竹内 英明議員が質問(財政状況)を実施

令和4年度決算特別委員会 【財政状況】

質問日:令和5年10月4日(水)

質問者:竹内 英明 委員(ひょうご県民連合)

 

1 2022年度決算における県債管理基金への外部資金集約の解消について

(1) 県債管理基金の保有する1株5万円の「関西国際空港土地保有株式会社」の株式(総額125億円)が1株1円(総額25万円)と価値認定されたことについて

これは元々、県の土木部(旧県土整備部)が保有していた株式だが、2006年度に他の有価証券や土地などとともに財政状況をよくみせるために県債管理基金に集約された。

ところが、関西国際空港の巨額の負債を分離して経営するために経営の上下分離方式が導入される際、2012年に、上下分離方式に反対する株主に対して、会社側は1株1円で買い取ることを通知した。会社側が依頼した複数の鑑定会社によって1株の価値が1円(備忘価格)と鑑定されたうえでのものだが、同社の役員会でも確認されての買い取り価格だった。その価値判定に反発した一部株主が、貸借対象表上では1株あたりの純資産は3万円以上あるとして訴訟を起こしたが、裁判所も会社側の主張通り1株1円として認めたと報道されている。

あれから10年たち、この2022年度決算で集約基金が解消され、「関西国際空港土地保有株式会社」も元の土木部のもとに戻され、この125億円を含む計218億円の株式が県債管理基金から解消された。

資料として、集約が解消される株式の内訳、旧関空株についての一連の報道、基金の集約解消の状況の資料を提出させてもらったが、この旧関空株が株式の集約の半分以上をしめていたということがご理解いただけると思う。

しかし、10年も前から始まった話であるが、現にそのままこれが受け継がれ、財政指標の改善に用いられてきたという事実は明らかにしておかなければならない。『現金化可能だから基金にいれても問題がない』。お題目のように言われてきた。

分離方式に反対すれば現金化はできたが5万分の一。しかも県としては1円の価値設定に異論をはさんでおらず形式としては賛成している。

同じように同社の株を保有していた東京電力のことも報道されているが、こうした上場企業だったら保有株の減損が必要ということになるのだろう。こうした決定を知らないふりをして知らなかったでは通らない。

そこで伺いたい。斎藤知事はこうしたことを知っているのか。

 

(2) 県債管理基金からの企業庁地域整備事業への貸付金320億円の解消時期について

2022年度に集約基金が外部へ返済、整理され、県債管理基金について金額的に大きな課題は企業庁の地域整備事業への貸付金320億円が計上されていることを残すのみとなった。これは何の貸付かというと企業庁の地域整備事業会計に対するものでその目的は「北摂開発事業旧住宅金融公庫債繰上償還貸付金:320億4,400万円」ということだ。今聞いてもわかる人はほとんどいないだろう。

これも何度となく指摘してきたが、「企業庁の事業資金として貸し付けているものであり、同事業が終了していないことから、直ちに貸借関係を整理する必要はない」とこれまで答弁されてきた。

企業庁からは逆に一般会計への多額の貸し付けもあり、整理することで斎藤知事のいう県財政の見える化が進む。もとよりこの320億円は県債管理基金のお金ではなく、法人県民税の超過課税を原資としたCSR等のための資金であり、借金返済のための超過課税ではない。

貸付金の解消には企業庁と一般会計との債権債務の解消等が必要となるが、いつ実行するのか。

 

(3) 外郭団体や補助金支給先団体に対する単年度反復貸付について

県民からわかりにくい制度といえば、年度当初に資金を貸して、年度末に回収するという方法、単年度貸付を繰り返すという方法で融資をするという行政特有の方法も不思議な制度の一つ。まだこうした方法で貸し付けをしている団体があるかもしれない。

2014年の総務省自治財政局長の通知、「第三セクター等の経営健全化等に関する指針」においては、地方公共団体が第三セクター等に対して短期貸付けを反復かつ継続的に実施することは、本来は長期貸付け又は補助金の交付等により対応するべきであって制度の趣旨を逸脱しており、他の方策による公的支援に移行することが必要である。また、短期貸付けは、損失補償と同様に、当該第三セクター等が経営破たんした場合には、その年度の地方公共団体の財政収支に大きな影響を及ぼすおそれがあることから、避けるべきである」とされている。

実施している団体と金額について説明願う。

 

(4) 総務省出身の財務部長からみたこれまでの兵庫県の財政運営について

北海道夕張市の実質的な財政破綻によって民間企業なら粉飾にあたる決算が表面化したこともあり、総務省の指導助言もあって様々な不適切な財政運営は少しずつ解消されてきた。

