橋本 成年 議員が一般質問を実施

質問日:令和6年2月26日(月)

質問者:橋本 成年(ひょうご県民連合)

質問形式:一括方式

先日、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が主催する21世紀文明シンポジウムに参加してきました。タイトルは「気候変動問題と社会の大転換」というもので、東京大学准教授の斎藤幸平さんが基調講演されました。その中で、私は「ケア革命」という言葉に感銘を受けました。労働の価値というものを、他者や自然からの収奪・略奪もいとわない冷たい生産性至上主義から、他者や自然へのケアを中心とした新たな豊かさと幸福の追求へ転換すること、というふうに私はその言葉を理解しました。

戦争や災害による破壊を目の当たりにして、無力感に襲われることもある私たちですが、言論の力に信頼し、「ケアによる新しい文明」を創出することを願って、通告に従い7項目一括方式で質問させていただきます。

 

1 在宅介護を支える介護人材の確保対策について

介護の現場を担う人材の不足が深刻さを増しています。2022年度の施設介護職員の有効求人倍率は3.79倍、訪問介護員(ヘルパー)は15.53倍となっています。また、全国社会福祉協議会 中央福祉人材センターの調査によると、介護支援専門員(ケアマネージャー)の有効求人倍率も3.69倍となるなど、全産業平均の有効求人倍率1.31倍を大きく上回っています。

特に、介護が必要な方の自宅へ訪問し、介護を行うヘルパーの不足は深刻で、在宅で介護を担う人材が枯渇すると、生活が成り立たなくなるご家庭が続出し、介護離職の増加を招く恐れもあるなど、経済全体への打撃も懸念されるところです。

そのような中で、来年度は介護報酬の改定が予定されていますが、訪問介護にかかる基本報酬は2%程度のマイナス改定と発表されました。厚生労働省の説明によると「介護職員処遇改善加算のプラス幅を大きくして、実質的に増額となる」とのことですが、基本報酬の引き下げによって処遇改善加算のプラスと相殺されてしまう恐れがあると考えます。マイナス改定の理由としては、直近の全介護サービスの介護事業経営実態調査(2022年度)の結果から、訪問介護の利益率が7.8%と、前年度の5.8%から2ポイント改善していることがあげられています。しかし、特に小規模の訪問介護事業所は、処遇改善加算についても上位区分での算定ができていないなど、経営実態は大変厳しいとお聞きしています。利益率が改善しているのも、収入が増えない中で、人材確保が困難で人手不足による人件費の減少があるためで、現場のひっ迫状況には変わりない、との分析もあります。事実、昨年の訪問介護事業者の倒産件数は67件と過去最多を記録しています。

また、訪問系サービスについては、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった入居施設に併設する形で、多くの利用者を囲い込んで収益を上げているケースも含まれています。こうした一部の事業所のビジネスモデルが訪問介護の利益率向上の一因と思われます。実際、介護報酬では同一建物減算、これは事業所と同一または隣接する敷地内に所在する建物に居住するサービス利用者への介護報酬の減算措置ですが、この算定を受けている訪問介護事業所の方が利益率が高く9.9%、個々の利用者の自宅を訪問してサービス提供を行う減算を受けていない事業所は6.7%と、減算を受けていてもなお3.2ポイントの乖離があります。

在宅介護の肝である介護支援専門員(ケアマネ)の成り手不足や離職も深刻です。従来は介護現場で経験を積んだ方が、キャリアアップとしてケアマネを目指すキャリアパスが想定されていましたが、介護職員には処遇改善加算が適用される一方で、在宅介護を支援するケアマネの処遇改善が進んでいないため、ケアマネを目指すインセンティブが減少しています。ケアマネに求められる5年ごとの資格更新に際しては、費用面や時間的な負担を考慮して離職を選択するケースも多いと聞きます。

私は、在宅介護の現場を支える訪問介護のヘルパーや居宅介護支援のケアマネの存在が、2040年に向けて更なる高齢化と生産年齢人口の減少が進む地域社会にとって、極めて重要だと考えます。県としてできることは限られるかもしれませんが、良心的な事業者が撤退せざるを得ない状況は、何としても避けねばなりません。

一方で、介護保険法の改正により、本年4月から「介護サービス事業者の経営情報の調査及び分析」が制度化され、都道府県には介護サービス事業者の経営情報に関する調査及び分析を行い、国へ報告する義務が発生します。これにより、収集した経営情報を属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表し、国民に分かりやすく情報提供していくことになります。

