上野英一議員が一般質問を実施

第310回定例会(9月)一般質問
2011年9月30日(金)

 おはようございます。民主党・県民連合議員団、神崎郡選出の上野ひでかずでございます。ただいまから、知事並びに県当局に対して一般質問を行います。
 その前に2期目の最初の質問でありますので、今時点での私の問題意識を述べさせていただき、その問題意識から兵庫県政について3項目、6点について質問いたします。
 今般の東日本大震災について、私は被災をされた方々に対しては只々1日も早い復旧・復興と生活再建をお祈りするところでありますが、同時に日本社会に対する大きな警鐘と問題提起があったと考えています。
 その大震災、津波、原発災害から発信されたメッセージとは、効率を優先した経済構造、企業活動が生み出した日本社会の現状と脆弱点として、都会への人口の集中、少子・高齢・過疎、人口減少社会への突入を生み出し、エネルギーをはじめとした大量消費社会が安全性を置き去りにした原発依存社会を推進させたといっていると思います。
 震災からの復興は、自然環境や地形を十分に考慮した街づくり国づくりでなければならず、自然を征服する科学技術ではなく共存するための科学技術でなければならないと考えます。さらに復興には多額の財政を必要とします。
 しかも、国・地方合わせて1千兆円にも財政赤字は膨らもうとしています。多世代間負担と言って、済ませられるものでもありません。国家財政、地方財政制度、国民負担の在り方等について、十分な議論を通じて国民納得の結論を導き出さねばなりません。国任せでは済まないと思います。それでは質問に入ります。

1 井戸県政10年の取り組みと今後について

(1) 多自然地域の活性化と自立を促す取り組みについて

 井戸知事は就任されて10年間が経過しましたが、副知事時代の平成12年2月に策定された「行財政構造改革推進方策」として1兆600億円の収支不足の改善と、1千億円の新規施策の財源確保を定め、平成16年2月の「後期5か年の取り組み」を経て、平成20年10月には、「新行財政構造改革推進方策」、いわゆる新行革プランとして1兆1,980億円の収支不足改善と300億円の新規施策の財源確保を図られ、平成23年3月には、「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づく3年目の総点検の結果として、「第2次行革プラン」を策定されるなど、持続可能な行財政運営に努めてこられました。
 また、第2次行革プランの策定の過程では、平成22年度当初予算時に算定した財政フレームの収支不足額が315億円からわずか1年後には1,740億円に拡大する事態もありましたが、財政収支を見通す難しさを認識させられるとともに、改めまして10年間の大変なご努力・ご苦労に対しまして、敬意と感謝を申し上げます。
 10年間の行財政改革・財政運営を一言で言いますと、義務的経費、特に約2倍となった福祉関係経費を投資的経費と人件費の削減で対応してきたといっても過言ではないかと思いますが、それも既に限界に来ているように考えます。
 さらに、今回の東日本大震災の復興の在り方とその復興財源、原発災害復旧財源、頻繁に発生する集中豪雨による土石流等による大規模災害復旧財源、電力をはじめとするエネルギー対策及び急激な円高対策、人口減少社会への突入等々計り難い国家財政への需要が生まれており、地方の行財政もそれ相応の影響が出ると考えます。
 私は、今後の県政の推進にあっては、こうした厳しい社会経済情勢の中で、県としては、国に出来るだけ依存しない自立した施策の推進が必要であると考えます。
 さらに、少子・高齢化や過疎化等が進む県内の多自然地域にあっては特に、その活力が失われつつある状況を踏まえるとともに、多様化・複雑化する県民ニーズに対応して効率的・効果的な施策展開を進める意味からも、県の経費補助等に出来るだけ依存しない、地域自らの知恵と工夫を凝らし、豊かで多様な自然や農といった資源を活かした自主的・主体的な取り組みが重要になってくると考えており、県はそのための支援や仕掛けづくりが求められてくるのではないかと考えています。
 そして、こうした取り組みを通じた地域活力の増進は、結果として県の財政支出の抑制や改善、ひいては持続可能な行財政基盤の確立に繋がっていくのではないかと推察いたします。
 そこで、国頼みでは済まない今日の社会経済環境下にあって、第2次行革プランの基本的方向を踏まえ、多自然地域の活性化と自立を促す施策を如何に推進していくのか、その基本的な認識についてお伺いいたします。

