黒田 一美議員が質問(予算審査・総括)

質問日:令和6年3月14日(木)

質問者:黒田 一美 委員

1 県立大学の授業料等無償化について

(1) 政策立案のプロセスと唐突な公表について

昨年8月4日、知事は会見で県立大学及び芸術文化観光専門職大学の県内在住者の入学金及び授業料について、所得にかかわらず無償化すると発表されました。大阪府の吉村知事が公立大学の完全無償化を発表してからわずか3か月です。

吉村知事は、昨春、完全無償化を公約に掲げて当選されましたので、府民の負託を受けられたのだと思います。しかし、本県の場合、公約ではなく、議会に事前の情報提供や議論もなく、公表も唐突でした。経緯が全く分かりません。私立大学関係者等の意見も聞いていなかったとも聞きます。

公表時点では、無償化に伴う経費は制度完成時で約23億円とされ、その財源確保は可能との見解を示されたところです。必要経費は、2022年度の県立大学入学者のうち、約5割が県内在住者であるとの実績に基づき算出されておりますが、無償化に伴って入学する県内の学生が増えると、当然、経費負担は増えることとなります。本来なら、県政改革調査特別委員会を中心に、議会ともしっかりと議論する必要があったのではないかと考えます。

県立大学では、既に無償化が決まったかのような状況の中で、募集がされております。しかし、無償化の予算はまだ決まっておりません。

政策立案や公表までのプロセスに問題がないと考えておられるのでしょうか、ご所見を伺います。

県立大学の無償化を含む「若者・Z世代応援パッケージ」は、知事の最重要施策であり、来年度予算として総額91億円が計上されています。経済的環境に恵まれない若者やその保護者などはもちろんですが、多くの県民から注目される施策です。

そのような施策にもかかわらず、1月26日に開催された県・市町懇話会では具体的な議論はされておりません。県民は市民、町民でもあり、情報共有すらされていないのは疑問です。

また、無償化の制度設計にあたっては、一般県民や多くの関係者の意見、すなわちパブリック・コメントを実施しておりません。一部の学生の声は大切ですが、県政としての大きな方向性を決めるプロセスとして、パブリック・コメントの対象事業とすべきではなかったのでしょうか。

知事の独断なのか、それとも他の幹部職員に意見を聞いた上での判断なのか、経緯をお聞かせください。

(3) 事務事業評価の対象としない理由について

事務事業評価については、一般会計で500万円以上の政策的事業を評価の対象としております。令和6年度当初の主要事業としては354の事業が評価を行っておりますが、県立大学無償化については対象外としております。

今回の無償化にかかる経費については、授業料等の無償化により収入減となる財源を補う形で、県立大学の運営費交付金として執行するものではありますが、間違いなく政策的な事業と言えます。

将来の兵庫県を担う若者の県内定着を目指す取組であるならば、卒業生の県内企業への就職率や転出超過の抑制等、兵庫への定着率などを指標として事業評価する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

(4) 若者県民に対する支援の公平性について

9月議会の一般質問でも指摘しましたが、県内高校卒業生全体のうち、県立大学へ進学した者はわずか1.7%であり、恩恵を受ける若者は極めて少ないです。財政状況が厳しいからこそ、財源の活用にあたっては公平性を保つことが重要です。これまでの代表・一般質問で多くの議員が、また、本委員会における財政状況での橋本けいご委員や部局審査での小西ひろのり委員、他の委員も指摘をしております。

知事は無償化を決断した理由として、「若者の切実な生の声を聞く中で、早い対応が必要」であると述べられております。切実な声を聞き、早い対応が必要なのは、県立大学の学生だけではありません。少しでも多くの若者を支援するような、給付型奨学金の拡充などは考えられなかったのでしょうか。国公立・私立大学や県立総合衛生学院、その他専門学校などに通う学生の中にも、将来の兵庫県のために活躍する若者が大勢います。

若者・Z世代への支援の趣旨は十分に理解しております。しかし、知事が言われている「県立大学の無償化をきっかけにした多くの若者への支援」が本当に実現するのか疑問です。

無償化に伴う経費は約5.2億円計上されておりますが、知事の決意に相違はないでしょうか、再度お伺いします。

(5) 県立大学卒業者が兵庫に定着し活躍する担保について

県内高校卒業生が、令和4年度に大学等に進学したのは28,004人であり、このうち県立大学への入学者は737人です。大学等進学者の中でもわずか2.6%です。

そして、県立大学の卒業生が兵庫県内で働く割合は約36%であり、県立大学への入学者737人からすれば、県内で働くのは263人ということになります。そこに毎年20億円を超える負担をすることになるわけです。

さきの部局審査での松井重樹議員の指摘にもありましたが、兵庫県立病院の看護師修学資金貸与制度においては、指定された県立病院で一定期間勤務した場合には修学資金の返還が免除されます。防衛医科大学校や自治医科大学の償還金免除も同じですが、県立大学の場合、無償化の条件に兵庫県内での就職などはございません。