兵庫県では、介護支援専門員の研修を通じてケアマネージャーの資質向上に取り組み、併せて費用面や時間的な負担軽減に資する取組みも行っているとお聞きしています。ついては、在宅介護を支える介護人材の確保対策について、県の取り組みの現状と課題認識、新年度の介護報酬や制度改正への対応についてお聞きします。

 

2 公共交通事業従事者の確保対策等について

コロナ禍を経て、厳しい状況が続く公共交通事業において、もっとも切迫した課題が従事者の人材確保です。私の住む宝塚市内においても、すでにバスの運転手不足による減便や路線廃止が行われていると聞きました。公益社団法人日本バス協会による全国のバス会社への聞き取りによると、2023年度では必要なバス運転手12万1000人に対して、実際に従事しているのは11万1000人と、約1万人の不足となっています。また、いわゆる2024年問題による運転手の労働時間規制強化によって、さらに不足は深刻化する恐れがあります。同協会では、国や自治体への補助算定の改善のほか、人材確保のために必要な賃上げの原資となる定期的な運賃改定や、特定技能の在留資格を活用した外国人運転手制度の創設などの対策も求めているところです。

バスやタクシーなど有償旅客運送をする場合に必要な第二種免許の保有者は、2018年の約180万人から2022年には158万人まで減少しており、そのうち65歳以上が約81万人と過半数を占めるなど、絶対数の不足と高齢化が著しく、運転手の成り手不足の大きな要因です。また、取得に要する費用も普通二種で20万円以上、大型二種では30万円以上を要するうえ、二種免許取得の年齢要件などを緩和する受験資格特例教習には別途30万円程度が必要になるなど負担が大きく、新たな人材を確保するために事業者が補助することで何とか免許取得を促しています。

今後の地域公共交通を守っていく趣旨から、二種免許の取得を公的に支援する必要性があると考えますが、令和6年度の地域公共交通事業者の人材確保支援事業について、どのような支援を考え、効果を期待しているのかお尋ねします。

また、いわゆるライドシェアに関する議論について、本議会でも平成29年6月議会において、「白タク行為の容認を旨とした規制改革の自粛を求める意見書」が議決され、安全の確保や利用者保護の観点から、極めて慎重な検討が必要との認識が示されています。現在、国土交通省において「法人タクシー事業による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い(いわゆる日本版ライドシェア)」がパブリックコメントに付されていますが、公共交通事業従事者、なかでもタクシー運転手にとっては非常に不安が大きいとお聞きします。同取り扱いが根拠とする道路運送法第78条第3号の「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」に該当するとの判断には、少なくとも、タクシー需要に供給が追い付かない客観的な状況が示され、かつ旅客運送の安全性の確保についても十分に配慮されている必要があると考えます。兵庫県として、この件についてのご見解を伺います。

 

3 交通渋滞対策の今後の展開について

交通渋滞の発生は、社会経済活動の低下や大気汚染等の沿道環境悪化、温室効果ガスの排出増など、日常生活や環境面に支障を来たしており、渋滞解消に向けた取組みは喫緊の課題となっています。県では渋滞交差点解消プログラムを策定し、すでに実施済みの第3期までのプログラムで、平成14年度から30年度にかけて、渋滞交差点は223か所から35か所に減少したと承知しています。その効果は、渋滞による時間損失を金額に換算すると、平成14年度の約440億円から平成30年度には約125億円まで改善したとお聞きしており、大きな成果が出ています。

現在の第4期プログラムでは県内57か所の渋滞交差点を選定し、今年度末までに半数の交差点で解消・緩和を目指すとしています。私の地元である宝塚市内においても、宝塚歌劇場前交差点など4か所が選定され、渋滞解消に向けた取り組みが実施または検討されています。

渋滞対策には、交差点改良などのハード対策と、交通需要マネジメントなどのソフト対策がありますが、やはりハード対策が分かりやすく渋滞解消に直結するため、中心的な役割を担っていると考えています。一方で、ハード対策は設計や用地交渉も含め相当の時間を要し、短期間での事業実施が困難なケースも多いものと思われます。また、現プログラムにおいては渋滞交差点に選定されていないものの、例えば、宝塚市役所前交差点など、かなりの渋滞が発生している個所も存在するなど、課題も残されています。

宝塚市内の渋滞交差点に関しては、完成目前の県道尼崎宝塚線小浜南工区の完全4車線化が実現すれば、中国道宝塚ICへのアクセスが大幅に改善するため、一定の効果があると想定されます。その際、西宮方面から中国道宝塚ICへ向かう車両に対して、宝塚市役所前を通らずに、武庫川新橋経由で南から宝塚ICへ誘導するなど、渋滞解消の効果を最大限発揮できるようなソフト対策も、併せて実施していくことが必要と考えます。