(2) 参画と協働の推進について

 本県は平成15年4月に「参画と協働の推進に関する条例」を施行して、県民と県民、県民と県行政とのパートナーシップという2つの側面から参画と協働の推進に取り組んできました。
 県民向けガイドブックには、「参画と協働」を地域づくりに当てはめると「自分たちの地域を住みやすくするため、知恵や力を出しあって、地域のことをみんなで考え、力を合わせて、さまざまな地域づくりに取り組むこと」と記されており、地域づくり活動の分野の例として、「保健・医療・福祉」、「社会教育」、「まちづくり」、「文化・芸術・スポーツ」、「環境保全」、「災害救援活動」、「地域安全」、「人権擁護・平和の推進」、「国際協力」、「男女共同参画社会の形成」、「子どもの健全育成」、「情報化社会の発展」、「科学技術の振興」、「経済活動の活性化」、「職業能力の開発・雇用機会拡充」、「消費者の保護」、「ボランティア・NPOへの支援」の17分野が掲示されています。
 また、地域づくり活動に取り組む団体・グループとしては、自治会、婦人会、老人会、子ども会などの地域団体、ボランティアグループ・団体、NPOが挙げられています。
 わたしは、今後の「新しい公共」の充実に向けて、また適正な行財政改革・財政運営の観点からも行政と県民のパートナーシップに関しては、大変重要であると考えます。
 しかし現状は、具体的な事業等の取り組みも身近な地域課題への対応のみに終始しているように見受けられますし、加えて、人口減少、価値観や生活様式の変化、特に共働き世帯で塾や習い事、スポーツなど子供を中心とする暮らしの中で、自治会活動や婦人会活動は厳しい実態もあります。
 わたしは、質問に先だって効率を優先した経済構造、企業活動が生み出した日本社会の現状と脆弱点として、都会への人口の集中、少子・高齢・過疎、人口減少社会への突入を生み出したと言いました。
 こうした状況を鑑みれば、これからの参画と協働の施策を進めるにあっては、21世紀の成熟社会にふさわしい地域づくりを進めるため、より将来的な展望を見据えて、例えば、自然環境の素晴らしい田舎における農業を中心に据えながら、療養型病床や介護施設、大学や研究機関など社会資本の設置又はそれらとの緊密な連携を念頭に置きつつ、地産・地消及び地域循環型経済や地域コミュニティを再構築する視点、すなわち、地域づくりに関する包括的な参画と協働を目指す必要があるではないかとも考えます。
 そこで、これまで条例の実効性や施策の推進状況の検証をどのように進めてこられたのか、また、改正NPO法の施行も踏まえ、今後どのような社会像を描かれつつ、多様な主体による県内各地の活性化に向けて取り組まれるかお伺います。

(3) 21世紀兵庫長期ビジョンの見直しについて

 平成13年2月に策定された21世紀兵庫長期ビジョンについて、策定から10年を経た人口減少などによる時代潮流の変化や、地域課題が顕在化していることを踏まえ、今年秋を目途として2040年の兵庫の目指す姿と実現に向けた課題と重点方策を調査・審議するための作業が進められており、大いに期待をするところです。
 私は、長期ビジョンの見直しにおいては、時代潮流の変化とその原因や、地域課題を的確に捉えて分析するとともに、その課題を克服して2040年の社会を創造するものでなければならないのではと考えます。
 同時に、長期ビジョンの見直し作業と将来社会への創造・実現が、まさしく県民の参画と協働による成果でなければならないと考えます。
 今年の6月に示された全県ビジョン改訂版(素案)を見ますと、よくこれだけ整理ができたものだと感心する反面、特にこれから申し上げることを充分に踏まえ、より踏み込んだ見直しと施策の展開を図って戴きたいと感じました。
 例えば、10年前のビジョン策定後に顕著になった「人口減少社会の到来」という時代潮流が記され、客観的なデータが示されていますが、そもそもなぜ人口減少社会に入って行ったのか、なぜ、未婚化・晩婚化・夫婦の出生力の低下が起こったのかといった根本原因を踏まえた対応が求められると思います。
 さらに、「持続する地域構造」というテーマの中では、「多自然地域の集落の衰退」として、「空き家の増加と荒廃」、「自然に戻る耕作地の拡大・森林の荒廃」、「地域内でまかないきれない生活サービス機能」といった課題が、「疎住化が進む地方都市」としては、「多自然地域の中心都市周辺でのスプロール」、「都市近郊でのロードサイド近辺への都市機能・居住機能の拡散」、「中心市街地で進む生活機能の再配置」、「自動車依存の都市構造と衰退する公共交通」等々の課題が挙げられておりました。
 こうした様々な課題に対しては、「これからの兵庫の将来像」を描きつつ、様々公民協働の取り組みを進めることが必要となってまいりますが、素案の中では、各地域における先進的なあるいは頑張っておられる事例が挙げられています。
 その中には、私の地元の神河町の村営ふれあいマーケット・ガソリンスタンドの事例も紹介されていますが、本当によく頑張っているものの、運営実態もかなり厳しいのが現実です。 
 私は、こうした事例紹介ももちろん大切ですが、特に申し上げた課題を克服して、地域社会の自立を目指すためには、課題を抱える地域の起爆剤となるような取り組みを、県が主体的かつ具体的に打ち出していく行動が欠かせないと考えます。
 長期ビジョンの見直しにあっては、全庁的に知恵を結集しながら、ご指摘した原因分析や県による主体的行動による地域づくりといった視点も盛り込んで、
 将来に対する県民の不安解消と、将来の兵庫に希望を持てるシナリオを県民に示すことが必要と考えますが、現在の見直し状況と今後の進め方についてお伺います。