公会計特有の5月末までの出納整理期間を活用した単年度転がし、俗にいう「単コロ」、単式簿記をいいことに年度末の数日だけ自治体に資金を戻し、金融機関から融資を受けて黒字決算をつくる「オーバーナイト」融資、こうしたことは全国の少なからぬ財政悪化の自治体や外郭団体で行われてきたことが知られる。

■単コロ:一般会計からの次年度の短期貸付金を財源とする第三セクター等からの返還金を、出納整理期間中(5月末まで)に、一般会計の当該年度の歳入とすることを繰り返す手法。(総務省HP)

■オーバーナイト:一般会計から第三セクター等に貸し付けた短期貸付金について、年度末に一旦全額返済させ、 翌年度初日に再度貸し付けるもの。その間、三セク等は金融機関から1泊2日で資金を借入れ(同)。

本県でも、2006年度まで単コロを活用してきたことを総務省出身の財政課長が認めたので当時驚いたものだが、オーバーナイトは、344億円もの金額だった旧みどり公社が2014年度から民間金融機関からの直接融資に切り替え、その後も、新西宮ヨットハーバーとひょうご産業活性化センターも実施をやめ、すべての団体でオーバーナイトを解消している。

こうした他の団体でも見られた対策に加えて、本県では外部の資金等を県債管理基金に集約し、借りたお金なのに、借金の返済に充てられるお金が存在しているように見せる「見せかけ貯金」(朝日新聞)といったことも行われてきた。

県債管理基金は、法的には減債基金と呼ばれるもので、将来の県債の償還、つまり、借金の返済に充てるための重要な基金であるが、2006年度の補正予算で外郭団体等からの基金集約などが行われた。借りただけで返す必要があるのにこの基金に積むと理論上は県債の償還をしたことになる。財政指標が改善されるのである。

当時、地方財政健全化法により実質公債費比率といった財政指標が導入されることが決まっており、本来あるべき県債管理基金の残高が大幅に不足していたので、財政指標の悪化による財政再建団体等の指定を避けるために、そうしたことが行われた。前知事も「率直に言って、実質公債費比率対策」と認めていた。

2022年4月に総務省から本県に赴任された稲木財務部長には、基金集約の解消などそうした措置の是正に取り組んでこられたと思うが、どのような感想をもたれたか。過去に阪神淡路大震災があったから仕方のないことだったと理解されるのか、お聞きしたい。

 

2 県始まって以来の黒字決算の理由、投資的経費の削減、決算調整方針・補正予算についての齋藤知事の考え方

こうした中、2021年8月に就任した齋藤知事は、先に指摘したような手法を用いた財政運営について、知事就任以前は知らなかったと本会議で私の質問に答弁したが、いま適正化が行われていることは当然了としたい。

その齋藤知事が2022年度の予算編成から本格関与し、投資的経費を前年比7%削減で計上した当初予算を提案されたことは記憶に新しいが、この度の決算でも、投資的経費は前年度比7%減のままであった。過去最大の黒字が見込まれる2022年度後半に入っても、そうした黒字見込を、財政(調整)基金に積むのではなく、補正予算を編成して他の事業に活用する考えはなかったのか。例えば、削減された土木費等の投資的経費を補正予算で回復させることも可能であったかと思う。当時知事にどのような情報をあげ、知事からどのような指示があったのか。

 

3 経常収支比率の4年連続悪化や全国ワーストが続く「将来負担比率」の中での「攻めの県政」「県立大学の無償化」について

(1) (公社)ひょうご農林機構の県将来負担(見込)額は259億円となっているがこれでよいのか

将来負担比率の算定にあたっては、外郭団体の債務等で県が負担する額を計上しなければならないルールとなっている。そのうち(公社)ひょうご農林機構については、県の負担見込が259億円となっていた。この金額ですべて県が負担しなければならないものを捕捉していると考えてよいか。

 

(2) 裾野の広い高校無償化を導入しないのは財政状況が理由なのか

自治体の主な財政指標の一つに経常収支比率がある。これは「県税、普通交付税などの経常的な一般財源収入のうち、人件費や施設維持費などの経常的経費に充当された一般財源の割合であり、数値が低いほど財政の弾力性が高いことを示す」とされ、監査委員の兵庫県歳入歳出決算審査意見書でも、県の「経常収支比率は98.7%で、4年連続して前年度より悪化した」と指摘されている。

県税収入は2年連続で過去最高を更新しても、兵庫県は地方交付税の交付団体であることから、逆に国からの交付税が減るので、高齢化に伴う社会保障費等の増嵩の状況から財政の弾力性の点では良くならずむしろ悪化している。