また、令和6年度予算案において「ビッグデータ活用等渋滞対策検討事業」が計上されています。これにより、詳細な渋滞情報の収集分析を行い、交通需要マネジメントなどソフト面での対策も含めた新たな検討が進むものと期待しています。

そこで、ビッグデータ活用等渋滞対策検討事業を含めた交通渋滞対策の今後の展開について、お尋ねします。

 

4 JR武田尾駅のバリアフリー化について

宝塚市内で唯一残されたバリアフリー未対応の鉄道駅であるJR武田尾駅は、乗降客数は一日1000人程度ですが、市北部にあたる西谷地域の玄関口として、重要な役割を担っています。もともとは武庫川の渓谷沿いに単線の未電化路線が走っていましたが、1980年代の複線電化によって、駅プラットホームの半分がトンネル内、半分が橋梁上という非常に珍しい形態の駅舎となりました。現在、県・市・事業者であるJR・地域住民などによる駅周辺も含むバリアフリー基本構想の取りまとめが進んでいますが、それに基づく駅のバリアフリー化整備については、国庫補助金の対象となる見込みとお聞きしています。

住民の期待が高い駅舎のバリアフリー化、中でもエレベーターの設置については、橋上に設置された駅の構造上、技術的な課題もあることから、バリアフリー基本構想案では6~10年以内の完了を目指す中期の事業と示されています。一方、高齢化が進む地域住民にとって、10年後にエレベーターがついても生きとらへんなあ、といった声も聞こえてきます。

駅舎整備については、事業者であるJRが実施主体となって進められると承知していますが、地域住民の願いでもあるバリアフリー化の早期実現に向け、県としても引き続きの事業推進をお願いしたいので、ご所見を伺います。

 

5 新型コロナウィルス感染症対策の検証について

2020年3月に初めて県内で感染者が確認されて以降、3年以上にわたって前例のない取り組みを続けてきた新型コロナウィルス感染症対策について、検証報告書のとりまとめが行われました。感染症法上の位置づけが5類に移行するまでに、保健・医療関係の専門家も参画する全庁体制の対策本部会議を合計81回開催するなど、各フェーズに応じて機動的な対応を図ってこられたものと承知しています。

もちろん、初めてのことゆえ、関係者間での情報共有一つとっても、何を誰と共有すべきか、の認識合わせから困難もあったことでしょう。かなりの混乱の中で手探りの対策を進められ、徐々にやり方を構築してきたのではないかと推測します。今回の検証報告書は、県の新型インフルエンザ等対策行動計画や感染症予防計画に反映して、今後の新たな感染症へ備えるため、県民モニターから約1800件の意見回答をお寄せいただいたほか、県内市町・各種団体・兵庫県新型インフルエンザ等対策有識者会議などの意見も聴取しながら、作成されました。作成に当たっては、保健医療・福祉・経済・生活・社会活動・教育・体制および広報の8分野について、様々な知見が集約されたものと思われます。

一方で、新たな感染症危機も含めて、危機対応とは想定外のことが起こるのが常であり、いかにして想定外を想定していくかの想像力が求められます。様々な現場や立場から寄せられたご意見は、ある種、主観的な物語かもしれませんが、そこに含まれた知見にも大いに汲むべき価値があると考えています。

ついては、今回の検証を踏まえ、何を教訓として引き継いでいくのか、どのような心構えや備えが今後の危機対応において意味を持つのか、知事のご見解を伺います。

 

6 部活動改革の推進について

部活動改革について、国の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」に基づき、県においては現在、地域連携・地域移行に向けた実証事業を実施しているものと承知しています。昨年2月にまとめられた「中学校運動部活動の地域移行検討に関する実践研究の実施成果報告書」によると、休日の部活動の段階的な地域移行について、拠点校でのアンケートからは、参加した生徒・保護者はおおむね肯定的に評価しているものの、平日と休日で異なる指導者の連携・協力体制の構築など課題もあり、地域連携・地域移行を統括する推進協議会等の組織が必要ではないか、などの指摘がなされています。

県教育委員会では来年度において、各市町の個々の課題を踏まえた円滑な改革を進めていくために、①地域移行型、②地域移行と地域連携のハイブリッド型、③地域連携型の3タイプによるロードマップを検討していくとお聞きしています。これら3つの類型には、学校管理下での部活動であるのか、もしくは学校管理外で地域クラブによる受け入れによる活動とするのか、あるいはそれらのミックスかというにとどまらない、部活動が持続可能な形へ移行していくための、大きな課題が示されているように感じます。冒頭に触れた国のガイドラインにおいても、新たな地域クラブ活動は社会教育の一環ととらえられており、責任の主体も、基盤となる理念も従来の部活動とは大きく異なることから、連携・協力のあり方が課題となるのも当然です。