2 地域格差の解消と社会基盤整備の適切な実施について

(1) 医療格差の解消について

 私は、行政の果たすべき役割として、地域特性を生かしながら均衡・均等ある県土の発展、行政サービスの確保が重要であると考えています。
 人口が密集するところに、多くの施設が集中することは当然でありますが、都市公園や農村公園、美術館や博物館、県立病院をはじめとする医療施設等々の設置状況を見渡すと、必ずしも均衡・均等な配置になっているとは言い切れないと思います。
 公園や美術館・博物館などの憩いや文化や教養、スポーツ施設などの有無は直接的に県民の命に直結するものではありませんが、少子高齢化や疾病構造の変化に伴い、多様化・高度化するニーズに対応した医療提供体制の確保が、喫緊の課題となっている中、県立病院をはじめとする医療施設等々については出来得る限り、人口の少ない地域にも一定の配慮をすべき必要があると考えます。
 ここで私に寄せられた県民の声を紹介いたします。
 『中学一年の娘は甲状せん機能低下症(橋本病)で須磨のこども病院に通っています。橋本病は殆どの場合治ることがなく、症状の重い娘は一生通院することになります。小学四年生の時、姫路のマリア病院小児科で内分泌の検査を受けたところ、マリア病院では手に負えないので、こども病院に行くように言われました。最初は2~3週間ごとに、症状が安定してからは2ヶ月ごとに通院しました。こども病院では受付時間の枠があり、8時15分~9時半の1枠、9時半~10時半の2枠、10時半~12時15分の3枠となっています。住まいから須磨まで2時間以上かかり、1枠には間に合わないので、2枠に間に合うよう通っていました。診察券を出し、2~30分待ち血液検査をうけます。3分ほどの診察は1時半~2時頃になり、会計を済ませて病院を後にするのは2時半過ぎです。通院するのに学校も休んでの一日仕事で、こどもも付き添いの大人もくたびれ果てます。症状も安定したので、血液検査と投薬のみなら、姫路の日赤病院やマリア病院でも良いのではと思い、主治医に相談しましたが、娘にはダウン症候群の既往症がある上、思春期のこどもを診てくれる先生はいないとの事で、二ヶ月に一度の通院を四ヶ月に一度と通院回数を減らす事になりました。四ヶ月に一度の人は受付時間が3枠のみとなります。3枠の10時半受付だと終わるのが4時になります。』
 こども病院の受付時間は患者さんの状況により異なるとのことですが、こうした手紙を読みますと、遠方からの通院者を優先して受診、もしくは、高度な小児専門医療を実施できる医師を姫路の病院に配置できないものかと痛感するとともに、建て替えが予定されている「こども病院」では、遠方からの通院者への配慮、すなわち、建て替え位置の検討や、滞在時間の長期化にも対応できるよう児童公園の拡充、待ち会い室ではディズニーやジブリ等こどもも大人も楽しめる映画ビデオを放映する設備の設置、食堂、売店等に寛げる空間の設置、診察時間等のより細かな受診計画などの配慮が求められてくると率直に思います。
 さて、こうした事例を持ち出すまでもなく、地域医療の確保が危ぶまれている今日にあっては、特に、救急医療、災害医療、周産期医療、小児救急を含む小児医療体制の偏在及び、へき地における医療資源の不足は、県民生活に対して深刻な影響が及ぼします。
 私の地元の中播磨地域でも、特に3次救急については、救命救急センターである県立姫路循環器病センターが、主に循環器疾患、脳卒中を中心に対応しているものの、重症外傷患者等の受け入れ体制が不十分であるため、医療機関相互の連携も含め、早急な体制整備が求められています。
 このように、医療資源が不足する地域に在住する県民ニーズに的確に対応できるよう、均衡ある医療施設の体制整備や医療サービスの提供が求められると考えますが、その現状と今後の対応のあり方について、当局の所見をお伺いします。