大学の無償化は国策とはなっておらず交付税措置等の国の支援策はなく、県の一般財源を活用した施策となる。

若者への支援や少子化等の人口問題に寄与するという観点での支援であることは間違いないが、現状は県内高校卒業生の1.7%しか県立大学に進学しておらず、無償化の導入で県民の進学数が増え、ほぼ全員が兵庫県民になったとして毎年4000人。国立大学や私立大学に進学する県民学生への学費支援は県としては特に導入しないということなので対象は極めて限定的である。

国策である大学への支援を国任せにしないという考えは評価するものの、県内の他の大学には新たな支援策を導入しない中で、大学設置者という立場で県立大学だけに手厚い県費を投入するという姿勢については議論がある。国に対する大学無償化の要請を実施しているのは、対象とならない学生からこうした批判が出ることがわかっているからだろう。

神戸市長は、同じ公立大学である神戸市立外国語大学へのこうした支援のあり方を導入するつもりがないかを問われ、「所得に関係なく無償化することが公費の使い方として公正で適切なのか」と会見で答えたという。一つの見識だと思う。

制度の導入の参考にした大阪府の制度と比較するとどうなのか。大阪府では公立大学だけでなく公立や私立の高校の無償化も併せて実施するため、全体として兵庫県よりはるかに多くの層に恩恵がある。

兵庫県は高校を対象としていない一方、大阪府では対象となっていない大学の博士前期課程までを対象としている。全体の対象者の数は大阪府と兵庫県を比べると全く違う。兵庫県は結果的に特定層への多重的な支援策となる。

ちなみに、財政指標である将来負担比率を比べると、大阪府が123.3%、兵庫県が326.4%。大阪府は兵庫県とは比較にならないほど財政は良い。

最終的には兵庫県立大の学生は県民ばかりとなるだろうから、毎年23億円以上の支援となり、対象となる県民からは相当喜ばれるだろうが、逆に国立や私立に子どもを通わせる納税者からは不公平だという批判も出るだろう。

こうした公平性の観点から県立大学の無償化を考える前に、実施するなら高校を優先すべきではないのかと考える。本県の高校への進学率は99%ではるかに裾野が広い。施策そのものについての議論は総務部の審査に委ねるとして、財政当局では大阪府と同じような「高校の無償化」を本県にも導入した場合の費用を試算したと思うが、その額をお答え願う。

 

(3) 「攻め」なのか過去の清算なのか

県立大学の無償化を公表した翌月に、企業庁の地域整備事業会計や(公社)ひょうご農林機構の分収造林事業といった県の財政負担が必要になるのが明らかな負の遺産というべきものが9月議会冒頭の知事の提案説明の中で出てきた。

2年前の就任からこれまで着手してこなかったのに、県政改革審議会に言われたといった理由で過去の財政運営の検証をするとか、将来負担比率がまだ全国ワーストのまま、自転車ヘルメットの購入補助も4000円と全国最大額とか。県にお金があるのかないのかこれでは県民はさっぱり分からないと思う。チグハグである。財政当局なら地域整備事業やひょうご農林機構の分収造林事業といった大きな課題があるのはわかっているから、攻めるのは少々早いということになるのではないかと思うがどうか。

 

4 県有環境林等特別会計を今回の検証の対象としない理由

兵庫県の負の遺産をこの際、議論、検証しようというなら、長期保有土地の多くを占める「県有環境林等特別会計」を同時に議論しなければならない。

県では平成20年度に県有環境林特別会計を設置し、先行取得してきた宝塚市西谷地区などの用地をこの会計で取得してきた。こうした先行取得用地の「県有環境林等特別会計」への移管は財源を県債として最大30年間の地方債償還期限まで延ばすもの、つまり、先行取得債から財源を付け替えて、負債を先送りしたということである。

その合計は、現在3333ヘクタール、取得金額は1,900億円となっている。国の交付税措置が363億円あるそうなので、残る1,537億円が本県の負担となる(利払いは別途)。

ことあるごとに「乱開発防止」などという目的で購入された土地のように説明されているが、まさか、これをそのまま信じている人はいない。

これらの土地については、地域整備事業会計が保有する土地やひょうご農林機構の保有する山林と同じく、現金化や利活用は簡単ではない。

先の二つの土地や山林と違って一定の交付税措置があるとはいえ、いずれも県民や国民負担(交付税)が多額となることは間違いなく、刷新とか過去の検証を言うなら「県有環境林等特別会計」を過去の検証の対象とすることは当然ではないか。SDGSではないが、持続可能な財政を考えるうえで、長期保有土地という全体の観点で検証の中に入れて議論すべきだと思うがどうか。

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