このテーマの一番大きな課題は、そもそもクラブ活動とはどのようなものであるべきかといった根本的な理解と、なぜ改革が必要なのかという目的意識を関係者が共有し、意識改革を進めることだと考えます。学校部活動が持っている初心者が気軽に参加できる間口の広さ、同じ興味関心を持った生徒が自主的・自発的に参加して人間形成に資するといった、体力や技能の向上にとどまらない意義を活かしながら、教員の負担を軽減し、活動の持続可能性を高めていく道筋を、生徒をはじめ教員や保護者、地域スポーツ関係者などを巻き込み、対話によって見出していくプロセスこそが重要だと考えます。

また、中長期のスパンでは地域移行により、学校から地域社会への流れが実現していくとしても、いままさに、来年度のクラブ活動がどうなっていくか、不安の中にある生徒や保護者のことも忘れてはなりません。できれば、部活動改革を通じて、中学生が自主的・主体的に「部活動がこうなったらいいな」「こんなクラブ活動がしたいな」といった意見を実現する機会となることを希望しています。

地域移行への取組みの一方で、教員の負担軽減と、専門的な技術指導を受けられない生徒への指導を目的に、部活動の指導や大会引率等を単独で実施できる部活動指導員の配置も進められています。これは学校管理下での部活動に地域人材を招き入れる地域連携の一環だと理解しています。これまで教員が担ってきた仕事の一部を、新たな人材への人件費として予算化、見える化することにもつながり、各市町からの要望も多いと聞きます。従来の部活動との連続性を考え、地域連携を進めていくことを地域が選択することも引き続き可能となるよう、予算の確保も含め、さらなる対応を進めていただきたいと思います。

以上のような観点から、学校部活動の改革に向けた具体的な進め方と、外部人材の活用における課題認識をお伺いします。

 

7 投資名目の詐欺防止のための対策強化について

報道によると、4月から警視庁に特殊詐欺対策本部が設置され、広域にまたがる特殊詐欺への対策を強化するほか、全国の捜査員を含めて200人規模の「特殊詐欺連合捜査班」も設置されるなど、取り組みが進むと期待されています。一方で、投資名目で勧誘しつつ、実際には事業の実態がなく、集めた資金を配当金と偽って横流しする「ポンジスキーム」といった詐欺の手口が横行して、若年層から高齢者まで被害に遭うケースが続出しています。こういった投資名目の詐欺被害を抑止するため、取り締まりの強化と広報啓発が重要と考えます。

聞くところによりますと、県内での昨年の詐欺被害届は約3300件あり、前年比で約600件増加しており、うち特殊詐欺の増加が約150件、残る増加分に投資名目の詐欺が含まれるとのことです。投資名目の詐欺は、手口が多様であることから違法性のない投資勧誘行為との区別が難しく、外面的に一瞥しただけでは詐欺と特定しにくい特徴があります。

こうした実態から、投資名目の詐欺をどのように実態把握していくか、が一つの課題として挙げられます。詐欺罪等の中でも特殊詐欺は、「被害者に電話をかけるなどして、対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振り込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪」と定義されていますが、投資名目の詐欺は対面する機会を持つなど、相当程度のやり取りを通じて実行されることが多く、特殊詐欺の概念になじまないとも考えられます。

しかしながら、投資名目の詐欺は特殊詐欺と同じく単独犯は想定できず、相当程度に組織だった犯罪集団が背後に存在すると考えられます。不特定多数の者へLINEをはじめSNS等のデジタルツールも使いながらアプローチするなど、特殊詐欺への捜査との共通点もあるように思われます。特殊詐欺の一種と位置付けるかどうかはともかくとして、いわゆる半グレ的な集団も含めて、組織的な犯罪集団への捜査という側面からもアプローチが必要だと考えます。

さらに、一般的に高齢者が狙われると言われている特殊詐欺と比較して、投資名目の詐欺については、副業や投資に関心を持つ若年層にも被害が広がっているうえ、マルチ商法的な手法により被害者が巻き込まれて加害者になってしまうケースも見受けられ、広報啓発の重要性は高まっています。実際に、SNS等を通じて「絶対に儲かる」などの詐欺としか思えない勧誘は日々見受けられ、サイバー空間を利用して実行される詐欺の取り締まりも重要になっています。

そこで、以上のような側面を踏まえて、投資名目の詐欺に対する県警としての課題認識や対策対応の在り方、そして今後の展開方針についてお聞かせください。

 

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