(2) 選択と集中による道路整備の透明性・公平性の確保について

 多様な県土を有する本県では、都市部における社会基盤整備に比較をして当然のことながら郡部の社会基盤整備が遅れています。
 私が見聞きする一部の範囲だけでも、毎日の生活の基本となる生活道路整備等に関する県民の要望が多くあります。
 また、第2次行革プランを踏まえた投資的経費に関しては、プラン実施前の平成19年度の当初予算2,796億円と比較して、平成23年度は1,870億円の、△926億円と遂に2,000億円を割り込み、率にして実に△33%となっています。
 それだけに県当局の言われる「選択と集中」を踏まえた社会基盤整備が大変重要と考えます。しかもその「選択と集中」は、誰もが納得する透明性と公平性とが確保されるものでなくてはなりません。
 県では、社会基盤整備の実施過程の透明性を確保するため、県民局単位で「社会基盤整備の基本方針・プログラム」を策定し、計画的な社会基盤整備を進めるとともに、1億円規模以上の事業は内部委員会で、10億円規模以上の事業については外部有識者による公共事業等審査会で、その事業着手の妥当性が評価されています。
 このプログラムは、地域ビジョンに示される地域の将来像の実現をめざし、各地域における社会基盤整備の基本的な方向性や道路・河川などの事業箇所や概ねの整備時期を示したものと位置づけられていますが、地元県民や市町の声・ニーズ等が極力反映された内容であるべきであるとともに、その整備効果が適切に県民にフィードバックされていることが実感されなければならないことは申し上げるまでもありません。
 とりわけ、道路やトンネルの整備は、県民の日常生活はもとより、地域における社会経済活動を支える礎(いしずえ)でもあり、県民が安全・安心して、豊かな生活を営むためにも必要不可欠であることを考えれば、極めて重要な社会基盤といえる一方、その事業化にあってはその採択のプロセスや判断等が特に重要となってまいります。
 例えばトンネル整備では、その必要性を判断する場合、住民ニーズやコスト面の精査はもとより、周辺道路を含めた交通量や人口の多寡、環境面への影響や投資額に見合う経済効果の有無などが検討要件となってくるのではと推察しており、私の地元でかつて予定されていた県道下滝野市川線「釜坂トンネル」などは、当面の事業着手が見合わされるなど、事業化にあっての慎重姿勢が伺えた事例も認められます。
 第2次行革プランに基づく厳しい財政状況の中、「選択と集中」による道路整備事業の採択にあっては、その透明性と公平性の確保が肝要であり、どのような認識のもと事業を進められているのか、当局のご所見をお伺います。

3 兵庫県立大学の公立大学法人への移行について

 県立大学は、第2次新行革プランの中で、「平成25年を目途とした法人への移行に向けた検討」が示されました。
 我が会派は、以下述べるような解決すべき課題を含んでいることから、法人への移行期間はもとより、移行そのものについても、慎重かつ十分に検討するよう強く提案してきたところです。
 本来、県立大学は、県内唯一の公立総合大学であり、県民の資質向上のための「安価な高等教育と研究施設の提供」を通じて地域住民の高等教育機会確保、地域社会の発展に寄与、さらに県政推進に向けての連携といった県立大学本来の使命である公的責任を果たすものと考えています。
 今次の国公立大学の法人化への移行に関しては、例えば、法人化された国立大学では運営費交付金が毎年1%ずつ削減され、公立大学でも設置者の財政悪化を理由に大幅な予算削減が行われるなど、教育や研究に影響が生じているケースもあると聞いています。
 全国的にも、公立大学法人化した事例は数多くありますが、本来の趣旨を離れ、財政難に苦しむ自治体が不採算部門の大学を切り離すことを主目的に法人化されたというケースが多いと聞きます。
 また、教員・職員の身分についても課題があり、他府県の事例に目を向けると、首都大学東京や横浜市立大のように、法人化の際に任期制や年俸制の導入をめぐり教員側と自治体が対立し、大勢の教員が辞職する事態も起きた事例もあるなど、「教員の意見が大学運営に反映されにくくなるのではないか」という不安の声があることも事実です。
 去る9月14日に我が会派が知事に対して行った重要政策提言でも、「地域社会への還元と社会貢献、県政との連携といった視点に立ち、県立大学のあるべき姿を確認しながら運営を行うこと」と提案したところですが、厳しい経済・雇用情勢が続く中だからこそ、今後とも自治体のシンクタンクとしての期待・役割も一層高まっていくと思います。
 そこで、有識者からなる県立大学改革委員会の提言を受け、9月には県立大学としての方針決定を行うと聞いていますが、申し上げた課題解決に向けて、今後どのように取り組まれようとしているのか、ご所見を伺います。

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