総務部からは明確な答弁はなかったと思いますが、県立大学生が卒業後、兵庫県に定着し活躍するといった担保についてどう考えているのか、ご所見を伺います。

(6) 県が設置者である他の教育機関との比較と無償化の判断基準について

部局審査で松本裕一議員も触れられましたが、設置者として無償化を目指すのであれば、なぜ同じ設置者である県立総合衛生学院や農業大学校、森林大学校などは無償化の対象としないのでしょうか。

知事は、県が先駆けて無償化を実施する旨、これまでも発言をされておりますが、対象としていない学校があること自体、税の公平性の観点から問題があるのではないでしょうか。

より多くの若者県民に対するビジョンが見えませんが、他の教育機関とどのような違いがあるのか、無償化の判断基準についてお聞きします。

(7) 本来目指すべき県立大学の魅力創出と無償化の関連について

これまでの無償化に関する質疑に対して、当局は、「選ばれる大学としてブランド力を向上させていく」「兵庫に魅力ある大学を先駆けてつくる」などと述べられています。

一方で、県立大学の国際商経学部グローバルビジネスコースでは、外国人留学生の成績優秀者に対して授業料等の優遇を図るなど、広く県内外から優秀な人材を集めようとしております。県立大学の魅力創出のためには、県内外、世界から広く人材を集めることが大切です。県内在住者のみを無償化することは、魅力づくりになるのでしょうか。ご所見を伺います。

(8) 高等教育無償化に向けた国への要望、実現の見通しについて

県立大学生と他の大学等に通う若者県民との公平性については従来から指摘してきましたが、知事は、国公立大学を含む高等教育の負担軽減の拡充を国に求めていくと答弁されております。

昨年9月8日、大阪府吹田市で開催された「兵庫・大阪連携会議」において、齋藤知事と吉村知事は、両府県で連携して、政府に対して国公立大学の無償化を求めることを確認されております。一部の報道では、10月から11月には揃って上京し、要望先は文部科学大臣など閣僚級を想定しているとのことでした。このことは事実なのでしょうか。そして、実現したのでしょうか。

国による無償化の実現について、見通しをどのように考えているのか、お伺いします。

 

2 本庁舎4割出勤と県庁舎整備について

(1) 県庁1・2号館の解体・撤去と4割出勤の判断に至るまでの議論について

知事は昨年3月29日の記者会見で、県庁2号館及び議場棟の詳細な耐震診断結果を発表された際、令和7年度に1・2号館部局の移転を開始し、職員の出勤率を4割程度にすると発表されました。これについても県立大学の無償化と同様、突然の発表でした。議会では、令和元年度から県庁舎等再整備協議会を設置し、県庁舎の整備方針について議論を重ね、最終案のとりまとめも行われたりしましたが、知事の突然の発表は、県議会を無視した発表と受け止めます。

本庁舎の職員は、様々な業務を担っております。1・2号館の解体・撤去と同時に4割出勤を表明された経緯として、単にコロナ禍での一時的な実績のみで判断されたのであれば、軽率であったと言わざるを得ません。事前に部局ごとでテレワーク対応の可否についてのヒアリング、調査等も行われていません。知事が先行して発表したという認識でよいのでしょうか。それとも、耐震診断結果が判明してから僅かの間に何らかの議論があったのでしょうか。

現時点では、1・2号館の跡地に庁舎建設はせず、4割出勤を目標としてモデルオフィス等の結果を見ると言われておりますが、発表に至るまでのプロセス、議論の中身が全く分かりません。ご所見を伺います。

(2) 職員の意思を尊重した働き方について

厚生労働省では、「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」を公表しております。その中では、テレワークの制度を適切に導入するにあたっては、労使で認識に齟齬のないように、あらかじめ導入目的や対象業務などの事項について、労使委員会等の場で十分に納得のいくまで協議し、文書にして保存するなどの手続をすることが望ましいとされております。職員の働き方の維持改善を図る観点では重要なことですが、この指針に沿った対応はされるのか、お考えをお聞きします。

また、同ガイドラインでは、「実際にテレワークを行うか否かは本人の意思によるべき」とも記されております。コロナ禍では緊急的な措置として在宅勤務等が実施されましたが、職務上の理由や本人の希望で出勤しなければならない場合もございます。県庁舎のキャパを理由として、職員本人の意思を尊重できない場合があるのでしょうか、併せてご所見を伺います。

(3) 元町山手、県庁舎周辺の賑わいづくりについて

県庁舎の関係については、本委員会の部局審査でも数名の委員から質疑等が行われました。その中で、元町周辺のまちづくりのあり方への問いに対して、「元町山手の地域特性を踏まえると、閑静で落ち着いた雰囲気を活かしつつ、県庁周辺地域の活性化につながる賑わいづくりの創出が必要である」と答弁されております。

1・2号館を解体・撤去し、暫定的に緑地化とする計画ですが、4割出勤となれば、県庁周辺の飲食店等を含め賑わいがなくなります。本庁勤務の職員数は、非正規を含めて約3,000人ですので、仮に4割であれば約1,200人の出勤となり、約1,800人の減少となります。

