通報は3208件に上り、統計を取り始めてから最多となりました。虐待を受けた障がい者は956人です。専門家は「通報を義務化した法律が浸透してきた。通報によって、虐待がエスカレートすることを防いだり、早期に再発防止策を講じること期待できる」と分析しています。加えて、知的障がいがある人や障がいの程度が重い人が虐待を受ける割合が高いことから「支援が難しい人ほど虐待を受ける傾向がある。質の高い支援ができるよう、研修を通じて人権意識や障がい特性の理解を深める必要がある」と指摘しています。

県におかれては、障がい福祉の増進に日々努めて頂いているものと認識するところですが、施設での障がい者虐待について、事実を調査確認し、職務権限に基づき指導・勧告する役割を担う行政の責務は大きく、県に一層の取組を期待するものです。本県における障がい者福祉施設従事者等による2021年の相談や通報は145件で、その内虐待が認められたのは31件でした。施設における障がい者虐待防止について、これまでの取組の総括と今後の課題についてご所見をお伺いします。

 

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