5年前に竣工した新長田合同庁舎については、阪神・淡路大震災で失われたまちの賑わいを回復させるため、県・神戸市合わせて約1,000人の職員が勤務する計画で整備されました。しかし、元町山手、県庁舎周辺は1,800人が減少すると想定されますが、4割出勤とまちの賑わいづくりの関係について、ご所見を伺います。

(4) 4割出勤を目指したモデルオフィス実施後の分析結果の公表及びその時期について

4割出勤を目標とした「新しい働き方モデルオフィス」の取組については、当初は2月末までの計画で、実施後は速やかに職員アンケート等による分析結果を公表すると、これまで答弁されております。

しかしながら、このたびの当初予算案の中では、繁忙期の課題等を検証するため、6月まで延長する計画が示されました。モデルオフィスの分析結果や、必要とされる県庁舎の規模はいつ示されるのでしょうか。

さきの部局審査においては、新しい働き方では、県民本位で質の高い行政サービスを実現するとの考えをお示しですが、一方で4割出勤を経験した職員からは、「職員間の気軽な相談や伝達がしづらい」といったコミュニケーションや人材育成への課題等もあるとのことでした。それ以外の多くの課題も出ていることと思います。

こういった意見の分析結果について、いつ、どのような形で公表し、県庁舎のあり方検討へつなげていこうとしているのか、ご所見を伺います。

 

3 分収造林事業について

分収造林事業については、スギやヒノキなどを植林し、林業の発展と森林機能の維持増進を目的に国策として始まったものです。兵庫県でも昭和37年に造林公社を設立し、事業がスタートしました。

現在、ひょうご農林機構の分収造林事業は実質的に破綻状態となり、あり方検討委員会での議論の中で、県民負担の軽減の観点から、速やかな債務整理を行うべきとされ、対策の一部が補正予算として今定例会にも上程されております。代表質問での上野議員や12月議会での竹内議員の指摘にもあったように、不適切な借り入れスキームや当時の意思決定などについては、県行政として県民に対して責任をもった対応を行うよう強く要望しておきます。

令和3年度の包括外部監査においては、当時、事業存廃の是非にまで踏み込んだ検討が行われなかったことが指摘されておりますが、当該事業は土砂災害の防止や自然環境保全など森林の公益的な機能も発揮しており、その役割は重要だと考えます。県内の森林面積の1割である約2万ヘクタール、約1,000地区で分収契約がされておりますが、これまでの風水害において、これらの地区では下流に被害を及ぼす土砂災害は発生しておりません。

また、他府県の状況を見ましても、事業を廃止した府県は皆無であり、3セク債を活用して公社を解散、県営化するなどして事業を継続しているのは、分収造林事業の重要性からではないでしょうか。

1月末に農政環境常任委員会の調査で、ひょうご農林機構の県北事務所を訪問し、事業概要を調査した後、養父市の現地を視察しました。地元の関係者と意見交換をする中で、今後の収益よりも将来の森林管理への不安を訴える声を聞いたところです。長期にわたる事業ですので、子や孫、さらにその先の世代に引き継がれるものもあります。

こういった現状を踏まえ、今後の分収造林事業をどのように考えているのか。また、地元関係者が納得するような方針を示す責任があると考えますが、当局のご所見を伺います。

 

4 能登半島地震の被災地支援と今後の災害対応について

本県では、関西広域連合と連携しながら、カウンターパート方式により珠洲市を中心に支援を進めており、緊急消防援助隊や警察による災害派遣隊をはじめ、避難所運営支援、震災・学校支援チーム「EARTH(アース)」、保健師による健康ケアなど、様々な分野での活動を行ってきました。2月末時点で、市町等を含め延べ約3,000名を被災地に派遣しているところです。

現在も約100名の職員が石川県内に入り、様々な支援に取り組んでいただいておりますが、時間の経過に応じて現場のニーズも変わってきます。特に珠洲市に対する支援においては、神戸市や福井県との連携、警察や消防との情報共有なども重要となります。

今回の地震では、但馬沿岸である兵庫県北部区域にも津波警報が発表され、最大で2,100名余りの住民が避難をしました。但馬沿岸では約60年ぶりの津波警報の発表だったため、恐らく大半の住民は初めての経験だったのではないでしょうか。市町主体による避難の呼びかけだったとはいえ、課題なども検証しておく必要があります。

また、神戸市の派遣職員の中には、都市部と地方のニーズの違いに戸惑い、阪神・淡路大震災の経験が活かされなかったといった声も聞きます。今回の被災地支援における課題等の検証を含め、次なる災害に備えることも大変重要です。

来年度予算案では、能登半島地震への対応として約12億円が計上されておりますが、年度をまたいだ長期的な支援も視野に入れる必要があります。県として、これからの被災地支援にどのように取り組んでいくのかお聞きするとともに、今後の本県の災害対応について、ご所見を伺います。

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